業界事情を考える U 2006.3.11
第二部 整体およびカイロプラクテイックを考える
第1章 総論
〔1〕カイロは独自の哲学を持つ
整体とカイロは、各団体や各学校によって、根本的に考え方や扱い方が異なります。 カイロを専門とする学校で学んだ方と、整体を専門とする学校でカイロも学んだ人とでは、カイロプラクティックに対する「こだわり」が見事に異なります。 整体から見れば、カイロはたくさんある療法の中の1つですが、カイロから見れば、カイロプラクティックがすべてであり、他の療法とは一緒にして欲しくない、という気持ちが強く働くようです。 カイロは 「イネイト・インテリジェンス」という独自のカイロ哲学を曲げることなく、サブラクセーションの概念を確立しました。そしてオステオパシーや近代医学などから多くのテクニックや理論を学び、取り入れて、今日のカイロプラクティックの世界基準をつくり上げました。
(注)イネイト・インテリジェンスとは、 薬を使わない病気の治療法。先天的な人体の自然回復力を使う。
〔2〕整体は融通無碍。排他性はない
整体には独自の哲学はありません。未法制の手技療法をおこなう者が、便宜上、整体という造語によって、自己の存在をアピールしてきました。 しかし 手の技でおこなう施術は何でも整体という概念で吸収できるという特徴をもっています。カイロのテクニックや理論をも問題なく取り入れることができます。 整体の立場では、手技療法であれば何でも取り入れOKです。 整体は融通無碍です。
(注)整体にも 「自然治癒力」があるが、これは東洋医学の概念であり、整体の独自性はない。
〔3〕整体やカイロ、その他の各種療法が開業できた理由「職業選択の自由」
医療分野といえども、基本的には基本的人権が保障する 職業選択の自由の範疇にあります。政治的な圧力の弱さや諸般の事情により、未だに法制化の恩恵を受けられない各種療法といえども職業選択の自由の一形態であり、これをもって、あたかも犯罪であるかのごとく非難されるいわれはありません。 その存在自体が違法として取り締まりの対象となるのではなく、具体的な刑事または民事事件が発生して裁判になった場合に、実際におこなった施術内容について適法行為の推定解釈が受けられないので、業務上の責任範囲が軽減されることがない、ということです。
〔4〕職業選択の自由との整合性「判例」
この裁判事例について、有名な最高裁判所の判例の主旨を紹介します。 「昭和35年1月17日・昭和29年(あ)第2990号事件」 「あんま師、はり師、きゅう師および柔道整復師法第12条が、何人も医業類似行為を業としてはならないと規定し、違反者を同14条が処罰するのは、人の健康に害を及ぼす虞れのある業務行為に限局するものと解しなければならない」。 この判決がその後の各裁判所の判断に及ぼす影響は極めて大きいものがあります。 「人の健康に有害の恐れがなければ、公共の福祉に反するものでなく、禁止処罰の対象にならない」という、この判例の本質論の影響により、今日の各種療法の現況があるといっても過言ではありません。
〔5〕職業選択の自由との整合性「判例の解釈」
この判例は次のことを示唆しています。あんまマッサ―ジ指圧師、はり師、きゅう師および柔道整復師法などは、医師法の立法趣旨とは明白に異なる制限された内容を持つ立法であり、他を排除できるほど強力な既得権を与えられていないこと。これらの医療類似行為の法律を楯として各種療法従事者の存在を一方的に排除しようとする論理や振舞いは 世間の同意や支持がなく同情が得られないこと。各種療法の存在そのものが捜査機関の取り締まりの対象となるものではなく具体的な事故が発生した場合に、その 施術内容の危険性を個別に吟味して判断しなければならないこと、などです。
〔6〕職業選択の自由との整合性「判例の既判力」
違憲立法審査権を持つ最高裁判所のこの判例の既判力は当時の厚生省はもちろんのこと国会や内閣の考え方をも拘束するものです。当然ながら、下級裁判所の同種の裁判の判断をも法的に拘束するものです。 この判例は、普遍性と妥当性を持った論旨の明白な本質論で構成された判例であり、今後とも変更の余地はない優れた判例といえます。 当時の厚生省は、最高裁判所のこの判例を受けて、行政上のあいまい部分を国民に明らかにするために、具体的な行政措置をとるべきであったにもかかわらず、未だに、各種療法については 法制化も禁止もできない状態に置いています。 医療先進の西欧諸国とは異なり、日本固有の社会制度の中で独自の発展を遂げてきた今の医療業界の利害を調整できると考える人は少ないと思います。しかし、これは結果的には主管行政の怠慢ということになります。医療業界の複雑な特殊事情をあれこれと考えあぐねていては何の進歩もありません。国民主体の新たな医療秩序の下に、 誰のための医療制度にしなければならないのか、 医療制度の基本コンセプトを再構築していく必要があります。このことを前提にして、国民の前に問題点を明らかにしながら、いくつものハ―ドルを乗り越える強い意思が必要です。
〔7〕各種療法は療法の定義と概念の統一が必要
各種療法の業界は、よく言えば百花繚乱、悪く言えばあまりにも雑多すぎて混沌とした同床異夢の状態にあります。それぞれが整体と名乗っている技法をみても独自性が強く共通項を見つけるのがとても大変です。未法制の手技療法が、整理上の都合で整体という便宜的な名前で括られてきたからです。 整体と一口に言っても、その中身は全く違うことがあり驚くことがあります。 理論的な概念の統一が必要と言われる所以です。
〔8〕各種療法とは
それでは各種療法の状況を見てみたいと思います。各種療法とは、法令により医療制度として認知されていない民間療法です。人間が本来的に持っている「自然治癒力」を手技(素手)や小道具、電子等の物理的手段により増進させて健康回復を図ることを目的としています。これらを総称して「療術」といいます。主として、経験による療法で、慢性的疾患の施術や健康保持・増進を目的とする需要が多いのが特徴です。その内容は300種以上も数えられていますが、昭和43年の厚生省の調査では、次の5種目に分類されています。 療術とは 1)手技療術―整体など 2)電気療術―低周波、高周波、超短波など 3)光線療術―赤外線、太陽光線、水銀灯、など 4)温熱療術―温灸治療器、温湿布器、電気摩擦など 5)刺激療術―磁気・物理療法、バイブレーションなど
人間の手による治療法は本能的な手当てを淵源とする技法です。世界中に数え切れないほど存在していることは誰でも容易に想像し理解できる客観的な事実です。世間の承認を勝ち得て医療制度の保護を受けている療法の共通性は、 原理、原則、理論を言葉で説明し納得させ得る医療体系を持っていることです。 あんまマッサ―ジ指圧師、はり師、きゅう師の場合は、これとは逆に、まず 視覚障害者の生業の保護ありきから始まり、徐々に体裁を整えて、今日のような専門学校教育のかたちになったものです。
〔9〕各種療法は慎重な姿勢が必要
各種療法が未法制の状態にあるということは、その施術行為により不幸な事故が発生した場合は、施術内容が妥当であったことを挙証し立証しなければならない責任があります。もし、証明できなければ、刑事上、民事上の責任を取らなければならないことは当然です。 しかし医師であろうと、医療類似行為の資格があろうとなかろうと医療事故が発生すれば当然のことながら賠償責任があります。しかし有資格者は、 医療行為の推定がなされて責任の範囲が軽減されます。 無資格者の場合は、軽減措置が受けられる事由がないので事故内容に相当する範囲の責任を負うことになります。
第2章 整体を考える
〔1〕整体は伝承の技法
この他にも古来より伝承されてきた数々の 「手当て法」があります。 旧幕藩体制の下でも伝承の技や秘伝の技として認められていたものがありましたが、この系譜の技は、いわゆる治療行為を目的とする技で、当時の発展途上のもとでは、医師の治療概念と紛らわしい要素をもっていました。この療法は、新設の西洋医学の医師の保護法益を意図的に強めようとしていた明治政府の方針に合わず、明治初期に法制化されることなく民間に伝承されてきました。整体はこの系譜の流れの中で生まれたものです。整体は、手で行う施術行為のうち、法律で保護された医療類似行為の技法を含まないもの、すなわち、公的な名前の無い手技療法をいいます。
〔2〕整体は便宜上の造語(内容はいろいろ)
整体という概念は日本でつくられた、いわゆる造語です。 「手の技により体の機能を整えて健康の回復や増進を図る」というような意味を持たせた概念です。この概念は使う人によってさまざまな異なるイメ―ジを持たせて語られています。看板が同じ整体と書かれていても、その中身は、掲げられている各整体院により異なります。 整体の概念を「検査法の有無」をキ―ワ―ドとして分類すれば、
A 検査法のない整体として、 1)日本古来の伝承の技 2)東洋系(中国、タイ国、その他) B 検査法のある整体として、 3)欧米系(カイロプラクティック・オステオパシ―等の技能や検査法の導入) C その他 4)本来的には手技療法とはいえないが、整体という名前で呼んでいるもの、
などに分類することができます。 当学院の整体は、日本の伝承の手技ばかりでなく、欧米、中国、その他諸外国のテクニックを融合した1) 2) 3)の複合テクニックです。
[手技テクニックの特徴]は次のとおりです。 1)絶対に危険でないこと (顧客に苦痛を与えないこと。熟練の技能のみ施術) 2)即効性があること (他の療法と差別化され、施術効果が明白であること) 3)技能の修得が容易であること (理論と技能が客観的に説明可能なこと)
第3章 カイロプラクテイックを考える
〔1〕カイロには世界基準がある
カイロプラクティックは、一つの独自性を持つ医療体系として世界水準が存在しており、世界的規模で認知されています。西洋医学でも東洋医学でもない独自の療法であると定義されています。その他の日本固有の各種療法と併用したり併記したりできるものではないことも当然といえます。 現段階においては、日本のカイロプラクティックは、わが国に固有の社会的な事情により未法制のまま放置されていますが、いずれは法制化に向かわざるをえないものと見られています。それゆえに、自主規制や基準をつくることは必然的なプログラムとなるのです。
〔2〕カイロの2つの基準(世界基準か日本独自の制度か?)
このカイロの問題は、@「カイロの基準を世界水準にするか(この立場ではアメリカのカイロ教育制度をそのまま日本に導入する立場を取るので、比較的高い水準の教育プログラムを修了しなければならず、自称カイロプラクターの人々は自然淘汰されていくことになりますが、社会的な信頼の基準は明確になります。この立場も世界水準に準じた再教育プログラムを実施していますが、応募資格には制限があります。)」または、A「日本の業界の特性を認め、正規のカイロ教育を受けていない自称カイロプラクターにも一定のプログラム教育を受けることを条件としてに資格を与える。この対象者は20,000〜30,000人。この立場でも合格基準は甘くはありません。)」という2つの論争を引き起こしました。
〔3〕カイロ基準の統一化は簡単ではない
この二つの論争は DC(Docter of chirooractic アメリカのカイロプラクティック専門大学を卒業し、各州の公認の開業資格を持つ専門医。死亡診断書を単独で書く資格がある。日本には50有余人いますが、日本では法律制度の違いから医療資格がない者として扱われる。)を中心とするカイロ業界で意見を取りまとめることができず、各団体がそれぞれ独自の基準により活動しています。今現時点では統一的な基準を作るための合意はできていません。しかし、それでもカイロには他の各種療法とは違う独自の基準と実現性があります。
〔4〕和製のカイロ
カイロにはもう一つの流れがあります。それは、和製カイロプラクターの存在です。日本では、大正時代の1916年、パーマースクールを卒業した川口三郎氏によってカイロプラクティックが紹介されて以来、アメリカ帰りのカイロプラクター達によって、各地で講習会が盛んに開かれて来ました。この講習会形式でのカイロプラクティックの普及の流れは今日でも続いており、各種療法家に取り入れられて普及してきた歴史があります。この流れは,今日の各種学校にも引き継がれて、正規のカイロプラクターから「自称カイロプラクター」と呼ばれる人々をたくさん輩出しています。
〔5〕和製カイロ・その模索過程
和製カイロプラクターを養成している各種学校の中には、単独で財団を設立できる実力と業界トップレベルの組織力を持つ比較的大きな勢力があり、独自の団体を形成して、カイロプラクティック師の資格を単独で認定しているところもあります。 この団体は、A整体学院を母体として「全国統一カイロプラクティック師免許試験制度」なるものを独自につくり、同学院の生徒はこの試験を免除する、との触れ込みで生徒募集の広告を全国誌の新聞に掲載していました。相変わらず過去の手法や発想のトレンドから脱皮できないことはとても残念です。 この団体に限らず、どの団体も「全国だの、日本だの、全日本だの、新日本だの」と、大きな名称を名乗る点では共通しています。 名称については、旧厚生省の指導により、将来的に全国規模の組織にする可能性を持たせるために大きな名前を使うようになったと聞いていますが、このことが世間の人々を誤認させる原因になっていることはとても残念です。
〔6〕和製カイロの自己主張
このような流れは、少数勢力でも発言力を持つDC(正規のカイロプラクター)主導の団体に対し、日本の特殊事情や独自性を主張する戦略であり、既成事実を積み上げて、和製カイロプラクターの排除の動きを牽制し、存在をアピールしているものと考えられます。 しかしこれは業界の多数をまとめる動きではなく、個別の団体の動きにすぎません。他校や他の団体からは「エゴではないか」とか、あるいは「大きいところは単独で意図した動きができるからいいな」と、うらやましがられています。この業界でも、リーダーシップがとれる規模の団体が育たず、複数の団体が乱立しています。
〔7〕米国のカイロプラクテイックは市民が深く関与して医療制度となった
カイロプラクテイック発祥の地である米国の例では、いわゆる西洋医学(アロパシ―)の医師 M.D.(Medical Docter)の他に、同じく手技療法の専門ドクタ―であると同時にMDの資格を併せ持つ D.O.(Docter of Osteopathy)や手技療法の専門ドクタ―であるが診断権を持つ D.C.(Docter of Ciropractic)の3種類のドクタ―が存在し、それぞれ得意とする分野で人々の健康回復のための努力をしています。このD.O.やD.C.の優れた手技療法を積極的に導入している整体院が増えてきて、和製オステオパシ―や和製カイロプラクテイックの施術を行ってています。これらの療法の特徴は、確立した独自の医療概念を持ち、 固有の検査法とこれに対応する多くの矯正テクニックをもっていることです。いわゆる、医療類似行為(はり・きゅう・マッサージ指圧)の手技とは本質的に異なる技能です。 オステオパシ―とカイロプラクティックを併せて マニュアル・メディスン (Manual Medicine)といいます。米国の医療事情を見れば、日本の医療の進むべき方向性や参考とすべき内容が見えてきます。
〔8〕米国のカイロプラクティック事情
カイロプラクティック療法の発生地である米国でも、法制化に至る道のりは大変厳しく険しいものでした。 カイロプラクティック法案が最初に州議会で可決承認されたのはオクラホマ州で1913年のことです。その後10年で20州に広がり、最後のルイジアナ州で可決されたのは1974年のことです。なんと全米での法制化に61年の歳月を費やしています。 なかでも、1922年のカリフォルニア州の有権者145万人が直接投票により、カイロの施術権を承認する州法が成立し、全米50州の承認に発展する契機となったことはアメリカらしい出来事でした。 1960年代までは、裁判闘争が頻発しました。特にアメリカ医師会が、意思をもって組織的な弾圧を繰り返したため、カイロプラクターは政府・医療関係者・学者から無視され、この中で職業として自立し生き残るための苦しい戦いを余儀なくされました。 カイロプラクティック療法の独自性を守るために、裁判において、無免許治療の罪で投獄か罰金かの選択を迫られたとき、軽い罰金刑を選択することなく、牢獄に入り 法廷闘争をつづけた多くのカイロプラクタ−がいました。 しかしカイロプラクティックは市民の支持を受けつづけ、次の2つの決定的な出来事を契機として、法制化の流れに乗ることができました。 その1つは、1) 1972年連邦政府の老人医療保険にカイロ療法が含まれる法案が成立したことにより、連邦政府が本格的なカイロプラクティックの調査研究を余儀なくされ、1975年に国立保健衛生研究所主催のカイロプラクティックの初のワ−クショップが開かれたことです。 その2つめは、2) 1975年に、 カイロプラクティック教育審議会(CCE)が連邦政府教育局の公認を受けたことにより、カイロプラクティック大学の教育レベルが定まり、各地のカイロプラクティック大学が次々に全米高等教育基準認定協議会傘下の地域認定協会の認定が受けられるようになったことです。 またアメリカ医師会の弾圧に終止符を打つ決定的な裁判の判決がありました。1976年にシカゴ連邦地裁が「アメリカ医師会の不当行為は 独占禁止法違反である」とする有罪判決を下しました。これを不服とするアメリカ医師会は控訴しましたが敗訴して1990年に有罪が確定しました。 以来、カイロプラクタ−は病院や医学者などの協力が得られるようになりました。 現在のアメリカのカイロプラクティック大学は専門大学であり、入学資格者は日本の大学の一般教育(教養課程2年)が終了している者に限られます。修業年限は4年です。約5000時間のカリキュラムを4年間で終了するように組まれていますが、授業科目は医学部とほとんど変りがありません。違いは外科学や薬理学などの代わりにカイロプラクティック診断学やテクニックがあることです。カイロプラクタ−は不足している科目を別途に履修すれば、医師試験も受験できます。 ただし、アメリカ人でも卒業できるのは2/3であり1/3は落第していますので、日本人留学生にはかなり厳しいものがあります。現在、日本で開業している日本人の卒業生は50〜60名程度といわれています。 D.C.資格は カイロプラクテイック教育審議会(CCE)認定大学17校の卒業生に与えられる称号です。欧米の公認カイロプラクティック大学の卒業生にも同様にD.C.の称号が与えられます。 カイロプラクタ−の開業資格はCCE認定大学の卒業生が受験できますが、各州の試験合格者の資格は医師と同様に 3年毎の資格更新制度となっています。 カイロプラクタ−は、医師と同等のプライマリー・ケア・プロバイダー(Primary care provider)であり、独自に患者の診断および治療にあたることができます。その治療システムの特徴は、投薬と手術をしないこと以外は、一般の開業医とあまり変わりありません。 まずカイロプラクティック検査を行います。もっと詳しいX線・CT・MRI・血液検査などの検査が必要な場合は病院や臨床検査施設に患者を送ります。病院などの医療施設はカイロプラクタ−の検査要請を拒むことができないと法律で定められています。 カイロプラクタ−は、これらの検査結果を参考にして診断を行います。昔のように脊椎の矯正だけでなく、患者の訴えている病状を治療するとともに、患者が健康を保てるように、姿勢の矯正、運動の指導、栄養学的な指導、生活指導などを行います。 米国のカイロプラクタ−の大多数は最大の組織、1935年設立のアメリカンカイロプラクティック協会(ACA)に所属しています。その他に、ICA(International Chiropractor's Association)という協会がありますが、ACAと合併するとの噂があります。 欧米だけでなく、すべてのカイロプラクティックに共通することは、カイロプラクティックは臨床の場、すなわち実際の 治療の現場で発展してきた学問です。 現代医学のM.D.から指摘があるように科学的研究において出遅れがあるのは否めません。カイロプラクタ−はこれをおろそかにしていた訳ではありませんが、この科学的研究に力点を置き、M.D.と共通の「ことば」で治療の概念が理解し合えるように各カイロ研究機関が頑張っています。
〔9〕世界のカイロプラクテイック事情
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〔10〕世界カイロプラクテイック連合
世界カイロプラクティック連合(World Federation of Ciropractic: WFC)は、将来の世界保健機関(WHO)への加入を前提とするカイロプラクティックの正式な世界組織として、1988年のシドニー大会で発足しました。 これは、前年の1987年にヨーロッパカイロプラクティック師連合の呼びかけで、世界20カ国のカイロプラクティックの指導者50人がロンドンに参集し「プレジデントサミット」が開催されましたが、この会議で、各国の情報交換や各国バラバラの活動を統一化し、国際基準をつくることを満場一致で可決したことを受け開催されたものです。 WFCは1997年、非政府組織として公式にWHOに加盟が認められました。WFCは、WHOの世界地域区分に準拠し、世界を「アフリカ、アジア、東地中海、ヨ-ロッパ、ラテンアメリカ、北アメリカ、太平洋」の7地域に分け、その地域代表者が運営のための評議会をつくっています。 WFCの目的は次のとおりです。 1) 他の国際機関との情報の交流 2) 世界中のカイロプラクティック教育の向上 3) 国際的な学術大会を通じた情報交流と研究奨励 4) 世界の正しい啓蒙活動の協力
WFCは、国内問題には特別の要請がない限り干渉することはありませんが、未公認地域への法的、免許資格などは協力を行います。 WFCの主たる目的は、1988年のWFCの決議「われわれはカイロプラクティックの発展と利益の確保のために、カイロプラクティック教育において CCE基準以下の教育は絶対に行わないようにしよう」という主張の中にあります。 WFCの加盟は、アメリカ、オ−ストラリアを除いて、 一カ国一団体が条件となっています。1990年の加盟国は36カ国ですが、、 日本は団体の一本化ができず未加盟の状態が続いています。しかし1997年、「WFCカイロプラクティック世界大会TOKYO」が日本で開催され、1800人を超える世界大会として反響を呼びました。 会員の資格は、最初は欧米のカイロプラクティック大学卒業生を基準にし、日本のような例外は、協議会で後日取り決めることとなっていますが、日本はACCE(オ−ストラリア地域カイロプラクティック教育審議会)の承認が必要となります。これを受けて日本の各カイロ団体は一定条件を満たす既存の開業者を対象に CSCプログラム(Chiropractic Standardization Course)を3年前より実施しています。このコ−スは、カイロプラクティック標準化コ−スと訳されていますが、国際水準としてのDC教育とは異なるものです。国際基準の教育がなされていない国で、これからカイロプラクティック教育を一定水準にまで高めるために行われる経過措置教育という意味です。
第4章 法制化の問題
〔1〕各種療法の法制化は可能か
ここで、整体・カイロの法制化の見通しを考えてみたいと思います。どんなに学問や技能を積んでも、国家資格制度がないかぎり、整体・カイロの療法者は無資格のままです。医療制度にない資格は取得することができません。とりあえず他の適当な資格を取って形だけ整え、うやむやにしながらやる、という便宜上の方法もありますが、このやり方は整体やカイロ療法の存在価値を失わせることになるので選択肢にする道ではありません。やはり、法制化の道を目指すことがこれからも選択するべき道です。
〔2〕法制化の手続き(議員立法)
法制化の道筋をつけるためには、まず、国会に法律案の提出をしなければなりません。この案の提出者は1) 政府(主管省庁は厚生労働省)または2) 政党(議員立法)です。議員立法の道は、実はかなり困難です。そもそも議員立法が極端に少ないのが日本政治の特徴です。米国の議員立法が90%もある現実と比較すれば一目瞭然ですが、日本の法律の議員立法の過去の成功率は10数パ―セントしかありません。しかも煩わしい手続きが多く、各所属政党の支持を取り付けなければならないことは当然のこと、議員立法を提出できるためには、与野党の意見を合意させるための運動が必要です。その前提として、医師会や柔道整復師会、また医療類似行為の各会の意見を求めたり、同意を取ることが必要となります。この道は険しすぎます。
〔3〕法制化の手続き(政府提出案)
残されたもうひとつの道、政府提出案の場合は、厚生労働省が「医療関係職種の新しい資格制度に関する法律」として国会に提出する方法です。この場合は、厚生労働省の中に「新たな医療関係職種の資格制度の在り方に関する検討会」で医療業界関係者の意見を聞き、その可否を検討することになります。この検討会が 法制化の基準にする条件は@医療の中で正当性が認められ永続すること。A法制化しないと本来の業務遂行に支障があること。B法制化に従事業者および関連業者に合意があることです。 過去の検討会例では、新たな職種は行政の簡素化に反するとか、新職種の乱造は医療の混乱を招くなどの反対意見が必ずあります。 また、医師や医療類似行為者が委員の多数を占める検討会で、多数が賛成意見を述べるなどということは期待できません。この場合の成功の可能性の前提条件は、厚生労働省に強い問題解決の意思があることです。
〔4〕法制化の請願運動をするには全国組織が必要
私達の業界には、業界の意思をまとめ上げる 全国組織の強い団体が存在していません。特に、整体の分野は困難です。業界を代表して厚生労働省の行政指導を受ける窓口さえありません。同床異夢の人ばかり多くて、法制化のために利己心を捨てて大同団結をしようとするエネルギ―がないのです。 カイロの分野は、世界水準があり、日本だけが特殊事情の中にあるので、 業界の合意ができれば新しい展望がひらけてくる可能性があります。 しかし、この合意は資格内容を欧米のように「診断権のある資格」とするのか、「国内の医療類似行為と横並びの資格」にするのか、簡単に決められない国内事情を抱えています。 「診断権のある資格」にする場合は保険診療の適用問題が浮上することになります。すでに破綻しかけている健康保険制度問題とのからみで医師会や柔道整復師会などの 既得権団体の同意が取れにくくなることは確実です。
カイロプラクティックの関連について下記の文献を参照しました。
日本カイロプラクティックアカデミー版 「カイロプラクティック概論1・2」
科学新聞社版 「カイロプラクティック事典(改定第二版)
エンタープライズ社 「カイロプラクティック総覧」
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