◇迫られる効果的原因究明体制
新潟大医歯学総合病院(新潟市中央区)で執刀医が脳出血患者の頭部を左右間違えて開頭した医療事故。病院側は「深夜の緊急手術で、スタッフの数が足りず確認が不十分だった」と医師不足を強調する。一方、手術の時間を公表しないなど情報開示には積極的とはいえない。同病院で起こる医療ミスは月約400件といい、効果的な原因究明の体制が迫られている。【岡田英】
手術は今月、脳出血でこん睡状態になった患者に行われた。脳内の圧力が高くなり、神経中枢が圧迫されて呼吸困難に陥る危険があったため、開頭して減圧を図る必要があった。左側頭部の皮膚を開き、頭蓋(ずがい)骨6~7カ所に穴を開けてドリルで骨片を切除するのが本来の手術。だが40代の執刀医が左右を誤認し、頭蓋骨の右側2カ所に穴を開けた時点で気付いた。
深夜の緊急手術で、立ち会ったのは当直医を兼ねた脳外科医2人と麻酔医2人、看護師1人。21日記者会見した藤井幸彦脳神経外科長は「脳出血の場合、(脳外科医は)最低でも3人必要だった」と、医師不足による確認不足を強調した。だが会見で病院側は患者のプライバシーを理由に、実際に手術が行われた時間の公表は拒否した。
なぜ左右を誤認したのか。同病院では通常、実際とは左右が逆転したCT(コンピューター断層撮影)を参考に施術する。誤認を防ぐため画像には左右を示す印が付けられるが、今回は緊急のため、なかったという。
病院側は職員19人で構成する事故対策委員会(委員長・畠山勝義病院長)を設置し、原因究明と再発防止策を検討しているとする。一方で同病院で起こる医療ミスは月約400件。病院側の過失と認めたものは年間1、2件程度といい、効果のある再発防止が迫られている。
毎日新聞 2007年12月22日