「格差を認め流動性の高い社会に」リーダーに聞く:宮内義彦 オリックス会長グループCEO
米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題で、日本の金融機関は巨額の損失を計上したり、サブプライム問題解決のための基金に出資を要請されるなど、この問題が日本にも影響を与えている。 サブプライム問題が日本経済に与える影響は、どのようなものか。宮内義彦オリックス会長に聞いた。宮内会長は、サブプライム問題が米国経済に与える影響は「日本のバブル崩壊に匹敵する」と語り、この問題の与える影響の大きさを指摘した。 しかし、日本の経済成長を阻む最も憂慮すべきことは、サブプライムの影響より、格差を取り沙汰して分配の論理に傾いている日本の政治だと言い切る。そして、経済成長についてもっと真剣に議論すべきと指摘する。
(聞き手は日経ビジネス オンライン編集長 川嶋 諭) ―― 宮内会長はサブプライムショックが世界経済に与えるインパクトをどのように見られていますか。
宮内 義彦(みやうち・よしひこ)氏 宮内 かなりの打撃を被っており、このマグニチュードはかなり大きいと思います。日本のバブル経済崩壊の教訓から、欧米の中央銀行が素早く流動性を高める措置をしたのは、正しい行動と思います。ただし、リスクが高まった時に流動性を上げたからといって危機が収まるかというと、そうではないと思います。 ―― サブプライム問題を地震に例えると、どれくらいの揺れになりますか? 宮内 米国のエコノミストは揺れは小さいと言いたがるし、日本のエコノミストは大きいと言いたがる。言ってみれば、日本のバブル崩壊に匹敵する規模の揺れではないでしょうか。 日本はバブルの処理に関しては、政策がうまくなかったから、処理に10年、15年とかかってしまいましたが、米国経済が今回の問題で立ち直るには、日本みたいには時間はかからないでしょう。3〜5年ぐらいではないでしょうか。
“ハーフ・デカップリング”という答えが見えてくるだろう―― 日本よりは短いとはいえ、世界の台所の米国が3〜5年、リセッションが起きるのは、世界経済に大きなインパクト与えます。一方で、最近では、デカップリング(非連動)という言葉のように、米国経済にはかつてほど世界経済に対する影響力がなくなってきたとも言われますが。 宮内 もしサブプライムショックの揺れ幅が大きいとすれば、デカップリング説が正しいか正しくないかが証明されますね。おそらく答えは“ハーフ・デカップリング”じゃないでしょうか。 ―― そこには、中国やブラジル、インド、ロシアなどいわゆるBRICsと呼ばれる国々の経済発展が関係しているのでしょうか。 宮内 中国にしろインドにしろ10億を超える人口です。それだけの人間が豊かになりたいという意思を示したのは、世界経済にとっては初めてのことだと思う。この勢いはすさまじい力になります。このデマンドを消すことはできないと思います。 以前、米国がくしゃみをすると日本は肺炎になると言われましたが、中国にとってもサブプライム問題の影響は大きいと思います。ただ中国には貯蓄があるので、昔の日本のように貿易赤字になれば不景気になって、外貨がなくなるという状態ではない。自力でモノを買う力があるとすればやはりデカップリングの方に行くでしょう。 いずれにせよ、ドル離れははっきりしてきたと思います。後世の歴史家から見れば、今は米国一国で世界経済を支えてきた時代の終わりの始まりかもしれません。 第3次産業の生産性を上げれば成長率は格段に上がる―― 日本経済に目を向けてみますと、福田政権になって小泉政権で推進してきた改革とは逆行する動きが目立ちます。世界的に見ても、日本の経済成長率だけが2%と低い状態にあることについて、どうお考えでしょうか。 宮内 日本は少子高齢化が世界で最も速いスピードで進んでいますから、放っておくと成長が鈍化するのは当たり前の話。日本は世界の中でも最も成長に関心を寄せなければいけない国なのです。 |
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