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立ち上がる助産師「助産師外来」で産後の骨盤ケアを指導する助産師。産前・産後のケアで、「いいお産」をサポートするのも助産師の専門分野だ
「今まで医師に頼りきりだった」。お産の現場を失い、こう心境を明かすのは、厚木市立病院(神奈川県)のある助産師。産科医不足による「産科」の休診が、この病院でも今年8月、現実となった。 医師の立ち会いがなくても助産師のみで分娩(ぶんべん)を扱えるが、「緊急時に対応する医師がいなければ、助産師だけでは安全性が確保できない」と判断した病院は、分娩の取り扱いを休止した。 休診した「産婦人科」の上に、急ごしらえで張り付けられた「助産師外来」の看板
医師が去った「産婦人科」の看板は、「助産師外来」と書き換えられた。残った助産師らは、産前・産後のケアや保健指導を自主的に開始。他の病院へ研修に出向くなどして助産技術の向上に努めている。「医師が戻り、お産ができる日に備えているのです」。吉塚弥生看護局長が力を込めた。将来的には、助産師主体でお産を扱う「院内助産院」を開設するつもりだ。 全国の助産師約2万6000人のうち、8割以上は病院や診療所で働く。しかし、資格を持ちながらお産を扱わない助産師は約3800人以上(日本看護協会調べ)にも上る。相次ぐ産科の休診が背景にある。「医師と助産師はお互いの専門性を尊重し、連携することが今求められている」。日赤医療センター(東京・渋谷区)の杉本充弘産科部長は強調する。 妊婦や新生児用のベッドが白いシーツで覆われた厚木市立病院の陣痛室。市では、1人につき年1000万円の厚遇で産科医を募集している。「月に5、60件もお産を取り上げたのに…」。助産師がつぶやいた
産科医不足が著しい岩手県の中でも、5年以上も産科医不在が続く遠野市。助産師が市外の病院の産科医へ、妊婦と胎児の心拍数などをインターネットで送る「モバイル遠隔健診」が昨年10月始まった。今月1日オープンした市運営の助産院内で本格運用する。産科医不在地域に市職員の助産師が常駐するため、妊婦にとっても心強い。 休診で空き部屋となった厚木市立病院産婦人科のナースステーションで、院内助産院の開設に向け話し合いをする、内科や外科などの看護師として働く助産師たち
長女を出産したばかりの菊池真由美さん(35)は「雪道を運転し、医師のいる隣の市まで通院する回数が減り助かった」と話す。市は県内九つの病院と提携。モバイル健診で出産間近の母体の状態を把握し、救急搬送の対応も可能になった。 「私たちは助産のプロ。産前から産後まで、いつも妊婦に寄り添い、お産をサポートしてきた自負がある」。産科医不足を嘆いてばかりではいられないと、助産師たちが立ち上がった。 カメラとペン 江口聡子 <メモ>助産師 (2007年12月19日 読売新聞)
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