◇県警、あす関係先を捜索
静岡市葵区でオールニッポンヘリコプター(東京都江東区、以下ANH)所属のNHK取材用ヘリが墜落し乗員2人が死傷した事故で、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は11日、機体後部の「テールローター」(後部回転翼、以下テール)につながる棒状部品「コントロールロッド」が破断していたことを明らかにした。事故調と県警は、飛行中にロッドが折れたことが墜落につながった可能性が高いとみて、調べを進める。【田口雅士、望月和美、浜中慎哉】
◇きょう機体引き上げ
県警は、12日に事故機を墜落現場から別のヘリで遊水池から引き上げるとともに、13日にはANHやヘリの目的地だった伊丹空港など関係数カ所を容疑者不詳のまま家宅捜索する方針だ。
ロッドは金属製の棒状部品で、死亡した小宮義明機長(57)が事故前に不具合を伝えた「ラダーペダル」(操縦ペダル)の動きをテールに伝える役目をする。ロッドが破断すると、テールの操作ができなくなり、機体のバランスが取れなくなってしまう。
この日、事故調の調査官3人は墜落現場近くの静岡へリポートでANHの社員などから聞き取り調査をした。調査後、福田公爾調査官は「事故状況から考えると、ロッドは上空で破断した可能性が高い」と述べた。事故調は事故機と同様の構造を持つヘリ38機の一斉点検を、ANHなど16社に指示した。
航空評論家の青木謙知氏は「ロッドが破断したとすると、機体が数回転しながらきりもみ状態で墜落した目撃状況と合致する」と説明する。
なぜロッドは破断したのか。前田弘・京大名誉教授(航空工学)は「走行中金属製のロッドが破断することは普通はありえない。何らかの原因で大きな力がロッドに加わったのだろう」と話す。青木氏は「走行中に別の部品とぶつかって折れた、腐食していて折れやすい状況だった、走行前から折れていた、などが考えられる」と指摘した。
事故調は「過去に、(走行中にロッドが)破断した事例は知らない。どの時点でどのように破断したかを調査する必要がある」と説明。今後、入院中の亀山幸代整備士(33)の容体を見ながら事故当時の事情を聴くとともに、ロッドの破断面を電子顕微鏡を使うなどして破断原因を詳しく調べる方針だ。
12月12日朝刊
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