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「マスコミ料理教室」(7)『朝日』の黒塗り広告にもの申す
2005/04/01

消された「ブラックジャーナリズム」

 右の2枚の写真を見比べていただきたい。3月31日の朝刊各紙に掲載された『週刊文春』(4月7日号)の広告だ。上は『朝日』以外の新聞に掲載されたもので、下が『朝日』だけのスペシャルバージョン。

 『朝日』新聞しか読んでいない人は「右側のスミベタの余白がちょっと大きいな」としか思わなかったかもしれない。だが、『朝日』以外の読者は、ここに「人はそれをブラックジャーナリズムと言う」、との痛烈な『朝日』批判のコピーが白抜き文字で踊っていることを知っている。

広告代理店が墨塗り

 『山梨日日新聞』のWebサイト「FLASH24」にこんな記述があった。【朝日新聞社によると、同社の広告基準に不掲載の基準としてある「本社の記事を中傷、否定するもの。ただし本社が妥当と判断するものを除く」に抵触するとして、広告代理店を通じて文春側に見出しを変えることを要求。だが、文春側が拒否したため、広告代理店が黒塗りしたという】(31日11時3分)

 確かに、天下の朝日新聞が「ブラックジャーナリズム」と決め付けられた広告を載せるのは都合が悪かろう。いくら他社の広告とはいえ、自らを「ブラックジャーナリズム」と認めてしまうようなものだからだ。

NHKより悪質か? 同じ穴のムジナか?

 だが、『週刊文春』の記事【NHKより悪質! 朝日新聞が武富士から受け取った「ウラ広告費」5000万円】を読むと、週刊誌的には「ブラックジャーナリズム」とレッテルを貼られても仕方がない内容だ。

 あの武富士から1号当たり100万円の計算で合計5000万円を受け取り、「世界の家族」というグラビア企画を53回(2000年7月7日号から01年8月10日号まで)連載した。通常、こういう「タニマチ記事」の場合は「協力 武富士」「協賛 武富士」とか「PRのページ」「海外特集」といった言葉を入れ、スポンサー付の記事であることを読者に匂わせる。それが良いか悪いか別にして、メディアの世界の常識である。

「武富士」の名は出さず金だけ引き出す

 ところが『週刊文春』によれば、【96年以降、「週刊朝日」は表向きは武富士の広告を掲載していない】【「やはり武富士の名前を出すことは憚(はばか)れたのです」 そう証言するのは「週刊朝日」関係者だ】とある。

 そこで『朝日』は、連載終了後に写真展をしたり単行本で発行する際に「協賛・武富士」とクレジットを入れることを約束した。だが、編集長交代や武富士会長逮捕などのゴタゴタが続いたとの、理由にならない理由で約束を実行していない。

不手際・反省ですむ話ではない

 31日朝刊の『朝日』には、本沢義雄朝日新聞社取締役(出版・広報担当)の談話が掲載された。「武富士の名前を出さないまま時間が経過してしまったのは、こちらの不手際でした。結果として、読者の皆様の疑念、誤解を招くことになり、反省しています」という。

 だが、4回に渡って5000万円が『朝日』の口座に振り込まれているのだ。とても「不手際」「反省」ですむ話ではない。当時、武富士は、自分に都合のいいメディアと敵対的なメディアを峻別し、敵対的取材者には電話盗聴までしていた。その武富士との“不明朗な関係”を世間に知られたくないとの気持ちが、朝日新聞社首脳になかったといえるだろうか。

 『週刊文春』に書かれなければ「墓場まで持っていくスキャンダル」と考えてはいなかっただろうか。

「掲載拒否は言論の自由の封殺」と『週刊文春』

 『北海道新聞』のWebサイトには【文春側は「編集と広告(資金提供)の峻別(しゅんべつ)ができていない以上、ブラックジャーナリズムと言わざるを得ない。自社に都合の悪い事実の掲載拒否をする姿勢は、言論の自由、表現の自由の封殺につながりかねない」としている】(同日9時34分)との記述がある。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20050331&j=0022&k=200503318782

 『週刊文春』が『朝日』の天敵であることを差し引いても、今回の黒塗り広告は『朝日』に分が悪い。もちろん、黒塗りにしたことや事務的な不手際ではなく、日本を代表とするマスコミとして武富士と“不明朗な関係”を結んだという点についてである。

ホリエモン流に言うと『朝日』詰んだ

 先の本沢取締役談話には【5000万円に不正なやりとりはまったくなく、朝日新聞社のその後の武富士をめぐる報道姿勢になんらかの影響があったとは考えていません】とある。しかし『週刊文春』も周到に調べている。

 【バックナンバーを調べてみると、武富士関連の記事はたしかに3本あるが、いずれも1ページ弱から2ページのものばかりだ。「AERA」も同様で、逮捕直後の1本(しかも1ページ)しか取り上げていない。

 同時期の他誌と比較するとその異常さは歴然とする。小誌は7本、「週刊ポスト」は6本、「週刊新潮」、「フライデー」は5本、「サンデー毎日」は6本。

 「武富士の取り扱いについて経営陣から圧力があった」と衝撃的な告白をするのは、前出・「週刊朝日」関係者(以下略)】(週刊文春)

 ホリエモン流に言うと、『朝日』の言い逃れは「想定の範囲内。将棋でいえば詰んでいる」。

1回300万円の大名取材で“借り”作る

 しかも武富士が『朝日』に付けた条件は、フリーランス記者ではなく【朝日の記者を取材に行かせること】(週刊文春)の一点だったという。おかげで【予算は潤沢だった。1回の取材で3〜4回分の記事を書くのだが、記者とカメラマンの2人で約3、400万円も使えた】(同)という。

 バブル崩壊後のこの時期では考えられないような“大名取材”。『週刊朝日』の編集部及び記者・カメラマンは“心理的な借り”を作ってしまったのか。武富士の作戦勝ち、狙い通りの展開と言わざるをえない。

『朝日』は1日も早く真実の公表を

 『朝日』は、黒塗り広告という姑息な手段で自らの「不手際」を覆い隠すのではなく、ことの真相を公表すべきだ。

 出版本部長兼出版本部雑誌編集センター長の立場にいる大森千明元編集長(当時の編集長)も、このおかしな“不明朗取引”の真実を早急に明らかにすべきだ。それをやらなければ『朝日』の信用は地に落ち、第2のNHKになるだろう。

「マスコミ料理教室」(6)ジャーナリズムの新旧交代

(松尾信之)

3月31日付朝刊各紙に載った『週刊文春』の広告







『朝日新聞』には特別版!










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[7546] メディアリテラシーの必要性を強く感じる
名前:真田孝高
日時:2005/04/24 01:24

いやあ驚きました。
朝日新聞のこの問題に対する決着のつけ方には。
検証記事無しとは。

それにしても「編集協力費」ってなんでしょう。
仮にも大新聞社が受け取って良いお金なんでしょうか。
これでは他からも「編集協力費」を貰っている疑いを含めて、記事の信憑性に疑問を持たざるを得ません。

今までも「従軍慰安婦」問題や「教科書検定」問題などありましたが、間違いに対する検証記事は一応はありました。まあ、検証記事を出しても誠実さに欠け、その間違いの内容を事実と誤認してしまう人も多かったようですが。

未だに「従軍慰安婦は強制連行された」とか「教科書は『侵略』を『進出』と検定で書き換えられた」とか洗脳されている方が多い現実を見ると、メディアリテラシーの必要性を強く感じさせます。

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[7258] ブラックジャーナリズム
名前:真田孝高
日時:2005/04/01 23:14

またもや黒スミですか。
言論の自由を封じるのも「報道の自由」でしょうか?

それでも読みたい人だけが、お金を出して購読するのだから、マア、別に好きにやってもらっていいですけど。



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