スワップ派のポートフォリオ

 

 

 

 

 

 ポートフォリオ運用によって、スワップ派(外国為替証拠金取引)のリスクを減らすことができます。スワップ派はその手法上、長期間の運用になるため、証拠金取引の高リスクを長期間とらなければなりません。そのリスクを少しでも減らすために、ポートフォリオ運用を行うべきです。

 

 

◇ポートフォリオ理論

 ポートフォリオ理論はノーベル経済学賞を受賞した「ハリー・マーコビッツ」が基礎を築きました。この理論の要点を簡単にいうと、「一つの銘柄に全額投資するよりも、複数の銘柄に分散投資したほうが、リスクが低くなる。」というものです。

 

 

◇ポートフォリオの優位性1

 まずはポートフォリオ運用によって、得られる優位性を確認します。分散投資によってなにが違ってくるのか?  下記に例を載せてみました。

 雨具の企業観光の企業に1万円投資するとします。どちらかに投資する場合分散投資する場合を比べます。

※天候による両社の収益

   雨具の企業  観光の企業
晴れの日   −25%     50%
雨の日     50%  −25%


 上記の企業は両社とも天候に収益が左右されます。晴れの日は観光は儲かりますが、雨具は儲かりません。雨の日は逆です。

どちらかの企業だけに投資する場合

条件1 
1年間で晴れの日と雨の日が半分だった場合はどうなるでしょうか。
 
この場合、どちらに投資してもリターンは12.5%になります。1年の半分は+50%(2,500円)、もう半分は−25%(−1,250円)、合算で12.5%(1,250円)

条件2
晴れの日が1年間続き、翌年雨の日が1年間続いたらどうなるでしょうか。
観光の企業に投資した場合、最初の1年目は+50%(5,000円)。2年目は−25%(−2,500円)となります。通算すると2,500円。1年あたりでは12.5%になります。(雨具の場合も逆になるだけです。) 
 
 ここで、ポートフォリオ運用を活用した場合を考えてみます。1万円をどちらかに投資するのではなく、5千円づつ、両社に投資するとします。

ポートフォリオ運用で分散投資した場合


条件1
1年間で晴れの日と雨の日が半分だった場合。
 
当然12.5%になります。(1年の半分は+50%で2,500円(観光1,250+雨具1,250)もう半分は−25%で-1,250円(観光-625 雨具-625) 合算で12.5%(1,250円)

条件2
晴れの日が1年間続き、翌年雨の日が1年間続いた場合。
1年目、2年目ともに12.5%になります。 (1年目は観光5,000×50%=2,500円 + 雨具5,000×-25%=-1,250円 合算で12.5%(1,250円) 2年目は観光と雨具が逆になるだけで同じく12.5%)

 どちらの手法で運用してもリターンは12.5%になることがわかります。

 

 

◇ポートフォリオの優位性2

 上記の例ではポートフォリオによる分散投資の優位性がはっきりとわかりませんね。どちらの手法で投資しても結局、12.5%のリターンになります。しかし、ここで下記条件を加えると、ポートフォリオの優位性がよくわかります。

条件3 
「投資資金は会社の資金であり、社長命令で1年間で最低5%のリターンをあげなければならない

 この条件3を全てクリアできるのは、ポートフォリオで運用したときだけです。

どちらかの企業だけに投資する場合」は、
条件1(相場が安定している場合)ではクリアできます。
条件2(相場が一方方向に動いた場合)では2年目に会社をクビになります。

ポートフォリオ運用で分散投資した場合
条件1(相場が安定している場合)ではクリアできます。
条件2(相場が一方方向に動いた場合)でも、
1年目、2年目ともに条件3をクリアできます。
(1年間雨が降っても、観光と雨具に両方投資していれば、観光がだめでも、雨具が稼いでくれる)

 このように、ポートフォリオ運用(分散投資)による優位性とは、相場が一方方向に動いたときでも、安定的な収益をあげる(リスクを低下させる)ことができることです。
 
条件3では「1年間に最低5%のリターン」でしたが、これを外国為替証拠金取引で投資するスワップ派に言い換えると、「運用期間中、強制ロスカットになるほど負けないこと」又は「一方方向に相場が動いても、強制ロスカットにならない損失に抑えること」といえるでしょう。スワップ派は、この条件をクリアするためにもポートフォリオ運用を活用すべきです。 

 

 

◇ポートフォリオが効果を発揮するためには

 上記例では観光と雨具の企業に分散投資をすることにより、リスクを低下させる効果がありました。しかし、もし観光の企業とその子会社の企業に分散投資をした場合、同様にリスクを低下させる効果があるでしょうか。答えは、「ほとんど効果がない」です。雨の日に観光が駄目なときは、同様にその子会社も駄目でしょう。ポートフォリオは正反対の性質を持つものを組み合わせることによりリスクを軽減させています。同じ性質のものだけ組み合わせたのでは、リスク軽減の意味は薄れてしまいます。
 そこで、2つのものが、どのような関係の強さをもっているのかを表すのに、相関係数を使用します。

 

 

◇相関係数

 相関係数は+1から−1までの値で表され、+1に近いほど同じ方向に動くことを表します。逆に−1に近いほど逆の方向に動くことを表します。

1.相関係数が+1のものを順・正相関といいます。

例 身長と体重の数値    

 身長が高くなるにつれて、体重も増していきます。多少個人差はありますが、大抵は身長の数値が上がれば体重の数値も上がります。身長と体重の数値は順相関であるといえます。


2.相関係数が0のものを無相関といいます。

例 社長の身長と会社の利益

 社長の身長と会社の利益は全く関係がありません。複数ある会社を社長の身長順に並べても、利益はバラバラでしょう。社長の身長と会社の利益は無相関であるといえます。


3.相関係数が−1のものを逆・負相関といいます。

例 観光・雨具企業の利益

 優位性1で例題にあげたような、観光と雨具企業の利益は、天気によって全く逆に動きます。このような関係は逆相関であるといえます。


 仮に、会社Aと会社Bの株価の相関係数が+0.8 会社Aと会社Cの株価の相関係数が−0.2ならば、会社Aと会社Cに分散投資したほうが、リスクは低くなります。     

 

 

◇相関係数とリスク分散効果

 ノーベル経済学賞を受賞した「ハリー・マーコビッツ」のすばらしい功績の一つに「リスク分散効果を得るには、必ずしもマイナス相関が必要なわけではない」と示したことがあげられます。つまり、完全な順相関でない限り、なにかしらのリスク分散効果があるということです。それを要約したのが下記の表です。

 相関係数  リスク分散効果

+1.0

効果なし 

+0.5

 穏やかなリスク低下
 かなりのリスク低下
−0.5  ほとんどのリスクが消滅

−1

 すべてのリスクが消滅

この表をみると、無相関(0)であれば、かなりの効果があることが判ります。

 

 

◇各通貨同士の相関係数

 各通貨同士の相関係数を下記の表にまとめてみました。測定期間を5年、3年、1年とし、別表にしました。
 ユーロ/アイスランド・クローナ
ユーロ/フォリント、ユーロ/ランドはスワップ狙いの場合、ショート(売り)ポジションをとります。そのため、ロング(買い)ポジションの通貨との相関は、通常とは逆に、高いほうがリスク分散効果があります。ショートとロングが重なることろは赤くしました。



測定期間5年表を見た感想。
 豪ドル/円とNZドル/円の相関は0.94と高く、リスク分散効果がないことがわかります。ユーロ/円とポンド/円も共に上昇してきたため、相関が高くなっています。相対的に弱い値動きとなったドル/円とは相関が低くなっているペアが多いですね。
 
 
 

          
測定期間3年表を見た感想。
  3年表だとNZドルの暴落がより反映して、豪ドルとの相関が落ちていますね。このスパンで区切ると、順相関であるペアが多く、一方通行の相場だったことがわかります。5年表では相関が低かったドル/円も、このスパンでは100円台から120円台までの上昇局面ということもあり、高くなっています。この表を見ると、この期間にランドが下落したことがよくわかりますね。



 

測定期間1年表を見た感想。
 期間が1年間と短いとはいえ、ここまでどのペアも相関が高いと、ポートフォリオによるリスク分散効果もあまり望めませんね。上昇するときはみんな上昇し、下落するときは全て下がると。まあ、それでも1つのペアに全てを投資するよりはましでしょうけど。

   なお、三菱商事フューチャーズ証券の「売買データライブラリー」では100日と200日の各通貨の相関表が見れます。(誰でも見れます)ご参考になれば。

 

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