■短期は低年齢化/多彩なプラン展開
冬休みなど学校の長期休暇に単身で欧米の学校で語学研修を受ける子供向けの海外留学。こうした留学プランに参加する子供の年齢は年々低くなっているという。仕事や海外旅行などで語学力の必要性を感じる親が増えたのが背景にあるとされるが、親の思惑よりも子供が自分で留学の意義を理解することが成果の鍵になるという。(小川真由美)
東京都内在住の会社員、鈴木里美さん(39)=仮名=は、5歳の長男を英会話学校に通わせている。小学1年の夏休みには短期留学をさせる予定だ。「これからは英語ができて当たり前。語学は早く始めたほうがいい」と鈴木さん。鈴木さんと会社員の夫(46)の英語力はともに日常会話程度。「子供には語学で苦労させたくない。英語ができれば仕事や人との出会いなど人生の幅が広がると思う」と話す。
20年前から学生向けの留学を斡旋(あっせん)してきたアルク・グローバルパートナーズでは小学生の留学希望者が7、8年前から徐々に増加。現在は6〜18歳のジュニア向けにイギリスやカナダ、スイスなど欧州の学校に2〜4週間単身で滞在する短期留学を用意。世界中から集まった参加者といっしょに午前中は英語を学び、午後はゲームやスポーツを行う。週末は動物園やテーマパークへの遠足や観光地の見学などを行うものが大半だ。希望者の低年齢化が進み、ここ1、2年は子供が5歳のうちから申し込む親が目立つという。
同社では今年、6〜14歳対象のスイス留学を企画したが、募集のパンフレットができた2月にはすでに完売していた。小学生が参加可能な留学プランの有無を電話で確認してきた親が、昨年のうちに予約をしたためだ。費用は授業料や滞在費、寮での食事代など計29万〜97万円(飛行機代別)と決して安くないが、海外留学の人気は過熱ぎみだ。
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旅行代理店のエイチ・アイ・エスでは、米・ハワイやイギリスで母親が語学のレッスンを受け、その間に子供は現地のチャイルドケアセンターに預ける親子留学が人気。子供の大半が3歳以下だという。また今年夏に7歳から17歳まで参加できる本格的な短期留学のコースを設置したところ、参加者の多くは小学4年生前後だった。今後も低年齢の子供の参加が見込まれることから、同社では来年から、子供が単身で参加する全プランに、添乗員とは別に看護師を同行させ、きめ細かなケア態勢を整備する。
人気の理由について、アルクのシニアマネジャー・清水恵子さんは「5〜7歳は学校などの拘束が少なく、親が留学を決断しやすい。学歴のためでなく早くから国際感覚を身につけさせたいという親が多い」と話す。
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ただ、短期とはいえ幼少時から海外に留学することは環境の激変を伴う。子供に負担はないのだろうか。
ISS国際交流センターは、ジュニア留学の低年齢化の流れを受け、来年から子供のケア全般を担うツアーリーダーをプランに新設する。だが同社の大塚哲雄社長は「欧米は子供が幼児の時から常に自分で考え行動させる。だから自立心が強いし身の回りのこともできるが、親が子に世話を焼く日本の子供は留学になじめないこともある」と指摘する。
アルクの清水さんは「親子で留学する理由をよく話し合い、留学後を見据えた計画を持つ子供のほうが伸びる。親の押しつけで行くと、子供がショックを受けることもあり、将来英語が話せるようになっても親子関係がこじれるおそれがある」と話している。
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