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2007年12月25日

 日本人男性の平均寿命が八十歳に手が届くところまで来た。先ごろ公表された都道府県別数値では石川79・26、富山で79・07歳。女性は両県とも十位内で平均以上の長寿県である。が、どこまで伸びればよいものかと思わぬでもない

昨年、七十歳で急逝した作家久世光彦さん一周忌の追悼集「久世光彦の世界」(柏書房)を思い出す。巻頭は作詞家阿久悠さんが飾った。突然いなくなった友に「それはないよと言いたい」と書いたその人が、直後に同じ七十歳で亡くなっている

本紙「北風抄」執筆者だった久世さんは黒柳徹子さんのことを書いていた。自分が描かれたゲラを見た黒柳さんは、あまりの面白さに「うれしかった」と返事する間もない急死に驚き、寂しかったと記している

久世さんは前夜まで元気でいたのに朝になって起きてこなかったという。瀬戸内寂聴さんは「見事な定命の終わり方」と言った。寂聴さん八十五歳、ちょうど女性の平均だ。高齢だが「普通」の年齢で意気軒昂である

年の瀬に公表される平均寿命のデータに、ことしも逝った人々を思い出し、人それぞれに違う「定命」の無常を思うのである。


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