20日内示された08年度予算の財務省原案と07年度補正予算案は、地方、農業、高齢者など「小泉改革のしわ寄せ」を受けたとされる分野に重点的に予算を投入したのが特徴だ。自民党はいずれの分野も参院選の敗因と分析。衆院の解散・総選挙をにらみ「生活重視」を掲げる民主党に対抗する狙いがある。ただ、選挙目当ての歳出増が続けば財政再建に黄信号がともりかねない危うさも抱え込んだ。
都市と地方の税収格差を埋めるため、政府・与党は東京都などの反発を押し切り、法人2税(事業税・住民税)から4000億円を地方に回すことを決めた。東京都の石原慎太郎知事は、自民党税調小委員長の与謝野馨前官房長官の協力要請をいったん拒否したが、11日の福田康夫首相との会談で「泣く子と地頭と政府には勝てない」と受け入れた。地方自治体の疲弊が「参院選で地方組織の動きを鈍らせた」(政調幹部)との見方が強いだけに、地方交付税の3年ぶりの増額と合わせ地方対策の象徴的な予算となった。
道路特定財源でも、地方の道路整備を後押しするため、自治体への無利子貸付金に1000億円を回す。財政再建派の谷垣禎一政調会長も「国が補助しても財政難の自治体は自前の負担ができない」と道路建設を進めたい族議員らに配慮を示し、党内でさしたる抵抗もなく実現した。
医師不足対策から注目された診療報酬は、自民党の有力支持団体、日本医師会が5・7%の大幅引き上げを求めるなか、8年ぶりのプラス改定となる0・38%増で落ち着いた。自民党と財務省の協議では最終盤まで0・36%が上限と見られていたが、自民党は17日、さらに0・02%の上乗せをのませた。「選挙を控えて0・4%に近づけるメッセージが必要」(厚生労働相経験者)と支持層への配慮が働いた。
診療報酬など社会保障関係費は、昨年の骨太方針で決まった毎年2200億円の圧縮がネックだった。その抜け道として政府・与党は07年度補正予算案をフル活用。福田康夫首相が9月の党総裁選で掲げた高齢者医療費の窓口負担増凍結は、1718億円を補正に計上し概算要求基準(シーリング)の枠外に滑り込ませた。
農家対策でも党4役を地方の農業視察に相次ぎ派遣するなど、現場の声の吸い上げに腐心した。今年4月にスタートしたばかりの農政改革が「大規模農家中心」と評判が悪いとみるやあっさり見直し、小規模農家対策を中心に補正で798億円を確保した。【竹島一登】
毎日新聞 2007年12月20日 21時45分