茅野市玉川の組合立諏訪中央病院で、胃がんの治療を受けていた同市内の男性=当時(84)=が、入院から約2カ月後に多臓器不全で死亡した際、病院側が余命を認識しながら、適切な治療と家族への説明義務を怠ったとして、遺族が同病院を運営する諏訪中央病院組合相手に、慰謝料約2000万円を求める損害賠償訴訟を地裁諏訪支部に起こしたことが18日、分かった。
訴状によると、男性は1997年10月上旬に大量の血が混ざった排便をしたことなどから、同病院を受診し、進行性の胃がんで余命3カ月程度と診断され入院。手術を想定した胃バリウム検査や腹痛を抑えるモルヒネ投与などの治療を受けたが、11月下旬に死亡した。
病院の治療のうち、バリウム検査では、事前に肺機能などのチェックをしなかったため、バリウムが気管に流入。男性に肺炎を発症させた。一方、モルヒネ投与では、呼吸回数の減少、無呼吸状態や意味 不明な言動の増加など、過剰投与による副作用の 症状が現れていたにもかかわらず、漠然と投与し続けた。
急変後の患者の苦痛軽減のため、心停止後に蘇生措置を行わないとした方針は、一部の家族に延命治療と蘇生措置との区別をあいまいに説明し、患者やほかの家族のはっきりとした意向を確認せずに決めた。
原告は「病院は治療方針、緩和医療、延命及び蘇生措置について10分な説明をしない まま治療を進め、患者の医療に対する自己 決定権と人間らしい死を迎える権利を奪った」と主張している。
提訴について同病院は「病院としての対処に間違いはなかったと考えている。訴状の内容を検討し、対応したい」としている。
第1回口頭弁論は来年1月10日に開かれる。