2007年12月23日 [日]
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岩波訴訟・最終弁論 原告「無理心中」と認識

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岩波訴訟・最終弁論 原告「無理心中」と認識

 沖縄戦中、座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)をめぐり、日本軍の戦隊長が住民に自決を命じたとする本の記述は誤りで名誉を傷つけられたとして、元戦隊長らが岩波書店と「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎氏を相手に出版差し止めなどを求めている訴訟の第12回口頭弁論が21日午後、大阪地裁(深見敏正裁判長)で行われ、原告、被告双方の代理人がこれまでの主張をまとめた意見陳述を行って結審した。判決は来年3月28日に言い渡されることが決まった。
 原告側代理人は意見陳述で「軍命で家族が殺せるのか。集団自決の要因は家族愛であり、無理心中としての集団自決という理解がもっとも得心できる」との認識を述べた。さらに両島での「集団自決」が起きた背景として「追いつめられた住民のパニック、群集心理」「米軍への恐怖」などを挙げた。
 原告で座間味島の元戦隊長の梅澤裕氏(91)と渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(74)も出廷した。
 原告側はこれまで隊長の直接命令はないと主張し(1)座間味島では当時の村助役が住民に自決を命じた(2)渡嘉敷島の「隊長命令説」は戦後村長が軍に責任を負わせるために主張(3)「隊長命令説」は住民が戦後補償を得るための方便(4)激しい戦闘に追いつめられた住民が自然な発意で自決した―などと主張してきた。同書などの記述で名誉が傷つけられているとして、被告に対し出版差し止めと全国紙への謝罪文掲載、損害賠償を求めてきた。
 被告・岩波側は住民の新証言などから両島での「集団自決」に隊長命令があったことは明らかだと述べた。同書などは公益を図る目的にかない、隊長命令は真実だとして名誉棄損は成立しないと主張し請求棄却を求めた。岩波側はこれまで、自決のため住民に軍の貴重な武器である手りゅう弾が配られたこと自体も自決命令だとし、さらに「集団自決」が起きた背景に皇民化教育や日本軍の住民へのスパイ視などがあることも強調にしてきた。

(12/21 16:02)

 

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