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「命返して」57歳女性、告発のビデオ残す 薬害肝炎

2007年12月21日07時13分

 「命を返してください」――。肝炎ウイルスに汚染された血液製剤を投与され、肝臓がんのため57歳で逝った女性が、国や製薬会社を病床から告発する「遺言」をビデオ映像に残していた。薬害C型肝炎訴訟の東京原告13番。国が和解修正案を大阪高裁に提出した20日、闘いを引き継ぐ妹が、姉の思いを訴えた。

 「この薬のために、いったい何人が亡くなったのか。線引きなど許されるわけがありません」

 泉祐子さん(59)=東京都大田区=は、同日の記者会見で、原告患者らとともに訴えた。

 03年6月1日、静岡の県立病院。病室のベッドに腰かけた玲子さんは息も絶え絶えに、やせ細った体で声を振り絞った。「体がついていきません。裁判を早く終わらせてください。国は人の命の重さを見つめてください」「こんなふうになりたくなかった。平凡でいいから、これからも生活したかった」

 温厚な姉が怒りを吐き出す姿に、祐子さんは驚いた。血液製剤「フィブリノゲン」の投与で感染、集団訴訟に加わった。東京地裁の出張尋問を病室で受けるのを前に、ビデオを回した。

 7分7秒。玲子さんの一礼で映像は終わる。この11日後、息をひきとった。

 今秋、厚労省が5年間放置していた薬害肝炎患者「418人リスト」に含まれていることがわかった。20日発表された国の修正案では、84年に投与された玲子さんは、「直接救済」の対象にならない。

 祐子さんは、実家にある玲子さんの遺骨を、和解を機に墓に納めるつもりでいた。だが、その日は遠のいた。「救済」の日が来ると信じ、闘い続けるつもりだ。

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