守屋武昌・前防衛事務次官の逮捕で、防衛省の体質が批判されている。腐敗を生んだ背景の一つとして、「機密」を指摘する声は少なくない。
機密といえば、沖縄の集団自決への日本軍の関与は、情報が住民から米軍へ漏れることを恐れたことが一因とも指摘されている。
「機密」は、権力を持つ者が、勝手な振る舞いをする場面に、たびたび登場する。
「強制集団死」とも沖縄では言われている集団自決について、教科書会社が「軍の関与」の削除を求められたのは、憲法9条の見直しを掲げ、防衛省を誕生させた安倍晋三政権のもとでだった。
その安倍前首相は、集団自決とともに日本軍の暗部と言われる従軍慰安婦問題を巡り、軍の関与について否定的な発言をし、内外から批判を浴びた。慰安婦問題では、米国、オランダに続き、カナダ議会でも先月28日に日本政府批判決議が出る事態になっている。
国家も過ちを犯す。しかし、民主主義の社会では、過ちを「機密」として封印することは許されていないのだ。【湯谷茂樹】
毎日新聞 2007年12月4日 大阪夕刊