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2007年12月22日

◎政調費に領収書 県議会もスピード感を持って

 全国の地方議会で政務調査費の野放図な使用が相次いで指摘されていることを受け、富 山県議会が、原則としてすべての政調費支出について収支報告書に領収書を添付することを義務付ける方針を固めたのは評価できる。これに対し、石川県議会では、議論はされているものの、「笛吹けど踊らず」といった感もあり、まだ結論が出る気配がない。

 先ごろ、石川県議会改革推進研究会が議会運営委員会に複数の見直し案を提出したとこ ろ、「一本化して再提出を」と差し戻され、研究会とは別の組織を設けてあらためて検討することになった経緯もあり、腰が重い印象がぬぐえない。こうした改革は、スピード感を持って取り組まなければ、県民に腹の内を見透かされるだけである。「いつまでに実施する」と期限を切って、議論を急いでもらいたい。

 政調費は、地方議会の会派や議員の政策に関する調査研究活動などを支援することを目 的として自治体が支給している補助金である。最近、そうした本来の趣旨を忘れて不適切な飲食や視察、物品購入などに政調費を流用したケースがあちこちで表面化しており、監査委員から目的外使用と指摘された分の返還を余儀なくされた会派や議員もいる。こうした他地域の事例にあきれながら、自らが納めた税金の中から支出されている石川県議会の政調費の使途にも疑念交じりの視線を注いでいる県民も少なからずいるだろう。

 石川県議会事務局の調査(十月一日現在)では、既に二十一道府県が領収書添付の義務 付けを実施済み、または実施する予定となっており、まだ検討も始めていないと回答したのは一県だけだったという。県民に「議会改革後進県」という悪印象を持たれてはならない。各会派や県議が政調費に関してやましいところはないと胸を張れるのなら、県民のいらぬ不安を一日も早く払しょくするためにも、長々と議論に時間をかけているわけにはいかないはずである。

 また、政調費については、市町議会も当然、使途の透明化、厳格化に取り組まなければ ならない。金沢市議会などでは既に議論が始まっているが、できる限り早く結論を出してほしい。

◎政府予算に地方の声 政策提案力を高めたい

 来年度政府予算の財務省原案で、後発医薬品の普及を促進するため独自の連絡調整会議 を設けた富山県の取り組みがモデル事例として全国展開されることになり、石川県が提案していた景観形成総合支援事業の事業主体拡大も認められた。政府の予算編成に当たって各県は近年、厳しい財政事情もあって、ソフト重視の政策提案型の要望を増やす傾向にあり、政府も徐々にそれに応じるようになってきたのは望ましいことである。

 福田内閣は参院選敗北の反省も踏まえて、「地方の声に耳を傾ける」ことを来年度予算 編成の基本方針に掲げ、地方再生の政策に力点を置いた。地方の活性化を図るには、地域の独自性や個性を尊重する必要があるということは共通の認識になってきている。選挙目当ての一過性の姿勢ではなく、地方の提案やアイデアを吸い上げる努力をさらに強めなければなるまい。

 そうした対応は、政府の政策目標を実現するためにも重要である。新薬とほぼ同じ薬効 があって安価な後発医薬品の普及を促すことは、医療費抑制策の一つとして政府も本腰を入れているが、思い通りに進んでいないのが実情である。政府が富山県の取り組みに目を付けたのは、どの自治体でも行える効果的な施策と判断したからである。自治体は国民に最も近い行政の現場であり、そこで出された知恵や実践例を国の施策として展開することは、もっと積極的に行われてよい。

 自治体もさらに政策提案力を高めていきたい。来年度予算原案では、政府の地方再生戦 略の柱として「地方の元気再生事業」に二十五億円が計上された。国がメニューを決めるのではなく、自治体の自主的なプロジェクトを選んで直接支援するものだ。都道府県ごとにプロジェクトを公募し、年間五千万円程度の事業費を交付する仕組みで、来年度から三年間実施される予定という。

 国の事業費の枠内で行われる点では国の指導下にあるが、従来型の補助事業とは趣を異 にしており、地方の創意工夫を生かす姿勢の表われといえる。自治体側も独自のアイデアや政策力いかんによって地域の元気度に大きな差がつく時代であることをあらためて認識したい。


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