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08年度予算:財務省原案 基礎収支5年ぶり悪化/政府目標の達成に暗雲(その2止)

 ◇GDP比債務残高、日本はG7で最悪--07年177%、2位イタリアと大差

 先進7カ国(G7)の債務残高を対GDP(国内総生産)で比較すると、日本は07年は177・6%で最悪。ワースト2のイタリアの121・0%とも大きな開きがある。

 バブル崩壊後の税収減を多額の国債発行で補った日本は、90年代後半から財政健全化を進めた欧米先進国と対照的な動きを示してきたが、05年以降は景気回復による税収増で、なんとか対GDP比率の悪化を食い止めている。

 日本の国債発行残高は08年度末に553・3兆円と、07年度末に比べ6・6兆円増加するが、財政投融資の資金を管理する「財政融資資金特別会計」の積立金(いわゆる「霞が関埋蔵金」の一部)から9・8兆円を借金返済に充てることで残高を抑制し、債務残高の対GDP比率は1ポイント程度改善するという。

 それでも膨大な債務残高を見ると悲観的になるが、別の見方もある。

 菊池英博・元文京学院大学教授によると、国債に財投債、政府短期証券などを合わせた「粗債務」は07年9月時点で834兆円あり、対GDP比率で179・0%に相当。これに対し、政府が保有する金融資産には年金保険料の積立金など社会保障基金、ODA(政府開発援助)の貸し付けなど内外投融資、外貨準備などがあり、計580兆円になる。

 菊池氏は「政府の金融資産は国民が拠出した財産で、債務に見合う資産となっている。粗債務から金融資産を引いた値が純債務であり、これを対GDP比率で比較すると日本は欧州諸国並みで、財政危機ではない」と主張している。【川口雅浩】

 ◆農業

 ◇コメ生産調整、継続農家を支援--食品表示の監視を強化

 自民党が強く求めていた農政見直し関連で、07年度補正予算の799億円を含め1111億円を計上した。コメの生産調整を5年間にわたって拡大する農家や飼料米を低コストで生産する農家への緊急対策(500億円)、小麦とてんさいの先進的産地の増産に対する支援(168億円)などが内訳。

 食の安全・安心では、表示制度の啓発や監視強化に1億800万円。地球温暖化防止では、二酸化炭素の吸収源となる森林21万ヘクタールの追加整備に補正と合わせ546億円を計上した。農地政策の改革では、意欲のある農家へ農地を面的(地続き)に集める事業に90億円を概算要求したが、モデル事業にとどめたため3億7400万円に縮小した。【位川一郎】

 ◆科学技術

 ◇大型事業に重点配分--宇宙輸送システム405億円

 厳しい財政事情の中、科学技術振興費は0・6%増の1兆3561億円を確保した。宇宙輸送システム(405億円)、次世代スーパーコンピューター(145億円)など、第3期科学技術基本計画で「国家基幹技術」と位置づけられた大型事業に重点配分した。

 競争的研究資金の中核となる科学研究費補助金は、若手向けの拡充を含め1%増の1932億円。世界的に卓越した研究拠点形成を目指す「グローバルCOEプログラム」を倍増する一方、大学や研究機関の運営費交付金を減額するなど競争原理をより進めた格好となった。

 経済産業省と三菱重工業が共同で開発している次世代高性能小型ジェット機開発事業には、財政投融資の50億円を含む計141億円(要求額157億円)が計上された。【西川拓】

 ◆福祉

 ◇産科医確保に12億円--肝炎医療費助成など207億円

 医療・福祉関連では、医師不足対策の推進に160億7000万円を盛り込んだ。前年度比69億円増。新規事業として▽産科医の確保に12億5000万円▽医師不足地域での研修支援に9億1000万円▽医師交代勤務の導入促進に4億8000万円などを盛り込んだ。

 B型・C型肝炎患者へのインターフェロン治療にかかわる医療費助成などに207億円。障害者自立支援として福祉サービスの利用者負担を軽減する特別対策に100億円。

 在外被爆者に対する支援など原爆被害者への援護事業には1535億9000万円を盛り込んだ。【大場伸也】

 ◆教育

 ◇ソーシャルワーカー活用、141地域の小中校で

 「信頼できる公教育の確立」を掲げ、文科省の概算要求段階にはなかったソーシャルワーカーを活用するモデル事業(15億円)が新規事業として盛り込まれた。財務省は「学校と家庭の仲立ちをすることで、教員の負担も軽減される」と説明。141地域の小中学校で実施される。

 地域ぐるみで学校運営を支援するため「学校支援地域本部」を1800地域に整備(50億円)。教員1195人の増員(23億円)を盛り込んだ義務教育国庫負担金は前年度比137億円増の1兆6796億円で02年度以来の増額になった。

 国立大運営費交付金は「骨太の方針」で求められた1%減を実施し、同231億円減の1兆1813億円。【高山純二】

 ◆環境

 ◇CO2排出枠308億円--価格高騰、前年度の2.4倍

 家庭・オフィスの温室効果ガス削減対策に力点を置き、省エネ製品の買い替えPRに3億円、消費者に環境に配慮した行動を促す「エコポイント」普及に4億円、「1人1日1キログラムCO2削減」など国民運動に計30億円を充てる。京都議定書の目標を達成するための排出枠(クレジット)購入は、価格高騰で今年度の2・4倍の308億円を環境、経産両省で計上した。

 水俣病未認定患者の新救済策では、療養手当増や公的検診などに10億円を用意。自動車排ガスの微小粒子状物質の影響解明に8000万円、環境中の化学物質が子供に与える影響の調査に1億5000万円、温泉の安全情報提供に1400万円を盛り込んだ。【山田大輔】

 ◆エネルギー

 ◇石油備蓄費用を削減

 エネルギー対策特別会計の見直しで、石油の国家備蓄費用などを削減。石油石炭税など特定財源の税収を歳出が上回る歳出超過額を201億円(前年度比168億円減)に減らした。

 地球温暖化対策として、日本が提唱する「2050年に全世界で温室効果ガスを半減」の長期計画実現のため、発生した二酸化炭素(CO2)を回収して地中にためる技術など革新的なエネルギー技術開発に629億円を計上。石油や天然ガスなどの資源確保に1441億円を盛り込んだ。【秋本裕子】

 ◆住宅

 ◇200年住宅促進--耐震改修補助は170億円

 住宅対策費は4・4%減の6547億円だが、長期間住める「200年住宅」の促進策130億円を新規予算化。耐久性の高い建築への助成や建築・補修記録を残す「住宅履歴情報」の制度化などを進める。また、家庭から排出される二酸化炭素(CO2)を削減するため、省CO2住宅促進策50億円を新設した。

 住宅を耐震改修した場合に支給される補助金は、地域や建物に関する要件を緩和して対象を拡大するため、24・5%増の170億円になる。

 また、都市再生機構の公団住宅建て替えに伴う引っ越し先の家賃補助で300億円を計上した。【辻本貴洋】

毎日新聞 2007年12月21日 東京朝刊

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