【ニューヨーク小倉孝保】国連総会は18日、欧州連合(EU)などが提出した死刑執行の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成多数で採択した。国連が死刑のモラトリアム要求決議案を採択したのは初めて。総会決議に拘束力はないが、国際社会の多数意見を反映するものとして加盟国には一定の圧力となる。
賛成はEUのほかトルコ、イスラエルなど104カ国。反対は日本、米国、中国など54カ国、棄権が韓国など29カ国。総会内の第3委員会(人道問題)が既に同決議案を採択していたが、総会の採択で正式な決議となった。日本はモラトリアムが憲法に反することなどを理由に一貫して決議案に反対した。
この結果を受け、潘基文(バンギムン)国連事務総長は「国際社会の勇気ある一歩を象徴している。死刑廃止傾向が強まっていることの証拠だ」とする声明を発表した。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」も「反人道的な処罰を終わらせることへの歴史的な一歩だ」と歓迎した。
採択された決議案は▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する▽死刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める--とした。その上で、死刑執行を続ける国に対して▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす▽死刑廃止に向けてモラトリアムを行う--ことなどを求めている。
EUはここ数年、決議案採択を目指してきたが、そのめどが立たず、提案を見送ってきた。国連人権委員会(現在の人権理事会)では「死刑に疑問を投げかける」決議案が採択されたことがある。
米国では、ニュージャージー州が17日、同国で死刑が復活した76年以来初めて死刑制度を廃止するなど、死刑の是非を巡る議論が盛んになっている。
元死刑囚、免田栄さんは10月、国連内の討論会で決議案への支持を訴えていた。
毎日新聞 2007年12月19日 11時12分