現在位置:asahi.com>文化・芸能>コラム>小原篤のアニマゲ丼> 記事 先輩も後輩もフランス書院2007年12月24日 「フランス書院」をご存じですか? 「人妻」「奴隷」「女教師」などの言葉が入ったタイトルが躍る黒い背表紙の官能小説文庫を、書店の一角や駅の売店で見かけたことがありませんか?(なくても話を進めます。すみません) あの本を出している出版社です。
そのフランス書院を取材したことがあります。同社が「ライトノベルに飽き足らない人のための、若い世代向けの官能小説」と位置づけ03年から刊行している「美少女文庫」シリーズを紹介するためです。対応してくださった担当編集者さんは私の顔と名刺をしげしげと見つつ「本当に記事にするんですか?」「しますとも!」。こんな感じで取材は始まり、ターゲットの読者層や編集方針などをうかがいました。 この「美少女文庫」、表紙は萌え系のイラストで、タイトルの文言は「メイド」「いもうと」「お嬢様」――濃厚な雰囲気を醸し出す「本家」とは対照的なライトさです。書店に並んでいても、パッと見はまさにライトノベル。ただし中身はえろえろです。気をつけてください。もっとも、大手出版社のラノベにも豪快にエロいのがあったりしますが。 取材の趣旨は「拡散する萌え」でした。「もえたん」で知られるイラストレーターのぽっぷさんを起用したポプラ社の絵本、茨城県下妻市のホームページキャラクター「シモンちゃん」などと並べて、絵本や官能小説や自治体PRにまで「萌えキャラ」が活躍の場を広げている、という記事にし、今年1月20日の夕刊に載りました。 その年の5月、同人誌即売会「コミティア」で行われたシンポジウムの取材を終えた私は、大学生のとき所属していた文芸サークル「新月お茶の会」が出しているブースを半ば冷やかしで訪れました。するとそこにあったのです、近刊予告のこんなチラシが。 「フランス書院美少女文庫総解説」 全作品完全レビュー 美少女文庫の歴史総解説 あの作家にインタビュー ちなみに「新月お茶の会」は、SF・ミステリー・ファンタジーの創作・評論を中心とした同人誌「月猫通り」を発行するのが主な活動で、私もアニメ評論や映画評やイラストつきエッセイを書いたり(今とやっていることが変わらない)好き勝手なことをしましたが、100点以上もあるエロラノベを女子部員も巻き込んで総まくりとは、ほかにすることはないのか、後輩よ――などと、先に新聞に書いちゃった私が言えた義理じゃありません。 8月のコミックマーケットに行ったら、ホントに売っていました。NMTP(New Moon Tea Partyか?)名義の別冊として。表紙はおろか中表紙までカラー、美しいレイアウト、全作解説、作家名鑑、作家わかつきひかるさんインタビューなど、あきれかえる充実の内容で100ページ。なぜ本誌より手がこんでいる?! 入れあげっぷりが伝わりますが、濡れ場の描写で常套(じょうとう)的な古めかしい卑語が目立つ、という点はどこかで指摘して欲しかったです。どんな言葉かここでは具体的に書きませんけど。取材の折、フランス書院の編集者さんに力説してしまいましたが(大きなお世話ですね)ライトな文体に見合う新たな性表現を獲得してこそ真のエロラノベの完成ではないか――と、これも、全作を読んでいない私が言えた義理じゃありません。 今月末のコミケでも売るそうです。有明の東京ビッグサイト、スペースナンバーは、30日(日)西地区す―37a。ご興味のある方はどうぞ。 プロフィール
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