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大阪・茨木の下着投げ捨て:94年の女性強殺とDNA一致 府警、男に逮捕状

 ◇時効前1年で急展開

 大阪府茨木市の住宅街で女児用下着を投げ捨てたとして逮捕、起訴された会社員の押谷和夫被告(48)=同市彩都あさぎ3=のDNA型が、大阪市北区のホテルで1994年1月、女性(当時26歳)が殺された強盗殺人事件現場の遺留物のDNA型と一致したことが大阪府警捜査1課の調べで分かった。府警は、押谷被告が女性殺害に関与した疑いが強まったとして、強盗殺人容疑で逮捕状を取った。25日にも再逮捕する方針。2009年1月の公訴時効の成立が迫った強盗殺人事件は、解決に向け急展開することになった。

 調べでは、押谷被告は94年1月16日午後6時ごろ、大阪市北区の大阪マルビル内「大阪第一ホテル」客室で、会社員の女性の顔面などを鈍器で多数殴打。首を絞めて窒息死させ、手提げバッグを奪った疑いが持たれている。

 ホテルには16日午後2時10分ごろ、会社員風の男が予約なしでチェックインした。客室から複数の派遣型風俗店に電話、最後にかけた店でアルバイトをしていた女性が午後5時20分ごろに到着した。男はその約1時間後、チェックアウトせずに逃走。防犯ビデオから、男は身長約165センチのやせ形で、背広にコートを羽織り、チェックイン時にはなかった眼鏡をかけていた。

 押谷被告の自宅周辺では昨年6月以降、民家玄関先に女児用下着などが投げ捨てられる被害が100件以上発生。捜査の過程で、下着に付いた遺留物のDNA型が強殺現場の遺留物と一致した。府警は、下着投げ捨て事件で逮捕した押谷被告自身のDNA型との鑑定を進めていた。押谷被告は、強殺現場となったホテルの防犯カメラがとらえた男の映像にも酷似していた。

 ◇普段は「物静かな人」、突然「ぶっ殺す」--押谷被告

 94年の女性強盗殺人事件で、大阪府警が逮捕状を取った押谷和夫被告(48)=廃棄物処理法違反(不法投棄)罪で起訴。普段は「物静かな人」との評判だったが、突然、「ぶっ殺す」とすごむこともあったと証言する人もいる。強盗殺人事件は「下着投げ捨て」という愉快犯的事件とは全く異質なため、府警は今後、押谷被告を本格的に追及して詳しい動機の解明を進める。

 関係者によると、押谷被告は89年から大津市で家族5人で暮らしていた。礼儀正しく、自宅前の道路まで掃除するなどきれい好きだった。妻が95年9月に死去してからも、押谷被告は毎朝、子どもの朝食や弁当を用意して仕事に出かけていた。洗濯物のシャツのボタンをすべて留めて干すなど家事も熱心だったという。

 ところが数年後、下着を民家などに投げ捨てる奇行が始まる。押谷被告は「妻が亡くなって、何で自分だけがしんどい目にあうのかと、ストレスの矛先が世間に向かうようになった。捨てた下着を他人が見つけると嫌がるだろうと思うと楽しかった」と供述している。【隅俊之、小林慎】

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 ■解説

 ◇検索システム、照合に効果

 事件を急展開させたのは、警察庁が05年9月から運用を始めた「DNA型記録検索システム」だ。容疑者や遺留物のDNA型を登録し、新たに採取されたDNA型と照合する仕組みで、運用2年目は1年目に比べ一致件数が倍増している。

 システムには、登録済みの遺留物を、逮捕された容疑者のDNA型と照合する「余罪照会」▽容疑者のDNA型を、採取した遺留物と照合する「遺留照会」▽遺留物のDNA型を、採取した遺留物と照合する「同一犯行照会」などがある。今回は同一犯行照会だった。

 警察庁によると、今年11月末現在、登録済みの容疑者のDNA型は1万4949人分、遺留物のDNA型は9104件。運用1年目で、容疑者や余罪が判明したのは610事件。2年目は1132事件だった。警察庁は「殺人や性犯罪は、同一犯が広い地域で連続して起こす傾向が強い。これまでは各事件をつなぐことが困難だった」としている。

 時効が迫った事件の解決にDNA鑑定が役立った例では、88年に起きた北海道北見市の夫婦殺害事件で、現場の血痕のDNA型が、被害者宅に出入りした男の親族のDNA型と一致。時効成立約10カ月前に逮捕された。

毎日新聞 2007年12月25日 東京朝刊

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