ここから本文エリア 地域医療火の車2007年12月20日 −市町村立10病院 7施設経常赤字− 県内の市町村が運営する公立10病院の06年度決算が出そろった。7病院が経常赤字を抱え、経営難に苦しむ公立病院の姿が浮き彫りになった。結核など政策的な医療分野も担い、地域医療の最後の「とりで」として機能してきた公立病院。その経営をどうやって再建するのか、自治体は重い課題を突きつけられている。 −下支え自負 切れぬ不採算部門− 小野町と田村市など2市1町2村の一部事務組合が運営する公立小野町地方総合病院。03年に6人いた医師が、今年は一時期2人にまで減少した。この影響で診療報酬などの収益が減り、91年から続く赤字傾向がさらに強まった。06年度の医業損益での赤字額は約2億円に上る。 ただ、06年度は清掃作業の民間委託などによる職員給与費の削減や、患者が減ったことで「不採算地区」に認定されて地方交付税が上積みされたことで、経常損益は6年ぶりの黒字になった。 それでも、07年度上半期は収益が落ち込んでおり、再び赤字に転落する可能性もある。累積欠損金も06年度末で7億8千万円に達している。 患者数が減り続ける同病院だが、地域医療を下支えしている側面もある。いわき市以外の構成市町村内には総合病院はなく、いわき市や郡山市の大病院に行くには、車で1時間程度かかる。 昨年10月から開いた病院の改革委員会でも民営化や営業診療科の縮減を検討したが、構成市町村の強い要望で、結局「現状維持」に落ちついた経緯がある。苦しい経営が続くが、籠田良作事務長は「地域の医療を支える使命がある。決めたのだから、あきらめずにやるしかない」と話す。 ■ ■ 06年度決算でみる限り、どの自治体病院も「火の車」だ。 これらの部門には、自治体の一般会計から赤字を補うための繰り入れが認められている。だが、繰り入れを足しても、経常損益で赤字となる病院が過半だ。相次ぐ診療報酬のマイナス改定、絶対的な医師不足、診療科の廃止などによる患者数減、職員年齢の上昇に伴う人件費の増加――。自治体病院をとりまく環境がここ数年で急変したことが、赤字拡大に拍車をかけている。 「自治体財政の健全化」という命題も、公立病院の経営には逆風だ。総務省の公立病院改革懇談会が11月に示したガイドラインでは、経営指標に数値目標を設定し、各病院に経営の抜本的な改革を迫っている。 過去の市町村合併で総合磐城共立と常磐の2病院を抱えるいわき市。今年4月、共立を「本院」、常磐を「分院」と位置づけ、役割分担や連携のあり方を明確化させた。将来的な統合も視野に入れて、職員の人事交流や資金管理の一元化も進めている。 それでも、総務省の突きつけるハードルを超えるのは容易ではない。 例えば医業収益に対する職員給与の比率。職員の年齢の高い2病院は平均で68%に達するが、総務省の示す目標は56%。指標の「分母」にあたる医業収益は減り続ける一方で、市病院局の担当者は「医師や看護師が離れていかないためにも、給与の見直しに手を付けることは難しい」と頭を抱える。 須賀川市などが運営する公立岩瀬病院でも病床数を減らし、内視鏡手術などの得意分野に資源を集中して、経営基盤を強化する方針だ。ただ、経営指標がすぐに上向くかどうかは未知数だ。市川守事務長は「経済理念だけで地域医療は担えない。国は自治体病院の役割をもう一度考えて欲しい」と訴える。 マイタウン福島
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