17日に決定された新たな少子化対策に基づき、政府は必要な法改正や具体的制度設計の検討に入る。福田康夫首相は「経済界、労働界、地方、有識者が参加し(一連の対策が)まとめられた意義は大きい」と胸を張るが、幅広い理念を示した重点戦略の実現には課題も山積している。
重点戦略の大きな柱である働き方改革「仕事と生活の調和」(ワーク・ライフ・バランス)では、労使が利害を超えて、就業率や有給休暇取得率など14項目の5年、10年後の具体的数値目標設定にこぎつけた。ただ、目標達成には強制力はなく、どこまで実現できるか不透明だ。
ワーク・ライフ・バランスは、結婚、子育てなど人生のさまざまな段階に対応した柔軟な働き方の普及を目指す理念だが、過労死が生まれるほど長時間労働が常態化した社会風土を変えることは容易ではない。
政府は、数値目標の進み具合をチェックする態勢を整えるとともに、企業経営者をはじめ国民全体に理解が進むよう、分かりやすく説明をする努力が求められそうだ。
一方、支援策拡充に必要な支出の試算を提示したにもかかわらず、裏付けとなる財源に言及できなかったことも中途半端な印象となった。
政府は1月に、社会保障に関する国民会議を設置し、消費税率の引き上げなど負担と給付の在り方の検討に入るが、重点戦略を踏まえた少子化対策の財源についても結論を出せるか問われる。
17日には、御手洗冨士夫日本経団連会長や高木剛連合会長など経済界や労働界の代表者も参加して、「ワーク・ライフ・バランス憲章」もまとめられた。だが、働き方改革の成否のカギを握っているのは、国民1人ひとりだ。
重点戦略が締めくくりで指摘するように、自然に子育ての喜びや大切さを感じることができるようになるよう、社会全体の意識改革に取り組む必要がある。(今村義丈)
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