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「イージス艦ミサイル迎撃」、成功報道の危うさ


12月19日(水) 15時50分
文:東  



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「こんごう」から発射されるSM3(米ミサイル防衛庁サイトから)
 果たして北の「ノドン」は撃ち落とせるのか。

 防衛省は海上配備型迎撃ミサイル(SM3=Standard Missile3)を搭載した海上自衛隊のイージス艦「こんごう」が17日、ハワイ沖で初めて弾道ミサイル迎撃実射訓練を実施し、模擬ミサイルを大気圏外で迎撃したと発表した。

 日本は、北朝鮮が1998年8月、日本列島越しにテポドン1を発射したことを機に、米国と共同で弾道ミサイル防衛(BMD=Ballistic Missile Defense)の早期配備を検討してきた。

 周知のように北朝鮮は昨年7月5日午前3時30分から午後5時20分頃にかけて計7発のミサイルを発射、ミサイルはロシア沿海地方南方の日本海に落下した。

 7発のうち3発目は、北朝鮮北東部舞水端里(ムスダンリ)基地から発射された長距離弾道ミサイル「テポドン2」(射程6,000キロ)。残る6発は南東部の旗対嶺(キッテリョン)付近から発射された短距離弾道ミサイル「スカッド」(同300〜500キロ)と中距離弾道ミサイル「ノドン」(同1,300キロ)とみられている。ノドンは液体燃料推進方式のミサイルで、日本のほぼ全域が射程に入ると推定されている。

 停電の頻発や燃料不足など、困窮する実態はともかく、前述したミサイル発射や核実験によって昨今、北朝鮮の脅威が強まっていることは確かだ。

 ブッシュ政権はBMD構想を国防政策の重要課題に位置づけており、日本のほか、英国、オーストラリアが参加しているが、その有効性を十分証明したとはいえず、カナダはBMDの不参加を決めている。

 BMD構想はレーガン政権時代のSDI構想が端緒で、以降、歴代の政権は10兆円を超える開発投資を行ってきた。米国は02年6月13日、弾道ミサイルを迎撃するミサイル・システムの開発や配備を制限するABM条約を脱退してまでミサイル防衛に注力している。

 米国のBMDは、弾道ミサイルを飛翔経路別に迎撃する「多層防衛」を目指している。発射直後で加速する「ブースト」段階、ロケットエンジンの燃焼が終わって大気圏外を飛行する「ミッドコース」段階、弾頭を切り離し落下直前の「ターミナル」段階だ。

 日本は99年から海上配備型ミッドコース防衛システム(迎撃ミサイルの4部品)の日米共同研究をスタートさせた。03年12月には、イージス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル「SM3」、地上配備型地対空誘導弾「パトリオット・システム」(PAC3=PATRIOT Advanced Capability-3)の導入を閣議決定した。

 すでにPAC3は埼玉県の航空自衛隊入間基地に配備されており、「こんごう」の実射訓練によって、「陸」と「海」の2層による防衛は、「訓練成功」の報道も加わって、ミサイル迎撃態勢は万全であるかのような印象を与える。

 しかし、敵国のミサイルがSM3が届かない高度を飛翔した場合、撃ち落すことはできない。さらに移動式発射台に搭載されるノドンが、発射直前まで地下やトンネルに隠されていれば、イージス艦が弾道下に移動する時間はない。

 イージス艦情報流出事件で海自3佐が逮捕された直後、「こんごう」が米国で弾道ミサイルの迎撃訓練をしたことは前進である。

 それでもBMDシステムの整備は1兆円を超える費用を要する見通しだ。同盟国とはいえ、精度の裏付けが明らかでない“代物”を米国から押し付けられて首肯する防衛族が、汚職で逮捕された守屋武昌・前防衛次官をほうふつとさせるというのは考えすぎだろうか。






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「こんごう」と同型のイージス艦「みょうこう」。右は4基搭載して360度の脅威を自動追尾するレーダー。左下は艦の前後2カ所に搭載される垂直発射装置



関連サイト

防衛省 護衛艦「こんごう」SM−3発射試験の結果について
http://www.mod.go.jp/j/news/2007/12/18.html

米ミサイル防衛庁 日米ミサイル防衛飛翔テスト成功
http://www.mda.mil/mdalink/pdf/07news0053.pdf






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