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企画特集1

【リポートみえ】

当直医の激務 限界  名張市民病院

2007年12月24日

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受付の前には、内科の外来初診の完全紹介制導入を知らせるポスターが張られている=名張市百合が丘西一番町の同市立病院で

◇◆内科外来を制限 医師不足の中、救急を優先◆◇

 内科医らの深刻な人手不足に悩む名張市立病院(名張市百合が丘西一番町)が、医師の負担軽減のため、内科外来の初診は紹介状を持った患者だけに制限する緊急措置を10月から続けている。同病院は市内で唯一、入院や手術が必要な2次救急に対応する、市民の健康を守る最後のとりで。「激務続きで内科医が次々と辞めれば病院が崩壊しかねない」と、今回の措置を始めたが、全国的な医師不足が背景にあり、根本的な解決は難しい。(前田智)

●月に6回以上
 午前9時からの日中勤務に続いて午後6時からも救急当直で病院に待機。当直時間中も患者が次々と来院する。休憩は合間の2時間程度でわずかな仮眠しか取れない。夜が明けて午前9時からは外来患者を診察。午後1時から内視鏡検査などをこなし、3時から入院患者を診察。35時間の連続勤務を終え、午後8時に帰宅。12月のある男性内科医(30代)の勤務状況だ。

 同病院は名張市の2次救急を一手に受け持っている。救急当直は年中無休で、内科医1人と外科医1人が治療に当たっている。亀井利克市長は「なんとしても救急は維持しないといけない」と強調する。だが、医師の勤務状況は限界寸前だ。

 同病院で1人の内科医が受け持つ夜間の救急当直は月に6・5回。同病院の調べでは、県内公立病院の平均は月2・5回で、それを大きく上回る過酷な状況だ。残業時間も月118時間に及ぶ。

 背景にはここ数年で内科医が2人辞めたことがある。04年には10人いたのが現在は8人に、救急と入院に対応できるのはさらに少ない6人になった。病院全体の医師数でも、04年の28人が現在は22人に。労働基準監督署からも「状況を改善するように」と指導を受けた。

 「紹介外来制」については、市広報などで周知に努めたことから、10月の外来受診者数は3045人になり、前年同月に比べて1157人減った。だが、当直回数を減らすまでにはなっていない。内科だけでなく、外科も1人が月に5回の当直をこなしている状況で余裕はなく、同病院の竹内謙二院長は「あと10人ぐらい医師がいてもいいのだが」と嘆く。

●減収、市に痛手
 一方、受診の制限は収入減にもつながる。名張市立病院の06年度の医業収益は約30億6千万円で、「紹介外来制」の導入で年間約5千万円の減収になると見込まれる。06年度末の累積赤字が約63億円の同病院にとって、収入源が減るのは大きな痛手だが、竹内院長は「医師1人が減れば年間1億数千万円の収入が減ることになる」と緊急措置の必要性を強調する。

 緊急措置以外の対策も決め手に欠けるのが現状だ。名張市は伊賀市にある二つの総合病院との救急輪番制を協議しているが、「患者が2倍になれば当直医師も増員が必要で、結局負担軽減にならない可能性がある」(竹内院長)と課題は多い。

 また、医師増員も困難な状況。亀井市長や竹内院長が三重大や関西地方の大学を訪問して医師派遣を要請するが、めどは立たず、インターネットでの医師募集もほとんど反応がないという。竹内院長は「救急維持の至上命題があり、大変苦悩している」と悩みを隠さない。

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