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■経済

松下、液晶テレビ強化 薄型パネル生産で提携

 松下電器産業がキヤノン、日立製作所と薄型テレビのパネル事業で包括提携し、液晶テレビ事業の強化に乗り出す背景には、自社株など潤沢なM&A(企業の合併・買収)資金の存在がある。松下の大坪文雄社長は「自社株はM&Aなどに活用したい」と宣言しており、主力事業の薄型テレビ市場の覇権獲得のためにも“虎の子”を活用することになりそうだ。

 「自社株と手持ち資金などを合わせると、どんな会社でも買うことができる」

 11月、大阪市内のホテルで開かれた松下のOB会で大坪社長はこうあいさつしたという。

 松下は平成14年から自社株買いをスタート。保有比率は発行済み株式の13・9%に達し、保有株の時価総額は約7600億円。現金資産から有利子負債を差し引いたネットキャッシュは1兆3500億円(9月末)になり、合計すると2兆円を超える。

 これまで松下は自社株で10%を超える保有分について「毎年度末に消却する」というガイドラインを設定していたが、7月の決算発表で「自社株は消却せず、M&Aに使っていく」(上野山実取締役)と方針転換。

 大坪社長も9月の個人投資家向け会社説明会で「自社株はM&A以外の目的で再放出する予定はない」と言い切った。

 今回のキヤノンや日立製作所との包括提携は、プラズマテレビ首位の松下が液晶テレビ事業を強化するのが目的だ。

 薄型テレビでは、プラズマの牙城とされてきた大画面に、シャープやソニーなど液晶陣営が攻勢をかけており、37型以上の大画面をプラズマで一本化してきた松下も、40型台前半までは液晶テレビのラインアップをそろえる必要に迫られた。

 加えて、松下は今年度の薄型テレビの販売目標をプラズマ500万台、液晶400万台と設定しているが、「液晶テレビに需要があるのは分かっていても、台湾メーカーなどからのパネル供給量が足りないため、目標達成が厳しい」(関係者)のが現状といい、パネルの安定供給を確保する意味合いも強い。

 さらに、次世代パネルとして注目される有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の共同事業化も目指しており、薄型テレビ事業を同社の将来戦略に不可欠な投資と位置づける。

 ただ、この11月に着工した世界最大級のPDP(プラズマ・ディスプレー・パネル)尼崎第3工場の総投資額は2800億円。

 日立の全額出資子会社の中小型液晶パネル製造会社に対する出資は1000億円超とみられ、約3000億円を投じて大画面液晶テレビの新工場を新設することなどを考えると、プラズマを含むパネル事業全体で、少なくとも7000億円規模の巨額投資になる。

 ある金融関係者は「薄型テレビ事業は巨額投資なしには勝ち抜けないが、投資に見合う収益が確保できるかが問題だ」と指摘する。

 

 (2007/12/20)

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