−発表資料−

2004年7月29日

洋式トイレのニオイの原因で落としにくい
“ふち裏汚れ”は、こんな家庭でできやすい!
“男性が小用を立ってする”“温水便座使用”
“便座カバー使用”“常時便器のふたを閉める”
ポイントは「尿の飛び散り」と「温度と湿度」


 ライオン株式会社(社長・藤重 貞慶)ハウスホールド第2研究所は、2003年に洋式トイレのニオイの原因で、しかも、落としにくくて困っているのは、便器の“ふち裏汚れ”であることを明らかにし学会で報告しました。この“ふち裏汚れ”は、ほとんどが「尿石」と呼ばれる汚れであり、リン酸カルシウムなどの無機汚れと酸性タンパク質などの有機汚れが強固に結合したもので、飛び散った尿と菌により生成し、一度付着すると落としにくくなってしまうことを確認しています。
 そこでこの度、便器の“ふち裏汚れ”ができやすい家庭の条件を調べたところ、1)洋式トイレで男性が立った姿勢で小用を行い、特に、水たまりの“手前”や“奥”を狙っている、2)温水便座を使用、3)便座カバーを使用、4)常時便器のふたを閉めている、の4つのポイントが確認されました。

以上に関連する研究内容を、8月3日、国立京都国際会館にて開催される「日本家政学会 第56回大会研究発表会」で報告する予定です。



1.研究の背景
 当社ハウスホールド第2研究所は、洋式トイレで最も落としにくく困っている“ふち裏汚れ”について研究を進めてまいりました。そしてこの汚れは、「尿の飛び散り」が繰り返し付着することで便器のふち裏に尿由来のリン酸カルシウムなどの無機汚れが堆積するとともに、付着した菌が増殖する時にタンパク質などの有機汚れを生成するため、無機汚れと有機汚れが強固に結合して複合物となった「尿石」汚れとなり、落としにくくなることを明らかにしました。
 以上の結果を、昨年10月に「日本油化学会・洗浄に関するシンポジウム」で発表しました。


2.本研究の目的と研究方法
 一般的に便器のふち裏の「尿石」汚れは、「尿の飛び散り」が多いほど、かつ、「温度と湿度」が菌の繁殖しやすい条件であるほど堆積しやすいと推察できます。ちなみに、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの菌が繁殖しやすい環境は、温度35〜40℃、湿度80%以上といわれており、高温多湿の環境では菌の増殖が助長され、“ふち裏汚れ”が加速して増加すると考えられます。
 そこで本研究では、便器の“ふち裏汚れ”がつきやすい家庭の条件を明らかにすることを目的に、家庭で“男性が小用をするスタイル”と、家庭の便器内の「温度と湿度」の測定を行いました。
 まず、“男性が小用をする際のスタイル”についてはアンケート調査を行い、その結果をもとに、小用の仕方別に尿の跳ね返りのモデル実験を行い、飛び散りの状態を調べました。
 また、菌の繁殖に影響するふち裏の温度と湿度の環境については、実際の家庭のトイレ内に記録計を設置し測定を行いました。


3. 研究結果
(1) 便器内の「尿の飛び散り」は、男性の小用のスタイルが大きく影響
“立ってする派”で、“手前”狙いや“奥”狙いは、尿の飛び散りが激増

 20〜50代の男性104名を対象に、トイレで小用をする際のスタイルについてアンケート調査を行った結果、約8割が“立ってする”と回答しました。さらに、“立ってする”場合に狙う位置は、水たまりの“手前”が43%、“中央”が36%で、“奥”は14%であることがわかりました(図1)。
 そこで、男性が小用をする仕方と尿の飛び散り方の関係についてモデル実験で調べました。モデル実験は、着色水を入れた注射型容器から実際の条件に合わせて放水し、着色水の飛び散りの状態を調べました。その結果、“立ってする”場合を想定した方法では、“座ってする”場合に比べ、ふち裏のどの部分にも尿が飛び散りやすいことを確認しました。さらに、“立ってする”場合で、狙う位置と飛び散り方の関係を見てみると、主流である“手前”狙いの場合、便器手前<図2の(2)部分>のふち裏への飛び散りが最も多く、それに派生して便器両側<同(3)部分>のふち裏にもかなりつくことが確認できました。また、“奥”狙いの場合も、便器奥<同(1)部分>のふち裏への飛び散りが最も多く、便器両側<同(3)部分>にもかなりつくことが確認されました。なお、“中央”狙いの場合は、他の場合に比べるとふち裏への飛び散りがやや少ないことがわかりました。


(2) 温水便座を使用している家庭の便器内の「温度」は高く、菌の増殖に好環境
 現在、温水便座の普及率は52%です(内閣府調べ、2003年)。
 本年4月、30世帯の家庭において、トイレ室内の空間温度と便器のふち裏の温度を調べた結果、トイレ室内の温度が平均20℃であったのに対して、温水便座を使用している家庭では、便器のふち裏の温度が平均5℃高く、20℃以上と菌の繁殖に絶好の温度になっていることがわかりました。
 これより、夏場はもちろん、菌が増殖しにくい条件にあると考えられている冬から春先であっても、温水便座を使用している家庭では、便器のふち裏付近の温度は菌の増殖にとって好条件に保たれていると考えられます。


(3) 「常時トイレの便器のふたを閉めている」、「便座カバーを使用している」場合、便器内の「湿度」は高まり、菌の増殖に好環境
 便器のふち裏の湿度についても調べました。
 その結果、ふち裏の湿度は水を流すたびにトイレ室内の湿度より約20%上昇しますが、「常時便器のふたを開けている」家庭では、一端上昇したふち裏の湿度は速やかにトイレ室内の湿度と同程度にまで下がります。しかし、「使用後に便器のふたを閉める」家庭では便器が密閉状態になるため、上昇したふち裏の湿度が下がりにくくなっていることを確認しました。
 さらに、使用後に便器のふたを閉める家庭で、「便座カバーを使用している」場合には、常時、ふち裏の湿度が100%程度になっており、極めて菌が繁殖しやすい環境であることがわかりました。
 なお、アンケート調査で便器の“ふち裏汚れ”のつきやすさについて聞いたところ、「常時、便器のふたを閉めている」家庭では20%が「かなりついている」と答えており、「常時、ふたを開けている」家庭に比べ、約2倍の家庭で“ふち裏汚れ”が「かなりついている」と回答していました。

 以上の結果より、便器の“ふち裏汚れ”の生成しやすさには、男性が小用を“立ってする”かどうか、「温水便座」や「便座カバー」の使用の有無、「平常時の便器のふたの開閉状態」などの条件が影響を及ぼすことがわかりました。


4.トイレを快適にするための情報と製品の提供
 当社は、便器の“ふち裏の尿石汚れ”に対して、酸とカチオン界面活性剤を活用する技術により、効率的に洗浄できることを見出し、この技術を応用したトイレ用洗剤『トイレのルック』を昨年10月に新発売しました。 
 使用者から、「10年来落とせなかったふち裏の尿石汚れが落ちた」「気になっていたふち裏の汚れがすっきり落ちて感激した」など、賞賛の声が多数寄せられ、トイレの“ふち裏の尿石汚れ”を効率的に落とせる洗剤としてご愛用いただいております。
 夏場は特に、トイレ室内の温度・湿度が高い状態になるため菌が増殖しやすく、便器の“ふち裏汚れ”が堆積しやすく、においやすい環境にあります。
 当社は今回の研究結果をもとに、今後もお客様にトイレを快適にするための情報と製品を提供してまいります。


「日本家政学会 第56回大会研究発表会」発表概要
・開催日 2004年8月3日(火)
・会 場 国立京都国際会館(京都府京都市左京区宝ヶ池)
・演 題   「便器のふち裏汚れに及ぼすトイレ行動と環境の影響」
・発表者 鈴木 彩子、長谷川 貴通、岡野 知道、米山 雄二
(ハウスホールド事業本部 ハウスホールド第2研究所)

資料はこちら PDF


以上

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