今夏、倉敷市の市民訪問団に同行して姉妹都市・カンザスシティーに向かう途中、入国審査のためサンフランシスコに立ち寄った。パスポートを提示するまでは二十数年前に訪れた時と同じだったが、その後スキャナーで左右の人さし指の指紋を採取され、さらに顔写真も撮影。事前に聞いてはいたものの、厳しいチェックに何となく体が硬くなってしまった。
二〇〇一年九月の中枢同時テロ以降、米国は外国人が入国する際の指紋採取と写真撮影を義務付けた。従来と比べ、かなりの待ち時間と手間を要するようになり、観光客らからはあきらめと同時に不満の声が消えないという。
この生体情報採取システムが、米国に次いで日本にも十一月下旬に導入された。来年七月の北海道洞爺湖サミットを前に、法務省はテロや不法就労者を水際で防ぐのに効果があることを強調するが、特別永住者を除く在日外国人を対象としたり、採取した情報を捜査機関が照会できるなど問題点も指摘されている。
一方で国は、日本を訪れる外国人旅行者を増やす「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を展開する。〇二年の五百二十四万人を一〇年に倍増させよう、という計画も、入国審査強化の現状を見ると、外国人に厳しいまなざしを向けながら手招きをしているようにさえ思えてしまう。
犯罪者の取り締まりは重要だが、そのために一般の外国人旅行者の印象を悪くするような対応は避けなければならない。日本の思い出が「入国の手続き」となっては、あまりに寂しい。
(社会部・前川真一郎)