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帰還兵の手記一冊に

2007年12月15日

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帰還兵の手記を本にした北口つや子さん=加古川市役所で

 太平洋戦争中、中隊でただ一人帰還した兵隊の手記を、加古川市加古川町木村の北口つや子さん(81)が出版した。亡き夫の友人だった帰還兵の手記に感動し、広く知らせる義務があると思ったからだ。15日午後1時半から播磨町二子の町東部コミュニティセンターで開かれる「加印平和のための戦争展」で、本を紹介する。

 手記を書いたのは04年に87歳で亡くなった中島満さん。パプアニューギニアのブーゲンビル島であった戦闘で、所属する中隊でただ一人生き延びた。この後、終戦まで1年近く他の部隊と合流して戦った。
 手記では「戦死か、餓死か、逃亡か、この三つの選択しかなかった」と極限状況を記している。戦闘の様子や仲間の死、飢餓についても赤裸々につづっている。
 北口さんの夫芳雄さんも出征し、戦後に軍人恩給を扱う仕事をしていて中島さんと知り合った。自分が出席する戦友会に中島さんを誘うなどして交流し、手記の存在を知った。手記の出版を勧めたが、実現しなかった。
 中島さんは亡くなる1年前ごろ出版に同意したが、芳雄さんも亡くなったため、つや子さんが2人の遺志を継いだ。題名は中隊が戦った地名から「シオミパイヤの苦闘 たった一人だけの帰還者」とした。
 15日の戦争展は教職員組合などでつくる実行委員会が主催。手記について北口さんと、中島さんの上官だった遠藤毅さんが話す。16日午後1時半からは「南京事件70年」をテーマに、幹栄盛・鶴林寺住職ら4人によるパネルディスカッションがある。両日とも戦争遺品や写真などを展示する。
 北口さんは「次の世代に語りつがれ、二度と戦争を起こさないようにしないと」と話す。手記は戦争展会場で希望者に無料で分ける。問い合わせは北口さん(079・422・6190)へ。

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