年末回顧の記事が、この夏の暑さを振り返っていた。盆を過ぎて猛暑にうだった記憶がよみがえってきた。
季節は巡り、朝夕冷え込むようになった。南米・ペルー沖の海面水温が下がるラニーニャ現象によって日本の南海上で対流活動が活発化し、暑い夏を呼び込んだといわれる。過去の例ではこうした年の冬は寒くなるそうだ。今後の気象に注意したい。
マフラーを巻いて登校する小学生の姿に、遠い子ども時代を思い出した。霜柱を踏みながら歩いた朝のあぜ道、水たまりに張った氷を踏み割り、池の氷に石を投げたこと。温暖な瀬戸内にも冬らしい冬が訪れていた。
初雪、氷雨、樹氷に霧氷、凍雨。元日本気象協会会員で写真家の高橋健司氏の著書「季節のかたち」には、魅力的な冬の気象用語が並んでいる。高橋氏は、季節を表す美しい日本語を「文化遺産」と呼び、世代から世代へ受け継がなければと記している。
先の気候変動枠組み条約締約国会議では各国が「バリ行程表」に合意し、二〇一三年以降の温暖化対策の枠組みづくりへ一応の道筋ができた。だが、利害が一層対立する今後の具体協議が成就するのか、心もとない。
協力して対策を進められなければ気候がおかしくなり、海面が上昇し、砂漠化が進む。暖冬が普通のことになった時点で、日本の冬の言葉や文化は忘れ去られているかもしれない。