平成20年度の診療報酬改定は18日、医師の技術料にあたる診療報酬の「本体部分」を0.38%引き上げることが正式決定した。ただ、与党内では「実質は倍の0.8%引き上げだ」との認識が広まっている。高齢者医療費の負担増凍結により受診抑制が働かず、診療側が受け取る医療費が減少しないためだ。次期衆院選をにらみ日本医師会へ配慮した格好だが、引き上げのツケを治療費や保険料が増えるサラリーマンなどに回したともいえ、医療制度改革機運は急速にしぼみつつある。
診療報酬の「本体部分」を0.38%引き上げは、舛添要一厚生労働相と額賀福志郎財務相が18日に会談し正式合意した。
本体部分の引き上げは8年ぶりで、0.38%の引き上げは約300億円分にあたる。ただ医師会側は「医師不足問題の解決」を理由に5・7%の引き上げを要求。改定率の交渉過程でも「5.7%は無理でも、薬価・材料の引き下げ分はすべて本体の引き上げに充てるべきだ」との主張を繰り返した。
不満の募る医師会側を納得させるために与党が考え出したのが、10月に決めた高齢者医療費の負担増凍結で、医者にかかる人が減らず、診療側に支払われる医療費も減らないという論法だ。
改定率交渉に携わった自民党中堅議員は17日、「厚生労働省は言葉を濁すが、高齢者の医療負担増凍結で、医療費が1200億円増になり、0.38のプラス改定は実質倍になる」と説明した。
ただ、高齢者医療費の負担増凍結に伴う約1700億円の歳出増は19年度補正予算案に計上される。20年度予算編成で求められている社会保障費の2200億円抑制とは別枠となっており、膨張する医療費の歯止めに対する「抜け穴」との批判も少なくない。医療費の増加は患者負担の増加につながる。
ところが患者負担はこれにとどまらない。2200億円抑制のため、政府・与党は政府管掌健康保険(政管健保)の国庫負担を、大企業の健保組合や公務員の共済組合に1000億円分肩代わりさせることにした。
これはサラリーマンの保険料アップに直結するのだ。健康保険組合連合会(健保連)の試算によると、肩代わりでサラリーマンの保険料は年間平均約5000円増える。このため、企業側からは「高い収入の開業医が身を削らず、サラリーマンに医療費増大のツケを回している」との不満が渦巻いている。
「本体部分」の引き上げについては、勤務医の待遇改善が大きな理由として挙げられた。年明けから診療報酬の個別点数の見直し議論が始まるが、開業医の初再診料を引き下げ、勤務医の負担軽減の実現が図られなければ、世論の反発が一気に福田政権に向かう可能性もある。
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