小松空港からの帰途、暖房の効いたバスに乗り合わせた観光客が窓の外の荒れる日本海に歓声を上げていた。「すごい迫力だ」「来て良かったね」 そんなにお気に入りなら、海辺で小一時間も寒風に身をさらしてごらん、と言いたくもなった。冬の厳しさを知らない気楽な「旅の人」である。他人の痛みや苦しみは、なかなか分かってもらえない 無駄遣いという身勝手な「逆風」の中、それでも北陸新幹線の整備計画は進んでいる。九州新幹線長崎ルートは、沿線自治体の反対で凍結状態が続いてきた。が、先ごろ、並行在来線も開業後二十年間、JRが運行することで前進を見た 物事を進めようとすると、足を引っ張る者も出てくる。在来線のJRからの経営分離が新幹線着工の原則であり、長崎はルール違反、という批判である。こんな反対の声は、決まって新幹線の恩恵をたっぷり受けている首都圏から聞こえてくる 原油高対策の一つとして、寒冷地への灯油代補助が決まった。不安を抱える国民の気持ちに応えるのだというが、低所得者にわずかばかりの施し。「旅の人」には、こんな知恵しか浮かばないのだろうか。
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