富山県射水(いみず)市の射水市民病院で人工呼吸器を外された末期患者7人が死亡した問題で、呼吸器外しの際の7人の容体が明らかになったが、この問題の発覚は、終末期医療の延命治療中止について是非を議論する大きなきっかけになった。それまで、治療の継続・中止の明確な指針がなく、現在、その方向性を示そうとする動きが活発化している。
千葉県救急医療センター(千葉市)は10月、06年10月からの半年間に、末期状態の患者5人の呼吸器を外すなど延命を中止していたと発表した。刑事責任が問われる可能性もあったが、センターは、家族の同意や複数医師の合議など、中止に関する原則を内規として明文化しており「5人のケースでは内規は守られていた。救急医療の現場からの問題提起として発表した」と説明する。
厚生労働省は5月、終末期の治療中止について、治療方針を決める手続きに関する指針を公表。治療の開始・不開始(見送り)や、中止を決める際は複数の職種による「医療・ケアチーム」が慎重に判断するとし、患者の意思が確認できる場合は十分に協議して合意内容を文書で残すことを定めた。日本救急医学会も10月、救急医療を対象にした指針を決めた。
射水市民病院の場合、それらの指針に照らすと、医師が独断で判断するなど明らかに逸脱している面がある。しかし、最近の医学界や医療現場の新たな動きに加え、旭川地検と和歌山地検が呼吸器外しで相次いで立件を見送ったように、終末期患者の死と呼吸器外しとの因果関係を立証することは極めて難しい。それだけに、今回の鑑定結果の意味は極めて大きい。
毎日新聞 2007年12月23日 2時30分