忠臣蔵の外伝物3作品が並んだ。「松浦の太鼓」以外の2作は久々の上演となる。
最初が「堀部彌兵衛(やへえ)」(宇野信夫作、松貫四(かんし)監修)。浅野家家臣、堀部弥兵衛(吉右衛門)は、高田馬場のあだ討ちで見た中山安兵衛(歌昇)にほれ込んで養子とする。15年がたち、主君、内匠頭のあだ討ちの日となった。
時の流れが弥兵衛と妻、たね(吉之丞(きちのじょう))を老いさせ、幼い娘、さち(隼人)を安兵衛の妻となるにふさわしい大人とした。あだ討ちへ向かう前に老若2組の夫婦が別れを惜しむ姿に、対比と情が出た。
続いて「清水一角」。宴席に呼ばれなかったことがおもしろくない吉良家の武士、一角(染五郎)は、同役の丈左衛門(歌六(かろく))の家を酔って訪れる。丈左衛門をののしって締め出されて自宅へ帰り、弟の与一郎(種太郎)、姉のお巻(芝雀)に意見されて寝入る。そこへ討ち入りの陣太鼓が聞こえてくる。
酔っていた一角が、討ち入りに気づくや正気づく。染五郎の変わり目が鮮やかだ。衣装を着ながらの丈左衛門との立ち回りがおもしろい。芝雀、種太郎が役に合った演技を見せる。
最後が「松浦の太鼓」。浪士のあだ討ちがないのを憤っていた松浦鎮信(しずのぶ)が、陣太鼓を聞くや色めきたち、助太刀をすると言い出す。吉右衛門があたり役の鎮信で、人のいい殿様を芝居心たっぷりに気持ちよく演じ上げる。歌六の其角、染五郎の源吾、芝雀のお縫と周囲もいい。26日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2007年12月19日 東京夕刊