前回まで3回にわたって、「1GB=2,000円時代のメモリ増設を考える」というテーマでお届けしてきた。この原稿を書いている時に心配だったのは、まさか1GB DIMMが1,000円を切るような事態にはならないよな、ということ。途中から1GB=1,000円時代に修正するようなことになったらカッコ悪い。 幸いにも、どうやらメモリの価格は下げ止まり、1GB DIMMは1,900円前後、2GB DIMMは3,500円前後で落ち着こうとしている。下げ止まったとはいえ、この価格は破壊的なレベルで、利益が出ているメモリメーカーはないのではないかと思われる。そして、これだけDDR2メモリの価格が崩落しては、ちょっとやそっとではDDR3メモリへの移行は進まない。今、多少DDR3メモリの価格を下げても焼け石に水の効果しか期待できないし、まさか次世代メモリを利益割れの水準で売ることなどできないからだ。できるならDDR2メモリの価格が反発したタイミングをつかまえてDDR3メモリの価格を下げ、価格差がグンと縮まったイメージで移行を促したいところだが、それが何時になるのか予想もつかない、というのが正直なところである。12月13日に開催されたAMDのFinancial Analyst Dayで公表された同社のロードマップでも、2008年の製品すべてからDDR3の文字が消えてしまった。来年もDDR2がメインストリームになることは、どうやら決まりのようだ。 これだけ価格が安くなった以上、メモリを買うなら2枚単位、その方がデュアルチャネル動作にもなるし、と考えて、中編のテストはデュアルチャネルモードのみのテストを行なったのだが、シングルチャネルはどうなのさ、という指摘を読者の方からいただいた。確かに新規購入に限らず、増設するユーザーだっているし、4GB以上のメモリが自由に活用できない現状を考えると、追加購入するメモリは2枚単位とは限らない。ちょっと追試をしてみることにした。 ●シングル/デュアルチャネルで比較する 今回もテストに使ったのは、表1のような構成のシステム。全く同じでは芸がないので、CPUを最新45nmプロセスのCore 2 Extreme QX9650(Yorkfield)にしている。また、光学ドライブもシリアルATAの製品(AOpen DSW2012SA)に交換しているが、これがテストのスコアに影響していることはないハズだ。OSは32bit版のWindows Vista Ultimateに絞っている(前々回のテストから、32bit版と64bit版でテスト結果の傾向が変わらないことが見てとれたため)。
【表1】テストPC1
試したメモリの構成は図の1〜4の4通り。構成11は素直な2枚の2GB DIMMによるデュアルチャネル構成で、前々回との比較用だ。構成2は2枚の1GB DIMMを使っていたシステムに安価になった2GB DIMMを1枚追加するというシナリオ。初期のチップセットと違って、現在のIntelチップセットでは、この構成でもデュアルチャネル動作となるから、面倒くさがらず、1GB DIMMを片側に寄せる方が望ましい。構成3は、ズボラな人? の増設パターンで既存のDIMMはそのままで、空いているスロットに2GBのDIMMを挿しちゃえ、というもの。動作はシングルチャネルになる。構成4は1GB DIMMが1枚しかなかったシステムに2GB DIMMを1枚追加するという、倹約家向け? のシステムであり、当然動作はシングルチャネルだ。
さてその結果だが、もう見事なまでにどれも同じ。メモリ容量が256MB少ない構成4のスコアが若干低いが、PCMark Vantageの測定誤差はこの差よりも大きい。事実上は同じと見て良いと思う。前々回のスコア(PCMarkが4400前後、Memoriesが3700前後)に比べてスコアが伸びているのは、もちろんCPU換装の効果である。
【表2】メモリ構成とPCMark Vantageのスコア
それではというわけで、チップセット内蔵のビデオ機能を用いたテストPC2(表3)でも同じテストを繰り返してみた。このシステムではハードウェア構成上、PCMark Vantageのすべてのテストを実施することができないが、メインメモリの一部をビデオ機能にも用いるこのシステムなら、テストPC1とは異なる結果が得られるかもしれない、と思ったのである。
【表3】テストPC2の構成
ところが、やはりここでも得られたスコア(表4)は、メモリの構成を変えても同じ。すべてのテストを実行できないこともあって、スコアそのものは下がっているが、どのメモリ構成でもスコアが変わらないという傾向は、テストPC1の時と同じだ。
【表4】メモリ構成とPCMark Vantageのスコア
ならば、ということで、チップセットにnForce 680i SLIを使ったマザーボード(GIGABYTE GA-N680SLi-DQ6)まで引っ張り出してみた。このマザーボード/チップセットは、前々回のテストに含まれていなかったので、64bit版Windowsと組み合わせた時にメモリがどれくらい認識されるかも合わせてテストしている。ただ、Intelのチップセットを用いたマザーボードに比べるとメモリモジュールとの相性がシビアで、メモリ構成は若干絞ったものにしている。特にモジュールを4枚フル実装した場合の安定性はかなり微妙で、PCMark Vantageの測定をあきらめたケースもある。
システムの構成は表5の通り。特に変わったところはないが、このマザーボード45nmプロセスのプロセッサに対応しないため、CPUをCore 2 Extreme QX6700(Kentsfield)に戻している。またテストはストレージデバイスをチップセットのサウスブリッジ(MCP55PXE)内蔵のシリアルATAインターフェイスではなく、オンボードに追加されたPCI Express x1接続のインターフェイスチップ(GIGABYTE シリアルATA2と刻印されたチップ)に接続しているが、チップセット内蔵シリアルATAではPCMark Vantageが途中で停止することが多く、若干不安定な動作が見られたためである。
【表5】テストPC3の構成
テスト結果は表6の通り。nForce 680iでも64bit版Windowsを利用することで、4GB以上のメモリを利用することができる。チップセットのアドレス空間がどれくらいあるのかは不明だが、8GBのメモリが全部利用可能なことからしても、64GBサポートしているのではないかと思う(現時点ではデータシートもないため確認不能)。
【表6】テストPC3におけるOSのメモリ認識量とPCMark Vantage(32bit)のスコア
PCMark Vantageのスコアでは、若干だがIntel製チップセットを上回る傾向が見られる。今回は動作が十分安定していなかったため掲載を割愛したが、チップセット内蔵のシリアルATAインターフェイスが利用できると、もう少しスコアは上昇する。またIntel製チップセットと比べると若干落ちるが、シングルチャネルモードとデュアルチャネルモードで、PCMark Vantageのスコアにほとんど差は見られなかった。ただ、動作の安定性という点からは、手持ちのモジュールをどんな順番にスロットに挿しても動作するIntel製チップセットに対し見劣りする点は改善を望みたいところだ。 というわけで、3回+番外編でメモリ増設の現実について見てきた。新しく組む場合の筆者のおすすめは、とりあえず2GB DIMMを2枚挿して4GB構成にすること。32bit OSだと700MBあまり利用できないメモリが生じるが、今のメモリ価格なら、この程度の贅沢は許されると思う。この方が1GB DIMMを買い込むより、次のシステムにメモリを持ち越した場合、使い勝手が良いハズだ。DDR3への本格的な移行が2009年以降だと思われる以上、次のシステムが再びDDR2になる可能性は十分考えられる。
□関連記事 (2007年12月20日) [Reported by 元麻布春男]
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