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2007年12月24日

◎「観光庁」創設へ 外国人にこそ地方の魅力を

 来年秋に創設される「観光庁」に期待したいのは、海外に抜群の知名度がある東京や京 都観光を前面に打ち出すのではなく、あまり知られていない地方の観光資源に外国人旅行者の目を向けさせることだ。地方への誘客なくして、二〇一〇年までに日本を訪れる外国人旅行客を一千万人にするという政府目標は達成できないだろう。フランスのカンヌで開かれた欧米富裕層向けの旅行イベントで、金沢の文化を中心に「本物の和の魅力」を売り込んだように、地方と連携した魅力的なプランをふんだんにそろえる努力を求めたい。

 国際観光振興機構(JNTO)によると、北陸では、他の地域と比べて台湾と韓国から の旅行客が顕著に伸びている。来年六月に小松―台北便が就航する運びとなったこともこの傾向を後押しするだろう。観光庁としても、今後の伸びが予想される地方の国際路線をもっと活用する施策も重要である。

 観光庁は、国土交通省の観光政策課など六課を統合し百人程度の人員となる。省庁組織 の整理合理化が進む中で、「国の機関を大きくしてまで観光を振興する必要があるのか」との疑問も出ているだけに、目に見える実績が求められよう。

 JNTOの調査によると、二〇〇三年から始まった「ビジット・ジャパン・キャンペー ン」により、日本を訪れた外国人旅行者は順調に伸び、昨年初めて七百万人を突破した。地域別に見ると、観光客や商用客が多い大都市圏が大部分を占めるが、北陸、北海道、東北などの訪問率がわずかながらも上昇し、訪問先の地域分散傾向も見られる。

 とりわけアジア地域の観光客が好む温泉や自然景観がそろっている北陸は、今後の誘致 の効果が大いに期待できる。これからは、総花的な日本PRではなく、国と地域が一つになり、個別の地域の良さを前面に出したキャンペーンに軸足を置いて企画を提案したい。

 迎える地方の側が注意したいのは、観光客が地域にもたらす経済効果は、まだまだ底が 浅いということである。観光客が増えた、減ったと一喜一憂することなく、地域の経済や文化により一層磨きをかけ、その結果として観光客が増えれば、なお結構という姿勢を求めておきたい。

◎家電リサイクル 資源戦略の視点も重要

 環境省と経済産業省の合同審議会が、家電リサイクル法見直しの報告書をまとめた。政 府は来年の通常国会で法改正を行う予定であるが、量販店などによる不正処理の防止策だけでなく、廃家電に含まれる希少金属(レアメタル)の回収という資源戦略の面からも制度の強化が求められる。

 家電リサイクル法は家庭や事業所から排出されるエアコン、ブラウン管テレビ、洗濯機 、冷蔵庫の廃家電四品目のリサイクルを義務付けており、製品に使われている鉄やアルミニウム、銅などの金属の再資源化が大幅に進むようになった。それでも不法投棄は依然後を絶たず、中古品としての販売や再資源化目的で海外へ流出するものも多いという。

 審議会の報告書は、廃家電の不法投機防止策やリサイクル料金引き下げなどを提案して いる。消費者や環境保護の面からの見直しは当然としても、〇一年の法施行後に顕著な金属価格の高騰、世界的な獲得競争の激化という資源市場の変化にもっと目を向けたい。産業界が特に危機感を強めているのは、希少金属の確保である。コバルトやタングステン、インジウムといった希少金属は産業の「生命線」とも「アキレスけん」ともいわれ、ハイテク製品をはじめ超硬合金など日本が得意とする高度なものづくりに不可欠である。

 しかし、希少金属は文字通り産出量が少なく、中国やロシア、南アフリカなどに偏在し ている。需要の増大で価格が急騰している上、中国などは国家管理を強めている。希少金属はエネルギー資源と同様に安全保障上の国家戦略物資と認識され、いわゆる資源ナショナリズムが強まっているのである。

 家電が内蔵する電子基板などは種々の希少金属を含んでおり、「人工の鉱床」などとい われる。日本はそれを取り出す技術を持っているが、まだ金や銅などほどに回収は進んでいない。今回の家電リサイクル法見直し案で、薄型テレビなど二品目が対象に追加されたのは妥当である。希少金属の回収は国の資源戦略の一環として取り組む必要のある分野であり、その視点から家電や電子機器などのリサイクルの在り方をもっと総合的に考え、取り組みの強化と消費者の理解を促進したい。


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