「強制」文言避け調整/「集団自決」修正
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題で、文部科学省の教科書調査官が教科書会社に、日本軍を主語にした「強制」や「強いた」という言葉を使わないよう求めていることが二十一日、分かった。これを受け、訂正申請した六社のほとんどが「強制」の文言を使わない形で申請をやり直しているもようだ。
関係者によると、主語が日本軍と明確には読み取れぬように「強制」の表現を残している会社もあるという。九月の県民大会を受け、十一月に訂正申請した各社の記述では、「日本軍の強制」を明記していたものが多かったが、大幅に後退した格好。「軍強制を削除した検定直後の記述に戻ってしまった」(関係者)との声も挙がっており、県民の反発は必至だ。
関係者によると教科書調査官は今月中旬、各社の担当者に「日本軍の主語と強制の述語が直接つながる表現は避けてほしい」との趣旨を伝達したという。教科用図書検定調査審議会(検定審)の意向を受けた対応とみられる。
検定審は訂正申請の記述が出そろった後の審議を経た今月四日、教科書調査官を通じて六社の担当者に「『集団自決』が起こった背景・要因について、過度に単純化した表現で記述することは、生徒の理解が十分にならない恐れがある」などとする「指針」を伝達。「集団自決」を軍だけが強制したと読み取れる記述を事実上、禁じていた。
この後、「日本軍の強制」と「集団自決」の背景を併記して再訂正申請した会社もあったが、今回の措置を受けて再々訂正申請したもようだ。
検定審は週明けにも日本史小委員会を開き、今回の方針を受けた記述を審議する。
[ことば]
集団自決検定問題 2008年度から使用される高校の日本史教科書の検定で、沖縄戦の集団自決に日本軍の強制があったとの記述に対し、教科書検定審議会は「沖縄戦の実態について誤解を与えるおそれがある表現」との検定意見を付けた。各教科書会社は意見に従い「強制」の記述を削除・修正し検定に合格。県内での大規模な抗議集会を受け、町村信孝官房長官が「工夫と努力と知恵があり得るのかもしれない」と発言した。