宗教法人「紀元会」(小諸市)の信者による集団暴行で、奥野元子さん(当時63歳)が死亡した事件に絡み、県警小諸署捜査本部は11日、偽証の疑いで同会代表役員の舟橋元博容疑者(42)を逮捕。宗教法人を舞台とした集団暴行事件は「教団代表」の逮捕へと発展した。
舟橋容疑者が小諸署に到着したのは午前8時過ぎ。頭からジャンパーをかぶり、うつむきながら歩く姿に、会見時の雄弁さは見当たらなかった。
10月21日に小諸市内で開かれた記者会見で、弁護士らとともに応じた舟橋容疑者。「事件は一部の信者の不祥事。組織的な関与がない」と強調。額に汗して弁明を繰り返したが、質問が総裁代行の女性(36)のことに及ぶと困惑の表情を浮かべた。「紀元会のトップは私です」。絞り出すように言った。
宗教法人の登記上、会の代表者となっている舟橋容疑者。しかし教団の実権は総裁代行の女性や、その姉で同会幹部の窪田康子被告(49)=傷害致死罪などで起訴済み=が握っており、同容疑者は「教団の表の顔」としての役割を担っていた。
調べによると、舟橋容疑者は起訴前の証人尋問でうそをついた疑いで逮捕された。舟橋容疑者は容疑を否認しているが、捜査本部は他の信者の証言から立件が可能と判断した。
紀元会側の米丸和実弁護士は県警の捜査を「強引だ」と批判する。「偽証罪という微罪で逮捕される例はまずない。ここまで権力を振り回して良いのか」と話した。また小諸市内の男性信者(36)は「信仰心は変わらない。しかし代表がいなくなり、会はどうなるのか」と不安を漏らした。
また捜査本部は同日、奥野さんの次女(26)=犯人隠避罪で起訴済み=への傷害容疑で、愛知県瀬戸市柳ケ坪町の無職、楠京子容疑者(32)を逮捕した。一連の事件での逮捕者は34人になった。
◇文化庁が教団を聴取
紀元会事件に絡み、宗教法人を管轄する文化庁が先月、同会から傷害致死事件について事情を聴いていたことが11日、分かった。
同庁宗務課によると、東京都内で先月20日、同会の代表役員の舟橋容疑者らから数時間にわたって事情を聴いた。事件について同会は「家族間のトラブルが発端で突発的なもの」と説明。組織的な関与を否定した。同庁は遺憾の意を伝えた上で、適正な団体運営を求めた。
聴取は法的な権限に基づくものではなく、任意で行われた。同課は「状況把握が目的で解散命令などを見据えたものではない。今後の対応は裁判の推移を見守りながら検討したい」と話した。宗教法人法によると、公共の福祉を害したと判断された宗教法人は、文化庁や検察庁などからの請求に基づき、裁判所から解散を命じられる場合がある。
毎日新聞 2007年12月12日