学生時代の仲間と再会して無事を確かめあう機会が多いのも忘年会シーズンならではのこと。しばらく会っていない友の消息から、今の世相や社会の断面が浮かび上がってくる。
都市と地方の格差が話題に上るが、東京で数年前にIT関連企業を起こした同期生の年収は三千万円を超えたという。同じくIT関連企業を創業した後輩の年収はなんと一億円。景気回復の実感がない地方から見ると、かつての仲間がまるで別の国で暮らしているように思えてくる。
素直に喜べば良いのだが、酔うほどに「そんなに稼いでどうする」「いったい何に使うのか」との声が上がり、みんなでうなずいた。しかし心配はご無用。お金の使い道はいくらでもある。飲むもよし、遊ぶもよし。でも、それだけでは…と、またまたいらぬおせっかいを焼いてしまう。
二〇〇八年度与党税制改正大綱に、出身の自治体などへ寄付した場合に居住地の税負担が減る「ふるさと納税」制度が盛り込まれた。年間住民税額の一割を上限に五千円を超える部分の寄付額を税額控除する。家族構成にもよるが、納税額三十万円の人が三万五千円を寄付すると控除額は三万円となり、現行の寄付制度より改善される。
暮らしている自治体の行政経費を分担する住民税の趣旨からはそれるが、持てる者が持てる力に応じて社会に寄付する習慣がもっと広がればよいと思う。
そんな日が来たなら一億円を稼ぐ後輩はいくら寄付するだろうか。忘年会で自慢されるようになるのが楽しみだ。
(特別編集委員・佐々木善久)