大阪市大正区の「大正第一なかよし学童保育」を舞台に、働くお母さん、そしてお父さんの子育ての日常を報告します。【村元展也、写真・小松雄介】
キュキュキュ。外で自転車のブレーキ音がした。「あっ、ママが迎えに来た!」。小学1年のアユミ(7)=仮名=の耳は、この音を聞き分ける。
師走のある日の午後7時。近隣の四つの小学校から10人ほどの児童が通う民間の小さな学童保育。底冷えするが到着した母マキ(43)=同=の顔は上気している。大阪・船場のブランド品輸入販売会社での勤務を終え、5キロの道のりを自転車で20分で走ってきたのだ。
マキは未婚でアユミを出産し、母子2人で暮らす。生後9カ月から職場近くの保育所に預け、朝晩、アユミを自転車に乗せて通勤した。残業がある時は、いったん保育所に迎えに行き、一緒に職場に戻った。アユミは働くマキのそばで塗り絵をし、疲れると眠った。
だがアユミが小学校に上がれば、自宅から離れた職場で深夜まで過ごさせるわけにもいかない。マキは社長に「夜遅くまでの残業はできなくなる」と相談した。社長はすまなそうに言った。「他の社員の手前、あなただけ特別扱いできない」。マキは15年以上勤めてきた会社で、今春から仕事内容はそのままに正社員から時給計算のアルバイト社員になった。月収は10万円近く下がった。「残業できないんだから仕方ない。社長は私を信頼してくれているので仕事がなくなるわけではない。私はラッキーだと思う」。マキはそう割り切っている。
授業が終わってから自宅近くの学童保育で過ごすアユミを、夕方迎えに行く生活が始まった。(敬称略)=つづく
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■ことば
◇学童保育
共働きや一人親家庭の小学生に放課後の遊びや生活の場を提供する事業。年々増加し、全国1万6685カ所に約75万人が登録(07年5月)。公営、民営など実施方法は自治体によって異なる。大阪市の場合、125カ所すべてが民営で、補助金を支給している。
毎日新聞 2007年12月20日 大阪朝刊
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