2005/08/05(金)放送

凶器と化す高速道路の落下物
先月19日、会社員の男性が高速道路を走行中、落下物の鉄パイプが頭に直撃し、亡くなるという事故がありました。群馬県では、高速道路上に落ちていた脚立を通報しようとして追突され、4人が死傷する事故もありました。偶然に偶然が重なった悲劇の事故。しかし、落下物の危険性は我々の身近に潜んでいます。

■人命を奪う事故に繋がる





「落下物の現場到着。これより、排除開始!」
これは、高速道路の落下物を排除する様子。この落下物が、考えられないような事故を引き起こしました。





【被害者の妻】
「本当に、ありえないような事故。『こういうことが、どうして起こるんだろう』というくらい、不思議な事故・・・」
被害者の妻が語った『不思議な事故』とは・・・。

7月19日、西名阪自動車道。被害者の反対車線を走ってきた大型トレーラーが、プレハブ建設用の鉄パイプを落下させます。そのおよそ5分後、走ってきた大型保冷車が鉄パイプを跳ね上げ、反対車線を走行中の被害者の車を直撃したのです。


【被害者の妻】
「『犯人』と言っていいのかどうかわからないけど、その方は、ご自分が落としたことすら解ってない可能性があると。そうなると、どうしようもないですよね。罪の意識なんてもちろんないですよね。わからないから・・・」
「落とした認識がない」というトレーラーの運転手。事故の悲劇は、まさにここにあります。




今回のように、落下物が原因で人身事故に至ることは、極めて稀なケース。しかし、一歩間違えれば大きな事故に繋がるのです。
【高速道路を利用するドライバーは】
「たくさん積んでいる車の後ろは、絶対避けるようにしています」
「車のシートとか、タイヤがパンクした後の破片。ヒヤッとします」
「きょうも、近畿道に大きなシートが落ちてたし・・・」



高速道路は、文字通り「高速」で走行する道路。予期せぬものが予期せぬタイミングで落下した時、我々は対処できずに大きな事故に巻き込まれます。落し物≠ヘ、不注意では済まされない大惨事を引き起こしかねないのです。


こちらは実際にあった落下物。ビニールシートや大きなアルミ缶など。かなりのスピードで走っていますので、すべて凶器になる可能性があります。







日本道路公団の調べでは、関西圏だけで年間およそ5万6000件の落下物があります。1日に直すと、およそ150件。私たちは、常に落下物の危険にさらされています。


日本道路公団も、落下物には24時間体制で対応しています。定期巡回に同行しました。
「前方に、落下物発見!左後方よし!」




およそ1時間半の巡回でしたが、次から次へと落下物が回収されていきます。高速で走り去る車をかいくぐりながら、まさに命がけ≠ナす。1度の巡回でも、これだけのものが回収されました。

【日本道路公団交通管理課 二宮五郎隊長】
「日によって違いますが、25〜30件くらいは回収します。多くの通行車がある場合は、避けられないので、後続車が跳ね上げる、あるいは乗り上げる。それによって、2重3重の事故に発展する場合があります」





高速道路の落下物で最も多いのは、この3つ。荷物を覆う布類や、木材。パンクしたタイヤなどの自動車部品。単なる布、単なる木材が、高速道路上では全く違うものに変わります。
【日本道路公団交通管理課 二宮五郎隊長】
「それが、凶器になる。人命まで奪う事故に繋がるということで、絶対にマナーを守っていただきたい」


高速であるが故に、凶器≠ニ化す落下物。ドライバーの認識の甘さが人の命を奪うという最悪の結果を生み出すのです。




落下物の中には、冷蔵庫や簡易トイレなど、考えられないようなものまであるそうです。『安全の再確認』というドライバーの意識が、落下物の事故を防ぎます。