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21世紀物理のおもちゃ箱
手作り全自動ブックスキャナ
See also digital camera version test-type.

はじめに

本をスキャン、あるいはコピーしているところを想像してほしい。 1ページづつめくっては機械のボタンを押ち、ただ待つ。 単純作業があなたの精神をすり減らせる。

これが自動化できたらなあ。

あなたの仕事は、 本をスキャナあるいはコピー機に伏せた状態からページが変わらないように 持ち上げたり、ページを1ページづつめくったり、人間にとっては何ともない動作だ。 そのじつ繊細な動作で、 これをロボットに真似させるのは難しい。しかし。

 本を消しゴムでこすったら1ページづつめくれる

 スキャナを逆さまにすることで伏せる作業を省略できる

この2つに気づいたとき、反実仮想は確信へと変わるのであった。

これが全自動ブックスキャナだ!

WMV Anime 6.6MB
動画

ついに完成した。 まずは動画を見てほしい。

こいつは本をセットしてスイッチを入れるだけで 後は指一本触れずに、 その本の全てのページを1ページづつめくっては スキャンしてくれる機械だ。

と書くと少々語弊があって、 片ページがA5以下のサイズで 厚さがランダウ力学くらいで ハードカバーの本の、 天秤が捩れない程度の真ん中のページ辺りを、 約1分ごとに1ページづつスキャンしてくれる、 動かすのには微妙な調律が必要な機械なんだが、 この条件を満たす場合は微笑ましくも驚くべき メカニズムで正確に1ページづつめくってくれるし、 あとの欠点は改良の余地がある。

レゴってすごい。

全体図

全体図
  1. シャトル/グライダー
  2. 天秤
  3. コントローラ
  4. X41 Tablet
  5. スキャナ
  6. ラック
  7. プリンタ

動作手順

各部品の説明

シャトル

シャトル正面写真シャトル投影写真

スキャナを囲むフレームと2つのモーターを持つ。 グライダーを吊り下げており、巻き上げるための糸巻きを備える。 4輪駆動で裏返したスキャナの平面部分を走行する。

グライダー

グライダー写真

シャトルから2本の糸で吊り下げられている。 2つのゴム車輪はページとの摩擦を増し、 重りを兼ねる5円玉はページの端を引っ掛ける。 本に応じた微調整が可能な構造である。

天秤

天秤上面写真天秤側面写真

2つの皿は二重梃子により水平に保たれる。 右の皿にスキャンしたい本を広げて載せる。 左の皿にはカウンターウェイトを置く。 左の腕にはモーターと糸巻きが組み込まれていて、 糸の反対側は固定されている。この糸を巻き取る/繰り延べることで 天秤を操作する。 また、小型USBマウスが組み込まれており、右の腕が下がるとクリックされる ようになっている。 これでパソコンから天秤の傾きを検出し、スキャナを動かす。

コントローラ

わりと旧型。レゴの3つのモーターを制御できる。 しかし、定められた動作を繰り返すだけで、判断などは できない。

X41 Tablet Computer

おらがノート。

タブレット機能をまったく利用していないので 他のPCでも代用可能。 マウスクリックに反応してスキャナを動かしている。 といっても、僕はドライバなんてよう書かんので、 GetAsyncKeyStateとSendKeysをつかって野暮なことを している。 今回スキャナの制御に使ったプログラムは、こちら

スキャナ

使っているスキャナは EPSON GT-7200U。

逆さまにしてつかうと部品の配置が変わるため、 スキャンすると数回に1度つっかえる。 つっかえるところを探し出してレゴ部品を貼り付け平らにし、 逆さまでも動くように改造してある。

説明書には、逆さまにして使うなとすら書いてない。 もちろん、逆さまにして使う物ではない。 逆さまにして使うなど、想定外なのである。

しかし、傾いても使えるようにとの設計上の配慮だろうか、 簡単な改造で逆さまにしても使えるようにできた。 設計者さまさまである。

もちろん、分解・改造は壊れるリスクと隣りあわせなので やる場合は注意深く観察してから。

ラック

家にあった適当な車輪つきラックを転用。 おかげで自動スキャナ装置全体が動かせる。掃除の邪魔にならない。 錆びていたので、セロテープをはって摩擦を下げてあったりする。 こいつはレゴでつくると強度と手持ちのブロックが足りない。 まあ、台の役割を果たすものなら何でもいいので、 本を積むなり木で作るなり。

プリンタ

天秤を操作する糸の固定端。 縁の下の力持ち的役割。


設計図

全自動ブックスキャナの設計図は、 LeoCAD により作られました。

まめちしき

部品はレゴの8485モデルからおもに 使用しています。 しかし、全自動ブックスキャナを作るために8485を手に入れるのはおすすめできません。 旧式ですし。

今ならLEGO Mindstormを使うのがいいと思います。

スキャナーの取り込み面のガラスに傷がつくと取り返しがつきません。 念のため接触部分にティッシュを張ったりしてスキャナーを保護しています。 まあレゴはプラスチックなんで、硬度上傷はつかないはず。

天秤の可動範囲がかなり狭くてページをめくる動作が難しいです。 うちはブロックが不足気味なんでこのサイズになってますが、 天秤の腕を長くするといいでしょう。

Shuttleブラウザで見るダウンロード
Gliderブラウザで見るダウンロード
Balanceブラウザで見るダウンロード

他の自作自動スキャナ

LEGOで自動スキャンマシンを自作する
うちのより高速にスキャンできて便利だぞ。 部品も Mindstorm セットのを使っていて応用がきく。


感想

たった3軸のおもちゃのモーターと、普通のスキャナだけで 全自動スキャナが作れるなんて、不可能だと思っていた どころか、そんな可能性は考えてもみなかった。

作り始めるとき、絶対動くという確信があった。 試行錯誤し、子供のころから親しんだセロテープや凧糸なんて 材料も巻き込み、機械の動きを進歩させながら、 確信は感動に変わっていった。

「特別な材料や高価な部品なんていらない。 手元にあるものに、想像力と工夫の魔法をかけてごらん。」

BASICインタプリタから繰り返し聞いた言葉を、 完成した機体が語っていた。

設計図について

LEGOには子供共通語で書かれた設計図がついているのですが、 この全自動ブックスキャナの設計図も公開したいと 考えています。

しかし、僕の環境に合わせたギリギリテクノロジーで 組み立てているので、これをそのまま組み立てても 役に立たない恐れがあります。 お持ちのスキャナとレゴセットに合わせて貴方が貴方の 全自動ブックスキャナを組み立てられるときに、 このページが参考になれば幸いです。

ライセンス

Copyright (C) MURANUSHI Takayuki, 14 Feb, 2006

この機械はGPLライセンスにもとづいて公開されます。 「プログラム」は、組み立てられた機械を、 「ソースコード」は、LEGOの組み立て説明書に準ずる形式のものを 指すこととします。

また、LEGOモデルは分解による構造把握・再組み立てが容易なことから、 接着等の分解を困難にする加工が行われない限り、 あるいは、接着等の分解を困難にする加工が行われた部分について、 LEGOの組み立て説明書に準ずる形式の説明が提供される限り、 「プログラム」そのものも「ソースコード」 として扱うことにします。

LEGO以外の部品が「プログラム」に使われるときは、その部品または その代用品が、 一般人が手ごろな価格で購入できる、または 身近なものを使って作れるものであり、その入手方法が 「ソースコード」に付記されていることを、 「改変を加える上で好ましいとされる形式」の要件とします。

おことわり

著作権で保護された書籍等のコンテンツを、 権利者の承諾を得ず私的に楽しむ範疇を超えて 複製する事等は法律で禁止されています。 このブックスキャナをそういった目的に使用しないでください。 また、電子機器の分解・改造には感電等の危険や 製品を破壊してしまうリスク等があります。 当ページの情報を合法的・道徳的に使用されることをお勧めしますが、 当ページの情報をもとづく行為の合法性・道徳性について 私は一切の責任を負わないこと、 また、当ページの情報を使用することによって、あるいは使用できないことによって 発生した損失や損害に対して私は責任を負わないことを お断りします。


あー、つまり:

設計図GPLで公開したから何かをするなってわけじゃなくて。
製品化となると、もっと頑丈で、動作が確実、いろんなサイズの本を扱えるものになるだろうから、 それは嬉しい。
実際製品はあるけど高価すぎ・・・

レゴ機械にだって、 異常な力がかかって部品が外れても、戻せば直るという頑丈さがある。
ハードウェアを改造して確実性を上げることもできるし、ソフトウェア的なフォローも効く。
本にあわせて機械を素早くリサイズできるという汎用性がある。

安心して製品を買うという選択肢と平行して、 自分で組み立て、ワザを有志と交換しながら改良していくという選択肢が生きのびてほしい。 だから、GPLと言ってみた。

レゴって、わくわく度だろ?

おことわりなんて書くだけかっこ悪いんだが、 まあ、念のため。

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