救急搬送の妊婦の受け入れ先が決まらない「たらい回し」も問題となりましたが、その背景には産科医の不足があります。
しかし、状況が改善されるまで待っていることはできません。
そこで、独自のネットワークを作ってたらい回しを減らそうとする努力が進められています。
産まれたばかりの赤ちゃん。
待ちわびていた我が子にやっと会えました。
この赤ちゃんは逆子で、帝王切開で産まれました。
福岡県水巻町。
今年5月に開業した新水巻病院の周産期センターでは、切迫早産などの危険が迫った妊婦を24時間受け入れるホットラインを設けています。
ホットラインを受けるのは、周産期センターの産科医・齋藤竜太医師。
今年3月まで、北九州市の総合病院で産婦人科部長を務めていましたが、医師不足で産婦人科は閉鎖されました。
産婦人科の医師不足は深刻です。
北九州市では去年だけでも、緊急受け入れをしていた5つの総合病院が産婦人科を閉鎖しました。
現場の医師からは、妊婦の受け入れ先が見つからない「たらい回し」が起きてもおかしくないと危惧する声が上がっています。
去年8月、奈良県で分娩中に脳内出血で意識不明になった妊婦が、緊急で受け入れてくれる病院が見つからず、60キロ離れた大阪の病院に行くまで6時間以上かかって死亡しました。
病院を探す電話の対応だけで5時間もかかっていたことがわかりました。
救急搬送されながら、病院から受け入れを断られた妊婦は、全国で去年1年間におよそ2,600人に上ることも分かっています。
新水巻病院では、ホットライン番号を書いたカードを遠賀郡や北九州市内と周辺の50の開業医に配っています。
ホットラインにかかってくれば、1分足らずで受け入れが可能か不可能かを答えられます。
今年5月の開業から、胎盤早期剥離など半年で50件以上の転送を受け入れ、妊婦と子供の命を救ってきました。
周産期センターの産科医は現在、齋藤医師と今月入った倉員医師の2人だけ。
しかし、救急車から運び込まれる妊婦の順路を短かくして、小児科医や助産婦とも常に連携することで、救急車到着後17分で手術や出産を始められるよう工夫されています。
365日、24時間、緊急受け入れに対応している齋藤医師。
過酷な勤務ですが、赤ちゃんを抱いて退院していくお母さんたちの姿を見送ると何よりもほっとすると言います。