◎能登沖の地層 新事実確認なら公表が大事
志賀原発沖合の海底に、大小八本の地層のゆがみ(褶曲(しゅうきょく))があり、そ
の下に活断層が存在する可能性があるという。原発の安全性に大きな影響はなさそうだが、北陸電力がこの事実を四年前に把握していながら、今ごろになって公表するのはいただけない。自社に不都合なことを隠していたと見られかねないだろう。
電力会社など公共性の高い企業の場合は特に、地域の安全・安心にかかわる新事実が判
明したら、自社にとって不利なことでも、速やかに公表することが大事である。地域とともに生きていく決意のほどが、その一挙手一投足に透けて見えることを忘れないでほしい。
志賀原発の沖合に活断層がある可能性は、同社が二〇〇二年から三年にかけて行った海
底地形の再評価で明らかになった。褶曲の下には活断層があるという見方が有力になったのを受け、北電が再度調べたものである。このとき、最大でマグニチュード(M)7の地震を起こす恐れがあることが判明した。
北電は志賀原発沖の褶曲について、原子力安全・保安院に報告し、それで十分と考えた
のだろうが、地域への目配りが欠けていたのは残念というほかない。海底の断層などは十分な調査がされていないだけに、北電が持つ地質データは貴重であり、もっと積極的に公表していれば、地震対策の強化につなげることもできたかもしれない。どんなに小さく、不都合な事実でも隠しごとをしない企業体質、企業風土を確立してほしい。
問題の褶曲は、志賀原発から二十三キロ離れており、最も影響がありそうな十五キロ沖
合の褶曲でも、想定される揺れは二五八ガルにとどまり、志賀原発が想定している四九〇ガルを下回る。今春発生した能登半島地震との関係も薄いとみられ、それほど神経質に考える必要はあるまい。
ただ、たとえ安全性に問題がなくても志賀町の沖合に活断層があり、M7の地震が起き
る可能性を地域全体が知っておくことが必要だった。原発さえ安全なら、それでよいと考えていたのだとしたら、地域の一員としての自覚が足りないと言うほかない。こうした問題を何度も繰り返さぬために、地域共生本部が果たす役割は重要である。
◎郷土料理百選 大根ずしもうまいのだが
農林水産省の「郷土料理百選」に石川県から選ばれた「かぶらずし」と「治部煮」は、
いずれも古くから伝わる石川を代表する料理であり、ふるさとの味のトップバッターの栄誉を受けることに、だれも異論はあるまい。が、味覚の宝庫である北陸には、この二つに負けず劣らず、加賀、能登の風土に根ざした名物料理が数多いのも事実であり、石川の味の代表が二点だけというのは何とも忍びない気がする。
たとえば、かぶらとブリでつくる「かぶらずし」との対比で言えば、大根と身欠きニシ
ンを材料とする「大根ずし」もまた、家庭の味として長く伝えられ、かぶらずしとは異なるさっぱりとした食感で、今も根強い人気がある。県内から惜しくも百選に選ばれなかった料理の数々もまた、その土地を代表する郷土の味として、今後も胸を張って推奨していきたい。
郷土料理百選は、農山漁村の活性化を目的に、その土地の暮らしの中ではぐくまれ、地
域独自の調理法で受け継がれてきた料理を選ぶ初の試みで、今回は全国から募った千六百五十候補の中から、人気投票などの結果を参考にしながら、山形の「いも煮」、鹿児島の「鶏飯」、秋田の「きりたんぽ鍋」など九十九品目を選んだ。
ちなみに人気投票では、石川県内の郷土料理ランキングとして、百選に選ばれた二品目
が一位、二位を占めたが、いしる料理やぶり大根、甘エビ、加賀野菜料理、こんかいわしなどが上位に入り、全部で五十九品目に票が入った。
これは、投票された品目数としても、他の都道府県が三十前後なのと比較して、大分の
七十三品目、富山の七十二品目に次いで格段に多く、これだけ見ても、海、山の幸の豊富さと、その食材を生かした石川の料理の多様さを物語っている。
石川県からは、伝統的な料理もさることながら、奥能登各地の自慢の食材を生かした「
能登丼」などにみられるように、新しい趣向の料理も次々と生まれてきている。百選に選ばれたかぶらずし、治部煮を筆頭に、濃密な食の宝庫として、これまで以上に一体感をもって郷土石川を発信していきたい。