◇HP開設、広がる交流
DV(ドメスティック・バイオレンス=配偶者や恋人間の暴力)を受けても「家庭内のことだから」と我慢してしまい、声を上げない被害者は多い。
川本弥生さん(45歳、仮名)もそうだった。ようやく誰かに相談しても、「あなたにも非があるのでは」と思われているように何度も感じたという。結果、長男諒君(当時15歳)が元夫の男(43)に刺殺されるという最悪の結末を迎えた。
DVへの理解が広まれば、被害者が気軽に胸の内を吐き出すことができるのでは。弥生さんはホームページを開設し、被害者との交流を続けている。「自分にできることを精いっぱいやりたい。私たちと同じように苦しむ人がいなくなるように」との思いからだ。
事件から間もなく5年。諒君は生きていれば20歳になり、成人式を迎えるはずだった。ある日、長女亜紀さん(17歳、同)の友達を通じてうれしい知らせがあった。諒君は小学校の卒業式後、同級生と一緒にタイムカプセルを埋めており、成人式に掘り返す約束だったという。同級生から「一緒に開けませんか」と誘われた。
「連絡先は知らせていないから、ずいぶん探してくれたはず。そこまでしてくれたこと、いまだに諒ちゃんを気にかけていてくれたことがうれしい」。弥生さんと亜紀さんは事件前に家を出たため、諒君の写真などは手元にほとんどない。タイムカプセルに収めた品は諒君が生きた証しだ。2人は諒君に「再会」する日を心待ちにしている。=おわり
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この連載は酒井雅浩が担当しました。
〔神戸版〕
毎日新聞 2007年12月21日