【東京】高校歴史教科書の「集団自決」(強制集団死)検定問題で、訂正申請の記述内容について文部科学省の教科書調査官と教科書出版社が、日本軍による「強制」の文言使用を避ける形で調整していることが21日、分かった。出版社はこの方針に従う見通しで、軍の強制を表す表現が大幅に後退する可能性が高くなった。
教科用図書検定調査審議会が訂正申請の審議過程で各社に示した「指針」で、「今後の調整は教科書調査官に委任する」と一任していたことも明らかになった。「指針」提示以降の文言調整は調査官が実権を握っており、恣意(しい)性が指摘された1年前の検定過程と変わらない構図が浮かび上がった。
関係者によると、検定審は軍の「強制」という文言そのものの使用を認めない方針のもよう。これを受け、教科書調査官は出版社に対し「日本軍」と「強制」の文言を直接結び付けないよう求めている。
ただ「指針」が「集団自決にはさまざまな背景・要因がある。軍の関与はその主要なもの(略)」と軍関与を認めていることから(1)手りゅう弾配布(2)皇民化教育―など「集団自決」が発生した背景事情に、「日本軍」の主語を用いることは認めているようだ。
検定審が各社に提示した指針は「複合的な背景、要因によって住民が集団自決に追い込まれていったととらえる視点に基づく記述が望ましい」と、日本軍の強制のみによって発生したものではないとの考え方を表明。「過度に単純化した表現で記述することは生徒の理解が十分とならない恐れがある」として背景・要因の詳述を求めている。
(12/22 9:43)