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バブル崩壊後の対応

2007年12月20日

 サブプライムローン問題をきっかけに米欧の金融市場が混乱し始めてから4カ月以上が経過したが、当初の予想以上に、事態は深刻化している。FRBは9月以降、合計3回、1%の金利引き下げを行ったが、この間の信用スプレッドの拡大、ターム物金利の上昇を考えると、実質的な金融緩和効果は限定的である。流動性供給の面では、貸し出しの利用促進、期間の長いターム物オペの実行などの施策を講じている。流動性不足を放置すると、市場の緊張が高まり、価格下落が加速する結果、資本不足が一層深刻化する。その意味では、流動性供給面の施策は必要であるが、抜本策とはなり得ない。

 必要な施策の本質は自己資本の調達である。この点では市場原理は必ず貫徹する。資産の価格が十分に下落すると、新規に資本を投入しても良いと判断する投資家が必ず登場する。資産価格が十分下落しなくても、魅力的な出資条件を提示すれば、投資家は必ず現れる。シティグループやUBSの資本調達は後者の例に該当する。前者の資産価格下落を容認する途(みち)を選択する場合は、その過程で生じる深刻な景気後退を甘受することを意味する。後者の資本調達の途を選択する場合は、有利な条件を提示することによって、当面の経営自体が成り立たなくなるリスクに直面する。どちらも厳しいため、当事者は現実から目を背けたくなる。そこから生まれる対応は、景気回復への漠然とした期待に基づく時間稼ぎである。米系の大手金融機関による証券化商品の買い取り基金構想はその典型である。

 このような住宅バブル崩壊の米国の経験を日本のバブル崩壊後の経験と重ね合わせると、結局、バブルは崩壊後にそのツケを払わなければならないということだろうか。「バブルは崩壊した後にアグレッシブな金融緩和政策で対応すれば良い」という政策哲学がむなしく響いてくる。(薫風)

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