出産時の大量出血で死亡したのは医師らが適切な処置を怠ったためとして、死亡した女性(当時39歳)の長男らが福岡市の医療法人「愛育会渡辺産婦人科クリニック」に約4950万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁は21日、約3360万円の支払いを命じた。永松健幹裁判長は「高度医療機関へ早急に転送していれば救急救命治療を受けられ、生存の可能性があった」とした。
判決によると女性は妊娠中の03年1月、出血があり同クリニック経営の診療所に搬送され、緊急の帝王切開で男児を出産した。しかし産前から産後に多量の出血があり、治療を続けたが呼び掛けに応じなくなった。その日夕に転送先の病院で腎不全などに陥り、死亡した。
クリニック側は「早期に転院しても死亡回避は困難」と主張したが、永松裁判長は「女性は出産後の診察で出血性ショックに陥っており、早急に高度医療機関に転送する義務があった」と過失を認定。「早期に高度医療機関で治療を受けていれば、生存した可能性が高かった」とした。
同クリニックは「担当者が不在でコメントできない」としている。【石川淳一】
毎日新聞 2007年12月22日 西部朝刊