今週のお役立ち情報
「記者クラブ制度」とジャーナリスト差別問題(1)
2006年04月01日08時08分
【PJ 2006年04月01日】− 人種差別、性差別など、偏見や先入観などに基づいて、特定の人々に対して不利益や不平等な扱いをすることを「差別」と呼ぶ。ジャーナリスト個人の資質や経歴とは別に、国籍や所属する企業などに基づいて、情報への平等なアクセスが妨げられるのであれば、それはジャーナリストに対する差別と呼べないだろうか。そのジャーナリスト個人の権利が妨げられていること、また、その影響で情報の自由な流れが阻害され、自由貿易の原則が犯されているというふたつの理由で「記者クラブ制度の廃止」を日本政府に提出したのが欧州連合(EU)・駐日欧州委員会代表部。日本の「記者クラブ制度」はEUが主張するように、ジャーナリストに対する差別を助長しているのであれば、日本の民主主義を揺るがす問題だ。
大手メディアでほとんど説明されなかった日本新聞協会とEUの論戦
PJニュースのインタビュー(「長期的には記者クラブ制度は廃止すべき EU連合」) で、ヨーロッパの国々を例に挙げながら、同代表部のシルビア・コフラー広報部長は「すべてのジャーナリストに情報への平等なアクセスできる権利がある」という原則を説明した。その権利を妨げ差別をしているのが、日本の「記者クラブ制度」であり、同制度廃止の提案理由の第一に上げた。「記者クラブ制度の廃止」については03年10月16日に日本政府に提出された「日本の規制改革に関するEU優先提案」のなかに盛り込まれている。
同「日本の規制改革に関するEU優先提案」が提出されてから約2カ月後の03年12月10日になって、日本新聞協会の記者クラブ問題検討小委員会が「記者クラブ制度廃止にかかわるEU優先提案に対する見解」 を発表した。
同見解で「その歴史的背景から生まれた日本の記者クラブ制度は、現在も『知る権利』の代行機関として十分有効に機能しており、廃止する必要は全くないと考える─これが小委員会メンバーの一致した意見でした。記者クラブをより開かれたものにするため、新聞協会はさらに努力を重ねます」と見解の結論を示し、その後で理由を説明している。
EU駐日欧州委員会は翌日「記者クラブ制度の廃止」問題について会見を開き、03年12月16日に「日本新聞協会の見解に対する駐日欧州委員会代表部のステートメント」)を発表した。その見解内容は、EUの内外を問わず、情報の自由な流れの障害となる「制度」を受け入れることはできないことを第一に上げ、情報にアクセスする権利は、日・EU双方の民主主義の基礎を成す柱の一つであると明言している。また、日本人記者が「クラブ」を作ることやそのクラブメンバーの権利に関して、批判や否定を加えるものではないと補足している。
EUの同ステートメントでさらに、「記者クラブ制度(よって、一次情報源へのアクセス)から除外された記者に及ぼされる差別は、外国の記者のみならず、雑誌など当該制度に組み込まれていない媒体で働く数多くの日本のジャーナリストにもあてはまるものである」と日本におけるジャーナリストの権利がないがしろになっている状況を改めて説明している。
論点となるべきはずのジャーナリスト個人の権利と差別について明白な説明を避けた日本新聞協会は、同協会の見解の論点をEUの主張する「記者クラブ制度廃止」についての反論に終始する。【つづく】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト (PJ)コーディネーター 佐藤学【 東京都 】
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大手メディアでほとんど説明されなかった日本新聞協会とEUの論戦
PJニュースのインタビュー(「長期的には記者クラブ制度は廃止すべき EU連合」) で、ヨーロッパの国々を例に挙げながら、同代表部のシルビア・コフラー広報部長は「すべてのジャーナリストに情報への平等なアクセスできる権利がある」という原則を説明した。その権利を妨げ差別をしているのが、日本の「記者クラブ制度」であり、同制度廃止の提案理由の第一に上げた。「記者クラブ制度の廃止」については03年10月16日に日本政府に提出された「日本の規制改革に関するEU優先提案」のなかに盛り込まれている。
同「日本の規制改革に関するEU優先提案」が提出されてから約2カ月後の03年12月10日になって、日本新聞協会の記者クラブ問題検討小委員会が「記者クラブ制度廃止にかかわるEU優先提案に対する見解」 を発表した。
同見解で「その歴史的背景から生まれた日本の記者クラブ制度は、現在も『知る権利』の代行機関として十分有効に機能しており、廃止する必要は全くないと考える─これが小委員会メンバーの一致した意見でした。記者クラブをより開かれたものにするため、新聞協会はさらに努力を重ねます」と見解の結論を示し、その後で理由を説明している。
EU駐日欧州委員会は翌日「記者クラブ制度の廃止」問題について会見を開き、03年12月16日に「日本新聞協会の見解に対する駐日欧州委員会代表部のステートメント」)を発表した。その見解内容は、EUの内外を問わず、情報の自由な流れの障害となる「制度」を受け入れることはできないことを第一に上げ、情報にアクセスする権利は、日・EU双方の民主主義の基礎を成す柱の一つであると明言している。また、日本人記者が「クラブ」を作ることやそのクラブメンバーの権利に関して、批判や否定を加えるものではないと補足している。
EUの同ステートメントでさらに、「記者クラブ制度(よって、一次情報源へのアクセス)から除外された記者に及ぼされる差別は、外国の記者のみならず、雑誌など当該制度に組み込まれていない媒体で働く数多くの日本のジャーナリストにもあてはまるものである」と日本におけるジャーナリストの権利がないがしろになっている状況を改めて説明している。
論点となるべきはずのジャーナリスト個人の権利と差別について明白な説明を避けた日本新聞協会は、同協会の見解の論点をEUの主張する「記者クラブ制度廃止」についての反論に終始する。【つづく】
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