在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売却を巡り、詐欺罪で起訴された元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)被告(73)=拘置中=が設立した不動産会社が、東京都内に所有する不動産を、霊感商法による詐欺事件で捜索を受けた「神世界(しんせかい)」の運営するサロンに賃貸していたことが分かった。月数百万円に上る賃料を得ており、詐取疑惑のある資金の一部が元公安庁トップ側に流れる不可解な構図が浮かんだ。【永井大介、三木陽介】
この不動産会社は有限会社S・KO(東京都杉並区)。元長官が親族を取締役に据え、03年3月に設立した。
関係者によると、S・KOは東京都世田谷区野毛1の土地(約1070平方メートル)に、地下1階地上2階のプール付きの邸宅(延べ約1240平方メートル)と茶室(約21平方メートル)が建つ不動産を所有。05年11月、東京都渋谷区の不動産管理業者を介して、神世界の運営するヒーリング(癒やし)サロン「びびっととうきょう」に貸し、約2年間にわたり月数百万円の賃料を得ているという。
この不動産は04年ごろまで、朝鮮総連詐欺事件で起訴された元不動産会社社長、満井忠男被告(74)=拘置中=の居宅だった。
門柱には「Shinsekai Vivid Tokyo」(神世界 びびっととうきょう)と書かれた金色の表札がかかる。ここで働く男性は今年6月、取材に対し「カウンセラーとお茶を飲むなど、特定の会員にくつろいでもらうゲストハウス的施設。プールは会員の子供たちが使っている」と話した。
元長官の親族でS・KO取締役の女性は21日、賃料を得ている事実を認めたうえで「渋谷区の不動産管理業者に貸し、そこがびびっとに貸しているだけ。びびっととは関係ない」と霊感商法事件への関与を否定した。
◇吉田警視名義で「700万円借りた」--杉本社長会見
「びびっととうきょう青山サロン」を経営する有限会社「E2(イースクエア)」の杉本明枝社長(44)が23日夜、同サロンで記者会見し、吉田警視と金銭のやり取りをしていたことを認めた。警視の名義で金融機関から700万円を借りて月20万円ずつ返済した一方、仕事を手伝ってもらっていた謝礼として計240万円程度を振り込んだという。
警視が警察学校の教え子から集めた約430万円は「税金の穴埋めに使った」と述べたほか、県警の別の警察官2人もサロンが販売しているお守り「ライセンス」を持っているとした。詐欺容疑に「だまそうとやっているわけではない」と述べ、客と交わしているという「合意書」を示した。【鈴木一生】
毎日新聞 2007年12月24日 東京朝刊