◎北陸で地震調査 「空白地域」での大きな一歩
北陸で起きる地震の発生メカニズム解明に大きな進展があるかもしれない。二〇〇八年
度政府予算の財務省原案で、能登半島地震や中越沖地震を起こしたとみられる「ひずみ集中帯」の調査研究に、十二億円が内示された。北陸は、地震に関する大規模調査が一度も行われていない「空白地域」だけに、貴重なデータが得られるだろう。今後予想される大型地震はどの程度の規模で、どれくらいの確率で起きるのか、調査結果が今から気にかかる。
新潟県を含めた北陸地方では、この三年間で、マグニチュード(M)6・8の新潟県中
越地震、M6・9の能登半島地震、M6・8の中越沖地震が立て続けに起きた。一九六四年の新潟地震(M7・5)以降、それほど大きな地震が起きていない地域で、なぜ大型地震が集中したのか。そのなぞに迫るのが今回の調査・研究の主な目的である。
衛星利用測位システム(GPS)の発達により、新潟から神戸にかけての帯状の地域で
、ひずみ集中帯と呼ばれる危険地帯の存在がクローズアップされてきた。国土地理院の研究員によると、この地域の地層は、東西からのプレートの圧力で年間二センチ程度変形しているという。
地層のひずみは、地震エネルギーそのものである。日本を東西に分ける大断層といえば
、これまで糸魚川―静岡構造線と考えられてきたが、GPSの調査では、ほとんど動きが見られなかった。そのため、北米プレートとユーラシアプレートの境界線は、糸魚川―静岡間ではなく、新潟―神戸間のひずみ集中帯にあるとする研究に注目が集まっている。ひずみ集中帯の西端の神戸で阪神淡路大震災が発生し、東側の新潟で中越地震などが起きたというのである。ひずみ集中帯の危険性が理解できるだろう。
これまで国はM7以上の地震を起こす可能性のある九十八の活断層を調査してきた。し
かし、石川、富山両県の南側を通って神戸に至るひずみ集中帯は、見落とされてきたのである。北陸では大きな地震は起きないという「安全神話」は、相次ぐ地震で打ち砕かれたが、私たちが思っているより、危険な地域なのかもしれない。五年がかりの調査でどんな発見があるのか、恐ろしくもある。
◎もろくなった安全 「偽」に振り回された一年
「生活安心プロジェクト」閣僚会議で、消費者保護のための緊急対策が決まった。食品
偽装事件が相次いだことを受け、農林水産省に「食品表示Gメン」を設置するなどが柱であり、その必要経費を来年度予算に計上し、次期通常国会で関連法の成立を目指すことになったが、「偽」などに振り回された一年だったことが集約されている。
緊急対策の要点が「食べる」「働く」「作る」「守る」「暮らす」のキーワードで要領
よくまとめられている。が、問題が多岐にわたって多く、安心して送れる生活を保障する環境がもろくなっていることを映しているようだ。福田政権が「安心と安全」「自立と共生」をキャッチフレーズにしているのもむべなるかな、というところだ。
「食べる」では年明け早々、大手菓子メーカーの工場が、消費期限を過ぎた牛乳を使っ
たシュークリームを製造、出荷した問題が発覚したのを皮切りに、牛肉ミンチに豚肉を混ぜたごまかし、賞味期限の切れた菓子の販売、牛肉などの産地偽装表示等々が続いた。老舗まで手を染めていたため、消費者をあざむく「もうけ主義」の広がりに驚かされた。
「働く」では有期契約労働者の正規社員登用に積極的な事業主に奨励金を出すことや、
フリーターの常用雇用化など、偽とは無関係のものもあるが、安心と安全の確立に必要な施策だ。「作る」では欠陥商品のリコールの徹底などが盛り込まれ、消費者からインターネットを通じて寄せられた情報を蓄積する「事故情報データバンク」や、首相の諮問機関である国民生活審議会に有識者から成る「重大事故オンブズマン」が新設される。「守る」と「暮らす」では悪徳商法対策、救急移送患者がたらい回しにされないための受け入れ態勢の充実、医療事故を中立的な調査機関で検討する医療事故調査委員会の設置などがうたわれた。
小泉政権時代の「民間にできることは民間にまかせて、小さな政府へ」というかけ声が
だんだん小さくなったのも、よからぬことが増え、小さな政府は危ないというような考えが出てきたからだろうか。国民がしっかりしないと小さな政府も絵に描いたモチになりそうだ。