[2006.12.24]

【この頃思うこと】自死遺族の社会的再構成に向けての課題のいくつか

 私もその一人ですが、家族を自死で失った人は、その出来事=喪失体験に傷つくだけでなく、「自殺」という社会的マイナスイメージによる社会的な傷つき=二次的被害(時に三次的被害も)を受けることになります。家族や近親者の死による喪失は、大きなストレスとなり、その体験から新たな社会生活を再構成していくまで、「喪の仕事」をじっくりと取り組める環境が必用です。
 「喪の仕事」ー喪の過程とは、1.ショック、否認(感情麻痺)、2.悲しみ、探索行動(思慕と探索)、3.怒り、恨み(混乱と絶望)、4.諦め、受け入れ(脱愛着と再起)と言われています。またBowlbyによるモーニング(悲哀)4段階説では、1.情緒危機の段階(数時間〜1週間、無感覚〜強烈な苦痛や怒りの爆発)-適応能力の低下、2.抗議-保持の段階(数ヶ月〜数年、思慕と探索)、3.断念-絶望の段階(絶望、失意、抑うつ、無気力)、4.離脱-再建の段階(喪失対象から自由になり新しい心のあり方の模索)ー(各段階は明確に区別できず、重なり合い漸進的な発現・消失、繰り返しや停滞もある)とされています。
 これらの各段階を適度に、より適切な環境で乗り越えることで、遺族や残された人は、自殺した人の死を受容し、喪失を一つの体験として整理し新しい生活への適応、社会生活の再構成をして行けます。しかし、この喪の仕事を取り組む環境によって、再構成への道のりは多岐にわたり、時に混乱し、より深い心理的ダメージとなったり(精神病理の発症を含む)、長期化したりします。
 家族の自死に際して、残された人がまずとらわれるのが、「なぜ早く気づけなかったのか」「何かできたはずだ」…といった自責感情です。これはするどい自己否定となります。そして、回りから「自殺するにはその家族にも原因があるのではないか」と思われているのではないか、という疑心(時には他者から具体的に表現・行動化される場合もあります)にさいなまれ、自身の存在自体に否定的になることも少なくありません。
 「自死」を、個人や家族の責任ととらえる風潮が日本では特に強いのではないでしょうか。最近「社会問題」となっている「いじめ自殺」においてさえ、「いじめられる側にも問題がある」という意識の根強さがそれを示していると思います。また、こうした自死遺族に対しての適切な理解が少ないことに加えて、遺族支援のシステムがほとんどない現実や、前述した社会的意識の中で、自死遺族の社会的再構成への過程は困難なものとなっています。
 年間3万人を超える自殺者を生み出し続ける日本社会。自殺や自傷行為を個人や家族の問題としてしか認識できない段階から、社会環境的要因によるものであるという認識への意識改革がすすむような啓発活動や、遺族支援のシステムづくりが早急に求められていると思います。
 次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(6)」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

<路上生活者襲撃>28歳容疑者「中学でいじめられ」

愛知県岡崎市での路上生活者襲撃事件は21日、リーダー格の無職、木村邦寛容疑者(28)が逮捕されたことで、今後は、中学2年の3少年(14)とともに事件に至った経緯の解明が進むことになる。木村容疑者については「中学時代にいじめられていた」との複数の証言があり、10歳以上も年下の少年との共謀という特異性に対しては「いじめ体験が少年を傘下に置いて威厳を示す心理的背景になったのでは」との専門家の指摘もある。「弱者の集団」がさらに弱い者を襲うゆがんだ構図が浮かぶ。
 関係者によると、木村容疑者は中学校までを同県幡豆(はず)町の実家で過ごした。その後、北海道の技術専門学校に入り、97年に卒業。実家の溶接工場で5年間勤務した後、職場を転々とした。今年9月中旬からは愛知県安城市の倉庫で荷詰め作業員として働いていたが、10月半ばから突然無断欠勤したという。
 中学時代の同級生の印象は一様に「おとなしい」。職場の印象も「きちんと敬語が使え、働きぶりはまじめ。おとなしい」だ。しかし父親は知人に「切れると怖い」と話し、二面性も浮かぶ。
 中学時代の同級生の男性(28)によると「2年生のころ、所属している友人グループ内でいじめられていた」。近所の女性(60)も「いじめられて学校を休みがちだった。海岸で1人で遊んでいる姿を見た」と言う。別の同級生の男性は「自分が彼の立場なら耐えられないくらい、からかわれていた。友達もいなかった」と話し、「記憶に残っているのはいつも笑顔だったこと。明るいからではなく、つらいから笑うしかなかったのだと思う」と言う同級生もいた。
 精神科医の磯部潮さんは「少年時にいじめられた体験の反動で、攻撃的な人格を形成することはあり得る」と語る。さらに、中学生と共に路上生活者襲撃に及ぶ特異な行動は「大人とうまく付き合えず、自分に従う者としかコミュニケーションが取れない社会性の欠如、人格のゆがみ」と説明。「いじめ体験などが影響して特異な人格を形成したのでは」と分析する。
 一方、木村容疑者の指示を受け入れた3少年については、「学校や地域、自宅に居場所がないため、悩みの相談などに乗ってもらえる兄的存在を求めたのでは」とみる専門家もいる。
 いじめや非行問題に詳しい加藤幸雄・日本福祉大教授は「暴走族などでは年齢による強固な上下関係が築かれる。今回もそれに似た形を取って『浮遊するもの』同士が結びついた新しいパターン」と言う。非行少年が年上に依存するケースは多く、「支配と被支配の関係も生じる。『兄貴』の期待に応えたい、認められたい、との気持ちで暴行がエスカレートしたのでは」と分析する。
12月22日3時3分配信毎日新聞
【コメント】虐待やいじめの体験によって、安心や他者への信頼、自尊感情や自己効力感が失われ、他者への攻撃的感情や自己否定感情が高まり、他者との関係性を被害的にとらえる思考パターンの形成が促進されます。虐待やいじめを受けた人たちが、安心感や自己効力感、自尊心を取り戻すためには、ゆるやかでねばり強い支援が必要です。その社会的なシステムづくりが求められています。

●「結婚しなくていい」 20〜30代、6割以上が回答
 県内の20〜30代の男女のうち、6割以上が「結婚は個人の自由だからしなくてもよい」と考えていることが、県が実施したアンケート調査で分かった。子供を持つことについても、20代の6割以上が「必ずしも持つ必要はない」と回答。一方、出生率の低下の原因では、20、30代とも6割以上が経済的な負担を挙げた。
 調査は7月に県内に住む20歳以上の男女3000人を対象に実施。1158人から回答が寄せられた。
 結婚について、「個人の自由だからしなくてもよい」との問いに対して、全体の53.5%が「そう思わない」と回答。「そう思う」(41.7%)を上回った。年代別にみると、「そう思う」とした回答が20代は66.3%、30代では67.9%に上り、「そう思わない」(20代=26.7%、30代=27.6%)を大きく上回った。
 「結婚しても子供を持つ必要はない」の問いでは、20代の64.4%、30代の54.7%が肯定。これに対して、親の世代にもあたる60代は68.6%、70代では72.7%が否定的だった。
 また、30代の約5割が「結婚しなくても子供を持つのは自由」との問いに肯定的だった。
 出生率の低下の原因では、全体の約6割が「経済的な負担が大きい」と回答。年代別では20代と30代が64%と最も高かった。子育てで行政に期待する施策では、20〜30代では妊娠や出産に対する経済的な支援の拡充や、子育てができる雇用環境の整備を求める回答が多かった。
(SankeiWEB/香川の記事)2006/12/15

●出生率1・26に大幅下方修正、55年に8993万人
 国立社会保障・人口問題研究所は20日、2055年までの人口変動を予測する「日本の将来推計人口」を公表した。
 女性が一生に産む子供の数である合計特殊出生率は、前回(02年)の推計では1・39で安定するとしていたが、今回は1・26まで大幅に下方修正した。人口は2055年には8993万人まで減少する。
 少子高齢化がさらに予想を上回って加速することで、現役世代が高齢者を支える公的年金などの設計の見直しを迫られそうだ。
 人口推計は、国勢調査に合わせてほぼ5年に1度公表され、年金の給付水準を決める年金財政の再検証に利用されるほか、今後の経済成長などの予測にも参考にされる。
(読売新聞)12月21日0時39分配信

●発達障害、1割「就学前気づかず」 20歳以上で診断も 道が初調査
 自閉症やアスペルガー症候群など発達障害者のうち、家族が本人の障害に就学前に気づかなかったケースが一割近くに上り、二十歳以上になって初めて診断された例も1・6%あることが道の初の実態調査で分かった。道は「発見が遅いと療育ができず、社会適応が遅れる可能性がある」として来年度、早期発見のための対策を検討する。
 発達障害は脳機能の障害が原因で、通常、低年齢で発現するが、専門医が少ないために発見が遅れる例がある。昨年四月、発達障害者支援法が施行されたのを受け、道は今年七月、道内の発達障害者の親の会を通して千四百八人を対象にアンケートを実施、七百八十八人から回答を得た。
 家族が「ほかの子供と違う点がある」と気づいた時期は一歳が最も多く34・6%、二歳が25・0%、三歳が16・4%と続き、六歳以上は8・9%だった。医師の診断を受けた時期は三歳が24・4%と最多で、二歳が12・8%、六歳が9・7%だった。全体の80・7%が就学前に市町村発達支援センターなどの療育機関を利用していた。
 一方、本人も家族も気付かず、二十歳以上になってから発達障害と診断された人は十一人いた。
十八歳以上の二百四十二人のうち、就労経験のある人は三割の七十八人だった。
 調査結果について、道教大旭川校の安達潤助教授(特別支援教育)は「実際は成人しても診断を受けていない人たちはもっと多い。障害の把握、支援体制の整備が必要だ」としている。
(北海道新聞)12/2107:07
【コメント】発達障害者の親の会を通して実施されたアンケートからこうした数値が出ていて、その数値自体も発達障害への施策の不十分な現実を示していると思いますが、親の会や医療・療育に結びついていない人の方が圧倒的に多いのが現実で、現在思春期以降にあって発達障害に気づけないままの状態にある人の多さは容易に想像できます。18歳以上者で就労経験がある発達障害のある人が3割しかいないというのも、見過ごせない実態です。早期発見、診断、療育の開始だけでなく、発達段階に応じた支援(就労を含む)システムの確立に向けて、国や行政は早急に施策をスタートさせるべきです。

●<大阪府教委>いじめに「危機管理」 深刻度レベル5段階
 大阪府教委は、学校や家庭でいじめ自殺や虐待など緊急事態が発生した場合、深刻度に応じて1〜5段階のレベルを設けて対応に当たることを決めた。最高のレベル5の場合は、教育長をトップとする緊急対策本部を設置し、専門家を派遣して支援するなど、レベルごとに対応マニュアルを作る。大規模テロや災害時の危機管理を応用し、子どもの緊急事態に迅速に対応する取り組み。文部科学省によると、全国的にも例がないといい、注目を集めそうだ。
 府教委によると、小規模な市町村教委では、人員不足から緊急事態に対応し切れないケースがあり、人的支援やノウハウの伝達が不可欠となっている。しかし、府教委はこれまで、緊急時の人員配置などに明確な基準を持っておらず、支援態勢作りに時間がかかる傾向があった。
 府教委が「レベル5」に想定しているのは、いじめを受けていた富田林市の女子中学生の自殺(11月)や、寝屋川市の小学校教諭が少年に刺殺された事件(昨年2月)などで、社会的影響や子どもの動揺が大きく、支援の迅速性と継続性が求められるケース。
 こうした事態が発生した場合、学校運営に詳しい府教委の指導主事や臨床心理士ら専門家を現地に派遣し、一定期間常駐させて心のケアや報道対応などの支援を行う。また、府教委には、教育長をトップに各課の担当者で構成する緊急対策本部を設置。現地をバックアップするとともに、再発防止策を検討して、府内の学校に反映させる。
 「レベル4」は、子どものセクシュアル・ハラスメント被害や教師の不祥事などで子どもに動揺が広がるケースで、指導主事と専門家を一時的に派遣するとともに、市町村教委に対策会議を設置。▽「3」は、子どものケアや保護者と学校の関係修復が必要なケースで、指導主事を派遣▽「2」は専門家を派遣▽「1」は電話で助言――などとしている。
 レベルは府教委幹部が決定し、担当者や専門家で作る「子ども支援チーム」が事務局を担う。府教委小中学校課は「レベルによって、事態の深刻さの共通イメージが得やすくなり、素早く動ける。子どもを守る態勢に磨きをかけたい」と説明する。文科省児童生徒課は「テロや災害時の危機対応を子どもの緊急事態に応用するのは、時代の要請であり、ぜひ進めてほしい」と評価している。
(毎日新聞)12月22日3時4分

●いじめ相談数10月以降急増 京都府警「ヤングテレホン」
 京都府警は、子どもや保護者からの悩み相談を電話で聞く「ヤングテレホン」の今年1月から11月末までの受理件数をまとめた。いじめに関する内容は38件で、前年同期より17件増加した。このうち、全国でいじめによる自殺が相次いだ10、11月だけで相談件数は計21件に上り、府警少年課は「いじめの社会問題化が相談急増の背景にあるのでは」とみている。
 受理の総件数は377件(前年同期比60件減)。内容別では、子どものしつけや家庭内暴力などの「家庭問題」が最多の133件(14件増)で、いじめや不登校、進路に関する「学校問題」が75件(25件増)で続いた。
 いじめの相談38件のうち、1月から6月までは計17件で、7−9月にかけては1件の相談もなかった。その後、北海道や福岡県でのいじめによる自殺の報道が相次ぎ、10月に11件、11月にも10件と急増した。
 いじめの相談者は子ども本人が10件、保護者26件、親族・近隣者が2件で、いじめ被害の対象は小学生が6件、中学生が18件、高校生が14件だった。
 内容は、悪口や無視が21件で最も多く、うちメールによる中傷も2件あった。ほかは身体的暴行が12件、具体的な内容が不明な相談が5件だった。
 少年課は「『キモイ(気持ち悪い)』『死ね』といった悪口を言うなど陰湿な内容が多い。被害者がさらにいじめに遭わないよう相談に応じており、1人で悩まずに電話してほしい」と話す。
 ヤングテレホンは1975年に発足し、少年課の「少年サポートセンター」の臨床心理士や警察官が、24時間態勢で相談を受け付けている。TEL075(841)7500。
(京都新聞)12月24日9時47分配信

●県が素案まとめる 自殺対策プラン(岩手)
 県は22日までに、普及啓発、早期発見など官民一体となって自殺予防に取り組むための自殺対策アクションプランの素案をまとめた。傾聴ボランティアの育成、自殺未遂者の実態調査など、関係機関がそれぞれの得意分野を生かして予防に取り組み、2010年までに自殺死亡率を全国平均値まで下げることを目標とする。来年1月、官民46団体で構成する県自殺予防対策推進協議会に提案し、意見交換を経て本年度中に策定する。
 プランは「普及啓発」「早期発見」「早期対応」「遺族・未遂者のケア」―の4本柱で構成。これまで各団体が個々に取り組んでいた自殺対策を一つのプランに盛り込み、情報、意識の共有化を図る。
 「普及啓発」では、事業所や自営業者、かかりつけ医対象の学習会のほか、傾聴ボランティアや住民組織の育成支援などを明記。「早期発見」では、産後うつスクリーニング(ふるい分け)、職場と家庭の連携など、これまで対策が不十分だった分野に力点を置いた。
 また、岩手医大を中心に本年度から対策を強化している「遺族・未遂者のケア」では、保健所による未遂者のアフターケア、未遂者の実態調査などを盛り込み、負の連鎖を未然に防ぐ。
 本県の2005年の自殺者数は470人で、人口10万人当たりの自殺死亡率は34・1。前年に比べ0・5下回ったものの、いまだ全国3番目の高率となっており、官民一丸となった対策が急務となっている。
(岩手日報)12月23日

●「いじめや差別を見逃さず」と 長岡京・議場で子どもサミット開く
子どもの人権問題について考える小中学生(長岡京市議会議場)
 京都府長岡京市の小中学生が子どもの人権をテーマに話し合う初の「長岡京市子どもサミット」が22日、同市議会議場で開かれた。市内14校の小中学生の代表計28人が出席。自分たちでまとめた「子ども人権アピール14」を採択した。
 同市では今年10月、幼児が虐待を受けて死亡する事件が発生。全国でも、いじめを苦にした小中学生の自殺が相次ぎ、子どもたちに命の大切さや自分たちの人権問題を身近なものとして考えてもらおうと市教委が企画した。
 市や市教委関係者らが見守る中、小中学生は議長に長岡第三中2年の藤井裕美さん(14)を選任。事前に子どもらが作成した「子ども人権アピール14」原案について意見を交わした後、全会一致で採択した。
 アピールは市内の学校数に合わせた十四項目で構成し、「いじめや差別を見逃さず、困っている人、悩んでいる人がいたら全力で支えます」と訴えている。児童4人が代表して読み上げ、閉会した。
 アピール文を読んだ神足小6年の佐々木菜都乃さん(12)は「いじめなどの問題を身近な問題として考えたことはなかった。これからは、いじめを見かけたら助けてあげたい」と話していた。
(京都新聞)12月22日20時37分配信

●セミナー:ニートや引きこもりに就労支援 保護者対象に−−参加募集/滋賀
◇来月14日に守山市、2月4日に彦根市で
 求職活動をせず、教育や職業訓練も受けていない無職の若者「ニート」や引きこもり状態の人の就労や社会復帰への支援のため、保護者を対象にした「就労をめざすニート・ひきこもりの保護者支援セミナー」が守山市で来年1月14日、彦根市で同2月4日に開かれる。県地域労使就職支援機構が主催。保護者にできることは何かを支援の現状をもとに考える。
 いずれも午後1時半〜4時で、ひきこもりの若者支援などをしているNPO法人淡路プラッツ代表の田中俊英さんが、「ニート・ひきこもり支援の現場から」と題して講演。▽ニートをめぐる見取り図▽就労をめざすニートの支援▽保護者として本当の「待つ」こと――の3点を柱に話す。第2部(午後3時10分〜)では個別相談会もある(要事前申し込み)。
 守山会場は、守山市のライズヴィル都賀山。彦根会場は、彦根市の彦根勤労福祉会館。いずれも参加費無料、定員各30人(先着順)。1月10日までに県地域労使就職支援機構(077・516・1833)へ申し込む。
(毎日新聞)12月20日朝刊

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[2006.12.17]

【この頃思うこと】広汎性発達障害と対人関係能力(5)

 「発達障害は『発達』する障害」ー、私の信頼する精神科医の名言です。
 少し極端な話しですが、定型発達をした人の中に精神病に罹患する人や犯罪を犯してしまう人がいるように、発達障害を有する人の中にも精神病に罹患する人や犯罪を犯してしまう人がいます。ただし、「不正義は許せない」という特性がありますので、発達障害の方の犯罪率は定型者のそれよりも低いことはよく理解しておいてほしいと思います。
 同様に、生後、乳幼児期、児童期、思春期、青年期、成人期と、それぞれの発達段階によって、発達障害を有する人も、人それぞれに成長・発達していきます。これまでの発達障害についての研究のほとんどがが乳児期〜児童期についてのものであったことから、思春期以降の特性やその変化・発達についての研究はまだこれからといったところかと思います。
 小さいときには○○の特性を出していた、という人が思春期(中でも14〜15歳に顕著)を経る中で、かつての特性が変化したり消去されたりして、新たな特性や認知を持たれていくことが多いように思います。例えば、小さいときには「知っている人はみんな友だち」という認知が、好きな人と嫌いな人がはっきりしてくる、ということがあります。「友だちは限られた少数者」という特性も、このことと関係が深いと思えます。自身を受け入れてくれる人とそうでない人の判別は、人間社会の中で安心して生きていく上ではとても重要な要素です。自身を受け入れてくれない人との関係性においては、自身が傷ついてしまう恐れがあり、そのことを無意識に判断していて、その判別が少し極端に行われる、と考えると良いと思います。また、こうした対人関係における判別は、それまでの成育史において、嫌悪的、被害的な(あるいはその逆の)対人関係の経験の有無も大きく関与します。
 定型者に一人ひとり個性があるように、発達障害を有する人にも一人ひとり、よりはっきりした個性があり、それは他者との関係性の中で様々に形成されていく、という視点を持つことが大切ではないでしょうか。
 アスペルガー障害と診断を受けておられたり、特定不能の広汎性発達障害と思われる方と接する中で、対人関係には表向きほとんど問題ないように見えても、よくお話を聴いていくといくつもの困難さを抱えながら、その困難さをどう考えればいいか、どう対処すれば良いかわからないままに悩んでおられる方が多いことがわかってきました。ご家族や職場など、生活や活動の場を共有する人に一人でも多く、他者との関係性に困難さを感じておられることを理解してあげられる人が増えてもらえるよう、社会的啓発や障害理解のための学習、共感的な関係性が進むことを期待します。
 次回は「自死遺族の社会的再構成に向けての課題のいくつか」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

学校での事件は第三者機関で調査究明を

現役教師ら遺族が文科省に設置を訴え
 学校では、いじめによる自殺だけではなく、教師の過失などによるさまざまな事件、事故でも子供が亡くなっている。ただ、その原因について学校側は隠ぺいしようとの姿勢に終始し、遺族には真実がほとんど明らかにされないという。こうしたことから、現役教師を含む遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」(兵庫県たつの市)では、独立した調査機関の設置を文部科学省に要請し続けている。
 代表世話人の内海千春さん(47)は、兵庫県内の中学校教師で、一九九四年に小学六年生だった長男=当時(11)=が担任の教師に殴られた直後、自殺した。裁判の結果、暴力が原因の自殺と認められた。
 「学校で事件が起きると、教育委員会はすぐに“沈静化”に乗り出す。自殺でも事故死として処理しようとし、難しければ都合の悪い事実を隠そうと学校を動かす。遺族は訴訟相手になる“敵”と見ているので、事実を明らかにする考えは全くない。これは、今の一連のいじめ自殺でも続いている」と言う。
 こうした体質は全国どこでも見られるという。「大半の教師には情報が隠されている。しかし、人事権などを持っている教委に対して、何も言おうとはしない。子供たちがいじめを傍観するのと全く同じ構造だ」と、独立した調査機関の必要性を訴える。
 メンバーの宮脇勝哉さん(48)も、同県内の養護学校教師。九九年に同県川西市立中学校の一年生だった長男=当時(13)=をクラブ活動中の熱中症で亡くした。原因究明を求めて活動した結果、同市の「子どもの人権オンブズパーソン」の調査でようやくクラブ顧問の教師の過失が認定された。
 「航空機事故のように、中立の立場の専門家が調査して初めて事実が明らかになり、再発防止にもつながる。ところが、事件、事故をめぐる学校の調査は、信頼性に疑問がある上、これまでは遺族が求める情報提供にもほとんど応じてこなかった」と宮脇さん。
 さらに、遺族の苦しみは原因が明らかにされないことだけではないという。「学校側と闘う姿勢を見せた途端、『親の体調管理が悪かった』『顧問の教師に厳罰を求める署名活動をしている』など、事実とは異なる悪意のあるうわさが流れ、地域で孤立した。子供が死んだ理由を知ろうとするだけで、全国の遺族が“二次被害”に直面させられている」と訴えている。
(時事通信社 フィーチャー)06年12月26日

●「子供の自殺原因の究明機関を」遺族が文科省に請願
 いじめ自殺などで子供を亡くした遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」のメンバーが12日、文部科学省に対し、自殺原因などの事実関係を究明するための第三者機関の設置を求め、請願した。
 同省を訪れたのは、いじめや教師の指導を苦に自殺した児童・生徒の遺族、学校内の事故で子供を亡くした遺族ら23人。メンバーは、学校や教育委員会が事実関係をなかなか伝えない実情を訴え、すべての情報を出来るだけ早く遺族に伝えるよう、各校に指導することなども求めた。
 兵庫県川西市立中学校で1999年7月、ラグビー部の練習中に熱中症で中1長男(当時13歳)を亡くした宮脇勝哉さん(48)らは請願後、会見し、「今年起こったいじめ自殺でも学校や教育委員会は事実を明らかにしようとしなかった。客観的に外部から事実を明らかにする制度が必要ではないか」と訴えた。
(2006年12月12日22時48分読売新聞)

●全国学校事故・事件を語る会 文科省に要請
 いじめによる自殺などで子供を亡くした保護者らが12日、文科省を訪れ、教育委員会や学校の調査では真相究明は難しいとして、調査のための第三者機関を設置することなどを要請した。
 文科省を訪れたのは、いじめによる自殺や学校内での事故で子供を亡くした保護者らで作る「全国学校事故・事件を語る会」のメンバー。
 12日の要請では、いじめや学校での死亡事故の再発を防止するためには、第三者の調査による確実な事実認定が必要であるとして、第三者機関の設置を求めた。
 「全国学校事故・事件を語る会」は要望書提出後、会見を開き、メンバーの一人、内海千春さんが「事実を隠ぺいすることは被害者・遺族にとって重大な加害行為なんです」と語った。また、要請に参加した保護者らは、「自分たちと同じ経験をする人が二度と出てほしくない」と、今後も訴えを続けることにしている。
(日テレNEWS24)12/12 20:03

●<教員意識調査>会社員以上に、仕事に満足感と多忙感
 公立小中学校の教員は会社員よりも仕事に満足感を得ていると同時に、多忙感も感じる傾向にあることが11日、文部科学省の調査で分かった。また、教員自身は勤務実績などで給与に差をつけることを否定的にとらえているが、保護者は肯定的ということも分かった。
 文科省は10月、全国354校の公立小中学校教員8976人(回収数8059人)と保護者1万4160人(同6723人)を対象に意識調査を行い、平均点を算出。中央教育審議会の「教職員給与の在り方に関する作業部会」に中間報告した。
 中間報告によると、「仕事にやりがいを感じている」と答えた教員が5点満点で平均4.23点だった。一方、「仕事が忙しすぎて、ほとんど仕事だけの生活になっている」のは3.75点となり、調査会社が所有している会社員のデータと比較すると、教員は会社員よりも満足感と多忙感を同時に感じているという。
 また、「指導力不足教員らに給与などへの反映が必要」と考える教員は3.37点。保護者への同種の質問では4.41点となり、両者のかい離が際立った。
(毎日新聞)12月12日0時33分配信

●福岡の中2男子自殺で調査委 「いじめ」断定せず
 福岡県筑前町立三輪中学校2年の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、同町教育委員会が設置した調査委員会(委員長・高田清福岡教育大教授)は12日、「いじめに類する行為が自殺に追い込んだ可能性がある」との中間報告をまとめた。「いじめ」と断定することを避けた形で、年内にもまとめる最終報告に向けて協議を続けるという。
 さらに、同報告は「(1年当時の担任)教諭の言動が直接の要因と判断するのは難しい」としている。
 男子生徒は10月11日夜、自宅倉庫で首をつっているのを祖父が見つけ、「いじめを受けて生きていけません」などと書かれた遺書が見つかった。
 学校側はこれまでの会見で、男子生徒へのいじめがあったと認めた上で、「本当に自殺に追いやった主因は何か。もっと分析しなくてはいけない」としていた。
 教諭による不適切な言動がいじめの引き金になったともされていた。
 調査委は学識経験者ら7人で構成。町教委の委嘱を受けた第三者機関として11月7日に発足し、遺族や学校関係者から聞き取り調査した上、男子生徒の同級生へのアンケートをしてきた。
(産経新聞)12月13日8時0分配信
【コメント】この調査委員会は「第三者機関」ではなく、教育委員会設置による自前委員会であるため、教委に不利益となる報告をすることは期待できません。自前でなく、文字通りの第三者による調査が必用です。

●<「黒い羊」訴訟>少女側「元教諭の教育権侵害」主張
 静岡市立中学で昨年3月、以前担任だった元男性教諭が卒業アルバムの寄せ書きに英語で厄介者を示す「黒い羊」と書き込んだ問題があり、元生徒の少女(17)が名誉を侵害されたなどとして市に1650万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が13日、静岡地裁(三島恭子裁判官)であった。少女側は「(学校側は)元教諭による教育権侵害を止めなかった」と主張。一方、市は「請求棄却を求める」との書面を提出し、全面的に争う姿勢を示した。
 訴状などによると、元教諭は少女の1年時の担任。昨年3月の卒業式前日、少女から卒業アルバムの寄せ書き欄に書き込みを頼まれ、英文で「どの集団にも厄介者はいる」という意味の「There is a black sheep in everyflock」と書き、少女の心を傷つけた。
 また入学直後、少女の兄が高機能自閉症であることを理由に少女を中傷して拳で頭を殴り、翌日から会議室で自習するよう命じた。同級生には「あいつは障害者だから付き合うな」と話したという。少女は卒業まで別室登校を続けざるを得なくなった。元教諭は昨年5月に依願退職したが、少女に対しては一度も謝罪していない。
(毎日新聞)12月13日11時42分配信

●「黒い羊」訴訟:静岡市、争う姿勢 元教諭、少女に謝罪なく/静岡
 ◇「障害者の妹は人と違う」…別室登校3年に「死にたい」
 ◇提訴は戦い。傷ついても声を
 「えっ……」。母親(42)は娘が笑顔で持ち帰った卒業アルバムに書かれた英文の意味を示す電子辞書画面を見て凍りついた。
 昨年3月、静岡市駿河区の市立中学で、寄せ書きを頼んだ生徒のアルバムに元担任の男性教諭が英語で厄介者を示す「黒い羊」と書いた問題で、元生徒の少女(17)が市を相手に起こした訴訟の初弁論が13日、静岡地裁であった。教諭は依願退職したが、結局一度も少女に謝罪していない。市も争う姿勢を示した。
 始まりは教諭の暴言だった。少女には当時3年に高機能性自閉症の兄がいたが、教諭はこの兄を嫌っていたという。入学直後の4月中旬、少女が妹とわかると、教諭は態度を変えた。「障害者の妹だって? そんなやつの妹は人と違うことをしてきたんだろう」などと言い、少女の頭を拳でたたいた。翌日に別室登校を命じられ、少女は3年間を会議室で過ごした。
 少女の母親は何度も学校に相談した。しかし対応した教頭は「善処する」と繰り返すだけで一度も教諭に会わせなかったという。伝えた電話番号にも、電話がかかってくることはなかった。クラス一斉の家庭訪問さえ知らされないまま終わっていた。通知表の担任記入欄は空白なのに校長印だけは押されていた。
 県弁護士会・子供の権利委員会が昨年11月に教諭と学校、市教委に生徒の被害回復を図るよう勧告したが、その後も少女に謝罪はない。教諭は以前に勤めた中学でも問題を起こし、保護者から辞職を求める声も出ていた。市教委教職員課は「そういう声は届いていない。勧告にも適切な措置をとったと考えている」と話した。
   ◇   ◇
 少女は今、コンピューターの専門学校に通う一方、通信教育で中学の勉強を続ける。中学時代に別室登校の自分を見られるのが嫌で顔を覆うほど伸ばしていた髪を、今は少し短くした。けれど人と向き合うとうつむいてしまう。取材中、耐えるように腕につめを食い込ませていた。
 別室登校は事実上の放任だった。授業の資料も渡されず、3年次には会議室にただ一人。近くの教室から響く笑い声を聞くたびに涙をこらえた。「死んじゃいたい」。別室登校を命じた教諭は、一度も会議室を訪れなかったという。「提訴は戦い。どんなに傷ついても声を上げることはできる。それを示したかった」と少女はいう。
 男兄弟の中で育ち、自らを“僕”と呼ぶ。「先生は、学校は学ぶ場所だと言った。では僕は学校で何を学んだのか……」。震える声でそう話す少女の目から、涙がこぼれた。
12月14日朝刊
(毎日新聞)12月14日13時1分配信

●障害者権利条約が成立 国連総会、全会一致で採択
 【ニューヨーク13日共同】国連総会本会議は13日、障害者に対する差別を禁じ、社会参加を促進する「障害者権利条約」を全会一致で採択、同条約は成立した。障害者を対象にした人権条約は初めてで、世界人口の約1割、約6億5000万人(国連推計)とされる障害者の権利拡大に寄与しそうだ。20カ国が批准した時点で発効する。発効は2008年ごろになる見通し。
 条約は前文と本文50条から成り、障害者が「すべての人権や基本的自由を完全かつ平等に享受」できる環境を確保するのが目的。こうした目的を達成するため「すべての適当な立法、行政措置」を講じるよう締約国に求めている。
 具体的には(1)障害者の移動を促進するため建物や道路、交通機関における障害物の除去(2)教育における機会平等の確保(3)就職や昇進面での差別禁止−などが盛り込まれている。
(福井新聞)12月14日午前01時26分
【コメント】大きく、着実な時代の流れです。

●いじめ・人間関係…孤独な子供 相談1万1200件
■電話口から心の叫び
 いじめ自殺などが相次ぐなか、子供の電話相談「チャイルドライン」が11月6日から1カ月間行った集中相談で27都府県から9万件を超えるアクセスがあったことが分かった。NPO法人「チャイルドライン支援センター」(東京都港区)によると、相談内容を十分に把握できた約4000件のうち、いじめやいじめにつながる人間関係についての相談は1200件超。「死にたい」という言葉をすぐに使う子供も目立った。同センターでは「電話をしてくる子供は周りに相談する相手がいない」と分析、子供の話に耳を傾ける重要性を訴えている。
 同センターによると、無言電話などを除き、実際に相談を受けたのは1万1203件。このうち相談内容が把握できた4068件を分析すると、「いじめ」についての相談は、小学校高学年から中学生にかけて多く、男女別では女子からの相談は44%が「いじめ」や「人間関係」についてだった。「いじめ」関係以外では「性」(678件)や「恋愛・異性関係」(333件)、「心の不安」(193件)など。
 今回の電話相談で多かったのが「死にたい」という言葉をすぐ使う子供だった。自殺や自傷の相談は47件あった。小学校からいじめられていたという女子中学生は「『死ね』といわれるから死んでもいいかと思う。心で受ける傷よりリストカットは痛くない」と電話をしてきた。
 これまでには「給食をこぼしたら『死ね』といわれた。クラスのみんなが『死ね』と言い出した」(中学生)という相談もあった。「死ね」「ばい菌」「くさい」などの中傷に対する悩みが最近の典型という。
 同センターでは、相次ぐ自殺報道などの影響もあり、語彙(ごい)が少ない子供らは「つらさや苦しさを『死にたい』という言葉でしか表現できない傾向にある」と分析。「言葉に振り回されず、言葉の裏にある“思い”に寄り添うことが大切」と訴える。
 また、最近のいじめの傾向として、(1)集団で1人をいじめる(2)無視をするなど陰湿(3)いじめを受ける期間が長い−ことを上げる。携帯電話のメールで誹謗(ひぼう)中傷や無視を呼び掛けるなど陰湿ないじめも多い。
 同センターでは「電話をかけるだけでも勇気がいる。最初は何も話さくても10分くらい待つと声が聞こえてくることもある」と“無言のメッセージ”にも気を配っている。
(産経新聞)12月15日8時0分配信

●<休職教員>「精神性疾患」最多の4178人 13年連続増
 05年度にうつ病など精神性疾患による病気休職をした公立小中高校などの教員数が過去最高の4178人に上ることが15日、文部科学省の調査で分かった。病気休職7017人のうち、精神性疾患を理由に休職した教員の割合(59.5%)も過去最高だった。また、懲戒処分を受けた教員(監督責任を除く)は前年度比29人増の1255人で、免職者総数は190人(懲戒156人、諭旨17人、分限17人)だった。
 精神性疾患を理由に休職した教員は前年度比619人増で、13年連続の増加となった。在職者に占める割合も0.45%となり、ここ10年間は連続して増えている。文科省は「保護者への対応が煩雑になっていることや、子ども、社会が変化してこれまで培ってきた指導法が通用しなくなっているとの指摘もある」と説明した。
 懲戒処分を受けた教員は5年連続で1000人を超えた。理由は国旗・国歌の取り扱い関係が大幅に減少し、前年度よりも61人少ない64人。このほか、児童生徒の成績が入力されたパソコンの盗難被害や、ファイル交換ソフト「ウィニー」を通してネット上に流出させた個人情報の不適切な取り扱いで懲戒処分を受けた教員も39人いた。わいせつ行為などは同7人減の124人だった。
 訓告などを含めた処分合計は前年度比385人増の4086人で、同218人増の交通事故(2406人)が目立った。また、病気休職を含め心身の不調などで適性を欠く場合などに行われる分限処分による免職理由では、10人が「適格性欠如」、4人が「指導力不足」だった。
(毎日新聞)12月16日5時2分配信

●改正教基法が成立 「国愛する態度」明記 1月9日から防衛省
 今国会の最重要法案である改正教育基本法と、防衛「省」昇格関連法は15日の参院本会議で、それぞれ賛成多数で可決、成立した。改正教育基本法は自民、公明両党、防衛「省」昇格関連法は与党に加え民主党などが賛成した。すべての教育法令の根本である教育基本法は昭和22年の制定以来、59年ぶりに初めて改正された。29年に発足した防衛庁は、来年1月9日に防衛省として新たなスタートを切る。
 これに先立ち、民主、共産、社民、国民新の野党4党は、安倍内閣と麻生太郎外相の不信任決議案を河野洋平衆院議長に提出した。これを受けて与党は、衆院本会議で会期を19日まで4日間延長することを決め、続いて内閣不信任案を与党の反対多数で否決した。
 一方、野党は参院でも伊吹文明文部科学相に対する問責決議案を提出したが、15日夕の参院本会議で与党の反対多数で否決された。
 改正教育基本法は前文と18条で構成。「公共の精神の尊重」や「伝統の継承」の理念が前文に新たに盛り込まれたほか、教育の目的に「伝統と文化の尊重」や「わが国と郷土を愛する態度を養う」「豊かな情操と道徳心と培う」ことなど5項目を明記した。
 焦点だった「愛国心」をめぐる表現については、与党協議の過程で公明党への配慮から「心」が「態度」となった。
 防衛「省」昇格関連法は、行政組織上、内閣府の外局である防衛庁を「防衛省」に、防衛庁長官を「防衛相」にそれぞれ格上げする。これまで、防衛庁長官は、内閣府の長である首相を通じてでなければ閣議開催の請求や財務相への予算要求ができなかった。しかし、省昇格後は防衛相が直接行うことになる。
 また、これまで自衛隊の「付随的任務」とされてきた国連平和維持活動(PKO)、イラク復興支援などの海外活動も、国土防衛と同じ「本来任務」に位置付ける。
【教育基本法のポイント】
 ・公共の精神を尊び伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進。憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、振興を図る
 ・伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛し、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う
 ・教育は不当な支配に服することなく、この法律および他の法律の定めにより行われる
 ・政府は教育振興施策を総合的に推進するため基本的な計画を定め、公表しなければならない
最終更新:12月16日8時0分
(産経新聞)12月16日8時0分配信
【コメント】何ともお粗末な茶番劇です。教育基本法を今日改正する必要性が不鮮明、議会での議論が不十分かつ強引な幕引き、地方分権の流れへの逆行=国家による教育統制の強化など、数の力におごったあさましい事態です。

●『子は国のものじゃない』
教職員怒りの集結
 「教育の憲法」とされる教育基本法の改正案が十四日夕、怒号が飛び交う中、参院教育基本法特別委員会で可決された。戦前の教育勅語体制への反省から生まれた基本法の六十年ぶりの改正。日本の教育が戦後最大の転換点を迎え、「我が国と郷土を愛する態度」の養成などが重視されるとあって、国会周辺に集まった多数の教職員からは反発の声が上がった。
 「民主国家の宝を捨てるのか」「子どもは国のものではない」。十四日午後六時すぎ、教育基本法改正案が参院特別委員会で可決されると、国会周辺に集まった千人近い教職員らが一斉に怒りの声を上げた。
 「戦前の教育を受けた者として見過ごすことはできない。憲法と教育基本法は戦後に築き上げた民主国家の宝。改正は改憲の前段になるのではないか」と東京都の元教員の男性(74)。嘱託教員の女性(64)も「これだけ反対の声があるのに、結論を急ぐ安倍首相の姿勢はまったく理解できない」と憤った。
 小六の子どもを持つ千葉県の主婦(50)は、テレビの国会中継を見て駆け付けた。「国が自分たちに都合のいい子どもだけを育てようとしているように感じる。家でじっとしていられなかった」
 会社を早退して駆けつけたという東京都の男性会社員(53)も「審議を見ているとあらかじめ答えが決まっていたようで、実のある議論と思えない」と不満を漏らした。
 この日は、参院特別委員会の審議開始に合わせ、朝から改正に反対する教職員らが議員会館前の歩道に集まった。「教育基本法の改悪に反対します」などと書いた横断幕を掲げ、シュプレヒコールを繰り返した。
 国会には普段と同じように社会見学の小学生が集団で訪問。抗議の様子に驚いた児童に、引率の教員が教育基本法の改正について説明する場面もあった。国による統制色が強まる改正の方向性に大分県の女性教員(40)は「国が何でも思い通りに動かせると思っていることが腹立たしい。子どもは国のものではない」。
 長崎県の小学校の男性教員(45)は「教育行政の在り方を問う国相手の訴訟は、今後連戦連敗になるだろう」と予測した。
■委員長に野党議員 詰め寄る中で採決
 「本法案に賛成の方の起立を求めます」。十四日夕、再開された参院教育基本法特別委員会。野党議員が委員長席に詰め寄る中、中曽根弘文委員長が声を張り上げた。激しい怒号の中、与党議員が起立し、教育基本法改正案が可決された。
 朝から始まった委員会には午前中、安倍晋三首相が出席。前日、調査結果が発表されたタウンミーティングのやらせ質問問題に質問は集中した。「やらせでつくられた法律だという汚名が残る」と近藤正道議員(社民・護憲連合)が質問したのに対し、安倍首相が「やらせでつくられたとは言い過ぎだ」と気色ばむ一幕もあった。
 正午すぎ、安倍首相が退席した後、中曽根委員長が「おはかりします。教育基本法案につきまして…」と口にしたところで突然、絶句。委員会はそのまま休憩に。
 夕方再開した審議の冒頭、委員長は審議を打ち切るか、もう一度与野党が協議する場を設けるか、で自身が迷ったことを明かした。
(東京新聞)2006年12月15日00時00分

●県教組:少人数学級拡大を 知事に4万人の署名提出 /佐賀
 県教職員組合(近藤正敏委員長)は14日、35人以下の少人数学級を小学3年生以上にも拡大するよう求め、古川康知事に県民約4万人の署名を提出した。知事は「実態は分かる」と理解を示したものの、教育委員会が知事部局から独立していることを理由に、対応には慎重な姿勢を示した。
 県内の小学校では、05年度から1、2年生を対象に、少人数学級と複数の教師で授業を行うチームティーチング(TT)のどちらかを選ぶ選択制を取っている。県教組によると、6割が少人数学級を選択しているが、最終的に市町教委が決定するため要望が通らない学校もあるといい、この日は「学校の要望を尊重してほしい」との要求も盛り込んだ。
 近藤委員長は「アンケートを取ると3年生の保護者の不満が大きいことが分かる。少人数なら子供たちの自己表現の場も増え、自信が持てるようになる」と、いじめや不登校などの解決にもつながると訴えた。
12月15日朝刊
(毎日新聞)12月15日15時1分配信

●自殺志願者 福井・東尋坊で保護100人 NPO巡回で
 自殺防止活動を進める福井県坂井市のNPO法人「心に響く文集・編集局」が、地元の観光名所・東尋坊で保護し、自殺をくい止めた人が04年5月の発足以来、100人になった。理事長の茂幸雄さん(62)は「(自殺対策基本法が施行されたが)国や自治体の政策は不十分」と話している。
 茂さんは県警三国署(現・坂井西署)の副署長だった03年9月、管内の東尋坊で断がいに立ちすくむ東京都の男性(当時55歳)と女性(同72歳)を保護した。茂さんは2人を励まし、少しの金を渡して帰したが、再出発を誓っていた2人は3日後に新潟県で自殺した。
 2人は東京に戻る金がなく、福井県内の役所を訪れていた。自殺の2日後、「役所でたらい回しにされ、『死ぬならどうぞ』とまで言われた。私たちのような人間を二度と出さないでほしい」という遺書が同署に郵便で届いた。それがNPO設立のきっかけだった。
 NPOでは茂さんと元教師ら55人が連日、東尋坊周辺を交代で巡回。今月14日午後には、石川県加賀市の男性調理師(60)が断がい近くで一人で海を見ていた。茂さんは「もう死ぬしかない」とつぶやく男性の肩を抱き、事務所に連れて帰った。入院費がかさみ、生活保護も認められず、自殺しに来たという。100人目の保護だった。
 保護した人は、男58人、女42人。関東や関西など県外者がほとんどといい、福井県内で住宅や仕事のあっせんもする。茂さんは今年9月、「毎日社会福祉顕彰」を受賞。基本法施行で県の「自殺・ストレス防止対策協議会」の委員にも任命されたが、いまだに具体策を示さない協議会に「行政が対応を誤れば、自殺者は増えるばかり」と話している。
(毎日新聞)12月16日17時16分配信

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[2006.12.12]

【この頃思うこと】自己評価を高める共感的な他者との関係性

 今回は、10日に東京で開催された「全国発達障害ネットワーク」の年次総会に参加していたため、更新が遅れています<m(__)m>。
 抑うつ状態になる人の多くは、思考負の循環となってしまいます。仲間に入れてもらえなかったー相手から嫌われているのではないかー自分はいつもこうだーこれからも何をしてもだめだろう、と将来への見通しが持てなくなってしまいがちです。
 こんな感情になってしまったとき、その人の自身への評価は極めて低くなっています。本来もっている良い面が覆い隠されてしまって、弱い面、不十分な面が強調されて自意識を支配します。そして、一人だけでその状態について考えてしまうことで、この循環は深まってしまいます。
 うまくいかない、失敗ばかりする、わかってもらえない、無視されているのだろうか、嫌われているんじゃないか…、こうした意識が自身の思考の中心にあると思えたら、ぜひ話しを聴いてもらえる人をみつけて、話しを聴いてもらってください。アドバイスや励ましや分析をしてくれる人も多いかと思いますが、ただ聴いてくれる人が望ましいと思います。しかし、この「ただ聴く」というのは実はとても難しいことで、共感しながら傾聴する、無条件に話す人の気持ちを受容し、話しに積極的な関心を示す、適度にうなずき、また時に話しの内容を確認するなど、カウンセラーの「聴き方」が見本となります。カウンセラーはそれが仕事ですから、できなければ困りますが、カウンセラーでない方にも、こうした共感的な「聴き方」ができる人がいます。そんな人は、話す人を、その話の内容を否定しません。それが大切なのです。
 否定されない=受け入れられる=肯定される、という体験を、話す人ができます。この体験を通して、自己評価を少しずつ高めて行くことができます。こんな話し相手、相談相手が身近にいると、自己を否定することなく課題を乗り越えていけるでしょう。
 友だちなどから相談を持ちかけられた時、ぜひ多くの方が、共感的に「聴く」関係性を持てる相手となって欲しいと思います。
 次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(5)」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

“いじめ”「クラスの空気」反映 学級崩壊時5倍 集団の不満集中

いじめの発生は学級の雰囲気に左右され、児童生徒が学校生活への不満を感じるクラスで特定の子供をはけ口にする傾向が強いことが5日、都留文科大学(山梨県)の河村茂雄教授(心理学)の調査研究で明らかになった。中学では学級崩壊の兆候が見え始めると、いじめの発生は約5倍に跳ね上がる。河村教授は「いじめは被害者と加害者という二者関係でなく、学級という集団の問題としてとらえ、対処することが重要」と指摘している。
 河村教授は平成7年度以降、約10万人の児童生徒を対象に心理テストを行い、学級でのトラブルの大小や児童生徒の意欲の高さなどから、学級の状態を(1)子供同士の人間関係が良く学級運営も正常な「満足型」(2)教師が統率するタイプの「管理型」(3)教師とも友達感覚が漂うタイプの「なれ合い型」−などに分類した。これまでの研究では、「管理型」は小学校で24%、中学校では58%、「なれあい型」は小学校で45%、中学校で16%を占める。
 このうち16年度から2年間にわたり、約1万人を対象にいじめについて調べた結果、小学生では「長い間いじめられている」「とてもつらい」と答えた児童が40人学級で1人の割合となる3・6%を占めた。中学生は2%で、8割の学級でいじめを訴えていた。
 いじめと学級状態との関係では、「満足型」の学級でのいじめ発生割合を1とした場合、「管理型」は小学校で2・5倍、中学校で1・6倍。
「なれあい型」では小学校3・6倍、中学は2・1倍で、学級崩壊の兆候が見え始めると、中学では5・1倍に急増した。
 学級内のストレスの要因をみると、全般的には「授業がわからない。興味が持てない」が多く、「管理型」ではそれに加えて、「教師が威圧的。特定の子供だけが認められている」「授業や学級生活がワンパターン。判で押した生活で刺激に乏しい」といった不満があった。
 「なれあい型」にみられるストレスには、「子供同士の陰口が多い」「ルールが守られていない」「学級に親しみが感じられない」が並んだ。
 いじめと感じている児童生徒に「誰からいじめられたか」をたずねたところ、小学生の50%弱、中学生の30%弱が「同じクラスのいろいろな人」と回答。いじめられている子供は集団生活のなかで、みんなの不満のはけ口にされている構図が浮き彫りとなった。
 河村教授は今回の調査結果について、「いじめ問題は、加害者対被害者という二者関係でとらえられがちだが、被害者はみんなから『いじめられた』と感じている。学級でいじめは埋没して見えにくく、表面化しても周囲が自覚に乏しいのはこのためだろう。特に『なれ合い型』では、実際には子供が傷ついているのに、教師が見逃したり、軽い気持ちで加担したりする危険がある」と指摘している。
(産経新聞)-12月6日8時0分更新
【コメント】私の長男が在籍していた中学校は「管理型」の典型でした。学級を通り越して学年全体が崩壊状態でした。

●中教審答申より厳格化、教員免許5年更新・試用3年へ
 教員免許更新制度のあり方を検討している安倍首相直属の教育再生会議(野依良治座長)は4日、〈1〉免許の更新期間を5年間〈2〉正式任用前の「条件付き任用期間」(試用期間)を現在の1年間から3年間に延長――とする方向で最終調整に入った。
 中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)が答申した「更新期間10年間で研修30時間」では、不適格教員を排除するには不十分だと判断した。今月8、9日に開く分科会の合宿審議で詳細を詰める。来年1月の第1次報告に盛り込み、通常国会に関連法案を提出する方針だ。
 中教審答申よりも更新期間を短縮し、「試用期間」を延長するのは、教員免許制度の運用をより厳格化し、首相が唱える「教育現場からダメ教師を排除し、教育の質を高める」ことにつなげる狙いがある。
(読売新聞)-12月4日14時40分更新

●「再チャレンジ支援税制」ニート・フリーターを除外
 政府は、2007年度税制改正に盛り込む「再チャレンジ支援税制」の対象から、仕事・通学をしていない「ニート」や、定職を持たない「フリーター」を外す方針を固めた。政府案はほかに、制度を利用する企業・団体に地方自治体の事前認定を求めるなど、厳しく枠をはめる内容となっている。
 安倍政権が「2010年までにフリーターをピーク時の8割に減らす」と公約したことを受け、政府は当初、雇用対象にニートやフリーターも含める方向で検討していた。
 しかし、正社員としての雇用を望んでいるかどうかなど、支援すべきニートやフリーターの定義が難しいとして、「定義があいまいなまま制度を導入すれば、課税逃れに悪用されかねない」(内閣府)と判断した。除外の方針を固めたことにより、格差是正に向けたフリーター支援との趣旨から大きく外れることになる。
(読売新聞)-12月4日15時42分更新

●<いじめ絵本>20年読み継がれ…著者「相手の気持ちに…」
 いじめ被害を題材にした絵本「わたしのいもうと」(偕成社)は約20年にわたり、学校などで読み継がれてきた。被害者がどれだけ深く、そして長く、心に傷を負うのかを伝える本だ。作者で児童文学作家の松谷みよ子さん(80)は「相手の気持ちに気づかない限り、いじめは続く。本当はいじめがなくなって忘れ去られる本になってほしい」と語る。
 「わたしのいもうとの話を聞いてください……」。二十数年前、「ちいさいモモちゃん」などを書いた松谷さんに、少女から手紙が届いた。妹がいじめに遭い、家に引きこもり心を閉ざしてしまったとの内容だった。
 手紙は「わたしをいじめたひとたちは、もうわたしをわすれてしまったでしょうね」という妹のメモにも触れていた。松谷さんは「いじめている方は、すぐ忘れても、いじめられた子には深刻な問題だ」との思いで、手紙をもとに絵本を書いた。
 一家が7年前に引っ越してきたことから始まる。小学4年生の妹は、転校した学校で「言葉がおかしい」「くさい。ぶた」といじめられる。給食を配ると受け取ってもらえない。誰も口を聞いてくれなくなり、遠足に行った時も独りぼっち。やがて学校へ行かず、ご飯も食べず、部屋に閉じこもるようになる。
 やせ衰え、「このままでは命がもたない」とまで言われたが、母親の必死の看病で、命だけはとりとめる。やがて、いじめた子たちは中学生になり、さらに高校生になる。笑いながら窓の外を通り過ぎて行くのを妹は見つめるだけ。そして、ある日、ひっそりと息を引き取る。
 妹を描いた絵は、うつむいていたり、後ろ姿で顔は一度も出てこない。そして、最後に手紙につづられたメモが描かれている。
 87年に初版6000部で出版された本は、道徳の授業などで使われ、44刷まで版を重ね、14万7000部が世に出た。出版社には、親や教師からだけでなく、加害者の子どもからも感想が寄せられている。
 栃木県鹿沼市立北押原中学では先月、「いじめは命にかかわる大きな問題だと気づかせたかった」(3年の学年主任、鬼頭真教諭)と絵本を題材に道徳の授業をした。生徒からは「助ける人が必要で、周りも行動を起こさないといけない」という意見が相次いだという。
(毎日新聞)-12月6日15時11分更新

●発達障害:警察官も理解を 誤解や偏見の防止へ、県警が研修活動に乗り出す/鹿児島
◇障害者支援団体が歓迎
 自閉症やLD(学習障害)など発達障害への理解を深め、警察活動に役立てようと、県警は一線の警察官向けの研修活動に乗り出した。専門家の講義などで正しい知識を身につけ、トラブルに巻き込まれやすい発達障害者への誤解や偏見をなくすのが狙い。警察内部での研修は全国でもまだ例が少なく、発達障害者の支援団体はこうした動きを歓迎している。
 県警は11月10日、鹿児島市の県警本部で発達障害をテーマに初の研修会を開いた。刑事部や生活安全部など各部と22警察署から一線の警察官約150人が参加。県医師会常任理事の林芳郎医師が講師を務め、発達障害の種類とそれぞれの特徴、接し方などを解説した。
 今回の研修について県警の田中憲一・少年サポートセンター長は「発達障害の知識がなければ現場で対処しづらいケースが増えているため」と開催理由を説明。今後の取り組みについて「他の専門家による講義やパンフレット作成もしていきたい」と前向きな姿勢を見せる。
 日本自閉症協会県支部で研修担当の野添裕継さんは「発達障害者が地域で暮らすためには警察の理解が欠かせない。こうした取り組みが鹿児島から全国へ広がってほしい」と県警の活動に期待している。
12月5日朝刊
(毎日新聞)-12月5日18時0分更新

●西海評論:現実離れ /長崎
 政府の教育再生会議(野依良治座長)が先月29日に決定した「いじめ」緊急提言に対し「現場の感覚から懸け離れている」との声が出ている。
 特にいじめた子供に対し「社会奉仕、別教室での教育」を掲げたり、一時検討された「出席停止」の考えには反発が聞かれる。「いじめが悪いことは当然だ。だが、いじめた側の話を聞く場を作ることが大切。処罰では解決にならない」。小学校で約25年教壇に立った県教組の明石佳成委員長(57)は強調する。
 いじめを放置した教員に懲戒処分を適用するとの同会議の提言に対しても「いじめを放置するような教師は、まずいないだろう」と反発する。現場でそれぞれの教師が試行錯誤で解決に向けて取り組んでいる。「それでも解決できないとなると、校長、教頭がどう教育委員会に報告するのか」と懸念する。
 その上で「教師の事務作業の負担を減らして、もっと子供を見られるようにしてほしい」と訴える。確かに「休み時間も打ち合わせがあるので、授業中にプリントをやらせている間にトイレに行かねばならない」と言う女性教師もいる。
 出席停止や別教室での教育について、中学で20年以上教えてきた元教師も懸念を示す。「いじめる側の子供でも、まずは言い分をじっくり聞くことから始めなければと思う。そうすれば、子供と教師との人間関係も出来る」。いわゆる荒れた学校を多く経験しただけに説得力を感じる。
 明らかな暴力、あるいは金銭・物品を脅し取ったのだったら、誰が加害者か分かりやすく、対応しやすい。だが、今のいじめ問題の難しさは、被害者、加害者の見分けが難しいことだと指摘する。
 一人の生徒がクラスの多くに無視されることがあるが、一体だれを別教室に入れて指導するのか。いじめた生徒がいじめられる立場に陥ることもある。けんかでも、負けた方がいじめられたと過剰に反応してくることもあるという。
 著名人を集めた教育再生会議だが、苦労している教育現場からは共鳴より反発が強いようだ。だが、このような会議がつくられたのも、学校現場で対応が十分出来ていないという現実があるから。
 現場感覚と異なる提言を押し付けられないためにも、親や住民の声を聞きながら、各学校の職員室で現実に即した対策を話し合っていただきたい。
12月4日朝刊
(毎日新聞)-12月4日17時1分更新

●土佐の教育改革:学力低下、いじめ…もっと対策を 提言書を県教育長に/高知
◇今月中に方針まとめ
 土佐の教育改革の検証と総括をする「教育改革10年を未来につなげる会」(半田久米夫座長)は5日、これまでの会合でまとめた提言書を大崎博澄・県教育長に提出した。依然として課題となっている中学校での学力低下やいじめ、不登校などに一層の取り組みを求めている。
 土佐の教育改革は、いじめや不登校問題、私立学校への生徒流出などの問題を受け、97年度からスタート。同会は今年9月から、改革の成果を検証しようと4回の会合を持った。
 中学校での問題の背景には、思春期という心理上の問題に加え、教科担任制や部活動の本格化など教育システムの変化への戸惑いが考えられると指摘。対策として「小学校と中学校では授業力に差があり、教員は小学校の授業を参考にすべきだ」「学力を伸ばすカリキュラム開発に大学などと共同で取り組む必要がある」との意見を示した。
 提言書を受け取った大崎教育長は「中学校のいじめ・不登校問題を改善すれば、小学校や高校の改善にもつながる」と答えた。
 県教委では、提言を踏まえ今後の方針を今月中にまとめ、来年度予算に組み込む予定。また、来年2月には県民フォーラムの開催を計画している。

●いじめ対応不適切 小学校に異例勧告 沖縄弁護士会
 本島中部の小学校で男子児童に対するいじめがあり、いじめをめぐる学校側の認識の欠如と不適切な対応が児童を不登校に追い込んだなどとして、沖縄弁護士会(大城浩会長)が9月21日、対応策を全校挙げて確立するよう同校に勧告していたことが4日、分かった。同弁護士会がいじめ対応について学校側に勧告するのは2件目で、異例の対応だ。
 同校によると男子児童は、3年生だった前年度、複数の級友らから一方的に殴る、けるの暴行を受け、所有物を勝手に取られたり、言葉での中傷を日常的に繰り返された。担任の男性教諭は児童間のトラブルを4月から把握していたが、いじめと認識したのは10月ごろからという。
 同年12月、いじめを受けていることを相談した日記を児童が提出したところ、担任は学級会で全児童の前で読み上げた。校長は「担任はいじめを皆で考え、解決しようとした」と説明する。
 しかし、児童の両親によれば、日記を公表したことがきっかけになって精神的に追い込まれ、2006年1月から不登校となり、4年生に進級した現在も続いている。
 両親は「内面を相談した日記を公表されて密告した形になり、学校に行けなくなった。対応を学校に求めても、担任だけに任せた」と批判した。
 同弁護士会人権擁護委員会(委員長・三宅俊司弁護士)は、今年5月と7月に両親からの依頼を受けて調査。(1)いじめに学校全体で対応する体制(2)再登校のための計画を専門家を含め早急に策定―など5点を勧告。
 これを受け同校は、(1)「いじめ組織的対応」を職員会議で確認(2)専門家とともに再登校を促すプログラム作成―などを明記した報告書を11月28日に回答した。
 校長は「初期の対応がまずかったことは確か。日記を本人の了解も得ずに全体の場で読むことは良くない」と認めた上で「学校として努力しており、早く戻ってほしい」と説明。校長によれば、担任も対応に問題があったことを認めている。
(琉球新報)-12月5日9時49分更新

●発達障害 乳幼児の支援策充実
広島市の検討委提言 早期発見など5項目
 自閉症など発達障害者の支援体制整備に取り組んでいる広島市の検討委員会は、乳幼児段階に絞った提言をまとめた。市民の理解促進、早期発見や診断、支援の充実など五つの重点項目を掲げ、各種施策を展開する必要性を強調。市は本年度末までに策定する「障害者基本計画」に盛り込む。
 具体的な施策として、就学先などで円滑な支援が受けられるようにするため、子どもの「サポートファイル」の作成、活用を提案。専門医の育成や幼稚園・保育園への支援コーディネーター配置など二十の具体的な取り組みを列挙している。
 発達障害は自閉症やアスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害など範囲が広く、生活に支障がないなど周囲が障害に気づかないケースも多い。一方で、早期発見や療育の必要性が指摘されている。
 二〇〇四年度の発達障害者支援法の成立などによる障害への知識、理解が深まったことや診断技術の向上により、障害児の数は増加傾向にある。市の三つのこども療育センターでアスペルガー症候群などを含む「自閉症スペクトラム」とされた件数は〇三年度には一〇一件だったが、〇四年度は二百六十七件となった。
 支援法は理念法の色彩が強く、具体的支援策やサービス確保は自治体に委ねられている。このため、市は昨年八月、専門家などでつくる検討委を設置、七回の会合を重ねてきた。成人期までのライフステージに応じた一貫した支援が大切として、まず未就学児に限った提言を中間取りまとめとして作成した。
 検討委は〇七年度までに就学段階から成人を対象にした提言をまとめる。
(中国新聞)(2006.12.2)

●<教育再生会議>いじめ対策の「出席停止」素案明記 論議に
 政府の教育再生会議が9日まで行った集中討議で、問題行動を繰り返す子どもへの出席停止を来年1月の中間報告に向けた素案に明記したのは、いじめ対策への積極的な取り組みをアピールするためだ。子どもへのボランティア義務付けも盛り込み保守色が一層強まったが、ともに慎重論が根強いテーマだけに論議を呼びそうだ。
 いじめによる相次ぐ子どもの自殺を受けた先月29日の緊急提言で、出席停止の明記は見送られた。集中討議では、義家弘介担当室長が再び「いじめや教師に暴力を振るう子どもには強い措置が必要」と主張。素案の中で再び浮上した。
 池田守男座長代理は終了後の記者会見で「教育的見地の一つという形で書かせてほしい」と意欲を示したが、委員には「学校の責任放棄」との批判もあり、引き続き慎重に協議する。
 ボランティア活動の義務付けは、00年の教育改革国民会議で「憲法が禁じた苦役につながる」と見送られた経緯がある。安倍晋三首相は9月の自民党総裁選で、大学入学前の義務化を提唱しており、再生会議も「(義務である)奉仕活動を教育で実践する意見が多数」(池田氏)という。
 このほか中間報告では、国・地域の伝統を尊重する心を養うことや、正月などに「家族の日」を設けて「家族のきずなを深める」ことを提唱するなど、首相の持論に沿う内容を盛り込む見通しだ。
(毎日新聞)-12月9日23時26分更新

●発達障害:20歳超え診断1.6% 来年度内に対応策−−道が初の実態調査/北海道
 道が、自閉症、学習障害(LD)など発達障害児・者の実態調査を初めて実施したところ、本人や家族も気づかずに20歳を超えてから診断された人が1・6%含まれていることがわかった。診断が遅れた場合、適切な支援を受けられず、社会適応が難しくなるケースが多いため、道は07年度中に早期診断の体制確保など対応策をまとめる方針だ。
 発達障害は自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害など脳に何らかの機能障害があり通常、低年齢で発現するとされている。発達障害の可能性のある子どもは国の調査では6・3%ともいわれているが対象者の把握自体が難しいという。
 昨年4月、発達障害者支援法が施行したのを受け、道は今年7月に実態調査を実施。自閉症や学習障害の親の会などを通じて1408人を対象にアンケートを行い、697人から回答を得た。
 その結果、発達障害の診断を受けた時期は、3歳が最も多く166人(回答者の24・4%)で、これを含めて就学前までに診断を受けた人は全体の7割を占めた。
 一方、20歳を超えてから診断を受けていたと答えた回答者は11人(1・6%)だった。知的障害を伴う場合は早期に発見されやすいが、そうでない場合は、小中高校を何の支援も受けずに過ごし、就職してから問題を抱えるケースが少なくない。
 また就業経験者(78人)のうち、退職した人に理由を尋ねたところ、「自己都合」が29人(64・4%)、「会社の都合」が16人(35・6%)で、「人間関係がうまくいかない」「業務についていけない」などが挙げられていた。
12月9日朝刊
(毎日新聞)-12月9日12時1分更新

●なぜ学校はいじめを隠すのか 第三者機関設置を要望へ
 いじめ自殺で学校や教育委員会の真相隠しが問題となる中、自殺や校内の事故で子どもを亡くした親らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」(事務局・たつの市)が十二日、文部科学省に、事実を調べる第三者機関の設置などを申し入れる。会には学校の体質を知る教員もおり、「このままでは悲劇はなくならない」と訴える。
 同会代表世話人の内海千春さん(47)=たつの市。一九九四年、小学生の長男=当時(11)=が担任に平手でほおなどを殴られた後、命を絶った。学校は詳細を語らず、報告書に「管理外の事故死・原因不明」と書いた。
 両親は何度も学校に真相解明を申し入れ、検察は担任を略式起訴。それでも、学校は動かなかった。結局、市を訴えた裁判に勝つまで、わが子の死をめぐる“真実”を知ることはできなかった。
 公立中教諭の内海さんは「学校は『子どもを動揺させないように』と沈静化に終始する。真相究明の調査は教師の仕事ではない」と語る。
 川西市の宮脇勝哉さん(48)も、中学生だった長男=当時(13)=を、部活動中の熱中症で失った。やはり、真相究明は壁にぶつかり、市が設置した「子どもの人権オンブズパーソン」の調査で、ようやく顧問教諭の過失が認定された。
 宮脇さんも教師。「列車や航空機の事故には調査委員会があるが、校内で起きたことを誰が客観的に調査できるか。強い権限を持った第三者機関が必要」と強調する。
 同会の姫路市の男子大学院生(31)は、個人としての請願書も用意した。十五年前、岡山県内の私立高校の寮で上級生らに連日暴行されたとして大阪高裁で係争中。「自殺未遂を繰り返した一人として、死を選ぶ気持ちが分かる。私学経営者らは問題を公表しない」とし、私学についても実態把握を文科相に要望する。
 さらに請願書では、第三者機関の設置、問題が起きた際に文科省が情報を当事者に伝えるよう学校を指導することや、年一回、当事者から学校や教委の対応について聴く場を持つよう求める。
(神戸新聞)2006/12/10

●少年事件テーマに取り組み紹介 京都家裁が庁舎見学会
 家庭裁判所の役割を広く知ってもらおうと、京都家裁(京都市左京区)は9日、庁舎見学会を開いた。関心が高まる少年事件をメーンテーマに、裁判官のミニ講演や保護者が悩みを語り合う新たな取り組みを紹介した。
 10月初旬の法の日週間にちなんだ催しで、京都家裁では庁内を流れる泉川沿いの紅葉が深まるこの時期に開いている。今年は約60人が訪れた。
 生熊正子裁判官が少年事件の審判の流れを説明し、「処罰ではなく少年を立ち直らせるのが目的。家庭裁判所ではどんな小さな事件もすべて扱う」と話した。
 子どもの居場所として大切な家庭への働き掛けとして、京都家裁が今年始めた「保護者会」を再現。職員や市民ボランティアふんする親たちが「子どもが何を考えているか分からない」「お話できるほど、自分は子どもを知らないと気づいた」などと語り合う様子を、来場者たちは熱心に見守っていた。
(京都新聞)-12月9日18時57分更新

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[2006.12.3]

【この頃思うこと】「いじめ」問題を語るつどいで発言しました。

 今回も予定を変更させていただきます。今日、3日、京都会館会議場で、尾木直樹さんを講師に招いて「「いじめ」問題を語るつどい」が、京都教職員組合と京都市教職員組合の主催で開かれ、講演の後の討論で10分間の指名発言を依頼されお話して来ました。どこかの「タウンミーティング」ではありませんので悪しからず…。
 以下、発言です。
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 私は現在、「教育と人間関係の相談室カンナ」という小さな相談室で、相談やカウンセリングをお受けしています。
 不登校、いじめ、ひきこもりや発達障害、それらの当事者である子どもたちや親御さん、また家庭や職場、地域での人間関係にしんどさを抱えておられる方々の相談をお受けするかたわら、「京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル」の副代表として、ご家族への支援や心理教育、当事者である子どもたち・青年たちに対して居場所や訪問での支援を日々行っています。この家族会ノンラベルの方でも、広汎性発達障害やその疑いの子どもたちの比率が高まっていて、その支援のあり方を日々模索しているところです。
 私が、こうした活動に身を転じた経過に少し触れたいと思います。それまでサラリーマンをしていて、ダブルインカムで2人の子どもに恵まれ、仕事に追われながらも平凡な生活をしていましたが、長男が中学3年であった2000年2月に、不登校から自殺をいたしました。当時、長男が通っていた中学校は荒れが深刻で、学級崩壊を通り越して学年全体が崩壊した状態でした。長男はその恐怖と喧噪に耐えかね、また、授業が成立しない中で勉強が身に付かないといういらだちなどから、不登校という選択をしました。当時の中学校では、荒れという状態の下で、いじめや暴力、盗みをはじめとする反社会的行為が日常となっていたようで、長男もこうした状況の渦中にあって、そのしんどさに耐えかねたのでしょう。またそれらを体験した子どもたちは成人した後、「当時のことが思い出せない」というほど、一人ひとりの意識から抑圧し嫌悪体験を忘れようとすることで、健常な自我を守ろうとしています。
 長男の死に際して、思ったことは、まず、子どもを亡くした親なら誰でもそうであると思いますが、なぜもっとわが子のことを理解してやれなかったのか、寄り添ってやれなかったのかという自身を責める気持ちです。そして、不登校の原因となった、学校という場が、なぜ子どもたちにとって安全な場でなくなっていったのかということと、学校に関わる教職員や親たち大人がなぜその荒れを食い止め、また解消していくことができなかったのかということへの疑問です。
 そして何よりも、長男が死をもって、私たちに残したメッセージをしっかりと受け止めてやりたいということでした。それは、子どもたち、とりわけ思春期にある現代を生きる子どもたちが置かれている状況、心理社会的な環境と、その中で懸命に身をまもりながら生きているけなげな気持ちを、そのありのまま受け入れてやれる大人でありたいということにつながります。また、長男のような悲しい選択をせざるを得ない子どもが再び出てこないようにするには、何が必用か、この社会を形成し動かしている大人たちに何ができるのかを真剣に考え、自らその役に立てる人材になりたい、ということでした。
 こうして、20年のサラリーマン生活に終止符を打ち、心理や教育、発達などを学びつつ、家族会でのボランティアで実践的に当事者及び家族への支援に関わるようになりました。
 今、私の相談室カンナでも、言葉による暴力や意図的で理不尽な扱いなどの精神的・肉体的な被害体験が引き金となって自己評価を下げ、抑うつや神経症状を出しながら不登校となっている子どもたちの相談をいくつかお受けしています。また、広汎性発達障害であるが故にからかいやいじめを受けても本人はいじめという意識を持ち得ないままにやり場のないしんどさを抱えて不登校やひきこもりになっておられる方も少なくありません。不登校の子どもたちの中で発達障害を有している比率は30%強と言われています。広汎性発達障害を有する子どもたちは、障害特性を理解し必用なときに適切な支援ができる大人が回りに一人でもいれば、不登校になる確立は大きく低下します。
 ちょっと人と変わっている、いじりやすい、からかうと反応がおもしろい、いろんな意味でめだっているなど、本人の個性や特性や言動が「標準的でない」というだけで、からかいやいじめのターゲットとされてしまう、これが、今の学校で日常的に起こっている実態です。
 いじめられる側の子どもたちは、生まれ持った特性やその後に獲得してきた認知によってマイノリティにされてしまいます。一方、いじめる側の子どもたちも、何の理由もなく他者をからかい、いじめる行為に出ることはありません。家庭や学校、地域での生活の中で感じ続けてきた不安やいらだちなどから、自身の不全感との葛藤や自己保全のための虚勢を、他者を攻撃するという形で表現していると見るべきだと思います。
 また、私たち大人も今、競争主義を基盤とする管理社会といういじめ社会を生きています。そして、学校という社会はまさにその象徴的存在だと思います。このいじめ社会の中で人は、しんどい、つらい、悲しいという率直な感情を言葉にして誰かに表現することができずに、一人で抱え込み、背中を丸めながら、ぎすぎすした人間関係の中を生きています。その姿を子どもたちはしかりと見ているのです。ですから、子どもたちは、しんどさ、つらさを大人に話すことをためらうのではないでしょうか?
 今の子どもたち一人ひとりが置かれている状況、抱いている内面の心理状態に心を配れる大人がその子の回りに存在し、安全と安心が醸し出す温かい人間関係の中で、子どもたちの話しを聴いてあげられる環境を作ってあげること、それこそが「教育再生」という取り組みの中軸となるべきだと思います。いじめに因る自殺が何年にも渡ってゼロであるという報告がまかり通る教育行政という社会や、いじめ加害者に懲罰的な対処をすることでいじめを無くそうとする思考は、死をもって訴えている子どもたちから何も学ぶことができていないことの証であり、お話になりません。
 多くの子どもたちが、さまざまないじめや被害感情から自己評価を下げ、自殺という最悪の結論を自ら出し続けています。子どもたちには何の責任もありません。今、このいじめ問題で問われているのは、大人の責任、まさにこれから、子どもたちの育ちに真摯に向き合う大人の態度ではないでしょうか。私たち大人が、競争主義に埋没していることを見つめ直し、自分自身を大切にすること、精神的なゆとりを取り戻すことを通して、子どもたちの話しを聴ける存在となれることが、今求められているのではないでしょうか。
 私は小さな相談室や家族会での支援活動で、微力ながら、大人の一人としての役割を果たし続けて行きたいと思っています。ぜひ、みなさん、子どもたちを理解し慈しむ、学校、家庭、地域での共同の取り組みを広げて行きましょう。
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 次回は「自己評価を高める共感的な他者との関係性」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

<教育再生会議>「いじめ問題への緊急提言」を決定

政府の教育再生会議(野依良治座長)は29日午前、首相官邸で第3回全体会合を開き「いじめ問題への緊急提言」を決定、公表した。相次ぐいじめによる自殺を受け、いじめをした子どもに対する指導、懲戒の基準を明確にし、「いじめを見て見ぬふりをする者も加害者」との指導を学校が子どもに徹底するよう求めた。また、いじめに加担するだけでなく、放置・助長した教員も懲戒処分の対象とすることを明記。「いじめを解決するのがいい学校」との認識を強調し、学校による隠ぺいの排除を図った。
 再生会議は10月25日に「いじめ防止の緊急アピール」を発表している。その後も同様の事件が続き、重視姿勢を示す必要があると判断した。
 提言ではまず「いじめは反社会的な行為として絶対許されない」との指導を学校が子どもに徹底するよう要請した。いじめた子どもへの懲戒は出席停止を念頭に置いたもの。明記することも検討したが、「事態を複雑化しかねない」(伊吹文明文部科学相)との慎重論も強く、見送られた。
 教員への処分については、児童・生徒をいじめた場合の処分を規定した東京都教委などを例に、全国の教委に同様の規定の導入を呼びかけた。
 また、学校や教育委員会、保護者が連携していじめ撲滅に全力を挙げることや、教委が学校支援のためのサポートチームを結成するよう求めた。いじめを理由とする転校が認められていることを生徒や保護者にしっかり伝えるよう、注意を喚起。「いじめの解決を図るには、家庭の責任も重大」と言及した。
 再生会議は、緊急提言を文科省や都道府県教委を通じて学校、保護者に呼びかける。安倍晋三首相は会合であいさつし、提言について「即実行できるものは実行させていただく」と述べ、いじめ自殺対策を急ぐ考えを示した。池田守男座長代理(資生堂相談役)は終了後の記者会見で、緊急提言を「社会全体に対する再生会議の(いじめ撲滅の)決意表明だ」と強調。出席停止の明記には委員の意見が分かれたことを明らかにした上で、いじめた子どもへの懲戒基準に「(出席停止も)一つの選択肢としてあっていい」との認識を示した。
 ◆政府の教育再生会議有識者委員一同が29日まとめた緊急提言は次の通り。
(1)学校は、子どもに対し、いじめは反社会的な行為として絶対許されないことであり、かつ、いじめを見て見ぬふりをする者も加害者であることを徹底して指導する。<学校に、いじめを訴えやすい場所や仕組みを設けるなどの工夫を><徹底的に調査を行い、いじめを絶対に許さない姿勢を学校全体に示す>
(2)学校は、問題を起こす子どもに対して、指導、懲戒の基準を明確にし、毅然とした対応をとる。<例えば、社会奉仕、個別指導、別教室での教育など、規律を確保するため校内で全教員が一致した対応をとる>
(3)教員は、いじめられている子どもには、守ってくれる人、その子を必要としている人が必ずいるとの指導を徹底する。日ごろから、家庭・地域と連携して、子どもを見守り、子どもと触れ合い、子どもに声をかけ、どんな小さなサインも見逃さないようコミュニケーションを図る。いじめ発生時には、子ども、保護者に、学校がとる解決策を伝える。いじめの解決に全力で取り組む中、子どもや保護者が希望する場合には、いじめを理由とする転校制度が認められることも周知する。
(4)教育委員会は、いじめにかかわったり、いじめを放置・助長した教員に、懲戒処分を適用する。<東京都、神奈川県にならい、全国の教育委員会で検討し、教員の責任を明確に>
(5)学校は、いじめ問題があった場合、事態に応じ、個々の教員のみに委ねるのではなく、校長、教頭、生徒指導担当教員、養護教諭などでチームを作り、学校として解決に当たる。生徒間での話し合いも実施する。教員もクラス・マネジメントを見直し、一人一人の子どもとの人間関係を築き直す。教育委員会も、いじめ解決のサポートチームを結成し、学校を支援する。教育委員会は、学校をサポートするスキルを高める。
(6)学校は、いじめがあった場合、それを隠すことなく、いじめを受けている当事者のプライバシーや二次被害の防止に配慮しつつ、必ず、学校評議員、学校運営協議会、保護者に報告し、家庭や地域と一体となって、解決に取り組む。学校と保護者との信頼が重要である。また、問題は小さなうち(泣いていたり、寂しそうにしていたり、けんかをしていたりなど)に芽を摘み、悪化するのを未然に防ぐ。<いじめが発生するのは悪い学校ではない。いじめを解決するのがいい学校との認識を徹底する。いじめやクラス・マネジメントへの取り組みを学校評価、教員評価にも盛り込む>
(7)いじめを生まない素地をつくり、いじめの解決を図るには、家庭の責任も重大である。保護者は、子どもにしっかりと向き合わなければならない。日々の生活の中で、ほめる、励ます、しかるなど親としての責任を果たす。おじいちゃんやおばあちゃん、地域の人たちも子どもに声をかけ、子どもの表情や変化を見逃さず、気付いた点を学校に知らせるなどサポートを積極的に行う。子供たちには「いじめはいけない」「いじめに負けない」というメッセージを伝えよう。
(8)いじめ問題については、一過性の対応で終わらせず、教育再生会議としてもさらに真剣に取り組むとともに政府が一丸となって取り組む。
(毎日新聞)-11月29日12時11分更新

●いじめ緊急提言 厳しい教育現場の声 「アメとムチ」
 続発するいじめ事件に関し、政府の教育再生会議が29日、緊急提言をまとめた。焦点の一つとして、いじめを放置・助長した教員に懲戒処分を適用することを求めた。一方で、いじめ対策への取り組みを教員評価につなげるよう提言。努力した教員にはアメを与えるとも受け取れる内容だ。現場のいじめ対策にどんな影響があるのか。反応の声もさまざまだ。
 東京都内の区立中学校長は「学校の先生がきちんと指導できていないという発想に立ったもので本末転倒な話だ。現場の先生の神経を逆なでし、処分されるとなればますますいじめを隠そうとする」と強く批判する。一方、“アメ”に関しては「何をもって、いじめが減ったか増えたか、取り組みが進んだか進んでないかを評価するのか。現場の実情とはかけ離れた考え方だ。学校はユートピアではなく、けんかもあればいじめもある。特効薬はなく、現場は一つ一つ全力を挙げて対応していくしかない」と憤りを込めて話した。
 一方、別の区内のある小学校長は「いじめ自殺があった学校では、校長らがマスコミを前に謝罪しているが、一過性に過ぎない。現場の教員は『いじめを見逃したら教師生命がない』というくらいの真剣さが必要だ。その意味で懲戒処分を盛り込んだことは評価できると思う」と話す。
 ただ、緊急提言の中にいじめた子への「指導・懲戒」案として、奉仕活動をさせることが掲げられていることに関しては「社会奉仕が有効なんですかね。きれいごと過ぎますよね」と疑問符もつけた。
 提言通りなら、教師の懲戒処分は各地の教育委員会が行うことになる。94年に大河内清輝君いじめ自殺事件があった愛知県。名古屋市教委のある幹部は提言内容を読み「ちょっと厳しいな……」と漏らした。「現場の先生方の苦しさをもう少し理解してほしい。先生だって失敗はあるが、一生懸命仕事をしている。その結果として懲戒処分にされたら、やってられない」と同情的に語った。
 一方、提言に文科省幹部も批判的だ。内容の多くは、すでに同省が各都道府県教委などに指導・助言をしている。ある幹部は「なんで今ごろこんなものを(提言するのか)……。けんかを売られているような感じがする」と批判した。
(毎日新聞)-11月30日10時3分更新

●いじめ対策、「厳罰化」効果に疑問=教育再生会議の緊急提言
 いじめを苦にした自殺が相次ぐ事態を受け、政府の教育再生会議(野依良治座長)がまとめた緊急提言に対し、有識者や与党内から疑問の声が上がっている。提言は加害者の子どもに別教室での指導を課すほか、いじめを助長・放置した教員の懲戒処分が柱だが、「厳罰化は根本的解決にはつながらない」とみられるためだ。
 提言は「見て見ぬふりは加害者」「家庭の責任は重大」などの8項目。これまで具体的な対策がなかったことから、教育再生を看板に掲げる安倍内閣として、問題解決に取り組む姿勢を示したものだ。
(時事通信)-12月3日15時1分更新
【コメント】この「緊急提言」は、教育再生会議が「緊急」にとりあえず出した「提言」としか思えません。いじめとはどういうものか、いじめの実態はどうかについての記述がないこともそのいい加減さの証ですが、本来いじめという行為が、人間の尊厳を脅かすものであり、子どもたちの人格形成を目的とした教育現場にあってはならないものであるという基本認識が伺えません。また、前文が「子どもが命を絶つという痛ましい事件を何としても食い止めるため、学校のみに任せず、教育委員会の関係者、保護者、地域を含むすべての人々が「社会総がかり」で早急に取り組む必要があると考え、美しい国づくりのために、緊急に以下のことを提言します。」と締められて8つの提言が示されていますが、「美しい国づくりのために」とは、いかにも安部政権色を出すための付け足しで、いじめ問題と何の関係もありません。いじめ加害者や教師に責任を転嫁し、懲罰主義で「減らす」ことに執着した、歴史的にもお粗末なものと言わざるを得ません。

●全国公立小中で給食費滞納18億円、目立つ「拒否」
 全国の公立小中学校で2005年度に、18億円を超える給食費が滞納されていたことが、読売新聞の調査で分かった。
 本来徴収されるべき給食費の0・53%に相当する。経済的に余裕がありながら、払わない保護者が増えており、簡易裁判所に支払い督促を申し立てるなど法的措置に踏み切る自治体も出ている。
 文部科学省も今月から調査を始めているが、給食費の滞納が全国的に広がっている実態が明らかになったのは初めてで、行政側は新たな対応を迫られそうだ。
 読売新聞が10〜11月、全国1840の区市町村に、公立小中学校の給食費について、05年度の滞納状況をたずねたところ、約85%にあたる1575区市町村から有効回答があった。
(読売新聞)-11月27日3時13分更新
 学校給食法は、子供たちに給食を提供するよう自治体に「努めなければならない」と努力義務を規定。そのための設備や調理員の人件費は自治体が負担するが、食材費は保護者が負担するよう定めている。文科省学校健康教育課では「結局は保護者のモラルの問題。学校を通じて給食は自己負担であることへの理解を求めるしかない」と話している。
【コメント】給食も「義務教育」の内、という誤解や手前勝手な思いこみは、いつ頃から始まったのでしょうか。終戦後の劣悪な食糧事情の中から生まれた公教育における給食制度が、このような形でその質を落とさざるを得ないというのは、悲しむべき事態です。給食制度、子どもたちへの食教育などについて、改めて見つめ直す作業が、学校、家庭、地域で必用となっています。

●北海道の給食費滞納額、全国ワースト1。読売新聞調べ(北海道)
 公立小中学校で2005年度に給食費がどれだけ滞納されたかを調べた読売新聞社の全国調査で、北海道は47都道府県の中でも滞納総額が約2億5000万円で全国ワースト1位、滞納率が1・38%でワースト2位と、全国でも突出して多い実態が明らかになった。各市町村の担当者からは、「払えるのに払わない義務感の乏しい保護者が目立つ」との声もあり、法的措置に踏み切る自治体も出始めるなど、深刻な問題となっている。
 調査は26日までに道内180市町村のうち142市町村(78・8%)から寄せられた有効回答を集計。夕張市、滝川市、北広島市、北斗市、ほか34町村からは有効回答がなかった。
 「以前は生活困窮による滞納が多かったが、最近は借金までして良い生活をしたがる自己中心的な親が目立つ」。滞納率が道内ワースト2位となった八雲町の給食センター職員は嘆く。
 3か月ごとに督促状を送り、個別訪問も行うなど努力はしているが、「払います」との口約束は守られない場合も多い。同町では給食は公会計のため、昨年度約370万円にのぼった滞納分は、町の一般会計で補てんするしかない状況だ。
 一方、給食費を学校単位で管理する私会計の場合、補てんができずに食材費を削る市町村も多い。その一つ、留萌市は2002年度から滞納者に対して法的措置を導入した。
 裁判所を通じ、財産の差し押さえも可能にする「支払督促申立書」をこれまで12世帯に送付。「裁判所からの通知の効果は高く、9割方の滞納者は連絡をしてくる。以前は200万以上あった滞納額が昨年度は80万まで減った」と市職員。留萌市のほかにも民事訴訟に踏み切った根室市のように、法的手段に訴える市町村は増えている。
 もちろん、「長引く景気低迷で保護者が失業、離婚し、払いたくても払えない家庭もある」(道南の町)。多くの自治体がそのような家庭に生活保護や就学援助の制度を勧め、滞納額の軽減に努めている。だが、「パチンコ、酒に出費しても給食費は払いたくないという保護者」や「小学校は義務教育だから給食は無料にすべきだと言う親」もいるとした市町村もあり、「無責任な親の姿を見て、子供も同様の大人に育ってしまう」との教育上の懸念さえ抱かれている。
 道内には滞納ゼロの自治体も45町村(有効回答の31・6%)あった。しかし、滞納総額は東京の約2倍、大阪の約4倍にのぼる。滞納率も全国平均0・52%の3倍近い。
 道教委は過去、給食費滞納について統計をとっていなかった。学校安全健康課はワースト1位という結果について、「有効な対策をとっている自治体の例を紹介するなど、道教委としても対応が必要」としている。
(2006年11月27日読売新聞)

●教委の監査機関設置、保護者が教員評価…教育再生会議
 安倍首相直属の「教育再生会議」(野依良治座長)が来年1月にまとめる第1次報告素案の概要が26日、明らかになった。
 教員の能力を保護者らが評価し、指導力不足と認定した教員に対する研修や配置替えを徹底することや教育委員会の抜本的見直しが主な柱だ。学力向上策に加え、放課後に児童を学校で預かる「放課後子どもプラン」の来年度からの実施も盛り込む。会議は12月の集中審議で第1次報告案を詰める方針だ。
 素案の概要は、教育再生会議の野依座長や池田守男座長代理、義家弘介担当室長らが21日に開いた運営委員会でまとめ、文部科学省側にも伝えた。伊吹文部科学相は26日のNHK番組で「教師を信頼し、任せる代わりに教師の資質がしっかりしている裏付けが必要だ」と強調した。
(読売新聞)-11月27日3時13分更新

●教育タウンミーティング全8回、国の動員依頼は6回
 内閣府と文部科学省は27日午前、小泉内閣が開催した教育改革に関するタウンミーティング8回のうち6回で、国側の依頼により開催県の教育委員会などが参加者を動員していたとする調査結果を、参院教育基本法特別委員会理事会に報告した。
 8回のうち、青森県八戸市(今年9月)と松山市(2004年5月)で参加者動員があったことは、すでに明らかになっていた。今回の調査で、新たに岐阜市(03年12月)、山形県米沢市(04年4月)、和歌山市(同年10月)、大分県別府市(同年11月)でも動員依頼があったことがわかった。
 岐阜市では文科省が地元県教委に、その他は内閣府が開催県や市などに依頼し、名簿の存在が確認できなかった別府市を除き、65人から180人が動員されていた。米沢市の場合は、当日の参加者数389人の半数近い180人が、山形県教委や同県の知事部局、地元市役所による動員だった。
(読売新聞)-11月27日12時49分更新

●山形県教育長ら辞任 高2自殺の夜に食事会
 山形県立高畠高校で2年の女子生徒(16)が自殺した問題で、斎藤弘山形県知事は27日の記者会見で、県教育委員会の伊藤晴夫教育委員長と佐藤敏彦教育長から辞表を提出され、受理したと発表した。2人とも後任が決まるまで職にとどまるという。
 女子生徒の自殺した当日の夜に、県教委が自殺を知りながら食事会を開いていたことなどに責任を取ったものとみられる。
 佐藤教育長は辞表提出の理由について「相次ぐ教職員の不祥事や、教科書の未履修問題、高畠高校の自殺当夜の対応などで県民の教育行政に対する信頼を損なった」と説明した。
 教育長は24日に辞表を提出。斎藤知事は「教育現場の現状は非常事態にある。教育に関する信頼回復を早急に成し遂げたい」と述べた。
 県教委は、22日に定例委員会を開催。この場で女子高生が転落死したと報告があったにもかかわらず、終了後に山形市内のレストランで新旧教育委員の歓送迎会などを兼ねた食事会を開いていた。
 教育長は24日の記者会見で「判断が甘く、深く反省している」と陳謝した。
(産経新聞)-11月27日16時33分更新

●<消費者金融>自殺4人に1人…大手5社の借り手の死因
 消費者金融大手のプロミス(東京都)が借り手全員に掛けていた生命保険のデータを金融庁に虚偽報告していた問題で、同庁は28日、再調査の結果を公表した。借り手の死因判明分に占める同社の自殺率は当初の報告の2倍以上の26.9%に上った。これに伴い、大手5社の平均も25.5%に増え、自殺者が4人に1人に達している実態が初めて明らかになった。【多重債務取材班】
 ◇「病死」減り、自殺率はね上がる…プロミス
 金融庁などによると、プロミスは今年9月、実際は死因不詳だった4287件をすべて死因が判明した「病死」に含め、病死が全体で6105件に上ると報告。「死因不詳はゼロ」とした。これに基づき、死因判明分のうち自殺者の割合は11.2%とされたが、修正報告によって「病死」が減ったため、自殺率が26.9%にはね上がった。
 プロミスの自殺率が増えたことで、アコム▽アイフル▽武富士▽三洋信販――の4社を含む大手5社の死因判明分に占める自殺率も、当初の平均19.4%から25.5%に増加した。同じ生命保険に加入していた計17社(大手5社を含む)の平均でも19.8%から23.9%に増えた。
 17社全体の「死因不詳」は6割に上り、この中には自殺も相当数含まれるとみられるが、一定の条件を満たせば住民票で死亡の事実を確認するだけで保険金が下りるため、実態は分かっていない。
 再調査で自殺率が大きく上がったことについて同庁金融会社室は「保険金の受け取り実態とかけ離れているのに報告内容を精査せず、国民の関心の高い調査で不正確な内容を公表したことをおわびしたい」と話している。
 厚生労働省の05年の人口動態調査によると、20歳以上の死亡者に占める自殺者の割合は2.8%で、消費者金融の借り手とは大きな開きがある。
   ×    ×
 この問題は28日の衆院財務金融委員会でも取り上げられた。長妻昭議員(民主)が「保険(のデータ)からは、さらに多い自殺者がいると推測される。業者が加盟する全国信用情報センター連合会にある顧客情報を基に(件数ではなく)実際の自殺者数を調べられないか」と金融庁に求めた。これに対し、渡辺喜美・副金融相は「難しいが検討する」と答えた。
 また長妻議員は17社のうち借り手の自殺率が33.3%と最も高い業者の名前を明らかにするよう山本有二金融相にただしたが「取り立てが厳しかったことは推定されるが個別には言えない」と答えるにとどまった。
 ◇負債理由は1996人…昨年の自殺
 28日の衆院財務金融委員会で、警察庁の竹花豊生活安全局長は05年に「経済・生活苦」のため遺書を残して自殺した3255人中、「負債」による死者が1996人に上ることを明らかにした。借金苦による動機が明確な自殺者数が国の統計で公表されたのは初めて。長妻昭議員(民主)の質問に答えた。
(毎日新聞)-11月29日3時4分更新

●「真相究明に第三者機関を」 いじめ自殺や学校事故遺族
 子どもはなぜ死なねばならなかったのか。当事者らが思いを語った研究会=神戸市中央区山本通4 いじめによる自殺が相次ぐ中、学校内の事故や事件を考える「子どもの人権研究会IN神戸」が二十五日、神戸市中央区ののじぎく会館で開かれた。子どもを亡くした親たちが体験を語り合い、「学校や教育委員会の隠ぺい体質は何年たっても変わらない。事実が知らされないことで遺族はさらに傷つく」と訴えた。
 同研究会は一九八七年結成。全国の弁護士や研究者、家裁調査官ら約三百五十人が所属し、今回は約五十人が参加した。
 二年前、長崎市で中学二年の二男が校舎の窓から飛び降り自殺した安達和美さんは「学校に調査をお願いしても断られ、事故として処理された。事実が明らかにならなければ『自殺する子が弱い』と片づけられてしまう」と声を詰まらせた。
 ラグビー部の練習中に中学生の長男を熱中症で失った宮脇啓子さん=川西市=は「子どもの命がなくなる瞬間を知りたかった」と、涙ぐみながらに語った。「川西市が設けた『子どもの人権オンブズパーソン』の調査や勧告が役に立った」とし、夫で、教員の勝哉さんも「学校や教育委員会が身内を調べることは難しく、第三者機関が必要」と強調した。
 また、福岡県の八尋八郎弁護士は「いじめ自殺の相談を多く受けているのに、文部科学省は『ゼロ』。これが実態を表している。問題意識を持って取り組んでいかなければならない」と述べた。
(神戸新聞)2006/11/26

●越谷の中2女子飛び降り死亡:校長「いじめ情報ない」 /埼玉
 越谷市の市立中学2年の女子生徒(14)が、自宅マンションから飛び降り自殺したとみられる問題で、同中の校長が30日記者会見し、在校生徒に事情を聴いた結果、「いじめに関する情報はなかった」と述べた。
 同中はこの日、スクールカウンセラーや担任が、女子生徒と同じクラスの生徒や所属していた吹奏楽部の部員らの相談に乗るなどして対応。11月29日の下校時に一緒にいた友人らによると、「(女子生徒は)部活動ではいつものようににこやかに後輩に接していた。これからも練習を頑張ろうよと話しながら帰った」という。同中は1日に臨時保護者会を開く。
12月1日朝刊
(毎日新聞)-12月1日11時2分更新

●越谷の中3自殺:両親が学校など提訴 /埼玉
 越谷市で7月に起きた私立開智中3年、杉原賢哉さん(当時14歳)の自殺を巡り、同市に住む両親が30日、同中を運営する学校法人「開智学園」(さいたま市)と教師ら6人を相手取り、約7760万円の損害賠償訴訟をさいたま地裁に起こした。両親は「自分の子がなぜ死んだのかを知りたい」と話している。
 訴状によると、今年6月、賢哉さんは校内であった盗難事件を「目撃した」と教師に打ち明けた。7月3日にも教師に話し、母親にも事件を告げたが、その際に「学校で大変なことが起きている」などと言った。同4日、賢哉さんは普段通り家を出たが登校せず、午後1時45分ごろ、越谷市内の駅で電車に飛び込んだ。
 両親は▽盗難事件の全容解明を怠り、賢哉さんに精神的苦痛を与えた▽自殺した日の午後まで教師が欠席確認を保護者にしなかったのは安全確認義務違反――などと訴えている。
 一方、記者会見した同学園によると、賢哉さんが目撃したのは盗難事件の現場ではないことが分かり、7月3日に本人に再確認したという。自殺に関しては「原因も分からず予見もできなかった」とし、「両親には慎重に対応してきたが裁判になったのは残念。道義的責任は感じるが法的責任はない」と話した。
12月1日朝刊
(毎日新聞)-12月1日11時2分更新

●いじめ:「受けた」小学423人、中学124人−−瑞浪市がアンケート実施 /岐阜
 ◇全児童・生徒に実施
 ◇でも、市教委“認定”は38件
 いじめを苦に2年生の少女が自殺した瑞浪市立瑞浪中の佐々木喜三夫校長と尾石和正・市教育長らが30日、同市内で記者会見した。尾石教育長が、市内の全小中学校の児童・生徒約3600人を対象に無記名で行った「いじめアンケート」の結果を公表した。【小林哲夫】
 アンケートでは「いじめを受けた」と答えたのは小学校423人(18%)、中学校124人(10%)にのぼり、「いじめをした」と認識している子どもも小学校で25%、中学校で20%いた。
 しかし、文部科学省の規定に基づく「いじめ」に該当する内容と判断して市教委が学校に対応を指示したのは小学校20件、中学校18件だけ。市教委の判断と当事者である子どもたちの感覚とのギャップを感じさせる結果となった。市教委の杉浦文昭教育指導次長は「大半はからかい程度の内容」と述べ、いじめと判断しなかった事例についても、学校に問い合わせるなど何らかの対応をしたことを明らかにした。
 いじめの内容(複数回答)については「ウザイ」「キモイ」「死ね」などの「言葉」が小学校296件、中学校42件で最も多く、小突くなどの「暴力」が小学校154件、中学校14件、あいさつをしないなどの「無視」が小学校99件、中学校31件と続いている。
 尾石教育長はいじめと判断した38件について「実感としていじめの数が多いと思った」と話し、今後の対策として「防止の手引」作成や「指導者交流会」の実施などを挙げた。
12月1日朝刊
(毎日新聞)-12月1日11時1分更新

●いのちの電話:気軽に悩み相談して あすから1週間、フリーダイヤル開設 /大分
 自殺予防などのためボランティアで電話相談を受けている社会福祉法人「いのちの電話」は12月1日から7日までの1週間、全国規模でフリーダイヤル相談窓口を開設し、24時間無料で相談を受ける。電話番号は0120・738・556。
 8年連続して自殺者が3万人を上回っていることなどから、気軽に悩みを相談してもらい、少しでも自殺者数を減らすのが狙い。
 「大分いのちの電話」によると、今年10月末までに1万4128件の相談があり、そのうち自殺に触れたものが716件と過去最多になっているという。同電話はフリーダイヤル開設期間以外にも1年を通じて相談を受けている。097・536・4343。
11月30日朝刊
(毎日新聞)-11月30日17時0分更新

●発達障害児・者:総合支援、指導・相談に一貫対応 来月4日センターオープン /福岡
 発達障害児・者に対する支援の総合窓口となる「福岡市発達障がい者支援センター」が12月4日、市発達教育センター(中央区地行浜2)2階にオープンする。就学前▽学齢期▽就労期と、違う施設で対応してきた発達障害に関する指導・相談に、支援センターが一貫して対応する。
 昨年4月施行の発達障害者支援法は、都道府県と政令指定都市に発達障害者支援センターの設置を求めており、9月末現在で48自治体が設置している。
 福岡市では市社会福祉事業団が運営。職員5人が常駐し、本人や家族の相談に応じるほか、関係機関との連携や発達障害への理解を深めるための啓発活動などを行う。
 市障がい児支援課によると、昨年度、市心身障がい福祉センター(中央区)と市西部療育センター(西区)に寄せられた就学前の発達障害児に関する相談は276件。市発達教育センターへ寄せられた学齢期の発達障害児に関する相談も276件で、いずれも増加傾向にあるという。
 同課は「発達障害が社会的に認知され、これまで潜在的にいた人たちが表に出てきたのではないか」と見ており「センターを発達障害児・者や家族を支援する地域の拠点にしていきたい」としている。センターは平日の午前9時〜午後5時。相談や問い合わせは(845・0040)へ。
 また開所を記念し、2日午前10時から、中央区天神4の福岡ガーデンパレスで講演会が開かれる。自閉症で川崎市職員として働く明石徹之さんと母洋子さんが「発達障害者支援法に込めた親の思い」をテーマに講演する。申し込みが必要で、詳しくは同センター開設準備室(845・0040)へ。〔福岡都市圏版〕11月30日朝刊
(毎日新聞)-11月30日17時0分更新

●<いじめ>「大人」の職場でも深刻 労働相談の2割近くに
 「大人のいじめ」もまん延してます――。日本労働弁護団(宮里邦雄会長)の実施する労働相談で、職場でのいじめに関する相談件数が全体の2割近くを占め続けている。内容も言葉のいじめから直接的な暴力まであり、弁護団は「子どものいじめ自殺が相次ぐ中、『子は親を映す鏡』というが、長時間労働などが職場にギスギスした雰囲気を生み、いじめにつながっているのでは」と分析。「14年間の相談活動の中で経験したことのない異常事態」と指摘している。
 弁護団によると、年間約2000件寄せられる相談のうち、いじめに関する相談の割合は04年に8%で、不払い残業(30%)や解雇(14.9%)などと比べて相談は少なかった。それが05年には17.7%と2倍以上に増加。06年も17.2%と高水準のままだ。これに伴って労災の相談では、従来のけがなどから「うつ病」の相談がほとんどを占めるようになった。
 20代のシステムエンジニアの男性の事例では、システムの完成が進まないことから「再教育」の名目で仕事と関係のない研修を受けさせられ、ひざげりなどの暴力を受けるようになり、うつ病となった。また、経理職だった女性は営業に回された上、けんしょう炎になるまで古い伝票を破る作業を延々とやらされたという。技術の未熟な若者や動きの鈍い人などが狙われるらしい。
 弁護団の棗一郎弁護士は「さまざまな形のいじめがある。法的措置で対抗もできるのでぜひ相談してほしい」と話している。
 弁護団は2日を中心に20都道府県で電話相談「労働トラブル110番」を実施。常設的な相談も行っており、問い合わせは弁護団(03・3251・4472)へ。
(毎日新聞)-12月2日15時10分更新

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[2006.11.26]

【この頃思うこと】広汎性発達障害と対人関係能力(4)
 昨夜で、家族会ノンラベル主催の「アスペルガー援助者養成講座【第5弾】」が無事終了しました。最終回は精神科医の定本ゆきこ先生で、「青年期・成人期における生きにくさの援助〜違法行為にも触れて〜」と題してお話頂きました。先生は京都少年鑑別所で技官として、違法行為を行った少年・青年たちと日々向き合っておられ、その中で、いわゆる非行型少年事件ケースとは違う、広汎性発達障害に起因する行為が触法・違法となってしまったケースを多く鑑別、援助されて来られています。こうしたケースは、ほとんどが未診断で、家庭で障害特性を理解されなかったり、学校での無理解によるいじめなどの不適応を体験し、また多くがうつや強迫などの二次的症状を出しているそうです。
 広汎性発達障害の人は、定型の人から見れば変わったことにこだわったり、その場にふさわしくない言動をしたりします。それを、叱ったり、嘲笑やからかいの対象としたりすれば、当事者の自己評価は下がり、人との関係性にトラブルが強まったり、希薄になってしまいます。逆に、周囲がその行為を、好意的な態度で肯定的に評価をすれば、周囲の人から受け入れられていると感じ、自己評価が高まります。自己評価が高まれば、前向きな意欲が亢進され、障害特性が社会に適応的な行動に変化していきます。また、そのことで、周囲の人も当事者と関わりやすくなり、生活がしやすくなります。
 見方を変えれば、当事者の障害特性に起因する言動は、周囲の環境が肯定的か否定的かによって大きく変わりますし、それぞれの循環が正の方向にも負の方向にも起こっていきます。障害特性のために、広汎性発達障害の人がこの世界でより生きやすくなるためには、周囲の適度な支援が必要です。親も学校も社会も、正の方向に循環がすすむ支援者であることが求められます。
 現在、思春期や青年期を迎えられていて、未診断であったり、療育的な関わりや支援を受けて来られなかった広汎性発達障害の方々の多くが、これまでの成育歴の中で、数多くの嫌悪体験や心的なダメージを負って来られ、とても生きづらい状態にあると思われます。そのしんどさを、周囲の人が理解してあげること、そこから支援が始まりますし、当事者の対人関係能力が正の循環へと向かっていくものと思います。
 次回は「自己評価を高める共感的な他者との関係性」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

いじめた生徒は出席停止に…教育再生会議が緊急提言へ

学校でいじめによる自殺が相次いでいる事態を受け、安倍首相直属の教育再生会議(野依良治座長)は25日、いじめ問題に対する緊急提言を来週にもまとめ、公表する方針を固めた。
 都道府県や市町村の教育委員会に対し、〈1〉いじめた児童・生徒に出席停止など厳しい対応を取る〈2〉深刻ないじめ問題が起きた場合に備え、緊急に学校を支援する態勢をつくる――ことなどを求める。
 同会議は来年1月に中間報告を作成する予定だが、自殺問題を重く見て、法改正などが不要の緊急対策を早急に打ち出すことにした。文部科学省も速やかに対策を講じる考えだ。
 学校教育法では、「児童の性行不良で、他の児童の教育に妨げがある時」は、市町村教委は保護者に対し、その児童の出席停止を命じることができると定めている。具体例として、傷害、心身の苦痛、財産上の損失などを与える場合を挙げている。
(読売新聞)-11月25日14時41分更新
【コメント】「出席停止」の命令は学校教育法で定められているものの、ほとんど実施されていないと聞きます。それは、「出席停止」という懲罰が適切であるかどうか、その判断と効果に疑問があるからだと思います。ある調査では、いじめという行為を「したことがある」と答える現役小中高生は過半数以上です。こうした実情において、いじめをしたら「出席停止」にする、という脅し(?)が、どんな効果があると思っての緊急提言なのか、疑問です。教育再生会議に参加する「有識者」には、さまざまな人がおられます。創意としての「提言」と言うなら、この会議の存在自体に疑問を感じてしまいます。いじめをしてしまった子どもたちが、自身の行ったことの重さや問題性を深く理解できる教育への再生こそ求められているのではないでしょうか。

●<いじめ>加害者からの相談も急増
 いじめ自殺が社会問題化する中、各種機関への子どもたちや親からの相談が急増している。「どうしたら抜け出せるのか」など被害者からだけでなく、加害者側からの相談も目立ってきたという。電話やメールで子どもたちの世界に接してきた担当者からは「被害者と加害者が簡単に入れ替わる環境の中で子どもたちはストレスを抱えている」との指摘が出ている。
 ◇「本当はいじめをやめたい」…苦しい胸の内も
 79年にトヨタ自動車の協力で開設された「トヨタ子ども110番」(東京都港区)では、この数カ月、いじめる子どもからの悩み相談が増えているという。
 いじめる理由は「悪いと思うがやめられない」「相手が自分より弱いと思うと安心する」「以前いじめられた仕返し」など。「仲直りの仕方が分からない」と関係修復の方法を尋ねるケースもあるという。
 相談業務をまとめる米沢琴江さんは「いじめている子は、怒られるのが怖くてなかなか誰にも相談しない」と話す。「じっくり話を聴き、自分を見つめさせること」を心掛けているという。
 NPO法人「チャイルドライン支援センター」(東京都港区)では、いじめている子が「本当はいじめをやめたい」などと苦しい胸の内を訴える声がこの1、2年目立つという。
 かつての「不幸の手紙」と似た「チェーンメール」で、いじめへの加担を強いられたという悩みも届いた。「あいつウザイ」とメールが回り、メールを次の子に送らないと、自分が攻撃対象になる。同センターの徳丸のり子常務理事は「子どもの世界では、いじめるかいじめられるか流動的な面がある。標的になりたくないという理由で、いじめに加わるケースも少なくない」と話す。
 相談機関への訴えは急増中だ。法務省が急きょ「いじめ問題相談強化週間」とした10月23〜29日、同省の「子どもの人権110番」には8月の強化週間の約9倍の647件の相談が寄せられた。うち49件については「学校や教師の対応が不適切」との意見を受け、学校に対する聴き取り調査を始めた。
 東京弁護士会の「子どもの人権110番」でもいじめに関する相談は昨年度は月平均17件だったが、10月ひと月で33件あった。相談に応じている川村百合弁護士は「学校側が適切な対応ができず、かえっていじめを陰湿化させることもあり、保護者は学校だけに問題解決を任せられないと感じている」と語った。
■いじめに関する主な相談窓口
◇法務省 子どもの人権110番
 0570・070・110
(平日8時半〜17時15分)
◇東京都教育相談センター
 03・3493・8008
(平日9〜21時、土日祝9〜17時。メール相談受付あり)
◇東京弁護士会 子どもの人権110番
 03・3503・0110
(平日13時半〜16時半、17〜20時、土13〜16時)
◇警視庁 ヤング・テレホン・コーナー
 03・3580・4970
(平日8時半〜20時、土日祝8時半〜17時。メール相談受付あり)
◇チャイルドライン
 0120・7・26266
(地域により番号と開設時間は異なる。詳細はホームページ参照)
◇トヨタ子ども110番
 03・3470・0110
(月〜土17〜21時)
※国立教育政策研究所のホームページから、いじめ問題などを相談できる公的機関を見ることができる。(http://www.nicer.go.jp/integration/user/map.php)
(毎日新聞)-11月21日15時38分更新

●<いじめ>人権作文コンで体験告白 沖縄の女子中学生
 人権をテーマにした「第26回全国中学生人権作文コンテスト」(法務省など主催)の入賞者が24日に公表され、いじめをテーマにした沖縄県伊平屋村立伊平屋中学1年の伊禮美朱紀(いれいみずき)さん(12)が内閣総理大臣賞に選ばれた。作品は、友人をいじめていた自分がいじめられる側になった体験を通し、いじめられる痛みを知る内容。伊禮さんは「いじめをやめて」と呼びかけている。
 作文のタイトルは「一人じゃないよ」。小学校4年の時に、「いじめの標的にされるのが怖かった」伊禮さんがいじめグループとともに、友人をいじめたと告白。しかし、小5になると今度はいじめられる側になった。
 「いじめられた人の心の傷の痛さを味わった……さびしくて、怖くて、悲しくて、心が痛くなることを初めて分かった」とつづった。そして、転校生が新たな標的になった時、いじめに加担することを勇気を持って断った。
 さらにいじめられている転校生にできることはないか。考えた末に「あんたは一人じゃないよ」と声をかけた。
 輝きを取り戻した転校生。伊禮さんは先生や親にいじめの事実を告げ、クラスみんなで話し合い、「いじめをなくすことを誓い合った」。
 伊平屋村は沖縄県北部の離島。子どものころからクラスの顔ぶれはほとんど変わらない。伊禮さんたちは中学生になったが、「あれ以来一度もいじめは起こっていない」と振り返る。そして「いじめを見たり聞いたりしたら知らんふりをせず、思いやりの手を差しのべてほしい。私は『この世の中にいじめはあってはならない』ことをこれからも訴え続けていきたい」と結んだ。
 伊禮さんは、いじめをなくし仲良くする秘けつは「言い合うこと。何でも言い合って、自分たちで解決することです」。また「(いじめられている人に)思いやりの手を差し伸べて。いじめた人は正直に謝って」と同世代の仲間へのメッセージを語った。
 コンテストには79万9103人が応募。いじめをテーマにした作品が最も多く全体の2割強に上った。
(毎日新聞)-11月25日3時3分更新

●子どもの声を学校現場に 滋賀県教委 「いじめ対策チーム」初会合
 いじめを苦にした自殺が全国で相次ぐ中、滋賀県教委は児童や生徒を交えた「いじめ対策チーム」を発足させ、24日に大津市の県庁内で初会合を開いた。いじめられた経験を持つ高校生が自らの経験を語り「生徒の目線に立てば、生徒も先生を信用する」と訴えた。
 このチームは、子どもの声を学校現場に生かし、いじめをなくす方策を探ろうと設置した。メンバーは、大津市にある中央小6年の南規楽君(11)と獅子堂聡美さん(12)、打出中2年の丹保裕介君(13)、大津商3年の小森敏充君(18)の4人をはじめ、教職員や保護者ら計15人で構成する。
 この日は15人全員が出席した。小中学校時代にいじめにあった小森君は「トイレに連れ込まれたりもしたが、何をされても負けずに学校に行き続けたことで、いじめがなくなった」と述べた。そのうえで「先生と生徒は、心の距離が離れている。生徒の目線に立てば、生徒も先生を信用する」と指摘した。
 外国籍の児童に日本語を教える水戸小(湖南市)の楠田睦美教諭は「外国人の子どもは少数派で、弱い立場に置かれる。だから標的にもなりやすい。外国人同士でもいじめがある」と実態を紹介した。
 次回は12月20日前後に開き、メンバーがいじめ防止に向けた具体策を提案する予定。
(京都新聞)-11月24日21時59分更新

●「いじめ相談ネットワーク」設立=清輝君父ら発起人、民間8団体連携
 愛知県西尾市で12年前、いじめを苦に自殺した市立中学2年大河内清輝君=当時(13)=の父祥晴さん(60)らが発起人となり、いじめ問題に取り組む全国の民間8団体が25日までに、「いじめ電話相談ネットワーク」を設立した。
 全国で中学生を中心に、いじめが原因とみられる自殺が相次ぐ中、名古屋市内で開かれた緊急集会で、子どもたちから「相談する場所がない」などの意見が続出。大河内さんらは、駆け込み寺のような場所が必要と判断した。
 同県内で不登校の生徒を相手にフリースクールを運営する木村茂司さん(60)が取りまとめ役となり、全国の民間団体に協力を要請、ネットワークを立ち上げた。電話やファクス、メールで24時間相談を受け付けている。 
(時事通信)-11月25日6時3分更新

●両親、「本当の理由知りたい」・高畠高生自殺問題
 県立高畠高2年の女子生徒(16)が22日、同校の校舎敷地内で飛び降り自殺した問題で、女子生徒の両親は24日、「自殺した本当の理由を知りたい」「いじめはこの地域だけの問題ではない。こうした悲しい思いをする人が二度と出ないようにしてほしい」などと、中学時代の生徒を知る関係者に心情を訴えた。
 24日朝に自宅を弔問した関係者によると、女子生徒が数人の名前とともに携帯電話に残したとされるいじめの内容について、両親は「一部しか知らされていない」と述べたという。
 女子生徒は20日、学校でいじめを受けていることを母親に打ち明け、母親は翌21日、学校を欠席させた。事件当日の22日朝も母親は学校を休ませようとしたが、生徒は「いい」と言って元気に登校した。両親は「学校は安全で信頼のおける場所だと思っていたのに、娘は変わり果てた姿で戻ってきた。引き留められなかったことが悔しい」と涙ながらに話したという。
 父親は「娘は高校に入ってから表情が暗くなってしまい、明るい写真がない」と漏らし、遺影は中学生時代の写真を使っているという。
 この関係者は「女子生徒は正義感が強く、思いやりのある優しい子どもだった。両親に心配をかけまいとするあまり、いじめを1人で抱え込んでしまったのではないか」と話している。
(山形新聞ニュース)2006年11月25日土曜日

●発達障害児:学齢期以降も支援を 親の会など長崎市に陳情/長崎
 日本自閉症協会県支部と長崎学習障害児親の会「のこのこ」など4団体は20日、学齢期以降も発達障害児に適切な支援を継続することなどを求める伊藤一長市長あての陳情書を提出した。
 陳情書では、保護者や学識経験者などによる連絡協議会の設置▽市障害福祉センター(茂里町)の事業として「学齢期以降の発達障害児・者支援」を位置づけたうえでの支援充実や人材確保――などを求めた。同センターは未就学児の診察や療育、保護者の相談などを実施しているが、特例を除き学齢期以降は支援の対象にしていない。両会は、05年の市議会で同趣旨の請願が全会一致で採択されたが「市の方針が変わっていない」として、今回改めて陳情した。
 自身も発達障害児の親で、思春期外来で診療する長崎大大学院の岩永竜一郎助教授(38)は「発達障害は早期発見と継続支援をしないと不登校、強迫症状といった2次、3次障害につながる可能性がある。一度社会に不信感を抱くと就労も困難になり、ニートの原因にもなる」と話した。
 一方、市側は「センター内の他事業の状況や財政状況をみながら検討したい」と述べた。4団体が求めた文書による回答は拒否した。
 発達障害には、学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、アスペルガー症候群などがある。うまく意思疎通ができない、関心に激しい偏りがあることなどが特徴。先天性の脳の機能障害ともいわれ、早期発見と継続的な療育で社会適応を支援することが重要とされる。
 文部科学省の調査では、特別な教育的支援を要する小中学生は通常学級で6・3%に上る。長崎市では05年度、発達障害の診断を受けている小学生は150人(0・7%)、中学生は40人(0・3%)だった。佐世保市などは学齢期以降も支援をしている。
 「のこのこ」は、保護者などからの相談を受け付けている。連絡先は事務局長の谷栄子さん(095・857・7713)。
11月21日朝刊
(毎日新聞)-11月21日16時1分更新
【コメント】市議会で請願が採択されていながら、その具体化が進まないために陳情…。家族会ノンラベルで昨年12月京都府議会に請願、採択された「高機能広汎性発達障害(児)者への民間の療育・支援への援助に関する請願」も1年が経とうとしていますが、具体的な動きは何もありません。それどころか、ほとんどの都道府県・政令市に設置されている発達障害者支援センターの設置に向けた議論も遅々として進んでいないようです。来年度から義務教育において特別支援教育がはじまり、これまでの児童相談所などにおいての発達障害を有する児童・生徒への支援は一定充実が見込まれますが、中学を卒業したあとの公的な支援は公的にはほとんどないのが実情と言えます。「財政状況の問題」ではすまされない、緊急の課題であることを、行政は理解すべきです。

●不登校の子らの就労支援 カフェ開店 宇治で交流の輪拡大へ
 ひきこもりや不登校の子どもたちのほか、地域住民の交流拠点にもなっている京都府宇治市木幡の「ほっこりスペースハートあい」が22日、コミュニティーカフェを開店する。ひきこもり経験者の就労へのステップとして、誰にでも開かれた地域交流の場として、活動5年を機に新たな門出を迎える。
 「ほっこりスペースハートあい」は2001年6月、不登校の子どもを持つ親たちが、住宅街の一角に民家を借りてスタートした。子どもが自由に過ごせる「居場所」として始まったが活動は広がり、現在は高齢者や地域住民も集まる。現在、スタッフが5人、会員が45人いる。
 カフェはスタッフで元小学校教諭の平尾裕子さん(54)が今夏、発案した。不登校の青少年の出口になればと、滋賀県や和歌山県の子育て支援の勉強会に出かけて現地のカフェも見学し、「宇治でもできるかも」と決めた。
 活動拠点としている民家の2部屋を充て、コーヒーや紅茶、市内の共同作業所が作るケーキを出す。府社会福祉協議会の助成金で家具や材料を購入し、準備した。
 西村育子代表(38)は「歌声喫茶のように楽しいイベントも開きながら、多くの人に知ってもらい支援の輪を広げたい」と話している。
 カフェは宇治市木幡御蔵山39ノ622、TEL0774(38)5058。営業は月曜から金曜までの午後1時−4時半。
(京都新聞)-11月22日12時7分更新

●『いじめと命の問題 家族で話し合って』
作家・落合恵子さん講演で訴え
 「かわさき子どもの権利の日のつどい」(同実行委など主催)が十九日、川崎市中原区の中原市民館で開催された。記念講演では、作家落合恵子さんが全国で子どもの自殺が相次いでいることを踏まえ、「大人社会の一員として子どもがいる。いじめは大人社会の責任。自分の子どもを愛し、次の世代のことを考えているなら、大人はもう傍観者であることはやめましょう」と呼びかけた。 (飯田克志)
 市は二〇〇一年四月、全国に先駆けて市子ども権利条例を施行。国連が一九八九年に子どもの権利条約を採択した十一月二十日を「権利の日」と定めていて、その前後に同つどいなど子どもや家族の問題に関するイベントが市内で催されている。
 落合さんは人権や教育、介護などについて執筆。この日は「子どもとおとな、同時代を生きる…それぞれが自分色に輝いて」と題して講演した。
 落合さんは「子どもたちは今、目立たないことがいじめにあわないですむ、という言葉にしないコンセンサスを持っている。大人はどれだけ気づいているだろうか」と子どもの社会の現実に触れ、「社会の中で大人が傍観者であるかぎり、子どももそのことを学んでしまう」と指摘した。
 また、いじめを受けて家出してきた孫に、「いつでも来ていいよ」と何も聞かず受け止めたおばあさんの体験を紹介し、子どもの居場所や逃げ場所の大切を訴えた。
 さらに、「いじめる側にいる子も悲しいものを背負っている。いじめを受けているかだけでなく、いじめる側に自分の子どもがいないかも意識して、家でいじめと命の問題を話し合ってください」と語りかけた。
 最後に、「子どもの人権を考えることは、高齢者、女性、障害者の人権を考えることとつながっている。ここまできたら、新しい風を吹かせるしかない。『助けて』と言い合える社会にしていきましょう」と呼びかけた。
(中日新聞)-11月20日

●<タウンミーティング>公務員動員15回 毎日新聞調査
 政府主催のタウンミーティング(TM、全174回開催)で「やらせ質問」問題などが発覚したことを受け、毎日新聞は22〜25日、第2回全国調査を実施した。その結果、政府の依頼で自治体が職員を対象に参加者を募る「公務員の動員」について、安倍晋三首相が今年5月、官房長官時代に出席した札幌市のTMでも行われていたことが新たに判明した。動員のあったケースは札幌分を含めて少なくとも15回に上り、特に小泉前政権末期の06年度には計19回のTMのうち5回と多かった。会場を満席にするため、公務員による「穴埋め」が常態化しつつあったことが分かった。
 札幌市でのTMは、安倍首相が目玉政策として推進してきた「再チャレンジ」がテーマ。内閣府が口頭で「数十人集めてほしい」と北海道庁に要請。道庁は各部に参加を呼びかけ、幹部を含めた道職員数十人が参加者として事前登録した。06年度に道内で開かれた他2回のTMでも同様の要請・呼びかけがあった。
 公務員らの動員は判明しただけで01〜03年度の6回に対し、04〜06年度は9回に達した。今年4月の富山市でのTMでは内閣府が「参加者が少ない。50人集められないか」と県に要請。01年11月の水戸市のTMでも茨城県が呼びかけ、職員ら約60人が申し込んでいた。
 また、県などが質問者をあっせんしたケースは調査で判明した分だけでも20回に上った。「少子化」をテーマにした今年8月の岐阜県飛騨市のTMでは、市が保護者会関係者ら15人に質問を依頼し、質問内容は市の配布資料を参考に自主的に考えるよう要請した。当日は9人の質問者のうち、5人が市の依頼したメンバーだった。
 一方、「やらせ質問」は教育改革を扱った計5回のTMに加え、02年11月に京都市で内閣府と京都大が共催した「大学発タウンミーティング」でも行われていたことが発覚した。「経済連携」をテーマとした04年9月の鹿児島市のTMでも「未遂」が判明している。
 内閣府の「タウンミーティング調査委員会」(委員長・林芳正副内閣相)は都道府県や関係省庁の担当者などを対象に実態調査に乗り出しており、27日以降、調査結果を順次公表する方針だ。
(毎日新聞)-11月26日3時6分更新
【コメント】あきれはてて、言葉がありません。小泉劇場の裏側が徐々に明らかになってきているのでしょう。タウン(町中)でのミーティング(話し合い)も、お金と権力で操っていたわけですね。

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[2006.11.19]

【この頃思うこと】広汎性発達障害と対人関係能力(3)
 昨夜は、私が司会を務める、家族会ノンラベル主催の「アスペルガー援助者養成講座【第5弾】」の第3講、京都教育大学発達障害学科の小谷裕実先生が、「ソーシャルスキルトレーニングの実践から」と題して話されました。まんがやコミック会話、劇ごっこなど、対人相互関係に困難さのある広汎性発達障害の子どもたちに、対人場面でより適切な対応を獲得してもらうための、視覚的な学びと理解の支援を中心として実践研究を紹介されました。
 広汎性発達障害の人たちの多くは、会話場面で、自分の興味関心のあることを一方的に話し続けて会話がなりたたない、相手の目や顔を見て聞き話すことができない、相手の言葉を字義通りに受け取ってしまい相手の隠された気持ちを読み取ることができない、などの困難さを持っておられます(定型発達の側から見ればの話しですが)。例えば、相手の目や顔を見て会話ができない、には理由があることをご存じでしょうか? 相手の目や顔の表情を見ていると、そちらに気が散ってしまって、自分が話そうと思うことを頭の中で整理しまとめる作業ができなくなるようです。集中できることは長時間取り組めるという長所のある反面、同時に複数のことを行うことが難しい、という特性があります。
 こうした困難さを持っていても、相手の目や顔を見ながら会話をすることが、人と会話をするときのルールであり、相手が自分により話したい気持ちになるということを、コミック会話や劇、ソーシャルストーリーなどで丁寧に教えてあげることで、会話のスタイルを獲得し、相手の気持ちを考えながらの会話ができるようになっていきます。アスペルガー障害の人たちの多くは、元々人が好きですから、会話が成り立つことで話しができる人が増えることは喜びであり、達成感を感じるものです。ただ、それを一人で獲得していくことができません。定型発達の人と広汎性発達障害の人とが話をするときに、「通訳者」がいて、話しの意図をわかりやすい言葉に変えて伝えると会話がなりたつことを数多く体験してきました。この通訳者の作業こそが、相手の言葉の奧にある気持ちを広汎性発達障害の人に理解してもらうトレーニングとなっています。
 対人関係の困難さという特性と、それを補う支援の方法を知っている人が、広汎性発達障害の人の近くにいて、対人場面で丁寧に援助することで、対人関係の困難さの多くは克服していけます。こうした援助者(ご家族も含めて)が一人でも多く、早急に育って行ってほしいと思います。
 次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(4)」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

いじめ被害者と加害者、容易に逆転 京大助教授ら高校生を調査

いじめたり、いじめられた経験のある生徒は、被害者、加害者の立場が逆転しやすく、一方に固定していないことが、京都大医学研究科の木原雅子助教授(社会疫学)と全国高校PTA連合会が14日発表した高校生約6400人を対象にした共同調査で分かった。
 全国でいじめによる自殺が相次いでおり、いじめる側、いじめられる側の双方にケアが必要な状況が明らかになった。
 木原助教授らは今年9月、執拗(しつよう)なからかいや無視など本人が不愉快になることを「精神的ないじめ」と定義し、全国45公立高の2年生男子3501人、女子2905人に文書アンケートで回答してもらった。
 調査によると、いじめた経験があると答えたのは、小学校で6割以上、中学校で5割前後、高校は男子で4割前後、女子で3割弱で、いじめられた経験があるとの回答もほぼ同じだった。
 さらに、小、中学校で仲間をいじめた経験、いじめられた経験のある生徒は、経験のない生徒に比べて、7−9倍の割合で逆の立場になったことがあると回答。高校生では、この割合は16−17倍にもなり、いじめる側といじめられる側が高い割合で流動化する傾向があると分かった。
 アンケートでは、人間関係といじめとの傾向も調べた。信頼できる友達や教員、家族がいないと答えた生徒の方が、いると答えた生徒よりも、いじめをした経験が1・3−2倍の割合で高く、人間関係の希薄さが、いじめにつながる傾向も見られた。また、テレビやゲーム、インターネットといじめる側との関係で、長時間テレビを見たり、ネットをする生徒の方が、そうでない生徒に比べて、いじめた経験が1・2−1・9倍の割合で高かった。いじめを受けた相手を尋ねる設問(複数回答)では、9割が同級生だったが、教員を挙げた生徒も2割前後いた。
 木原助教授は「弱いからいじめられるだけではなく、状況に応じていじめは行われることが明らかになった。いじめられる側とともに、いじめる側の背景を探り、ケアやサポートを行う必要がある」と話している。
(京都新聞)-11月15日9時47分更新

●「同級生が金銭要求」中3男子が首つり自殺…埼玉
 12日午後7時半ごろ、埼玉県本庄市の中学校3年の男子生徒(14)が、自宅敷地の倉庫内でロープで首をつって死んでいるのを母親(39)が発見し、119番通報した。
 県警本庄署は自殺とみて調べている。中学校は「この男子生徒から、同級生に金銭を要求されていると相談があった」と説明しており、同署で自殺との関係を調べている。
 調べによると、生徒は同日午後2時ごろに昼食を食べた後、行方が分からなくなっていた。遺書は見つかっていない。中学校によると、男子生徒は6日に「同級生に『500円を返せ』『利子がつくので2万円返せ』と要求されている」と相談していた。男子生徒の家族は、「悩んでいる様子はなかった」と話しているという。
(読売新聞)-11月13日8時59分更新

●「いじめ」未報告の校長が首つり死亡
 福岡県北九州市の林の中で、小学校の校長が首をつって自殺しているのが見つかりました。この小学校では、女子児童が同級生らからたかられ、現金を渡していた事が分かり、校長は11日に謝罪していました。
 死亡したのは北九州市の市立小学校の56歳の男性校長です。警察によりますと12日、家族から捜索願が出され、午後2時半過ぎに北九州市八幡東区の林の中で首をつって死亡しているのが見つかったということです。
 この小学校では5年生の女子児童が同級生ら8人から現金をたかられ、合わせて10数万円を渡していた事が発覚していました。学校側は「いじめ」があったと認識していたにもかかわらず、市教委に「金銭トラブルがある」としか報告していなかったことから、校長は11日に記者会見を開き、謝罪していました。
 「何とも言いようがないんですが、遺書等もまだ無いというふうに聞いておりますし、校長先生の立場からしたら、自らこの問題の解決の先頭に立っていただきたかったという思いがあります」(北九州市教育委員会・大庭清明教育長)
 北九州市教育委員会は12日夜の会見でこのように述べたうえで、今後、児童の心のケアにつとめていくとしています。(12日22:22)
(JNN)[13日6時25分更新]

●<自殺予告>止まらぬ連鎖…有効策なし焦り濃く
 伊吹文明文部科学相あての「いじめ自殺予告文書」を受けて全国的な警戒が続く中、子どもの自殺が止まらない。文書を公表したものの、相次ぐ予告に戸惑う文科省。教育委員会、各学校も即効性のある対策は打ち出せないままだ。連鎖は食い止められるのか。子どもたちに「命」の大切さをどう伝えるか。過去にも度々社会問題化したいじめ問題の教訓はいつ生かされるのか。【佐藤敬一、吉永磨美】
 「連鎖的なものが来ることは覚悟していた」。13日行われた、日本記者クラブ主催の記者会見。招かれた伊吹文科相は苦渋の表情で、自殺予告の手紙が続いていることに言及した。
 文科省が「11日に自殺する」との手紙を公表したのは7日未明。各都道府県教委にいじめの正確な把握と報告を求めている手前「情報隠し」はできない事情もあった。伊吹文科相は「(公表してもしなくても)どちらになっても必ず非難を受ける。非難は私が受けるんだと、毅然(きぜん)とした姿勢を示さないと教委、校長がついてこない」と選択の理由を強調した。
 しかし、公表の影響は予告手紙が相次いだことで明確になった。自殺の原因や予告手紙との関連性が不明ではあるものの、12日に大阪と埼玉で中学生が命を絶った。大阪の飛び降り自殺の一報が入ったのは「いじめ自殺予告」の警戒中。銭谷真美・初等中等教育局長ら幹部も駆けつけ、省内は緊迫感に包まれた。
 1通目の手紙を見た総務課職員が「(手紙の内容が)本当だったら危ないなと思った。かなり緊迫していた」と話していたが、その状態は今も続く。
 教育基本法改正の国会審議に加え、タウンミーティングでのやらせ、高校の履修単位不足、いじめの「三重苦」で文科省職員の疲労も色濃い。問題が次々と発生し、いじめ問題に対する抜本的な解決策を検討するいとまもなく、解決策の検討は「お手上げ」(ある幹部)という。
 13日、新たに届いた2通の手紙について会見をした児童生徒課の木岡保雅課長は「公表によって救われた子どもも多くいるのでは、と考えている。ですから、一つ一つのケースについてできる限りのことをしてまいりたい」と公表の効果を強調した。しかし、具体的な解決策を示さなければ、マイナスの連鎖が続く可能性も捨てきれない。
◇「連鎖」断ち切るには…
 今夏以降、各地でいじめが原因とみられる自殺が問題化している。その「連鎖」を断ち切るにはどのような方法があるのか。
 8月17日、愛媛県今治市の中1男子が首つり自殺。遺書には3年間にわたり「貧乏」「泥棒」呼ばわりされ「最近生きていくことが嫌になってきました」と記されていた。
 北海道滝川市の小6女児が昨年、教室で自殺を図り、今年1月死亡した事件では、10月になって女児の遺書を市教委が事実上放置していたことが発覚。さらに10月11日には福岡県筑前町の中2男子、23日には岐阜県瑞浪市の中2女子がそれぞれ自殺した。文科省にいじめ自殺の予告手紙が次々に届き、全国各校で問題の再点検など行われる中、12日に大阪府富田林市と埼玉県本庄市で中学生が自ら命を絶った。
 多くが同様の手段を選んでおり、先行する事件の影響を指摘する声もある。社会評論家の赤塚行雄さんは「戦前に伊豆大島・三原山で自殺が相次ぎ社会現象になるなど、ある時期に次々と自殺が続くことは昔からある。何か心が傾いていると、解決法として『この手で行こう』と引っ張られる」と分析する。
 86年にはアイドルの岡田有希子さんが自殺し、後追い自殺が社会問題化した。警察庁のまとめによると、86年の19歳以下(未成年)の自殺者数は前年比約1.4倍の802人に達した。岡田さんと同じ方法での自殺が多かった。愛知県西尾市の大河内清輝君のいじめ自殺事件が問題化した94年の未成年者の自殺数も580人と前年より多くなっているが、98年以降600人弱から700人超と、より深刻化した。
 履修漏れ問題も含め、「校長の自殺」も最近の特徴だ。ジャーナリストの江川紹子さんは「先生にとり良い職場でない学校が、子どもにとって良い学びの場であるわけがない」と教育者の自殺の背景に思いをはせる。その上で「根本的に何が問題か考えなければいけない。1人だと行動しない子どもたちも、集団自殺のように1人じゃないという仲間意識が芽生え、連鎖的に行動するのでは」と指摘する。
(毎日新聞)-11月14日3時8分更新
【コメント】連鎖の問題は、背景に、自殺念慮の状態にある子どもや教師、大人が、自殺者の数倍、あるいは数十倍いることを明らかにしていると思います。「いのちの大切さ」「こころの教育」といった一般論も必用ですが、「死にたい」と思っている人、個々人の具体的な悩みやその背景に寄り添える人の存在こそが、今求められているのではないでしょうか。

●<いじめ自殺>素早い対応で防止 母親が体験語る
 大阪府富田林市の中学1年、大川理恵さん(12)の自殺で、家族が明かした「チビと言われて泣いていた」といういじめ体験。同じ悩みを持つ長男が同様のいじめに遭い、自殺を何度も口にしたという首都圏在住の女性(43)が「周囲の理解もあって乗り越えた。その体験を伝えたい」と家族の闘いの経緯を語った。【竹中拓実】
 女性の中学3年の長男(15)は幼少時、成長ホルモンの分泌が減って身長が伸びにくくなる難病と診断された。小学校入学時の身長は3歳児並みの95センチだった。
 最初にいじめに気付いたのは入学後間もなく。通学路でランドセルをいくつも頭の上に乗せられているのを上級生が見かねて伝えてくれた。「人間だるま落とし」。名前まで付いているのを聞き、血の気が引く思いがした。
 6年生になり、いじめが悪化した。身長は小6の平均より30センチ低い115センチ。秋ごろから、女性の財布の現金が少しずつ減るのに気付いた。額が10円単位から100円単位、1000円単位と増えていく。当初は「落としたのか」と考えたという。
 そして元日。新年の抱負を話していたが、「僕はもう死にたい」と長男が口にした。理由を説明してくれない。2月にバッグから10万円が消えた。女性は長男を捜し、家電量販店で同級生たちに1万円ずつ渡していた現場を見つけた。10円単位のおごりが1万円単位のゆすり、たかりに発展していた。
 女性は自殺にまで至らなかった理由の一つに「学校の素早い対応」を挙げる。その日のうちに、校長は関係する児童と保護者を呼び、一家族ずつとじっくり話し合ったという。
 長男は今、高齢者介護の職場で働く夢などを語る。大川さんの報道について家族で話した時、経験を伝えようと決めた。
 女性は「外見をからかうのは子どもではよくあること。そんないじめがなくなるなんて思っていません。ただ、そのたびに周囲の大人には『そんなことを言ってはいけない』と指導してほしい」と願う。
 「学校がいじめの相談を受けた時に『しばらく様子を見ましょう』というのは絶対だめです」
(毎日新聞)-11月16日15時6分更新

●<大阪中1自殺>15人がいじめ 学年アンケートで判明
 大阪府富田林市の中学1年、大川理恵さん(12)の自殺で、市教委と学校側は18日、同学年の154人全員を対象にしたアンケートと作文の結果を公表した。いじめがあったことを4割以上の生徒が知っており、延べ15人が自らいじめたことを認めたという。学校側は、いじめと自殺の因果関係を認めたうえで、身体的特徴をとらえた「チビ」という言葉が精神的苦痛を与えたとみられるとしている。
 148人から回答があったアンケートでは、▽「チビ」と呼ぶ▽大声で威圧する▽通せんぼ▽バレーボールを当てる▽悪口――の五つのいじめ行為があったことが判明。「チビ」と言われていることを65人(44%)が知っていた。それを中学での出来事としたのは33人、小学校での出来事としたのは32人おり、小学生のころから続いていたことをうかがわせた。しかし、「実際に自分が言った」という回答は0だった。
 作文では、▽通せんぼ5人▽大声4人▽バレーボール3人▽きつい言葉を言った3人――の延べ15人が自ら加わったことを認めた。
 市教委と学校側は自殺との因果関係をより精査するため調査を続ける方針を示した。
 新美好正校長は「一連の(いじめ)行動も自殺に至らしめた精神的苦痛の要因となったと受け止めている」と話した。
 大川さんは生まれつきの病気で成長が遅く、深く悩んでいたことを遺族が証言している。
 また、大川さんの自宅には初七日のこの日夜、同級生ら約30人が教員に引率されて弔問に訪れた。会見を終えた新美校長と堂山博也・市教育長も訪れ、アンケートの結果を遺族に説明した。大川さんの父和夫さん(49)によると、新美校長は仏壇の前で涙を流し、うなだれていたという。
 和夫さんは、学校側が自殺の要因をいじめと認めたことについて「やはりそうだったのかと思った。学校の対応が至らなかったからだ。犠牲者を増やさないためにもきちんと対応してほしい」と話した。同級生の弔問については「これだけ友人が来てくれたのはうれしい。ただ生きている間にもっと仲良く出来たら良かったのに」と声を落とした。
(毎日新聞)-11月18日23時0分更新

●子の立場で接して 九州特別支援教育研究大会
 第40回九州地区特別支援教育研究連盟研究大会(九州地区特別支援教育連盟主催)が9、10の両日、那覇市西の県男女共同参画センターなどで開かれた。9日の全体会では千葉大学教育学部の太田俊己教授が講演。「子どものニーズを把握し満たす基本は、子どもの立場で一人一人の思いを読み取ろうとすること」などと強調した。 大会には九州各県から盲、ろう、養護学校や、小中学校の養護学級の教員らが参加した。第35回県特別支援教育研究大会も兼ねた。
 講演で太田教授は「『一人一人のニーズに合わせた支援が必要』とよくいわれるが、具体的に何をすれば良いのか、ニーズの中身が分からなければ支援できない」と説明。さらに「特別支援が必要な子どものニーズは医師など専門的な立場で分析し、見極めるものととらえる風潮があるのではないか」と指摘。「いつも接している教師が主体的に判断することが必要だ。子どもたちが主体的にやりたいことを、子どもの思いをくんで感じ取ることが必要だ」と強調した。
 10日は「自閉症への支援」「LD・ADHD等への支援(センター的な機能)」など八分科会で公開授業などが行われた。
(琉球新報)-11月17日10時10分更新
【コメント】日々子どもたちと接している大人に、発達の課題があるかも…と気づく知識と経験が求められています。しかし、気づいた後、発達障害を診断してもらえる医師が絶対的に不足している現状も、一方で厳然とあります。児童・青年期の精神科外来やクリニックを増やす国の施策の必要性を痛感します。

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[2006.11.12]

【この頃思うこと】学校社会といじめ
 今回は予告していたテーマを変えさせていただきます。
 「生きろ」「死なないで」「君は一人じゃない」…、いじめ自殺予告の手紙が文部科学大臣に送られた後に、寄せられたメッセージの中で、自殺を考えている人に向けて励ます内容とおもわれるものです。一方で、「いじめられる側を鍛える必用がある」、あるいは石原東京都知事の「自分で戦ったらいい。ファイティングスピリットがなければ、一生どこへ行ってもいじめられるのではないか」などといったいじめられる側の責任に言及するものも見られます。テレビ番組でも長時間の枠をとって、いじめ問題を核として現在の教育のあり方をめぐり議論するものが日々放映されていて、様々な立場から様々な見解が述べられています。
 強者が弱者よりも優位に立つというのは生物のもつ本能ではあります。人間社会以外の自然界では、この本能に基づいて序列ができ、食物連鎖が築かれ、自然淘汰が行われ、また群れが形成されるなど、その役割には普遍的な意味があります。では、人間社会においてはどうでしょうか?
 人間は近代社会において基本的人権という理性的尺度を持ち、生存権とともにそれら概念に基づいて憲法や諸法を策定してきました。人として生まれた以上、何人も人として生きる権利を奪われることがない、これが現代社会を構成する基本的な前提です。いじめは、この前提を奪う、根源的な過ちであると思います。しかし、そのいじめが高度な経済力をもつ日本において近代以降も面々と続き、いびつに深化・進化していくのはなぜでしょうか?
 日本では、「法律ノ範囲内」という限定つきではありましたが明治22年公布の明治憲法において基本的人権が保障されます。遡ること、明治5年に「学制」が公布され、日本の学校教育制度がスタートします。日本の学校制度はこの学制スタート時から、様々な時代の変化があっても、基本的に変わらず営まれてきたと言われています。学制公布後17年経って「基本的人権」が確立される、このズレが気になって仕方ありません。学制に定められた初等教育の革新のために、明治5年に東京に師範学校(翌年、東京師範学校に改称)が作られ、小学校教師のための近代的な教育方法の伝習、新しい小学教則の編成、また小学校用の教科書の編纂が取り組まれています。これらの作業の中に、基本的人権の尊重という基本的理念が貫かれていたかどうか、意外と重要な問題なのかも知れません。
 いずれにしても、現代の学校社会は、不登校を「病欠」と、自殺を「事故死」と、いじめ自殺を理由「不明」の死亡とカウントし、その経過や原因、関係性を精査することなく、学校関係者の保身のために隠蔽とごまかしに終始してきたことが、今回のいじめ自殺報道を契機に、白日の下に曝されようとしていることは事実です。また、学校教育における印象の数値化による人物評価や学力テストなどによる序列化、「能力」評価などによって競争が煽られ、子どもたちのなかに歪んだ人間関係が形成されてきたことも否定できない事実でしょう。親もまた、こうした学校社会で育った人間です。悪しき連鎖が生む悲劇は、学校社会において社会的弱者である子どもたちの日常において具体的に症状化しています。
 しんどいことを「しんどい」と、辛いことを「辛い」と言えない社会、それが今の日本社会に貫かれている価値観だとしたら、いじめを受けている子どもたちが学校社会において、自身の気持ちを表明することはほとんど期待できません。人として生きる自分自身を大切に思える気持ちが十分に育つ社会であれば、しんどさや辛さを表明でき、それを周囲が受け入れることが可能になると思います。「格差」肯定社会から、人間尊重社会へ、転換への舵を切ることが求められています。
 次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(3)」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。いじめ自殺問題をはじめとして、盛りだくさんになっています。

<いじめ調査>やる方が「悪い」は半数以下 希薄な罪の意識

いじめがあった時「いじめる方が悪い」と考える子どもが中学、高校で半数にも満たないことが、民間団体の調査で分かった。また、いじめを受けた際に相談できる相手を聞くと「教師」はわずか19%で、「いない」と答えた子どもは2割を超えた。文部科学省の統計報告がいじめ自殺をゼロとしてきた裏で、標的の子が罪の意識の希薄な子どもに追いつめられた上、周囲の大人が十分対処できていない様子が浮かび上がった。
 いじめをなくそうと呼びかけているNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)が、過去3年間に講演活動で訪れた全国の小学校8校、中学校23校、高校5校の児童生徒約1万3000人を対象としたアンケートの結果をまとめた。
 それによると、「いじめる方が悪いと思うか」と聞かれ、「はい」と答えた小学生は6割を超えた。しかし、中学、高校生は4割台だった。「いじめられても仕方のない子はいるか」の問いに「いいえ」と答えたのは、小学生ではかろうじて半数を超えたが、中学生では4割を切った。
 一方、「いじめはなくせるか」との問いに「はい」と答えた比率は、学年が上になるほど少なくなる。「いじめを相談できる相手」は、「友だち」(56%)が多く、親は39%にとどまった(複数回答)。
 また、「周囲でいじめやそれに類する行為が今までにあった」と考える児童生徒は全体の82%に達し、いじめがまん延している実態がうかがえる。
 同NPO理事の小森美登里さん(49)は「年齢が上がるにつれ、いじめに対する慣れやあきらめが広がるようだ。優しい心で人とつながる方が心地よいということに気づいてほしい」と話す。
   ◇   ◇
 講演で全国を巡り、娘がいじめを受けて自殺したつらい体験を語る小森さんのもとには多数の感想文が寄せられる。いじめの悩みを打ち明ける子もいる。
 公立小5年女子はこう書いた。「級友と帰る時、草むらにおされたりカラーペンで(家の近所の)トンネル(の壁)に名前を書かれたりしました。油性ペンで消すのがたいへんで、つめや指がまっ黒に汚れました」
 講演を聞いた大半の子は「人を死に導くものだと分かった」(公立中1年女子)と、いじめへの認識を新たにしている。ただ、ごく少数だが、こんな感想もある。「いじめが悪いとは思いません。人が(いじめを)やるのもその人の個性だ」(公立小6年男子)
(毎日新聞)-11月7日3時9分更新

●[いじめ自殺]慎重報道求める 予防総合対策センター
 国の機関「自殺予防総合対策センター」は、いじめ自殺報道が過熱化すれば若年層に悪影響を与えかねないとして、HPの冒頭でWHOの自殺報道ガイドラインを紹介し、マスコミに慎重な報道を呼びかけ始めた。ガイドラインは、適切な報道が自殺予防に役立つ点を認めつつ、報道が自殺行動に影響する可能性にも言及している。
(毎日新聞)2006年11月06日03時31分

●徴収金未納で鹿児島県内小・中学校 担任に「取り立て競争」も 県教組調査
 県内の小、中学校で給食費など徴収金の未納家庭に対し、担任教師が職場を訪問して徴収したり、“取り立て”を競わせる学校があったことが、県教職員組合の調査で明らかになった。未納がいじめの原因になった事例もあり、県教組は鹿児島市で4日から開かれた県教育研究集会で報告。調査結果を40年ぶりとなる「教育白書」にまとめる方針だ。
 調査は小、中学校の教職員と保護者に対し8‐9月に無記名で実施。徴収金未納などについて教職員1340人、保護者779人から回答を得た。
 徴収金の未納があると答えたのは、学級担任教諭957人中、399人(約42%)。うち83人の教諭が自分で立て替え、132人は督促などを行っていた。190人が未収金のままだった(重複回答)。
 督促の方法はほとんどが電話や文書だが、中には家庭、職場への訪問も。「卒業アルバムと引き換え」として、結局アルバムを渡さなかった例や、管理職が「回収できなかったら担任の責任」と発言したり、職員室の黒板に学級ごとの徴収金残高を書き出し、担任に“取り立て”を競わせたりした例もあったという。
 未納が原因で、子どもが「食い逃げ」「給食泥棒」などといじめられたという指摘もあった。
 また教職員の80%以上が「保護者の経済力が子どもの学力格差に影響している」、保護者の約60%が「教育費を負担」と感じていると回答した。
 県教組は「この生の声を通じて教育予算の増額、保護者負担の軽減を訴えていきたい」と話している。
(西日本新聞)-11月6日10時10分更新

●<いじめ自殺>文科相あてに予告手紙届く 小中学生の男子か
 文部科学省は7日未明、いじめを苦にした自殺予告の手紙が6日午前中に伊吹文明文部科学相あてに送られてきたと発表した。手紙は「僕は、いじめが原因で11月11日土曜日に自殺することを証明します。手紙を書いた理由は生きていくのがつらいからです」などとつづっていた。内容や字体から小中学生の男子からとみられる。文科省は、消印から差し出した地域とみられる21都道府県39市区町村の教育委員会に該当する子供がいないか探すよう通知した。
 封書には、文科相、教育委員会、校長、担任、同級生、同級生の保護者、両親にあてた手紙7通が同封されていた。それぞれ、便せんや原稿用紙1〜2枚に記され、8日までにいじめの状況が変わらなければ、11日に学校で自殺することを予告している。
 文科相あての手紙には「先生は何もしませんでした」、担任へは「なぜ僕をたすけてくれないのですか」、同級生には「クラスのみんなへ」と題し、「みんな責任をとって自殺してください」、両親へは「ごめんなさい」などとつづっている。消印は4日付。差出人の名前、学校名などが特定できる情報はない。
 消印に「豊」という1文字だけ見えたため、文科省は「豊」を含む集配郵便局のある21都道府県39市区町村教委に連絡し、いじめの相談・報告があるか確認している。
 午前0時過ぎに会見した銭谷真実・初等中等教育局長は、公表に踏み切った理由について、「手紙通りとすれば、11日に自殺すると言っているわけで、一度しかない命を大切にしてほしいと考えた。大人もいじめ問題の解決のために頑張るから、ぜひ生きてほしいというメッセージを(マスコミに)伝えてほしい」と話した。
 いじめを苦にした自殺では8月に愛媛県今治市で中学1年の男子が遺書を残し首つり自殺。今年10月上旬、北海道滝川市教委が小学6年の女子児童(12)の自殺をいじめ自殺と認めて以降、福岡県筑前町立三輪中学校2年の男子生徒(13)が自宅で首をつって自殺したほか、岐阜県瑞浪市の中学2年生の女子生徒(14)も自宅で首をつって自殺している。文科省は10月19日、都道府県・政令市担当者の緊急連絡会議を開き、いじめの兆候をいち早く把握することなどを求める通知を出していた。
(毎日新聞)-11月7日1時27分更新

●いじめ自殺「予告」の手紙、文部科学省に届く
 文部科学省は7日未明、「いじめが原因で自殺する」という内容の男の子が書いたと見られる手紙が同省に届けられたと発表した。
 午前0時15分すぎに会見した銭谷真美・初等中等教育局長によると、あて名に「文部科学省 伊吹文明大臣様」と手書きで書かれた封筒に、(1)大臣(2)教育委員会(3)校長先生(4)担任の先生(5)クラスのみんな(6)クラスのみんなの保護者(7)両親――にあてた計7通の手紙が入っていた。6日午前中に郵送されて来たという。
 学校でいじめを受けているとし、8日までに状況が変わらなければ、11日に学校で自殺すると書かれていた。「クラスのみんな」あてには「なぜ僕をいじめるのですか。キモイからですか。クサイからですか。なぜ僕のズボンをおろすのですか」。校長あてには「なぜ親がずっとまえから校長先生にいじめのことをいってもずっとなにもしないのですか」などとあった。
 差出人の名前や住所、学校名など個人を特定できる情報は書かれていなかった。消印の一部には「豊」と見える文字があり、文科省は、この文字を含む全国の集配局を調査。21都道府県の39市区町村の44郵便局が該当することが分かった。4日に投函(とうかん)されたとみられるという。
 文科省は、該当する都道府県教委を通じ、これらの局を含む自治体の教育委員会に連絡。該当するような相談を受けていないか、民間の電話相談窓口なども含めて調査するよう指示した。
 本当の自殺予告と判断した理由について、銭谷局長は「11日に自殺する、とはっきり書いてある」としたうえで、「大臣に対して行動してほしいという要請の手紙だろうと判断した」と説明。
 記者発表した理由について「私どもとしては、たった一つしかない命を大切にしてほしい。文科省も大人も、いじめの問題解決のためにがんばるから、『ぜひ、生きてほしい』とのメッセージを伝えたい」と話した。
(asahi.com)2006年11月07日01時11分

●「いじめ自殺」調査方法見直し…文科省
 いじめを苦にした児童・生徒の自殺件数調査が実態を反映していないとされる問題で、文部科学省は7日、調査方法を見直すことを決めた。
 10日にも有識者を集めた初会合を開き、「いじめ」そのものの定義についても検討を始める。
 同省が年1回行っている現行の調査では、公立の小中高校が、自殺などの件数を原因別に記入した調査票を各教育委員会に提出。同省が集計している。
 自殺の場合、原因の記入欄に「いじめ」のほか「学業不振」など15項目が挙げられているが、昨年度の場合、自殺105件の原因の約6割は「その他」となっていた。この中には、いじめの疑いがあるのに調査中であるため「その他」としていたケースもあるとみられ、同省は「『その他』に簡単につけられないよう調査票を見直す」(伊吹文科相)方針だ。
(読売新聞)-11月8日1時11分更新

●文部科学省、いじめ自殺「0」修正へ…16件を再調査
 文部科学省は9日、いじめによる児童・生徒の自殺件数がゼロとなっている1999〜2005年度の統計を見直す方針を固めた。
 同省が確定した統計数値を修正するのは極めて異例。同省は、この期間にあった自殺のうち、いじめが原因と疑われるケース計16件について再調査を開始している。これまでに大阪府堺市教委が自殺原因をいじめに訂正したほか、北海道教委もいじめ自殺を報告する方向で、今後、ゼロとされてきたいじめ自殺の件数が増える可能性が強まってきた。
 同省は今月4日から該当する教育委員会への再調査を始め、〈1〉当時の事例の概要〈2〉当時、報告はどう行ったか〈3〉現時点での判断〈4〉いじめは、自殺の原因の一つと考えられるか――について、報告を求めている。
(読売新聞)-11月10日3時11分更新

●<やらせ質問>内閣府 関与認める調査結果を報告、陳謝
 政府が9月に開いた教育基本法改正に関するタウンミーティングで改正賛成の質問をするよう参加者に依頼していた問題で、内閣府は7日、「やらせ質問」への関与を認める調査結果を衆院教育基本法特別委員会の理事会に報告し、陳謝した。これを受け与党は13日に特別委で、14日に衆院本会議で同改正案を採決する日程を提示したが、野党は「調査が不十分」として受け入れなかった。
 調査によると、内閣府や開催地の青森県教委は「時代に対応すべく基本法を見直すべきだ」などの質問案3案を、あらかじめ決まっていた質問者に提示した。「対話のきっかけを作るため」(内閣府)だったという。やらせ質問が発覚した同県八戸市以外のタウンミーティングでも同様の働きかけがなかったか、9日に改めて報告する。
 この問題は、先月31日の特別委で高橋千鶴子氏(共産党)が指摘。青森県教委が地元の中学校長らに対し賛成の立場から質問するよう文書で働きかけていたことが発覚した。
(毎日新聞)-11月7日11時55分更新

●<やらせ質問>タウンミーティング 定着一転、存続の危機
 政府の教育改革に関するタウンミーティングで発覚した「やらせ質問」問題は、過去174回におよぶ全タウンミーティングを調査する事態に発展し、今後も問題は拡大する様相だ。小泉前政権が「政府と国民との直接対話」をうたい文句に導入したが、あらかじめ質問者を用意し、政府側の意に沿った質問をさせるやり方は国民の強い不信を招き、「情報操作」との指摘も出ている。政府は信頼回復に躍起だが、タウンミーティングの再開のめどは立っておらず、存続も危ぶまれる状況となっている。
 「参加者には大変不愉快なことだろう。運営が不透明という批判が起きてもやむをえない」。内閣府の内田俊一事務次官は9日の会見で政府の非を全面的に認め、陳謝した。
 政府の同日までの調査で「やらせ質問」が明らかになったのは、教育改革に関する過去5回のタウンミーティング。政府が事前に用意した質問案は、「新しい時代にふさわしい教育基本法となるよう改正が必要だ」(04年5月、松山市)▽「義務教育の財源が地方に移ると公教育に地域格差が生まれることが懸念される」(同年10月、和歌山市)――など文部科学省の意向を反映させたものだった。「できるだけ自分の言葉で」「『依頼されて』とは言わないでください」といった注意事項を付けたケースもあった。
 タウンミーティングは小泉純一郎前首相が就任時の公約に掲げ、01年6月〜06年9月に計174回開かれた。昨年の場合、1カ所につき平均1100万円の開催費をつぎ込むなど「劇場型政治」の典型とも指摘されてきたが、自作自演のPRショーの疑いをぬぐえなくなっている。
 政府は調査結果が出るまで再開を見送る方針だが、時期については「時間を少しいただきたい」(塩崎恭久官房長官)と述べるのが精いっぱい。タウンミーティング自体は抜本的に見直した上で存続させる意向だが、信頼回復のための妙案は見いだせないでいる。
(毎日新聞)-11月9日23時55分更新

●筑前・いじめ自殺から1カ月 真相程遠く
 福岡県筑前町で三輪中2年の男子生徒(13)が自殺してから11日で1カ月。同級生グループから「死ね」「消えろ」など繰り返し言葉のいじめを受けていたことが判明しているが、学校側はいじめと自殺の因果関係については「はっきりしない」と慎重な立場だ。学校や町教委による真相解明は進まず、遺族の悲しみといら立ちは募るばかりだ。 (いじめ問題取材班)
■学校、関連に慎重姿勢 遺族、説明不足に憤り
 「1カ月がたとうというのに…。何も進んどらんし、変わっとらんです」。自殺した生徒の父親(40)は、深いため息をついた。視線の先には、丸刈りで目のクリッとしたわが子が遺影の中で、ほほ笑んでいる。
 「せめて今は一緒にいてあげたい」。両親は毎晩、霊前に手を合わせ、遺影のそばで「添い寝」するのが日課だ。
 「亡くなってすぐは『ただいま』って帰ってくるようでした。少し落ち着いた今はかえって寂しさが込み上げます」。母親(36)は声を落とした。
 学校で何があったのか。わが子を死に追いやったものは何なのか‐。両親の思いは真相解明の1点に尽きる。だが、思いが届かないことが、時に学校や町教委に対するいら立ちの言葉となって漏れる。「早く火を消したいとしか思えない」と。
   ■   ■
 「死ね」「消えろ」「うざい」‐。同級生らの証言により、特定の同級生グループがたびたび生徒を汚い言葉でののしっていたことが次第に明らかになっている。自殺の6日前には、体育のダンスの授業中に行われた班分けで仲間外れにされ、泣く姿も目撃されている。
 一方で「じゃれ合っているようにしか見えなかった」と証言する同級生もいる。「廊下で擦れ違いざまにとか、便所など人けのないところで汚い言葉をかけていたからではないか。陰湿化する今のいじめの実態だと思う」と父親は語る。
   ■   ■
 「この程度かと思うと悔しくてたまらん」。今月6日深夜。遺族宅で厳しい声が響いた。生徒への聞き取りなどを通して調査を進める学校側が、約束だった中間報告を延期。「伝えるだけの十分な情報がない」との説明に遺族が怒りを爆発させた。
 なぜ調査が進まないのか。自殺した生徒をクラスの中でからかうなどしていじめのきっかけをつくったとされる、1年時の担任教諭が精神的ストレスから入院し、事情を十分に聴けていない。さらに、無記名で生徒にいじめの実態を聞く3回目のアンケートも、生徒の動揺などを理由に延期されたままだ。朝倉署は複数の生徒から事情を聴いているが、十分な情報は学校側に伝わっていない。一方、町教委は有識者でつくる調査委員会を発足。12月上旬に中間報告か最終報告を出す方針だが、「公平性」を理由に遺族関係者をメンバーに加えてほしいという遺族の意向には応じていない。
 「親としていじめに気づいてあげられなかったことが悔しい。だからこそ真実を明らかにしたい。うやむやで終わらせるわけにはいかない」。両親は、やり切れない思いにさいなまれている。
(西日本新聞)-11月11日10時7分更新

●<いじめ自殺>教委に理由「不明」と報告した元校長の苦悩 
 女子生徒がいじめを示唆するメモを残し命を絶った苦い経験を持つ元校長(61)が、一連のいじめ報道を受けて取材に応じた。生徒の死はいじめと関係があると遺族に説明したが、教育委員会には自殺の理由を「その他(不明)」と報告した。「(報告は)あれでよかったのか。彼女はなぜ死に急いだのか。いろんな思いが今も頭から離れません」。退職した後も、心穏やかに過ごせないという。【井上英介】
 東日本の公立中学校に校長として勤務していた時のことだ。初夏のある日、教え子の女子生徒が自宅で亡くなった。自室にあったノートに「死にたい」と書かれ、級友たちから害虫呼ばわりされたことなどを苦にする記述があった。
 遺族からノートを見せられ、級友への聞き取り調査で生徒が不快なあだ名で呼ばれていた事実を確認した。「いじめはあった。自殺と関係があると認識している」と遺族に説明し、保護者会でも報告した。
 「お母さんは泣き崩れ、私も泣きました。あだ名で呼ばれたのは短期間だが、ささいなことでも本人が嫌だと思えばいじめです」
 教職員とともに誠意をもって対応し、いじめた子も親とともに謝罪、月命日のたびに焼香に訪れたこともあって、遺族の一定の納得は得られた。半年以上かかって学校は落ち着いたが、一人でいる時にぼんやりと生徒のことを考え、はっと我に返るようなことがしばらく続いた。
 いじめ問題への文部科学省の取り組みに、疑問を感じないではない。「いじめかどうかを判断する認定基準が厳しすぎる。『いじめがいじめではない』という極めて奇妙な結果を導き、現場を誤らせかねない」
 文科省は「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じている」という認定基準を定めている。だが、基準とは別に「いじめか否かは、子どもの立場に立って判断せよ」と何度も現場に呼びかけ、教育現場に混乱を招いている。
 「教員はみな基準を頭に刻みつけている。なぜ実態に即したものに変えないのか。いじめの芽を見逃しかねない」。現役時代、日ごろから教員たちに「いじめの小さな前兆を見逃すな」と言ってきた。それでも前兆を察知し、防ぐことができなかった。
 教え子の死から半年以上たち、教委にいじめがあったことを報告した。しかし、自殺については「主たる理由を一つ挙げよ」との指示に基づいて「その他」とした。「いじめは理由の一つだとは思うが、主たる原因だったのかどうか……学校は警察ではない。真相究明は難しい」。対応が正しかったのかどうか、答えは出ていない。
(毎日新聞)-11月12日7時41分更新

●出版:発達障害わかって 中学生の長男の遭遇する困難、苦悩の父親が本に/島根
 益田市在住の公務員、島田博さん(45)が、「発達障害をわかってほしい」(ぶどう社)を出版した=写真。発達障害がある中学生の長男が遭遇する困難と親としての苦悩を率直につづった。島田さんは「挫折の連続だったが、専門家や職場の仲間らが支えてくれた。発達障害に対する理解の輪が広がれば」と話している。
 サブタイトルは、「アスペルガー症候群の子どもと家族が『学校』で出会った数々のこと」。アスペルガー症候群とは知的障害を伴わない自閉症で、「他人との社会的関係を持つ」などの点で問題を抱えている。また、味覚や聴覚などの感覚過敏を示すケースもある。
 本書では学校現場の理解不足や連携の悪さなどが繰り返し記述されており、島田さんは「適切な支援があれば不登校なども防げる。学校と親の連携をもっと密にすることが大切」と指摘する。
 また、発達障害を子供に伝えない親もいるが、島田さんは長男が小学校高学年の時、パソコンを使って発達障害があることを本人に伝えた。島田さんは「(伝えたことで)自分の苦手なことをどのように克服するかを考えるきっかけになった」と話している。
 A5判。1600円(税別)。問い合わせは、ぶどう社(03・5283・7544)。
(毎日新聞)-11月9日16時1分更新

●<転落死>中学校舎から卒業した17歳女性 北九州市
 9日午後9時過ぎ、北九州市小倉北区、市立南小倉中の校舎そばに女性が倒れているのが見つかった。4階付近の階段の窓から落ちたとみられ、約1時間後、死亡が確認された。警察の調べでは、女性は昨春に卒業した区内の無職女性(17)。学校によると、女性は中1の秋から不登校だった。遺書などは見つかっていない。
(毎日新聞)-11月10日10時15分更新

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[2006.11.5]

【この頃思うこと】広汎性発達障害と対人関係能力(2)
 昨夜、私が副代表をしている家族会ノンラベル主催の「アスペルガー援助者養成講座【第5弾】」が京都市内の会場で始まりました。私はいつものように司会・進行役をしています。今回は定員200名に対して250名を越える申込みがあり、多数の方にお断りをする結果となり、本当に残念で申し訳ない思いでいっぱいです。今回参加できなかった皆さんには、来年春の【第6弾】以降には、ぜひ参加していただきたいと思います。
 さて、昨夜の1回目は、ノンラベル代表の田井みゆきが「生活支援の現場から〜アスペルガー特性と具体的援助方」と題して講演を行いました。200名の熱気に包まれる中、参加された皆さんは熱心にメモをとりながら学ばれていました。2回目以降が医師として臨床現場や大学において教鞭をとられつつ実践的研究をされておられる方々なので、1回目は生活支援の現場から見える障害特性や家庭や学校、療育の現場でのタイムリーな援助のあり方を具体的に紹介することになりました。
 DSM-「やICD-10などの診断基準に出てくる、表情や身振りなどでの「感情表現」の困難さや乏しさについて、広汎性発達障害をお持ちの方と定型発達者では「感情表現」における質的な違いは確かにあるものの、ずっと困難さを持ったままかというとそうではない。生育環境において、回りの家族や援助者が笑顔で関わってきたお子さんは笑顔を獲得されているが、逆に「困った子」「扱いにくい子」として精神的に疎外されながら育ってきたお子さんは「他者はいつも自分を怒る存在」と定位し自己防衛に充ちた乏しい表情しか獲得できていないことが多い。また、居場所に来始めた当初、表情なくじっとかしこまって座っていただけの青年が、家に帰ると母親に「今日は楽しかった」と告げ、2回目、3回目と来続ける中で、スタッフの笑顔や楽しい雑談に慣れ、ふと笑顔が出たり、会話に口を挟んだりして心地よい対人関係を獲得して行っている事例の紹介などを通して、生来的に持っている質的違いはあるものの、回りの人の関わり方や細やかな気配りや具体的援助の積み重ねの中で、対人関係能力を獲得していく力を十分に持っているということが明らかにされていきました。
 私もこれらの変化を現場で体験してきていますので、「感情表現」の困難さや乏しさは、当事者の性格の問題などではなく、回りの人の関わり方に因るところが大きいと思いますし、一定年齢に成育されたところからでも、第三者を含めた適切な援助的関わりがあれば、対人関係の力を獲得していってもらえ、またそのことで今の社会の中でより生きやすくなってもらえるのではないかと思っています。
 次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(3)」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。いじめ自殺問題をはじめとして、盛りだくさんになっています。

ちょっとしたひと言が招く“心へのいじめ”

相次いで発生している小中学生の自殺。その理由の大半は“いじめ"によるものだという。暴行や虐待など表だって肉体的苦痛を強いるものの場合は、その原因が火を見るよりも明らかなのだが、厄介なのは心に無数の傷を負わせる“精神的暴力"のケースだ。
 何と言っても、相手を傷つけている言葉を口にしている本人がそれを“いじめ"とは思っていないのだから始末が悪い。ちょっとしたひと言が招く“心へのいじめ"。では、具体的にどんな言葉に人々は傷つくのだろうか。10代から40代までの男女に「子どもの頃に他人から言われて傷ついた一言」というテーマで調査を行った。
 最も多かったのは容姿に対する“からかい"。「あごがしゃくれてる」(愛知県 20代女性)、「オデコが広い」(秋田県 20代女性)、「きつね目」(宮城県 30代女性)、「たらこくちびる」(長崎県 30代女性/他)、「ほくろが多い」(茨城県 大学生男性/他)、「歯がでてる」(長野県 30代男性)、「馬面」(北海道 30代男性)など顔の“パーツ"を取り上げての一言から、「毛深い」(福岡県 20代男性/他)、「ちび」(大阪府 中高生女性 他)、「短足」(東京都 20代女性)など“コンプレックス"に直接つながってしまうような指摘までさまざまだが、その中でも圧倒的な回答数となったのが「でぶ」(広島県 30代女性/他)。いつの時代もダイエットが“ブーム"である理由がここにある。
 とはいえ、見た目への“ちょっかい"だったら気持ちの持ちようで克服することも十分可能だが(とは言え、言われた本人にとってはきついことだろう)。明らかな“悪意"を持ったひと言の場合は、当事者でなければそのつらさはわからない。「うざい」と回答した大学生女性(埼玉県)は傷ついた理由として「改革の余地がないからどうしようもない」と答えている(「うざい」には他多数の回答)。わずか3文字の理不尽な中傷が、相手の存在そのものを否定してしまうのだから恐ろしいというほかない。これがエスカレートすると「死ね」(岡山県 中高生男性/他)となる。ここまでいくと“いじめ"ではなく、立派な“強迫罪"だ。これで傷つかないわけがない。
 罵声は本人に向けられるものばかりではない。「誰々の弟」(大阪府 30代女性)というケースもある。どういうことかというと「女の子なのに、姉の意地悪な友だちから誰々(姉の名前)の弟とからかわれた」とのこと。本人ではなく肉親に悪口を言う。同様に「家族の悪口」(京都府 大学生男性/他)、「お父さんいなくてかわいそう」(茨城県 大学生女性/他)なども心をズタズタにする言葉だ。
 ところが、そんな信頼を置いている親からの信じられない言葉も寄せられた。「お姉ちゃんは勉強できるのに」(福岡県 中高生女性)、「子どものあなたには関係ない」(神奈川県 40代女性)も子どもへの配慮が足りないひと言だが、どうしようもないのが「あんたなんか産まんといたらよかった」(京都府 40代男性)。近年親子の殺傷沙汰が増えているが、その要因の一つを垣間見た気がする。
 加害者の範囲は教師にまで広がる。「邪魔だなあ」(千葉県 20代女性)、「うそつき」(鹿児島県 40代女性)なんて、断じて教育者の吐く言葉ではない。
 また、「しっかりしてるね」(大阪府 専門・大学生)というほめ言葉や、「親に似ているね」(愛知県 30代女性)って言葉に傷つくなんて回答もあった。その回答に親も十分に傷つくと思うけど…。言葉って難しい。そして、子供の頃に言われて傷ついた言葉は、けっこう澱のように心の中にくすぶっているものだ。
「子どもの頃に他人から言われて傷ついた一言」の一覧表/http://www.oricon.co.jp/news/ranking/38239/#rkはこちらへ。
(オリコン)-10月29日11時0分更新
【コメント】一定年齢の大人の目から見れば、「なぜそんな事ぐらいで…」「気持ちが負けているからだ」といった感想も出るかと思います。しかし、今の子どもたちや若者は、これら些細な「傷つく」言葉に、相手の「想定」以上に酷く傷ついてしまいます。「競争社会」が進む中、乳幼児期から学齢期にかけて、家庭や学校、地域における人間関係の中で、縦、横、斜めの関係性や、言葉や時には身体を使ってのぶつかり合いの経験が乏しく、よってストレスへの耐性が弱まっていると言えると思います。自身を肯定し、ありのままで良しとする自尊感情を高めるための対人関係性の体験のし直しが必用なのかも知れません。

●自殺生徒宅で「いじめ被害者の会」設立、5家族が参加
 福岡県筑前町立三輪中2年の男子生徒(13)が自殺した問題を受け、いじめが原因で自殺した子どもの保護者らが29日、男子生徒の自宅で「いじめ被害者の会」の設立総会を開いた。
 九州や神奈川県などの5家族7人が参加。発起人で代表を務める大分県佐伯市の大沢秀明さん(62)は「いじめの存在を隠そうとする学校の体質は変わっていない」と指摘し、「学校がいじめの早期発見や適切な対応に取り組むように、国や県に働きかけていきたい」と強調した。
 大沢さんは1996年、福岡県城島町(現久留米市)で、中学3年の四男(当時15歳)を亡くしている。
 94年に中学2年の長男(当時14歳)を亡くした神奈川県相模原市の平野信矢さん(57)は「子どもへのいじめで悩む保護者に必要なのは、周囲の支え。自分の経験を生かして、苦しむ人たちの相談に応じたい」と話した。
(読売新聞)-10月29日20時35分更新
【コメント】自殺を「恥」と考える文化の根強い日本においては、家族を自死で失った方々の多くはその喪失感と自責の念、何もできない現実への無力感などと独りで向き合い続けなければなりません。自殺を「個人責任」にしてしまう風潮はもうお終いにしませんか。人が自殺を選択するときには、必ず社会的背景・要因があります。決して個人の「弱さ」や「逃避」ではなく、社会問題としてとらえ、個々の事件を大切にし、課題を明らかにしながら自殺を防止する方策、残された遺族を支援する方策を積極的に、官・民・個人を問わず、様々なレベルで模索し具体化していくことが今求められていると思います。

●<岐阜中2自殺>学校側の説明二転三転 原因には触れず
 岐阜県瑞浪市の市立中学2年の少女(14)が今月23日、いじめをほのめかす遺書を残して自殺した問題で、いじめの有無を巡る学校側の説明が二転三転している。同校は少女の家族に対していじめを認めていたが、その後、会見などで「原因は分からない」「広い意味でのいじめはあった」と言い直しを繰り返し、30日には再び「自殺に結びつくいじめの事実はない」と話した。中学校では同日朝、緊急の全校集会が開かれたが、校長は自殺の原因を特定しなかった。
 少女の家族によると、校長、学年主任らが28日、自宅を訪ねた際、少女が遺書で名前を挙げたバスケットボールクラブのチームメート4人について、家族が「(4人の)親はいじめがあったと認めているのか」とただすと、学年主任は「無視や強いパスなどで苦しめていたと認めている」と答えていた。家族はこの様子をビデオに収めており、報道陣に公開した。
 しかし、校長は29日の会見で「自殺の原因は分からない」と説明。さらに同日夜には「広い意味でのいじめはあったが、自殺の原因となったかは分からない」とやや表現を変え、いじめの存在を一部認める発言をした。
 ところが30日朝、全校集会後に、同校の教頭は報道陣に対し「現段階でいじめの事実は確認できていない」。その後、校長も市役所で開いた会見で「『ウザイ』などのからかう発言はいじめに当たると思うが、自殺につながるかは推測の域を出ず、最終的な原因に結びつけられない」と話した。「原因をうやむうやにするつもりか」との質問には「そのつもりはない。原因は知りたい」と答えた。
 同校は、いじめの確認について「犯人捜しが先行すると生徒の間に動揺が広がる」として、今後、全校生徒に無記名のアンケートを行い、日ごろの校内でのいじめの有無などを問うという。校長は「学校は警察と違う。踏み込んだ調査はできない」と話した。
 ◇2回目の緊急全校集会
 緊急の全校集会は午前8時半から開かれた。学校の説明によると、集会は自殺翌日の24日に続いて2回目。最初の集会では校長が死因を明かさずに少女の死に触れ、命の大切さを訴えたが、この日の校長は「自殺に結びつくいじめの事実はないが、今後の調査で出てくるかもしれない」と話し、「不安を抱いている子も多いだろうが、より良い学校を目指していこう」とあいさつした。生徒たちは静かに聴き入っていたという。
 生徒たちは30日朝、一様に硬い表情で登校。教職員が通学路に立ち、「おはよう」と声をかけた。学校前には多くの報道陣が詰め掛けたが、ほとんどの生徒が記者の問いかけに無言で、足早に校内に入った。1年生の男子生徒は事件について「ショックです」と漏らした。
(毎日新聞)-10月30日14時3分更新

●デスクの目:彼の死を受け止めるために/福岡 <報道部・御手洗恭二>
 「友だちに少しでも変わったことがあったら、それはサインかもしれない。見逃さないで下さい」
 いじめを苦にして自殺した筑前町立三輪中の男子生徒の葬儀で、声をつまらせながら参列した子どもたちに語りかけるお父さんの言葉が、今も耳に残る。ニュースを見ながら涙が止まらなかった。
 04年、長崎県佐世保市で娘に降りかかった事件の後、長崎県教委が半年かけてまとめた調査報告の中に「事件の予兆の把握」という項目がある。
 加害女児が事件前に書いた作文の記述、交換日記を巡る同級生とのトラブル、バトルロワイアルなどの小説をよく読んでいたこと−−などの九つを予兆として挙げた。
 対する教師の認識とは「特に問題視しなかった」「知らなかった」「気がつかなかった」…。悲しくなるような記述が見事なまでに並ぶ。
 そこに先生たちの生の声はない。そんなふうに表層的で本音を覆い隠したまま、残った子どもたちの教育を全うするというステップに進めたのだろうか。そんな大人を子どもたちは信頼するだろうか。うまくいったとすれば、子どもたち自身の力によるものだ。
 佐世保事件を取材した同僚から聞いた話も思い出した。「なぜ(加害女児の)変化に気づいてあげられなかったのだろう」と話す同級生の親がいたというのだ。私も同様だった。二人の間のいさかいを全く知らなかった。転校後に心配していた友人関係も、時の経過とともに「うまくいっている」と思いこみ、注意を払わなくなっていた。しかし事件後、目にした娘の手紙には、友人関係の悩みがつづられていた。
 そう、誰も彼女に、私は娘に、手を差し伸べることができなかった。そして、筑前町の彼にも。
 彼の自殺といじめを町教育委員会が調査するという。国も文部科学省政務官、教育担当の首相補佐官、教育再生会議委員の「ヤンキー先生」を派遣した。本腰という姿勢を見せるのはいい。評価は結果を出してからだ。
 そこで調査に注文がある。
 先生や子どもたちが本音を語れる状況を保証してほしい。体裁を取り繕ったり、上っ面だけの内容となっては意味がない。聞き取り方も工夫が必要だ。威圧的では何も語らないだろう。
 さらに調査委員会に入るという第三者の役割は重い。調査が信頼できるかどうかは第三者にかかっている。
 そのうえで、三輪中の先生たちや子どもたちに、お願いがある。
 先生には、自分たちが彼に何をして、何をしなかったのか▽その時に何を考え、何を考えていなかったのか、明らかにしてほしい。
 子どもたちは、彼に対する言動(見て見ぬふりをしていたことも含まれる)を包み隠さず話してほしい。
 そして、ご家族もいつか落ち着かれた時、彼のことを振り返ってください。
 そこまでしても、彼の選択の理由が見つかるかどうかは分からない。でも、彼の死を受け止め、何かを学び取るために最低限なすべきことだと信じる。
 彼のお母さんが同僚に「その日の朝」のことを話してくれた。言葉を交わしたものの、食器を洗っていたお母さんは彼の後ろ姿を見ていないという。それは私と娘の最後の朝とダブる。洗濯していた私も声だけで娘の出ていく姿を見ていない。
 子どもと迎える、いつもと同じ朝。そんな日常に安住せず、神経質にもなりすぎず、感覚をとぎすましたい。そして、立ちすくむことなく腹を据えて子どもと向き合おう。大切な子どもを失わないために。
毎日新聞〔福岡都市圏版〕 2006年10月30日

●<福岡中2自殺>いじめ調査委に遺族参加認めず 筑前町
 福岡県筑前町立三輪中2年の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、いじめの調査委員会への参加を求めていた男子生徒の遺族に対し、町教委は4日、遺族を含む保護者代表の調査委への参加を拒否すると伝えた。
 町教委の回答書は「公平性、客観性、透明性、迅速性が確保できる第三者機関による調査を目的としているので、応じることはできない」としている。
 町教委は調査委を設置する計画だが、まだメンバーは確定していない。このため、遺族は大仁田厚参院議員(自民)と連名で「自殺は命をかけた最後の訴え」とし、遺族を含む保護者代表を調査委に参加させるよう、今月2日に要望書を出していた。
 遺族は「納得できない。遺族の声を反映してほしい。委員として(遺族が)入れないなら弁護士2人を委員に入れてほしい」と語った。
 また、遺族らは調査委の早期設置も同時に求めていたが、町教委は「1週間以内に発足させる」と約束した。(毎日新聞)-11月4日20時2分更新
【コメント】何度かふれてきたと思いますが、遺族は起こった出来事の事実関係が知りたいのです。「調査」において、遺族が有している情報や物証は不可欠な要素です。このご遺族が話されているような、委員会に参加ができないのなら弁護士が入る、遺族の委員会傍聴を認める、といった処置は、今後実現されていくものと確信しています。

●<岐阜中2自殺>学校側「いじめ」認める 遺族に謝罪へ
 岐阜県瑞浪市の市立瑞浪中学2年の少女(14)が今月23日に自殺した問題で、学校側は31日、自殺の原因はいじめだったとする結論をまとめた。同日午後にも記者会見して公表し、校長らが近く遺族に謝罪する方針。
 遺族によると、少女は所属していたバスケットボールクラブのチームメートから、無視されたり「ウザイ」と言われるなどの嫌がらせを受け、学校側も自殺直後にはその事実を認めていたという。しかし、その後の会見では、佐々木喜三夫校長が「からかう発言はいじめに当たると思うが、自殺につながるかは推測の域を出ず、最終的な原因に結び付けられない」などとして「自殺に結び付くいじめの事実はなかった」と因果関係を否定していた。
 しかし関係者によると、少女の自殺後に全校生徒に実施した無記名アンケートでも校内でのいじめをうかがわせる記述があり、実態が明らかになりつつあるとして、同市教委と協議し、いじめと自殺の関係を認めることにしたという。
(毎日新聞)-10月31日13時17分更新

●<自閉症提訴>倉庫に閉じ込められ負傷 賠償2千万円求める
 東京都小金井市の市立小学校で04年、心身障害児学級に通う自閉症の男児(10)が担任の男性教諭に倉庫に閉じ込められ負傷した事故で、男児と両親は1日、市と当時の校長らを相手取り、約2000万円の賠償と市広報への謝罪文掲載を求めて東京地裁八王子支部に提訴した。男児側は「学校側に自閉症への理解がなく事故後の対応も不誠実だった」としている。
 訴状によると、04年11月、体育の授業中に体育館隣の倉庫に入った当時小学3年生の男児に対し、男性教諭が「そんなに入っていたいなら、しばらくそこにいなさい」としかって閉じ込めた。男児はパニック状態になり、2階の窓から5メートル下の地面に落下、大けがを負った。
 会見した母親は「経緯をありのまま話してほしかったが、先生や校長、市教委は息子が話せないのをいいことに自分たちの都合のいい説明を繰り返した」と話した。
(毎日新聞)-11月1日11時2分更新

●遺書で「パワハラ」訴え、女性中学教諭が自殺…鹿児島
 鹿児島県曽於(そお)市の中学校の女性音楽教諭(32)が、パワーハラスメント(職権による人権侵害)を訴える遺書を残し、自殺していたことがわかった。
 学校側は「頑張ってもらおうと指導したもので、パワハラはなかった」と説明している。
 家族によると、教諭は28日に行方不明になり、29日朝、空き家になっている県内の実家で首をつって自殺しているのを父親(61)が見つけた。教諭のパソコンには、学校関係者と母親(59)あての遺書があり、校長(55)には「(県総合教育)センター行き、すべてあなたの犯行」、別の上司には「他の同僚と私を差別した」などと記されていた。
 学校によると、教諭は2002年、中学校に赴任し、音楽科と家庭科を担当。05年から、1、2年生に国語も教えるようになったが、曽於市教委から「指導力不足」と判断された。このため、10月1日から半年間、県総合教育センター(鹿児島市)で研修を受けることになり、鹿児島市内の自宅から通っていた。
(読売新聞)-10月31日22時48分更新

●<パワハラ自殺>校長ら3人が謝罪 鹿児島・両親が会見
 鹿児島県曽於(そお)市の市立中学校の女性教諭(32)が上司からのパワーハラスメント(地位を利用した嫌がらせ)を訴えて自殺した問題で、教諭の両親ら遺族3人が4日、鹿児島市の自宅で会見した。遺族は校長らが謝罪に訪れたことを明らかにし「今後同様の犠牲者が出ないようにしてほしい」と訴えた。
 遺族によると、3日、校長と教頭、市教育長の3人が自宅を訪れ「いじめと誤解されるようなことをして済まなかった。教諭のためを思って指導したが、パワハラと受けとられ、自殺に追い込んだことは申し訳ない」などと謝罪したという。また、女性教諭の月命日には「命を考える時間」を設け、生徒たちとともに命の大切さについて考えていくことも約束したという。
 遺族は会見で「娘は専門外の教科を教えるように要求され、一生懸命努力したが、悩んで自殺した。きちんと謝罪を受けたので、学校を責めるつもりはないが、同じ悩みを抱えた教師が多くいると聞く。第二の犠牲者を生まないようにしてほしい」と涙ながらに訴えた。
 女性教諭は04年から専門の音楽以外の国語や家庭科を教えるように指示され、通信教育などで勉強したが、今年10月から「指導力不足教員」として県総合教育センターで研修中だった。10月29日、同県さつま町の父親の実家で首をつって死亡しているのが見つかった。教諭のパソコンには上司のパワハラを訴える内容の文書が保存されていた。
(毎日新聞)-11月4日23時12分更新

●教育改革タウンミーティングでやらせ質問、内閣府作成
 今年9月2日に青森県八戸市で開かれた政府の「教育改革タウンミーティング」で、内閣府などが教育基本法改正案に賛成の立場で質問するよう参加者に依頼していたことが1日の衆院教育基本法特別委員会で明らかになった。
 石井郁子議員(共産)が内閣府や青森県教育庁などが作成した文書を基に指摘し、政府もこれを認めた。
 文書は、青森県内の教育事務所と同県教育庁が、地元の中学校長あてにファクスで送った2種類。一つは「タウンミーティングの質問のお願い」として、三つの質問案を示し、そのうちの一つを質問するよう依頼している。
 もう一つの文書は「内閣府から以下のとおり発言の仕方について注意があった」として、<1>できるだけ趣旨を踏まえて自分の言葉(せりふの棒読みはさけてください)<2>「お願いされて」とか「依頼されて」と言わないで下さい(あくまで自分の意見を言っている、という感じで)――などと、アドバイスしている。
(読売新聞)-11月1日20時10分更新
【コメント】要するに、安部内閣として、教育基本法の改正は目玉商品であり、そのためには使える組織はすべて使うということなのでしょう。「依頼」とはいえ、校長など受け取る側にすれば上意下達の「通達」に等しい物ですから、その意に背く発言や行動を起こす勇気のある人はいない、という前提での戦略と言えます。これまで、こうした「依頼」がどれだけ使われてきたのかと思うと、情けないを通り越して背筋が寒くなります。

●障害者施設 自立支援法 4割が人件費削減
 障害者自立支援法の施行後の減収で、職員の給与を減らすなど人件費を切り詰めている施設が約四割に上ることが二十八日、障害者が働く小規模作業所などの全国組織「きょうされん」(東京都中野区)の調査で分かった。施設が経営を維持するために、窮余の選択を迫られている実態が浮き彫りになった。 
 調査は八月から九月にかけて実施。同法で定める通所・入所施設とグループホームなど加盟計五百五十七施設のうち三百九十四施設が回答した。
 それによると、同法が施行された今年四月以降に、給与や賞与のカットなど人件費を切り詰めた施設は約41%に達した。「削減を検討中」(約18%)も含めると、全体の約六割に及んでいた。
 同法の施行により、(1)施設側の報酬単価が下がった(2)報酬が月額制から障害者が通った日数の日割り計算になった−ことによる収入減が原因とみられる。
 土日勤務を増やすなど職員の休暇日数を削った施設も三割を超えた。
 調査した「きょうされん」の多田薫事務局長は「給与カットや労働条件の悪化に耐えられず、職場を去る若い職員が増えている。障害者支援に影響しないか心配だ」と、懸念を示している。
 施設経営への影響について、厚生労働省障害保健福祉部企画課は「利用者のニーズに応じてサービスを提供する日額払いの利点を生かし、増収の施設もある。通所施設の定員を超えた利用受け入れを認めたり、家庭訪問を報酬評価したりして影響を抑える緩和策も講じている」と指摘する。
■質低下招く恐れも
北野誠一・東洋大教授(地域・障害福祉学)の話
 福祉サービスの提供者が経営維持のため、職員を非常勤化したり給与を削減したりすれば、現場の意欲が下がり、サービスの質の低下を招きかねない。国の制度設計の無理から生じた事態だが、当面は自治体が負担軽減策を講じるなど地域全体で福祉サービスを支えるしかない。
(東京新聞)10月29日

●小中学校予算に学力テストの結果を反映…東京・足立区
 東京都足立区教委は来年度から、区立小中学校への予算配分に、都と区が実施している学力テストの結果を反映させる方針を決めた。
 テストの平均点などから各校を4段階に分類し、各校の独自の取り組みに支出する「特色づくり予算」の配分を、1校あたり500〜200万円と格差をつける。区教委教育政策課は「子供の能力に序列をつけるのではなく、学校経営を評価するという趣旨。学校の経営改革として実施したい」としている。
 学力テストは、都が毎年1月、区は4月に実施している。区教委の計画では、区内72の小学校と37の中学校について、各校のテストの平均点や前年度からの伸び率、校長の経営計画などから点数化、ABCDの4段階に分類する。Aは全体の約1割、Bは約2割、Cは約3割、Dは約4割とする予定。分類結果は公表しない。
(読売新聞)-11月4日12時48分更新
【コメント】都内の他の区でもこうした決定がされていると聞きます。「特色ある学校づくり」のスローガンは1年あまりで聞かれなくなったかと思いますが、今回の「特色づくり予算」も新たな競争を学校教育に持ち込むものであることは間違いありません。これからも、テストの点数をもって「学力」とする教育評価や、子どもたち一人ひとりの育ちや教師の教育実践を見ることなく「学校評価」に戦々恐々とする学校管理者の孤独な闘いが続くのでしょうか?

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[2006.10.29]

【この頃思うこと】広汎性発達障害と対人関係能力(1)
 アスペルガー障害をはじめとする広汎性発達障害をお持ちの人は、「対人相互作用」に困難さがある、とよく言われます。自閉症スペクトラムの三つ組み課題の一つであり、高機能の広汎性発達障害の方においてもこの困難さが特徴的に現れている方が多いかと思います。「相手の気持ちがくみ取れない」「まわりの雰囲気が読めない」「多人数の中にいると疲れてしまったり疎外感を強く感じる」など、当事者にとっても、その場にいるまわりの人にとっても、関係性に困難を感じます。
 では、この対人関係の困難さは、広汎性発達障害の方が、生まれもって身につけてきたもので、改善できないものなのかどうか? 各種の文献や論文では特徴的な特性としてこの困難さが指摘されていますが、一生持ち続ける生活レベルで支障の出る困難さなのでしょうか? この疑問に対して、最近、相談室でのカウンセリングや訪問、家族会ノンラベルの居場所で当事者の方々と接して来る中で、違う認識を持つようになりました。それは、確かに生まれながらの障害特性であり、まわりの人の言動を注視してそこから学ぶという柔軟な対応が困難であることは確かであると思いますが、個別、適切な援助があれば対人場面での多くの対応法を学ぶ力は持っていて、十分に獲得できる、ということです。たまたま、こうした援助の機会や体験を得ずして育ってきてしまったために、獲得できないままでいる、ととらえるべきではないかというものです。それは、第三者として1対1で関わったり、居場所という集団での関わりの中で、こちらの意思を確かめたり、気を使ってくれたり、という体験を数多くしてきたからです。他者との関わり方のルールを一つずつ獲得していくことができれば、社会において適応できる基本的な社会的能力を身につけていくことは十分にできるのではないか、そのための学びや体験を提供できる人的資源が必用である、と強く思うこの頃です。
 次回は「広汎性発達障害と対人関係能力(2)」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

<いじめ>法務省調査では「増加」 文科省とは逆の結果に

「学校のいじめは減少している」という文部科学省の「いじめ」に関する調査に対し、「実態を反映していない」との指摘が出ているが、法務省の調査では増加傾向にある。同省の調査によると、学校でのいじめは05年には前年より2割以上増えており、文科省調査への疑問の声は大きくなりそうだ。また、各地の弁護士会や自治体がいじめに関する相談機関を設置しており、「ぜひ相談を」と呼び掛けている。
 法務省の調査によると、学校内のいじめについて「学校側が不適切な対応をした」とする05年の人権侵犯事件数は716件で、04年に比べて22.6%も増加。01年は481件▽02年524件▽03年542件▽04年584件と増え続けている。いじめも執ようで、陰湿な事例が多くなっているという。
 法務省調査は、各地の法務局など人権擁護機関が、「いじめで人権を侵害された」と相談した当事者の申告などに基づいている。
 一方、文科省は、学校や自治体教委の報告を積み重ねる形だ。学校側がいじめを見落としたり黙認したりすれば、統計には反映されない。また、いじめ根絶を目指す自治体が発生件数を具体的な目標として数値化したため、「実態を目標に合わせて報告する例もあるのでは」との指摘もある。
 増加するいじめを重く見た法務省は、今年度からは相談ごとを自由に書いて法務局の人権擁護担当に無料で郵送できる「SOSミニレター」を約70万枚作成し、さらに18万枚増刷する。全国の小学5、6年と中学生に配布を進めている。
(毎日新聞)-10月23日3時5分更新
【コメント】どうしていじめの現場である学校で把握している数字よりも、人権擁護機関などへ寄せられた相談件数の方が多いのでしょうか? 学校にいじめの問題を相談しても解決してもらえない…、といったあきらめ感もあると思いますが、学校現場において、いじめ解消に向けて具体的に行動することなしに、いじめ問題が減ることはないと思います。いじめは犯罪であり、結果被害者も加害者もその後の人格形成に大きく影響する問題であると共に、人権問題であるという意識をもっと強くもつ必用があると思います。
<子どもの人権問題に関する相談先電話番号一覧>
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken27.html

●教諭のいじめで不登校に−鹿児島県奄美大島の中学校
 鹿児島県奄美市の市立朝日中学校で、2年生の女子生徒(14)が1年生だった昨年9月に担任の男性教諭(30)からいじめを受け、不登校になっていることが24日、分かった。学校側もいじめを認め、生徒の両親に謝罪しているという。
 奄美市教育委員会によると、男性教諭は女子生徒に授業のプリントを渡さなかったり、出欠確認の時に名前を呼ばなかったりした。女子生徒は昨年10月から学校を休みがちとなり、進級した現在もほとんど欠席しているという。
 男性教諭は「心ない言動で心の傷を負わせてしまった。申し訳ない」と話しており、3月の終業式では1年生全員の前で謝罪したが、女子生徒が面会を拒んでいることから、直接には謝罪できていないという。
 2月に女子生徒の母親の訴えでいじめを把握した市教委は、3月に男性教諭を口頭での訓告処分とした。学校側は「教師として許されない。1日も早く学校に出て来てもらえるよう家庭訪問などを続けたい」としている。
(サンケイスポーツ)2006年10月24日更新
【コメント】情けない話しです。被害少女は、この教師からの謝罪を「心からの謝罪」として受け入れるまで、心的外傷からの回復は始まらないと思います。

●「教諭自殺、学校に責任」両親が公務災害認定を申請
 東京都新宿区立小学校に今春から勤務していた新任の女性教師(当時23歳)が自殺したのは、仕事上のストレスや学校の支援不足が原因だとして、この教師の両親が24日、地方公務員災害補償基金東京都支部に公務災害の認定を申請した。
 心の病で休職する教師が増える中、新任教師の死は学校現場に課題を突き付けている。
 両親の代理人弁護士によると、この教師は4月、2年生の担任になった。保護者と交換する連絡帳の中で、宿題の出し方が安定しない、子どものけんかで授業がつぶれるなどと指摘されるようになり、5月には、人生経験の少なさも批判された。
 このため5月22日、校長に初めて相談。保護者と電話で話すよう指示を受けたが、時間外労働も加わり、過度のストレスを感じていた。自殺を図っていったん未遂に終わったが、同月末にもう一度自殺を図り、翌日死亡した。ノートには「全(すべ)て私の無能さが原因です」などと書き残されていた。弁護士は「保護者からのクレームなどで精神的に追いつめられ、学校の支援も不足していた」としている。
(読売新聞)-10月25日1時53分更新
【コメント】学校社会という日本一大きな管理組織は、間接や末梢神経部分に外見からは判断できない病理が広まっているようです。自己治癒力も免疫力も抵抗力も、あまり期待できない状態になってしまっているのでしょうか。

●<生活保護>7割が申請に至らず 事前相談で門前払いか
 全国各市が設置する福祉事務所で04年度に受け付けた生活保護の相談件数のうち、実際に保護を始めた割合が平均で28%と3割に満たないことが会計検査院の調べで分かった。最低の北九州市は14.6%で、最高の千葉市は69.7%だった。こうした自治体間の格差について専門家の中には「相談にとどめて申請させない門前払いの実態を示している」と指摘する声もある。政府が給付削減を進める中、生活保護行政の姿勢が問われそうだ。
 検査院は昨年6月に国会から社会保障費の地域間格差の検査を要請され、生活保護費などを調査。初の結果となった。
 検査院によると、相談件数を把握しているのは、全福祉事務所(1225カ所)のうち各市が設置した事務所(903カ所)。政令市と都道府県別に集計したが、最高、最低以外の自治体は公表していない。
 調査結果では、相談件数に対する保護開始率の低さが目立つ一方、相談から申請に至った比率も全国平均で30.6%。最低が北九州市(15.8%)で、最高が千葉市(71.1%)だった。実際に申請された件数に対する保護開始率は平均で91.5%。最低の熊本県でも73.8%と高く、申請後は高率で保護を受けられる実態がうかがえた。
 日本弁護士連合会が今年6、7月に行った生活保護に関する無料電話相談によると、事務所に相談に行った180人中118人(65.5%)が「65歳までは仕事を見つけなさい」「子供などから援助を」などと言われ申請に至らなかったという。
 生活保護行政の問題に詳しい小野順子弁護士は「子供など扶養義務者がいることが理由で相談段階で門前払いになるケースが多い。だが、実際には申請を受けて調査しないと扶養できるのかどうかすら分からない」と指摘する。一方、厚生労働省保護課は「相談者はさまざまな要因で生活に困っており、児童給付などほかの制度を使っている可能性もある。この数字だけで門前払いとは言えない」と話している。
 北九州市では、保護を必要とする人たちから悲痛な声が上がっている。
 「区役所の窓口はいつもけんか腰で『子供に援助してもらえ』の一点張り。思わず『首をつって死にます』と言ったこともある」。小倉北区の市営住宅に1人で暮らす女性(75)は8年前に夫と死別。年金月額7万円だけが収入だ。2人の息子のうち援助を受けていた二男が春から音信不通に。長男は自分の家計維持で精いっぱいという。「介護保険料も医療費も上がって暮らしはぎりぎり。夫が元気な間はちゃんと税金を納めていたのになぜこんな目に遭うのか」と涙ながらに訴える。
 同市内7区の福祉事務所は毎年策定する運営方針で相談件数に対する申請率の数値見込みを設定している。同市保護課は「申請件数のとらえ方が自治体によって異なり、申請率を一概には比較できない。市は従来、保護行政の適正実施に努めている。門前払いはしていない」と反論する。
 もちろん北九州市だけではない。今年2月、京都市伏見区では、認知症の母親(当時86歳)の介護で生活苦に陥った息子が、母親に相談の上で殺害し自らも自殺を図った。息子は窓口に3回行ったが、失業保険を理由に申請を受理されなかった。京都地裁は7月の有罪判決で「生活保護の相談窓口の対応が問われている」と異例の指摘をした。また秋田市では今年7月、2度の申請を却下された男性(当時37歳)が、乗用車内で練炭自殺している。
(毎日新聞)-10月26日3時6分更新
【コメント】国や担当部局が関心を持つのは、保護費をどれだけ前年比で減らすことができるかで、保護を必用としている人の生活の実情ではないようです。先進諸外国の公的扶助や精神保健などに対する国家予算の支出割合やその位置づけを学ぶべきです。

●奈良の母子3人放火殺人、16歳長男の少年院送致決定
 奈良県田原本町(たわらもとちょう)の医師(47)宅が全焼し、妻子3人が死亡した放火殺人事件で、殺人、現住建造物等放火などの非行事実で送致された元私立高校1年の長男(16)の少年審判が26日、奈良家裁で開かれ、石田裕一裁判長は、中等少年院送致とする保護処分を決定した。
 決定によると、長男は6月20日午前5時ごろ、自宅1階台所などにサラダ油をまき、ガスコンロで着火したタオルで1階階段付近に放火。木造2階建て延べ約140平方メートルを全焼させ、2階で寝ていた母親(当時38歳)、二男(同7歳)、長女(同5歳)を一酸化炭素中毒で死亡させた。
 奈良地検は長男を「確定的に近い殺意があった」として、刑事処分相当の意見を付けて家裁に送致した。しかし、家裁による精神鑑定で、「父親の暴力で抑うつ状態になり、一つのことにしか注意が向かない発達障害だった」と診断され、付添人弁護士は「殺意はなく、更生のために専門的な施設で治療を受けさせるべき」と主張していた。
(読売新聞)-10月26日12時21分更新

●奄美の不登校中1女子、教師訪問直後に自殺未遂
 鹿児島県奄美大島の公立中学校の男性教諭(37)が、不登校になっていた1年の女子生徒(12)の自宅に上がり込み、生徒がかぶっていた布団を引きはがして、「学校に行くのか、行かないのか」などと迫り、その直後、生徒が首つり自殺を図っていたことが26日、わかった。
 生徒は一命を取り留めたが、校長は「不適切な行動だった」と教師の対応に問題があったことを認め、27日にも男性教諭らが生徒と両親に謝罪するという。
 学校や関係者によると、女子生徒は今年6月ごろ、部活動を巡って顧問の女性教諭(25)から全部員の前でしっ責された。女子生徒はその後、退部し、2学期から学校に行かなくなった。
(読売新聞)-10月27日3時7分更新
【コメント】これも情けない話しですし、とても可哀想な事件です。90年代の前半くらいまでは、こんな対応が行われていたかと思います。「全部員の前でしっ責」を受け、「布団を引きはが」された少女の気持ちが、この教師たちに理解できるのでしょうか。

●障害者自立法施行『採算合わぬ』 東大和市社協が撤退
 障害者自立支援法の全面施行に伴う負担増を理由に、東京都東大和市の同市社会福祉協議会が、九月末で障害者の外出を援助する移動支援事業から撤退したことが、二十五日分かった。市内で同事業をしていた十九の事業者で撤退したのは同社協だけ。同法施行で事業が区市町村の裁量に任された結果、報酬単価の引き下げなどによる撤退事業者の増加も懸念されていたが、「地域福祉の中核的役割を担う社協が真っ先に投げ出すなんて…」と福祉団体から批判も上がっている。
 一九九〇年から移動支援事業を手掛けてきた同社協が、市側に撤退の意向を示したのは八月下旬。同法全面施行に伴い、事務作業が煩雑化し負担が増える▽採算性が合わない▽ガイドヘルパーの確保が難しい−というのが理由だった。
 財源の半分を市の補助金と委託費で賄う社会福祉法人で、地域福祉推進の中核でもあるだけに、同社協の星長助事務局長は「認識が甘いと言われても仕方がないが、現実的に考えれば継続は困難。民間が育ち、社協は(移動支援の)役割を果たしたという判断もあった」と説明する。
 しかし、突然の撤退で、同社協の移動支援事業を利用していた視覚障害者七人(九月末現在)のうち、現在も二人の受け入れ先が未定。その一人の五十代の男性は「一方的に打ち切りを決めてフォローもない。十五の事業者を回ったが、以前のようなサービスを受けられるところが見つからず病院にも行けない」と憤る。
 障害者支援組織「東大和障害福祉ネットワーク」は十三日、利用者のサポートや社協の体制見直しを求め、尾又正則市長へ要望書を提出した。同ネットワークの海老原宏美代表は「苦しいのはどの事業者も同じ」と批判する。
 同事業が区市町村の裁量に任され、報酬単価の引き下げなどに伴い苦境に立つ事業者も多いとみられ、川崎市では約百二十の事業者のうち二十前後が撤退したという。しかし、全国社会福祉協議会によると、社協については「今のところ、ほかに撤退したところは聞いていない」としている。
 世界規模の障害者団体の国内組織「DPI日本会議」、尾上浩二事務局長は「移動支援は報酬単価が低いうえ、利用が不定期でヘルパーの確保が大変なことから事業者は敬遠しがち。手を引く事業者は今後もますます増えると予想される。社協の役割からして、こうした事業こそカバーすべきだ」と主張する。
<メモ>移動支援 ガイドヘルパーを派遣するなど身体、視覚、知的、精神障害者の外出を支援し、社会参加を支えるサービス。今月、障害者自立支援法の全面施行に伴い、地域生活支援事業に組み込まれた。事業者の報酬単価や利用者負担などは市町村の裁量に委ねられ、実情に沿った柔軟な対応が可能となった。東京都杉並区では身体介護を伴うサービスを1時間4000円、伴わないサービスを同2400円と報酬単価がアップしたが、広島市では一律1時間1500円と大幅減額になるなど、自治体間の格差も生まれている。従来に比べ負担が増えた事業者は多く、事業撤退やサービス低下が懸念されている。
(東京新聞)2006/10/25
【コメント】社会福祉協議会が「採算が合わない」と事業から撤退を決める自立支援法。もっと規模の小さな事業所や施設では、採算が合わないどころか、存続の危機に迫られています。悪法であると言って良いと思います。

●長男を中等少年院送致 奈良放火殺人 家裁「殺意は未必的」
 奈良県田原本町で今年6月、母子3人が死亡した医師(47)宅放火殺人事件で、奈良家裁は26日、殺人や現住建造物等放火などの非行事実で送致された長男(16)を中等少年院送致の保護処分にすることを決定した。石田裕一裁判長は「保護処分によって矯正改善の見込みがある。結果の重大性などを考慮しても、なお保護処分で対処すべき特別の事情がある」と判断。処遇期間については、「相当長期の処遇が必要」と意見をつけた。
 少年法は16歳以上の少年が故意に人を死なせた場合は原則検察官送致(逆送)しなければならないと規定する一方で、「相当の理由」がある場合には例外規定も設けている。今回の決定はこの例外規定に基づいており、検察側は抗告受理申し立てを検討する。
 石田裁判長は決定理由で、長男への父親の継続的な暴力について「正当なしつけの限度を超えた虐待ともいうべきもの」と指摘。長男が事件前の中間テストが不出来だったことで「父に発覚すれば殺されてしまうぐらい殴られると恐怖し、父を殺害して家出することを決意した」とした。
 さらに、実行には特定不能の広汎(こうはん)性発達障害の特質が強く影響し、放火を決意したと指摘。殺意については、「確定的ではなく、未必的に過ぎない」と認定。長男に罪の意識が芽生えつつあることなどから「自分自身の内面を振り返ることができる教育的環境のもとで、情緒の健全な発達を促し、贖罪(しょくざい)意識を養うことが望ましい」と結論づけた。
 決定によると、長男は6月20日午前5時ごろ自宅1階階段付近に放火し、2階で寝ていた母親=当時(38)=と弟=同(7)▽妹=同(5)=の3人を一酸化炭素中毒で死亡させた。
■奈良地検の西浦久子次席検事の話 「決定の内容を検討の上、上級庁と協議して抗告受理申し立てをするか否かを検討する」
■付添人の濱田剛史弁護士の話 「決定は非常に適正だと思う。少年の更生可能性が適正に判断された」
■十一元三・京都大教授(児童精神医学)の話 「長男への保護処分決定は、家裁が情状面や殺意の有無などに関して総合的に判断した結果だと考えている。広汎性発達障害は本来犯罪に結びつくものではないが、更生を図るには発達障害を念頭にした個別の処遇プログラムが必要だ。保護処分の決定は、家裁が刑事責任を問わず、長男が社会に再び適応できるための教育を優先すべきだと判断したのだろう」
【用語解説】広汎性発達障害
 興味の偏りや、コミュニケーションの障害などを特徴とする発達障害の総称。先天的な脳機能障害が原因とされ、現在の診断基準は1994年に米国で確立された。自閉症やアスペルガー障害などが含まれ、全国に100万人前後いると推計される。犯罪などの反社会的行動を起こすことはまれであり、むしろ詐欺などの被害にあうことが多いとされる。
(産経新聞)-10月26日17時5分更新

●全国初の「職親制度」 京都府が創設 ひきこもり支援へ
 対人関係をうまく築けず、自宅中心の生活を送る社会的ひきこもりの青年の自立に向け、京都府は26日、就労体験のできる事業所と青年を引き合わせる「職親制度」を新たに創設すると発表した。ひきこもり青年を1人受け入れるごとに、府が5万円を事業所に助成する制度で、全国初という。
 山田啓二知事が、同日の定例会見で明らかにした。
 府は、仕事や学校に行けず、自宅にひきこもっている青年が府内に約8000人いる、と推計している。仕事を通じて人間関係の再構築を目指す狙いから、新制度を「職親」と名付けた。
 居場所の提供や相談など、日常的にひきこもり青年を支援する府内27の団体から紹介を受けて、事業所に引き合わせる。事業所、支援団体と受け入れに関する協定を結んだ上で、青年に1カ月(80時間)程度の就労体験をしてもらう。支援団体は、その様子を見ながら青年や事業所に助言する。
 府は「ひきこもりの青年を力づける取り組みを官民の協働で進めたい」としており、受け入れ可能な事業所を26日から11月15日まで募る。企業だけでなく、農林水産業や伝統産業の職人、NPO(民間非営利団体)なども応募できる。問い合わせは府青少年課Tel:075(414)4304。
(京都新聞)-10月26日15時49分更新
【コメント】ひきこもり支援が、こうした就労支援だけになっていることに危惧を感じます。就労が課題、という段階のひきこもりの人たちは、まさに氷山の一角であり、圧倒的多数者が家から部屋から出られない、人に会えないなど重篤な状態で、中にはひきこもり状態から二次的に神経症や精神病を引き起こしているケースも少なくありません。こうした「見えにくい」部分にこそ支援の光があてられなければならないと思います。繰り返しますが、ひきこもり問題は、若年者非就労問題だけでは決してありません。

●<千葉教諭自殺>「校長のパワハラ許せない」遺族が会見
 千葉市立中学の教諭、土岐文昭さん(50)が9月に自殺した問題で、妻聖子さん(47)ら遺族が28日、同市内で会見し、「校長の過剰な圧力、大声での叱責(しっせき)はパワーハラスメント(地位を利用した嫌がらせ)だと考えている。一生許すことはできない」と声を震わせ話した。遺族は近く、公務災害申請をする方針だ。
 遺族側の報告書によると、土岐さんは4月に赴任した中学で、校長(58)から「役立たず」などと度々大声で叱責され、精神的ダメージを受けていた。8月末、職務を優先させるために教頭昇任試験を受けないと校長に伝えたところ、「辞表を書け」「おれに恥をかかせる気か」などと怒鳴られたという。直後に「抑うつ、疲弊状態」と診断され、9月6日、同市内で飛び降り自殺した。
 聖子さんは「人の命と人権を大切にしなければならない学校で二度とこんなことが起きてほしくはない。真相を究明してほしい」と訴えた。
 一方、市教委は28日、「調査結果が出る時期は未定」と話し、自殺原因について明言を避けた。週明けにも療養休暇中の校長、教職員を対象に対面調査を実施する。
(毎日新聞)-10月28日20時20分更新

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[2006.10.22]

【この頃思うこと】父と娘のすれ違い
 日本の高度経済成長を現場で支えてきたお父さんたちの多くは、「家庭をかえりみず仕事に打ち込んできた」という方であると思います。おのずと家庭と子育てはお母さんの仕事と…。こうした経済社会的背景において、性別役割がある程度規定されて行ったのだと思います。その中で、おざなりにされてきたのが、父親役割・母親役割かと思います。
 子どもは、乳幼児期に主たる養育者である(多くの場合)母親に愛着を求めます。子どもが女の子であれば、続いて異性の親である父親からの愛情を求めます。この頃に、「仕事が忙しい」お父さんたちは、娘の求める愛情に十分に応えることができません。時には愛情希求行動を疎ましく思いぞんざいにあしらってしまったり、無視やはねつけなどをしてしまうケースが少なくありません。子どもにしてみれば、自然と愛情を求めて近づいて行った相手から、自身が求める対応をもらえないばかりか、反対の結果を体験してしまい、自らの欲求を抑圧し、「愛情を求めることはダメなこと」という認知が形成されてしまいます。父娘の葛藤は、かなり幼少期に始まっていると言えます。
 思春期になって、「お父さんが嫌い」と公言してはばからない女の子が沢山います。成育歴をお聴きすると、上記のような体験をされている方が少なくありません。父親も、娘を可愛く思っていないわけではありません。しかし、幼少期に形成されたアンビバレントな思考が固定化し、その溝が埋まらないまま時間だけが経過し、本来のそれぞれの思いとは逆のすれ違いが続いてしまいます。
 こうしたケースでは、第三者が子どもの気持ちをしっかりと聴くこと、そして父親の考えや人生観を聴くこと、そしてお母さんなど間に立って調整役となれる人が第三者と連携しながら、父・娘それぞれの思いや立場を尊重しながら、意識的にかつ気長に関係修復へ働きかけること、それらをコーディネートできる第三者(家族関係への心理教育を行えるカウンセラーなど)を持つこと、などが大切です。
 次回は「広汎性発達障害と対人関係能力」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

いじめ自殺緊急調査、文科省が全国の小中高で洗い出し

北海道、福岡県の児童・生徒がいじめを苦に自殺した問題を受け、文部科学省は16日、全国のすべての小中高校を対象に、自殺の原因となっている「いじめ」について、緊急調査に乗り出す方針を決めた。
 今週中にも各都道府県教委や私立、国立の学校に要請する。また、来年度には警察などと連携し、自殺の実態を探る全国調査を実施するほか、教員向けのマニュアルを整備するなど、子供の自殺を食い止めるための体制づくりを早急に進める。
 文科省では、これまでも年1回、全国の公立小中高校を対象に、いじめや自殺、不登校の数などを調べてきた。9月に公表した調査結果によると、昨年度の自殺の件数は105件で、ピークだった1979年(380件)と比較すると激減していた。ただ、原因別で見ると、いじめによる自殺の件数は99年度以降ゼロで、調査が実態を反映していないという指摘が出ていた。
(読売新聞)-10月17日3時5分更新
【コメント】いじめの実態を明らかにさせる取り組みは必用です。数を調べることに留まることなく、何が原因やきっかけで、どんなイジメがどんな構造でどんな範囲で行われ、どんな対応が行われ、結果どうなったか、その後の対応に生かす教訓は何かなど、いじめ事件から学ばなければならないことはたくさんあります。また、いじめにだけ焦点があたっていますが、不登校をはじめとして学校社会にはさまざまな問題が鬱積しています。いじめを一つの契機として、これらの多様な問題にも調査を深め、解決に向けて具体的対応法を見いだしてほしいと思います。いじめは「なくす」ことを考えるとその困難さから暗礁に乗り上げてしまいますが、「必ず対応できる」という姿勢でのぞむことで具体的な取り組みが進むと思います。

●2年生自殺の三輪中、いじめ7─8件を「0件」と報告
 福岡県筑前町立三輪中2年の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、合谷智校長は16日の記者会見で、同校ではこの数年間、7、8件のいじめが起きていたのに、担当教諭の指導などで解決したため、「いじめが続くことはない」と判断し、町教委に「0件」と報告していたことを明らかにした。
文科省は「いじめが起きていたのなら、解決したかどうかには関係なく、正確な件数を報告してほしかった」と指摘している。
 7、8件のいじめうち4、5件は、合谷校長が着任した2004年4月以降に起きていた。合谷校長は「統計上もきちんと報告を上げるべきで、私の判断が誤っていた。7、8件のいじめについては現在、再調査しており、内容が判明したら公表したい」と述べた。
(読売新聞)-10月16日22時13分更新

●福岡いじめ自殺 全校生徒の1割「経験ある」 校長が謝罪
 「いじめが原因です。さようなら」との遺書を残して福岡県筑前町の町立三輪中2年の男子生徒(13)が自殺した事件で、同校は16日、過去に別のいじめがありながら、町の教育委員会には報告していなかったことを明らかにした。また急きょ行ったアンケートで、全校生徒の1割がいじめの経験があると答えていることも発表。後手に回る学校の対応、自殺原因と教師の関係の説明も二転三転する中、文部科学省は調査に乗り出すことを決めた。
 16日午後の記者会見で合谷智校長は「(校長に就任した)04年4月以降、今回の事案とは無関係だが4〜5件のいじめがあった」と告白した。町教委にいじめの報告をしなかったが、「いずれも長期にわたらなかった」「自殺した男子生徒のいじめは分からなかった」などと釈明した。
 同校では男子生徒の自殺翌日から全生徒425人を対象に記名アンケートを実施。ここで生徒たちがいじめの実態を次々に告白しているという。
 男子生徒にいじめ発言を繰り返したとされる学年主任(47)については合谷校長は「父親は学年主任が長期的に(いじめ発言が)続いたと訴えているが、私は短期間に集中し、例えば1年生の1学期にあったと考えている」と、いじめ発言期間が限定的なものだったと強調。「いじめを否定しないが、誘因と考えている。裏付けられるデータが上がっていない」と語り、自殺の直接の引き金になったとの見方を否定した。その上で処遇に触れ「今は話を聞ける状態ではないので、今後の推移をみて判断したい」と述べた。
 これに先立ち三輪中は同日午前、緊急の全校集会を開いた。合谷校長は「本当に申し訳ない」と全生徒に謝罪。「先生たちが手を抜いてしまった。乱暴な言葉を使った。全力で君たちの信号をキャッチする」と話し、信頼回復に全力を尽くす考えを強調した。
 三輪中や町教委には数百件を超える電話やメールによる批判が殺到している。生徒の間では「先生が(いじめ発言をしたのが)原因なら、学校はきちんと調べるべきだ」「学校からいじめをなくしてほしい」などの声が上がっている。
◇「学校は自殺との因果関係なかなか認めない」
 98年に長女をいじめ自殺で亡くした小森美登里さん(49)=横浜市港南区=は、今回の事件に触れ「教育委員会や学校は謝罪していじめがあったことを認めても、自殺との因果関係はなかなか認めない」と話す。
 小森さんは現在、いじめのない優しい社会を目指すNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の理事で、講演活動などのために各地の学校に出向いている。
 一般論としながら「いじめなどの問題が多いと学校の管理職らの格下げなどの処分となり、保身のために事実を言いにくくなる」と指摘。また、学校現場の教師たちのしがらみが、「いじめの対応が遅れる一因となっている」と分析する。
 同NPOが03〜06年に、中学校23校8997人を対象に行ったアンケートでは、4人に1人がいじめられた経験を持つと回答した。小森さんは「子どもの実感と教師の目に違いがある」という。
 また、いじめの数を減らすために目標数値を設定する自治体もあり、「目標値内に収めようと(いじめを)隠す原因になる」と疑問を投げかける。「数が多いことを恐れず、国や自治体は一度、実態を把握して解決に動いてほしい」と訴える。小森さんによると、長女の死亡原因は「いじめ」とされていないと学校側に説明されたという。
 いじめを解決する方法の一つとして、「大人は子どもと一緒に、心と命の問題について考えていかないといけない。話を聞けば子どもは答えをしっかり教えてくれる」と話した。【吉永磨美】
 ◇教諭のいじめ関与、全国で
 「葬式ごっこ」や差別発言、暴力、体罰……。教諭が生徒へのいじめに関与した事例はこれまでも全国で起きている。
 86年2月に「このままじゃ『生きジゴク』になっちゃうよ」との遺書を残して自殺した東京都中野区立中野富士見中2年、鹿川裕史君(当時13歳)のケースでは、教諭4人が同級生とともに色紙に追悼の言葉を寄せ書きするなどの「葬式ごっこ」を行っていた。
 91年6月には福岡市の市立中学校でも、尿検査で再検診となった3年生の男子生徒に対し、担任の男性教諭が中心となって同級生に「追悼の言葉」を言わせるなどした。
 また、福岡市の市立小学校の男性教諭が、担任の4年生男児の曽祖父が米国人と知って、男児に「血が汚れている」などの差別発言や体罰などを繰り返し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症させたとして、男児と両親が、教諭と市を相手取って総額約5800万円の損害賠償を求めて提訴。福岡地裁が今年7月、体罰と差別的発言があったと認定し、市に220万円の支払いを命じた。しかし、PTSDは否定したため、男児側が控訴している。
 ほかにも、横浜市の市立中学校で05年、男性教諭が3年生の男子生徒の鼻にチョークを押し込もうとするなどの「いじめ」を繰り返し、頭を柱にぶつけて軽傷を負わせた。02年には東京都武蔵村山市の都立養護学校の高校2年の男子生徒が、授業中に担任の男性教諭からワインを唇に塗られたり、遺影と誤解するような黒縁立ての写真を贈られている。
(毎日新聞)-10月17日10時23分更新

●福岡、中2自殺 変わらぬ隠蔽体質 心の痛み共感できない学校
福岡県筑前町立三輪中学校の2年生の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、同校校長は16日、1年当時の担任による言葉のいじめを認め、全校集会が開かれた。文部科学省は過去のいじめ自殺で、いじめの定義を変更するなど、隠蔽(いんぺい)体質になりがちな学校の対応の変化をうながしてきたが、いじめが原因の自殺はこの7年間、統計上ゼロ。子供の心の痛みを共感できない学校や教師に関係者からは批判の声がでている。
《解明困難…「いじめ自殺7年連続ゼロ」》
 文科省は、いじめの定義について、(1)自分より弱いものに一方的に(2)身体的、心理的な攻撃を継続的に加え(3)相手が深刻な苦痛を感じている−としている。
 昭和61年、東京都中野区立中野富士見中2年、鹿川裕史君=当時(13)=が、担任教師まで加わった“葬式ごっこ”などのいじめを苦に自殺した事件を踏まえて定義されたものだ。
 さらに平成6年、愛知県の西尾市で市立東部中2年、大河内清輝君=同(13)=がいじめを苦に自殺。この事件後、同省はいじめの定義にあった「学校としていじめの事実関係を把握しているもの」の文言を削除。「遺書などで『いじめられた』と子供が訴えれば、具体的な事実関係を厳密に特定するまでもなく、いじめがあったと認定する」(同省)ことで、隠蔽されがちないじめに対する学校の対応の変化をうながした。
 文科省の統計では、小、中学、高校のいじめは年間約2万件以上。一方、児童生徒の自殺は年間100人以上で推移している。しかし、いじめを主たる理由とする児童生徒の自殺件数は、平成10年に千葉県成田市の中学2年生が自殺した事件を最後に17年までの7年連続ゼロだ。
 同省では「自殺の原因を学校で特定するのは、非常に困難だ。特にいじめの場合、教師の目を盗んで行われる場合もあり正直、遺書がなければいじめと特定することは困難」と話す。
 しかし、北海道滝川市のいじめ自殺では遺書にいじめの記述がありながら市教委と学校が「いじめがあったか確定できない」としていた。
 同省では、滝川市のケースで自殺の3週間前にも同クラスで修学旅行のグループ分けをめぐり3回にもわたって話し合いが行われたことについて、「自殺した生徒にすれば、教師も加わっていじめられたように感じるだろう。福岡の担任にも言えることだが、校長でもいい、教委には指導主事もいる。なぜ、『指導としておかしい』と担任を正さなかったのか」と学校運営の問題点を指摘。ある文科省の幹部は「こうした事件が起きる学校は必ずといっていいほど『担任任せ』もしくは『校長排除』の空気がある。情報の風通しが悪く、組織一丸となった対応に鈍い」と話す。
《校長、「いじめ」を「プレッシャー」と表現》
 福岡県筑前町立三輪中学校のいじめ自殺問題で、合谷(ごうや)智校長が16日朝の全校集会で、他の生徒によるいじめを「プレッシャー」と表現していたことが分かった。
 合谷校長は午後に町役場で開いた記者会見で「男子生徒に対するいじめがあった」との認識を改めて示した上、「子供たちの姿を見て、いじめという言葉が出てこなかった。わたしの弱さだ」と釈明した。
 全校集会は生徒の自殺を受け、午前8時半すぎから約30分間、報道機関に非公開で開いた。会見によると、合谷校長は生徒らを前に「君たちがプレッシャーを与えることはあった。そのことに対して『ごめんなさい』と謝る気持ちが大切です」と発言したという。
 不適切な発言でいじめたとされる元担任は、全校集会は体調不良を理由に欠席。合谷校長は学校側の非を認め、生徒たちに謝罪した上で、「これからは『先生、そんなこと言ったら傷つくよ』と話し、みんなで優しい人間になっていこう」と話したという。
 一方、合谷校長は「マスコミやインターネットで出ている学校と違うと知っているのは君たちとわたしたち。振り回されてはいけません」とも発言したという。会見では「ネットの書き込みに目を覆いたくなる内容があった」と述べ、「マスコミ」の問題を指摘した言葉は削除するとした。
 遺族が学校側の説明に納得していない点について、合谷校長は会見で「(原因究明への)情報収集で学校が遅れているなと思う。大変申し訳ない」と釈明。「経験したことのない事態で、今までの三輪中の組織力ではもう限界を超えている」と話した。
 一方、文科省は16日、福岡県教委に職員を派遣し、教諭の関与について調査に乗り出すことを決めた。
◇埼玉県教育委員の高橋史朗・明星大教授の話
 「最大の問題は、子供と心のキャッチボールができず、心の痛みを共感できない教師の存在だ。教師に求められるのは知識・技術の伝達だけで、『時代が要請する教師像とは何か』という視点が戦後教育からすっぽり抜け落ちていた。このため、子供を不用意に傷つける教師の言動が増えている。今、教育現場に問われているのは教師自身の人間力。望ましい教師像とは何かを改めて考え、教師の養成、採用、研修に努めるべきだ」
◇プロ教師の会を主宰する河上亮一・日本教育大学院大教授の話
 「学校社会には、教師が教え、生徒が学ぶというある種の上下関係が必要だが、この関係を誤解する教師がいる。自分が偉いと思い込み、生徒に横暴に接するのだ。今回の事件も教師の側に問題があったことは否めない。ただ、教師や学校を非難するだけでは根本的な問題解決にならない。どんな学校にもトラブルやいじめは存在する。その現実から目をそらさず、家庭や地域も積極的に学校運営に関与すべきだ」
(産経新聞)-10月17日8時1分更新
【コメント】いじめ自殺に限らず、学校で起こった事故によって死亡したり障害が残ったケースでも、学校は事実経過の調査に積極的に取り組まなかったり、事実を隠蔽して学校側の責任をあいまいにしようとし続けてきました。全国でこれらの問題をめぐって訴訟や人権救済の申し立てが行われていますが、学校や教委の隠蔽体質が明らかになるとともに、司法の側の不理解から遺族の「起こった出来事の事実経過を知りたい」「再発防止に具体的な方向性を」といった願いが通じることは希有です。

●校長“いじめ”で男性教諭自殺か
 千葉市立中学校で教務主任を務めた男性教諭(50)が先月自殺したことが17日までに明らかになった。同市の教育委員会が勤務校の男性校長(58)の度重なる叱責(しっせき)により自殺した可能性があるとみて関係者から事情を聴いている。この校長は9月中旬に市教委から事情を聴かれたが翌日から体調不良を理由に休職している。
 市教委などによると自殺した男性教諭は9月6日に千葉市内の道路にかかる陸橋から飛び降りて死亡した。遺書は見つかっていないが遺族が「真相を知りたい」と市教委に訴え、調査を開始。学校側は市教委から配布された文書に回答し、提出したという。
 校長の自殺した教諭への「行き過ぎ指導」は今年の夏休み前から始まったとされる。この教諭に対して校長が大声で罵詈雑言(ばりぞうごん)の集中砲火を浴びせ、責めている姿が学校関係者らにたびたび目撃されていたという。
 校長は昨年4月に、亡くなった教諭は今年4月に同校へ着任した。数学を担当し、サッカー部の顧問を務めた。生徒の話では「まじめなタイプ。優しかった」。校長については「朝礼はいつも予定を毎回オーバーしたし…いつ終わるんだよって感じ」という声があがるなど「説教好き」として煙たがられている面もあったようだ。
 この件を知った生徒たちは動揺を隠せず、教室内でもさまざまな憶測が飛んでいる。放課後もマスコミが生徒に近づかないよう職員が周囲を巡回する“厳戒態勢”を取って対応した。取材に応じた同校の教頭は「(市教委の)調査結果を待つだけ。(校長がこの教諭を叱責する場面は)見たことがない」と説明している。
(スポーツ報知)-10月18日8時4分更新

●大阪教職員殺傷 少年に懲役12年 家裁移送退ける
 大阪府寝屋川市立中央小学校の教職員殺傷事件で、殺人などの罪に問われた卒業生の少年(18)に対し、大阪地裁は19日、懲役12年(求刑・無期懲役)の判決を言い渡した。横田信之裁判長は少年の広汎性発達障害が犯行に与えた影響を認めたが、「その影響は過大視できない。結果の重大性などに照らして極めて悪質な事案で、もはや保護処分の域を超えている」と判断し、刑事処分を選択した。
 一方で、横田裁判長は再犯防止などのために障害を踏まえた処遇の必要性に言及、「少年刑務所での適切な処遇を強く希望する」と付け加えた。
 公判では、発達障害を考慮して矯正教育をする少年院送致が適当か、事件の重大性からあくまでも厳罰で臨むかが最大の争点だった。横田裁判長はまず、発達障害について「障害の特徴である強迫的な固執性もあって、少年は本件犯行に及んだとみられる」などと認定した。
 しかし、「少年は規範意識もある程度働いており、犯行を思いとどまることは不可能ではなかった。一般に障害そのものは犯罪と結びつくわけでもない」と指摘。さらに「障害の確立された治療法はなく、18歳という年齢から、少年院での処遇可能期間に治療効果が浸透するか問題だ」などとして、弁護側が主張する保護処分(少年院送致)に疑問を呈した。
 また、「人を刺すことは当然、殺す可能性を含んでいる」と、弁護側は否定した殺意を認定。犯行当時の精神状態についても「著しく減退していなかった」と完全責任能力を認めた。
 ただ、検察側は犯行時18歳未満の最高刑となる無期懲役を求刑したが、障害による影響などを考慮して「無期に処することはできない」とした。
 少年犯罪を厳罰化した01年4月施行の改正少年法は、故意の行為で人を死亡させた16歳以上の少年について、原則的に成人と同様の刑事裁判を受けさせる検察官送致(逆送)と規定している。大阪家裁は昨年8月、この原則に沿って少年を逆送し、大阪地検が起訴した。少年は捜査・公判段階の2度の精神鑑定で広汎性発達障害と診断された。
 弁護側は「発達障害の克服なしに真の更生は出来ず、少年院送致が相当」と少年法55条に基づく家裁移送の決定を強く主張。改正少年法施行後、殺人罪で初の家裁移送の決定が出るか注目されていた。
◆認定事実 中央小学校在学中、同級生からいじめられていると感じ、担任教諭に否定的な感情を持っていた少年は、引きこもり生活の中で加害空想を抱くようになり、担任教諭らを刺そうと計画。17歳だった昨年2月14日午後3時ごろ、同小に包丁を持って侵入、担任が不在だったため、鴨崎満明教諭(当時52歳)を刺殺、女性教職員2人の腹部や背中を刺して重傷を負わせた=殺人、殺人未遂、建造物侵入、銃刀法違反の罪。
【広汎性発達障害】 自閉症、アスペルガー症候群などの自閉性障害の総称。先天的な脳機能障害とされ、他人の意図を読めずうまくコミュニケーションできない▽想像力に障害があり、情緒的理解や抽象的思考が苦手▽自分の興味、関心に執着する−−といった特徴がある。雰囲気を察知したり、相手の表情から内心を読み取ることが難しく、社会適応に訓練が必要とされる。その半面、集中力や記憶力で優れた能力を発揮するケースもある。
(毎日新聞)-10月19日17時13分更新
【コメント】この判決から、1.広汎性発達障害について司法がまるで学び理解しようとしていない現実、2.今の日本社会が広汎性発達障害に対して抱いている意識や理解のレベルを司法判断が見事に現していること、が読み取れます。発達障害があるから罪が許される、ということはありません。起こした犯罪行為に対して罪は償うべきであることはいうまでもありません。犯罪行為を犯罪として理解・認知できない状態にある被告には、懲罰的な処遇だけではなく、起こした罪をしっかりと認知し自身の罪と向き合える能力を養うための医療・療育的な環境を与えることが不可欠だと思います。また、多くの方が指摘されていますが、この少年の成育歴や、学校に対して恨みを抱くようになった経緯についてまったく触れられていないことは、判決として極めて不備なものであると思います。広汎性発達障害と犯罪については、今後も起こりうるものですから、障害特性の理解の上に立って司法判断が行われて行くようになることを願います。

●<自殺統計>分類に「いじめ」「多重債務」など追加 警察庁
 警察庁は19日、8年連続で年間3万人を超える自殺対策に役立てるため、同庁の自殺統計の原因・動機の分類方法を見直し、「いじめ」「負債(多重債務)」「介護・看病疲れ」など社会問題化している項目を新たに加えることを決めた。来年1月以降は新しい分類で集計し、データは08年以降に関係省庁や研究機関の要望に応じて速やかに公表する。
 今年6月に国と自治体に自殺に関する情報の収集、分析などを義務付けた自殺対策基本法が成立したことを受け、同庁が見直しを進めていた。
 同庁は全国警察で把握した自殺者のデータを「自殺の概要資料」として毎年とりまとめ、公表している。原因・動機は「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」など大きく8項目に分類。さらに家庭問題を「親との不和」や「子との不和」に分けるなど全体で54項目に細分化し、検視を担当した警察官がこのうち一つを選んでいた。
 今回の見直しでは分類項目に新たに「いじめ」「介護・看病疲れ」「子育ての悩み」「被虐待」などを加えるほか、これまで「負債」としてきたものをさらに「多重債務」「連帯保証債務」「その他」の三つに分ける。また、該当するケースの少ない「思想」や「あてこすり」を廃止し、全体で53項目とした。自殺の動機は多岐にわたることが多いことから警察官が三つまで選んで記録する。さらに、これまでまとめていなかった自殺サイトへの書き込みの有無も集計。自殺の手段の分類にも「練炭等」「排ガス」の項目を加えた。
▽自殺対策に詳しい本橋豊・秋田大医学部教授(公衆衛生学)の話 原因の分析は自殺対策には欠かせない。自殺の動機は一つに限定できないことが多く、原因を一つに絞り込む方法には問題があった。新分類は社会的な問題が新たに盛り込まれており、自殺対策により役立つ中身になったと評価している。
(毎日新聞)-10月19日11時0分更新

●いじめ 摘発165件 力が弱い/無抵抗/いい子ぶる/動作鈍い
 昨年1年間に全国の警察が摘発、補導した、いじめに絡む小中高校生による暴行などの事件は3年連続で増加し、過去10年で2番目に多い165件(前年比4件増)に上ることが20日、警察庁のまとめで分かった。
 同庁によると、いじめる側が起こした暴行などの事件は155件で、いじめの仕返しによる事件は10件だった。
 摘発、補導された人数は前年より10人多い326人。うち中学生が240人と7割以上を占め、高校生は63人、小学生が23人だった。
 いじめた理由(複数回答)は「力が弱い、無抵抗だから」が全体の27・3%で最も多く、次いで「いい子ぶる、生意気」が27・0%、「よくうそをつく」が11・7%、「態度、動作が鈍い」が11・3%。
 被害者203人のうち6割以上が「誰かに相談した」と回答。相談相手(複数回答)は保護者が41・9%で最多。教師の31・5%、警察などの相談機関13・8%、友人の3・0%と続いた。
 小中高生のいじめに絡む事件の摘発、補導は平成8年からの10年間でみると12年の170件がピーク。14年は94件だったが、翌年以降は増え続けている。
 教育現場に警察が介入する「いじめ絡み事件」の増加について、教育関係者の多くは「学校が子供の暴力行為に自力で対処しきれなくなっている現状の表れ」と指摘する。
 文部科学省の統計によると、いじめの発生件数自体は近年、少子化による児童生徒数の減少とともに、減少傾向にある。一方で、校内暴力の発生件数(文科省調べ)は増加しており、暴力的ないじめに特化している傾向を裏付ける。同省は「キレやすい子供」を脳の機能不全ととらえた科学的な研究も進めている。
 子供から電話相談を受けるNPO法人「チャイルドライン支援センター」の徳丸のり子理事は「今の子供は人間関係で衝突したり摩擦を起こしたりする経験が少ないから、たまにそうなると凶暴化してしまう」と指摘。「いじめられっ子のサインに先生や親が早く気付き、適切に処置すれば、解決できるはず。大人の力が弱まっている」とも話す。
 不登校生徒のメンタルケアにあたっているNPO法人「不登校情報センター」の藤原宏美理事は「不登校になる子の8割ほどはいじめが原因。教師や家庭から子供を助ける意識が薄れてきている」と分析している。
 「日本子どもを守る会」名誉会長の大田尭・東大名誉教授(教育哲学)は「人間関係が疎遠な時代、大人の人間関係作りが下手になったことが子供にも影響している」と話している。
《首相、教育再生会議で議論》
 安倍晋三首相は20日、いじめによる子供の自殺などが社会問題化していることについて、「教室、学校におけるいじめの問題は、昔からあったのも事実だが、最近極めて深刻化している。教育再生会議でもこの問題をどうすれば解決できるか議論していきたい」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。
(産経新聞)-10月21日8時2分更新

●対人能力障害、ケア充実を 京の団体 アスペルガー援助者 養成講座 
 知的に問題はないが、対人能力に障害のあるアスペルガー症候群の人へのチームケア充実を目指す「アスペルガー援助者養成講座」が11月4−25日の毎週土曜午後6時半から、京都市中京区丸太町通七本松西入ルの京都アスニーで開かれる。
 思春期から成人期にかけての援助をテーマに、医療や教育、生活の現場で支援に携わる専門家が適切な理解と支援について講演する。
 「京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル」(右京区、田井みゆき代表)が催す。定員200人で、家庭や学校、職場など当事者にかかわる幅広い人の参加を呼び掛けている。
 講師は▽4日 田井代表▽11日 十一元三さん(京都大医学部教授)▽18日 小谷裕実さん(京都教育大教授)▽25日 定本ゆきこさん(精神科医師)。参加費は4回で1万円。はがきかファクス、電子メールで先着順に受け付ける。問い合わせはノンラベルTEL、ファクス075(312)3338。
(京都新聞)-10月19日8時49分更新
【コメント】参加を希望される方は、お早めにお申し込みを!

●自殺防止:県が連絡会議設置 来年7月までに行動計画 /石川
 石川県は20日、自殺防止のための関係者の連絡会議(会長・山岸勇副知事)の初会合を県庁で開いた。自殺対策基本法が12月までに施行され、対策が県の責務とされているのを受けた取り組み。来年7月までに行動計画を作り、実施する。
 メンバーは、医療、労働、教育、宗教など各分野のリーダーと、県、県警の担当者ら30人。会議では県警の担当者が県内自殺者数の推移を説明した。
 1990年代、年間ほぼ200人前後だったが、山一証券など金融機関の破たんが相次いだ98年に300人を突破。その後300人前後で続いている。最も多かったのは03年の332人。
 性別では、男性は90年代前半、120〜130人台だったが、96年から急増し、98年に200人を突破。その後も200人を上回る状況が続く。一方で女性は60〜100人前後で、男性ほどの変化はない。年代別では96年以降、50歳代が急増。
 職業では無職が多い。原因別でみると、病苦は増減を繰り返しながらも減少傾向であるのに対し、経済生活問題が98年以降急増。03、04年には病苦を抜いて原因のトップになっている。
 委員らは自殺防止に向けた取り組みを説明。30年来、電話相談を行っている「金沢こころの電話」会長の山内ミハルさんは「先日当番だった日は3時間で2件、自殺に関する電話があった。うち1件は大学生。『つらいことがあって昨日、首を切った。自分は生きる価値がない』というものだった」などと相談の具体例を報告した。
 今後、連絡会議の内部に、「児童・生徒」「勤労者」「高齢者」の3部会を置き、それぞれ対策を練って、行動計画につなげる。
10月21日朝刊
(毎日新聞)-10月21日16時2分更新


[2006.10.15]

【この頃思うこと】青年・成人期のアスペルガー障害への支援を考える
 「アスペルガー障害」、「アスペルガー症候群」と聞いて、イメージできる人は、今の日本でどれくらいいらっしゃるのでしょうか。文部科学省が発表した教育上「特別な支援」を要する生徒は6.3%という数字や、最近のマスコミによる事件報道などでの「広汎性発達障害」の鑑定など、少しずつ認知は広がってきているように思います。しかし、広汎性発達障害=凶悪事件というステレオタイプが広まってしまったのも悲しい事実です。ここで押さえておいてほしいのは、凶悪な事件を起こした「犯人」が広汎性発達障害であったとわかるのは、事件発生後の精神鑑定においてがほとんどであることです。つまり、広汎性発達障害があることに回りの誰もが気づけないままに成長し、障害特性である「限局的な興味・関心」(=こだわり)から、違法行為をおこしてしまったり、他害的な事件の場合に常識では考えられないような陰惨な犯罪行為になってしまうことがあるということです。早期に発見され、療育を受けて成長した広汎性発達障害を有する人の起こす違法行為の発生率は定型発達の人に比べてはるかに低いと言われています。
 平成19年度から学校現場において「特別支援教育」が導入されますし、行政によっては発達障害などの早期発見に向けての乳幼児期のスクリーニングに独自の施策を打ち出している所も増えてきています。では、すでに中学を卒業し、あるいは児童相談所の対象年齢である18歳を越えた人で、広汎性発達障害が見過ごされてしまっている場合はどうでしょうか。発達障害者支援センターが全国都道府県及び政令市のほとんどで設置されてきていますが、小・中学生年齢まで、青年期以降は見られない、というところがほとんどのようです。青年期以降の発達障害の診断ができる精神科医なども極めて少ないのが現実ですし、診断が降りたとしても、その後の本人や家族へのケアを行う社会資源となると、ほとんどないのが現状です。
 私が副代表をしている京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベルのアスペルガー障害支援部門である「アスペルガー障害 思春期・青年期・成人期 アスペ・ノンラベル」は、全国でも数少ない、広汎性発達障害の方とそのご家族への支援を行っている民間団体です。こうした、広汎性発達障害の特性や関わり方を学び、具体的・個別的に援助計画を立てて支援を行う団体や公的機関が増えることが火急に求められています。
 アスペ・ノンラベルのサイトを一度のぞいて見て下さい。
http://www13.ocn.ne.jp/~nonlabel/
 また、ノンラベルが編集した『どう関わる?思春期・青年期のアスペルガー障害』(かもがわ出版)をぜひお読みいただきたいと思います。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4876999902/ref=sr_11_1/503-4339259-5803153?ie=UTF8
 次回は「父と娘のすれ違い」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

<福岡いじめ自殺>生徒、当日5回も「死にたい」と話す

福岡県筑前町の町立三輪中2年の男子生徒(13)がいじめを苦に自殺した問題で、同中の合谷(ごうや)智校長らが14日記者会見し、生徒が自殺した11日に授業時間中や昼休みなどに計5回、「死にたい」と話していたことを明らかにした。さらに、下校直前に生徒7人にトイレで「(死にたいのは)うそだろう。下腹部を見せろ」とズボンを下ろされそうになっていたことを認めた。合谷校長は「トイレでのいじめが自殺の要因の一つになった可能性もある」と話した。学校側はこの事実を13日までに確認していたが、「聞かれなかったから」として公表していなかった。
 合谷校長によると、男子生徒は11日は1、3、5時限の授業中に周囲の生徒に聞こえるように「死にたい」と漏らしていた。発言の内容が分からず私語だとして「集中しなさい」と注意した教諭もいた。また昼休みにも「死にたい」と話していた。
 6時限目の美術の時間には、スケッチブックを忘れてきたため、クラスの生徒から借りた。それに「遺言 お金はすべて学校に寄付します。いじめが原因です」などと書いた。貸した生徒は冗談と思っていたという。遺書は学校のスケッチブックの他にも、プリントの裏などに書かれ、計4通あった。
 6時限目終了後にトイレで7人の男子生徒に囲まれた時も「死にたい」と漏らすと「うそだろう。下腹部を見せろ」と言われ、ズボンを腰のあたりまで下ろされそうになったという。男子生徒はその後家に帰り、自宅の倉庫で首をつって自殺した。合谷校長は「徐々に気持ちが高まっていったのかもしれない」と話し、トイレの事件が自殺の引き金になった可能性に言及した。
(毎日新聞)-10月15日2時47分更新

●いじめ自殺:中2男子が自宅で首つり、遺書残し(福岡)
 福岡県筑前町立三輪中学校2年生の男子生徒(13)が、自宅で首つり自殺していたことが、分かった。近くに「いじめで耐えられません」などと書かれた遺書があり、町教育委員会や県警朝倉署が背景について調べを始めた。
 町教委や同署などの調べでは、11日午後、男子生徒が、同町の自宅の物置内で首をつって死んでいるのを、祖父が見つけた。遺書は学校で配布されたプリント紙の裏側やスケッチブックなど計3枚で、1枚は上着のポケットの中に、もう1枚は遺体の足元にあり、スケッチブックは学校の美術室に置いてあった。
 「お父さん、お母さん、こんなだめ息子でごめん」などと走り書きされていた。先日引退表明した競走馬ディープインパクトのファンで、「生まれかわったらディープインパクトの子供で最強になりたい」とも書かれていた。
 複数の関係者によると、生徒は自殺した当日、学校の友人に「おれは今日死ぬ」と自殺をほのめかしていたという。
 生徒は今年9月からバレー部主将を務め、学校を欠席することもなく、明るくあいさつする活発な子で、成績も悪くなかったという。
 三輪中は12日に全校集会を開き、生徒の自殺を報告。12、13日には、全生徒を対象に「何か心当たりはないか」と問いかけるアンケートを実施した。臨床心理士4人を招いて、生徒全員の面談も始めている。13日からの中間試験も延期した。
 自殺した生徒の父親(40)は13日夜、自宅前で報道陣の質問に答え、「以前も別の生徒がいじめられてけがをしたことがあった。学校は二度と起きないように対応すると約束したのに、またいじめが起こった。息子がなぜこんなことになったのか究明してほしい」と話した。祖父は「弟たちに風呂の準備をしてあげるような優しい子だった。まだ13歳ですよ……」と声を詰まらせた。
 三輪中の合谷智校長と中原敏隆町教育長が13日夜、同校で会見した。合谷校長は「サインが出ていたのかもしれないが、気が付かなかった。教師、生徒、保護者の距離を詰めるよう努力してきたが、できていなかった」と話した。
 中原教育長は「13歳という若い命を失ったことは残念。いじめがあったという認識に立ち、自殺の原因を解明したい」と語った。
 ■生徒の遺書の主な内容■
 「遺言 お金はすべて学校に寄付します。うざい奴等はとりつきます。さよなら」
 「いじめが原因です。いたって本気です。さようなら」
 「seeyouagein? 人生のフィナーレがきました さようなら さようなら さよ〜なら〜」
 「生まれかわったら ディープインパクトの子供で最強になりたいと思います」
 「お母さん お父さん こんなだめ息子でごめん 今までありがとう。いじめられてもういきていけない」
毎日新聞 2006年10月14日 3時00分 (最終更新時間 10月14日 6時19分)
【コメント】
北海道でのいじめ自殺事件報道が一段落したかと思った矢先の福岡での同様の事件です。今回も学校による不適切な対応、事実隠しが明らかになっています。文部行政は、数多くの子どもたちの屍を前に、なぜ何も学ぼうとしないのか、再発防止への真摯な取り組みを行わないのか、不思議でなりません。

●中1、いじめで抑鬱状態 奈良・橿原の中学 携帯メールに「死ね」
 奈良県橿原市の市立中学1年の男子生徒(13)が、複数の同級生から「死ね」などと書かれたメールを携帯電話に送られるなどのいじめに遭い、抑鬱(よくうつ)状態になったとして両親が「傷害を受けた」と橿原署に被害届を提出、同署が捜査を始めたことが8日、分かった。生徒は9月末から不登校になっているという。
 市教委などによると、この生徒は4月下旬、口論がもとで同級生から石を投げられたのをきっかけに「汚い」「臭い」などと言われ、9月初めには「学校に来るな」と言われた。同月26、27日は生徒の携帯電話に「死ね」などと中傷する12件のメールが届き、翌28日から不登校となった。
 生徒が医師から「抑鬱状態」と診断されたこともあり、両親は今月初めに被害届を提出。同署は学校関係者から事情を聴くなど慎重に調べを進めている。
 いじめが始まった直後から、生徒や保護者は学校に相談。学校側はいじめた同級生らを交えて話し合ったり、いじめた同級生に作文を書かせるなどしたが、市教委にはいじめの事実を報告しなかったという。
 校長は「学校内で対応し、一定の解決をしたと判断したので市教委に報告しなかった。生徒が早く学校に復帰できるよう努力したい」と説明。一方、市教委は「早い段階で連絡があれば、いろんな対応の仕方があったかもしれない」としている。
(産経新聞)-10月9日8時0分更新

●いじめで中1男子が「抑うつ」、傷害で捜査…奈良県
 奈良県橿原市立中学1年の男子生徒(13)が、入学直後から約5か月間、携帯メールで中傷されるなど陰湿ないじめに遭い、抑うつ状態になったとして、両親の被害届を受けた橿原署が傷害容疑で捜査していることがわかった。
 学校側は5月にいじめを把握しながら、有効な対策を取れず、市教委にも報告していなかった。生徒は9月下旬から不登校になっている。
 学校などによると、生徒は5月ごろから連日クラスの半数以上にあたる十数人から「気持ち悪い」「臭い」などと言われ、石を投げられたこともあった。9月上旬には、携帯電話に週3回程度、「嫌われ者」「最低」などの中傷メールが届くようになった。このころ、生徒は同級生に「不登校になれ」「死ね」という言葉を浴びせられ、学校を飛び出した。生徒は「近くの池で死のうとしたが、家族のことを思い出してやめた」と話しているという。
(読売新聞)-10月8日6時12分更新

●「なれ合い型」学級崩壊が急増 「反抗型」影潜め 一見和やか 先生は友達…
 子供の教師への反発が広がって学級運営が立ち行かなくなる「反抗型」の学級崩壊が影を潜める一方で、友達感覚の優しい先生とのなれ合いの末に秩序が崩れる「なれ合い型」の学級崩壊が都市部の小中学校を中心に急増していることが、都留文科大学の河村茂雄教授(心理学)の調査研究で分かった。こうしたケースは、表面上は和やかな雰囲気の教室に崩壊の兆候が潜むだけに、教師の落胆も大きく、立て直しのための処方箋(せん)も見つけにくいという。
 河村教授は集団心理研究の立場から学級崩壊の兆候を探る「学級集団アセスメント(QU)」と呼ばれる手法を提唱。依頼を受けた全国延べ約5万学級の全児童生徒を対象に心理テストを実施し、学級崩壊の予防策についてアドバイスを続けている。
 河村教授によると、学級崩壊は平均で10校に1校の割合で起きており、そのプロセスは(1)管理重視で指導好きの教師に一部の子供が反発、それが広がっていく「反抗型」(2)優しい教師による友達感覚の学級運営が瓦解を招く「なれ合い型」−の2つに大別できるという。
 学級崩壊の広がりが問題化した平成9年当時は、「反抗型」が主流だったが、最近は地方の学校で散見されるだけ。16年の大規模調査では、なれ合い型のケースが特に小学校で急増。首都圏の小学校で崩壊した学級の60〜70%がなれ合い型だったほか、地方でも、県庁所在地や人口密度が高い新興ベッドタウンなどの学校で増えているという。
 教授によると、なれ合い型の学級崩壊は、こんなプロセスをたどる−。
 年度当初、保護者は「自分の子供は受けいれられている」と感じ、教師との信頼関係が築かれる。だが、内実は先生と個々の子供の関係ばかりが大切にされ、集団としてのまとまりに欠けている。教師は友達口調で子供に接し、子供に善悪を理解させず、曖昧(あいまい)な態度を取ることが多い。
 学級のルールが守れなくても「今日は仕方がない」などと特例を設けたり、私語を許すなどルール作りがおろそかになり、子供側には「ルールは先生の気分次第」という空気が生まれる。やがて教室内には、教師の気を引く言動が無秩序に生まれ、「あの子がほめられて面白くない」「先生は私と仲良くしてくれない」などの不満が噴出。告げ口が横行し、学級の統制が取れなくなる。
 河村教授は「反抗型はかつて中学校で問題となった『荒れる学校』に近いパターン。問題を抱えた子供をしっかりマークして指導方針を変えるなど処方箋が比較的打ち出しやすいが、なれ合い型の崩壊は学級のどこから崩れるかわかりにくい問題がある」と指摘。
 「最近の学校は個性重視が説かれ、個に寄り添える教師が増えた。その半面で教師も子供も集団形成や統制が苦手で、学級は集団というより群衆に近い状態になっている」と語っている。
【なれ合い型の学級崩壊の兆候】
(崩壊初期)
◎学級全体の取り組みが遅れ、やる気が低下する
◎教師の気を引く悪ふざけが散見する
◎ルール違反しても教師に個人的に許してほしいとねだる
◎私語が増え、教師の話に口をはさむ
◎2〜3人が固まりヒソヒソ話が目立つ
◎他の子供やグループのことを教師に言いつける
(崩壊中期)
◎注意すると「私だけ怒られた」と反発する
◎教師の指示が行き渡らなくなる
◎係活動が半分以上なされない
◎陰口が増え、授業中の私語、手紙の回し合いが目立つ
◎子供同士のけんかが目立つ
(崩壊期)
◎教師を無視し、勝手な行動で授業が成り立たない
◎教師に反抗するときだけ団結する
◎係活動を怠り、ゴミが散乱、いたずら書きが目立つ
◎掲示物などが壊される
◎給食は力の強い順番になり、勝手に食べる
【用語解説】学級崩壊
 一般に子供が授業中に教師の指示に従わず立ち歩いたり、教室を抜け出すなどの行為を繰り返すことで授業が成立しない状況を指す。全国校長会が全国547の小学校を抽出調査(平成9〜11年度)したところ「そのような学級がある」は84校、「どちらともいえない(学級がある)」が36校あった。一部の都道府県教委が実態を公表した例はあるが、正確な実態はよくわかっておらず、文部科学省はこれまで全国調査などを行っていない。
(産経新聞)-10月13日8時0分更新
【コメント】学級崩壊が起こった場合、教育委員会や学校管理者は「指導力不足」教員として教師個人に責任転嫁をはかることが横行しています。学級崩壊という現象を社会学的にとらえてそのメカニズムを把握すること、教師や生徒の個の問題とせず学級や学校全体の組織的な課題と位置づけて早期の適切な対応をはかること、学校と家庭が現実課題について共通認識を持ち解消に向けた取り組みが行える環境を整えること、子どもたちを「管理」の対象としてではなく問題解決に向けて学校教育の主体として位置づけることなど、なすべきことを見定めて取り組んでいってほしいものです。

●県立療育福祉センター:発達障害者支援拠点、新施設スタート/高知
◇勉強の場や保護者の交流も
 県立療育福祉センター(高知市若草町)内で、「発達障害者支援センター」の新施設が完成し、本格的に業務をスタートさせた。自閉症や注意欠陥他動性障害などの発達障害者への支援拠点として期待され、5日には関係者約30人が集まり、見学会が開かれた。【服部陽】
 昨年4月の発達障害者支援法施行に伴い、県も支援センターを暫定的に整備。空き部屋を利用していたが、手狭だったことから改装していた。
 新施設は約570平方メートル。見学会では、すべり台やボールが置かれた「プレイルーム」、子どもが手先を使った作業をする机などが披露され、出席者はスタッフの説明を受けていた。
 一般的に発達障害者は人口の数%を占めるとされ、4月からの支援センターで受けた相談件数は計145件にのぼった。支援センターでは相談を受けた後に診断し、それぞれの障害に分けて専門的な支援に取り組む。また、就学前の自閉症の子ども向けには通園部門を設置。9月末時点で44人が契約し、月数回、利用している。
 出席した高知発達障害等親の会「KOSEI」代表の谷内つぼみさん(51)は「発達障害児は勉強する場が少ないので助かる。家に閉じこもりがちな保護者同士が交流できるのもうれしい」と話していた。同支援センター(088・844・1247)の電話相談は平日午前9時〜午後5時。
(毎日新聞)-10月6日16時1分更新

●持続的抑うつ状態、「父親から逃亡」=長男、発達障害と診断−奈良医師宅放火
 奈良県田原本町の医師(47)宅が全焼し母子3人が死亡した事件で、殺人や現住建造物等放火などの非行事実で奈良家裁に送致された長男(16)の精神鑑定書が13日、家裁に提出された。関係者によると、長男について広汎(こうはん)性発達障害と診断。幼少期からの父親の暴力により持続的抑うつ状態だったとした。事件当時は父親からの逃亡に病的に注意が集中している状態だったと指摘した。 
(時事通信)-10月13日20時1分更新

●引きこもりの青少年に居場所を 宇治の教会で「フリースペース」
「家を一歩出て、会話を交わす。気持ちのやりとりが始まれば」と、呼びかけのビラを用意する倉橋さん(城陽市寺田の自宅)  不登校や引きこもりとなった青少年の居場所「フリースペースおやすみ」が、宇治市内の教会でこのほど始まった。開いているのは、長男の不登校で悩んだ経験がある牧師。「悩む親子が集い、ほっとできる場に」と話している。
 「西小倉めぐみ教会」(京都府宇治市小倉町西浦)の牧師倉橋剛さん(56)=城陽市寺田。平日は「研修センター」として市民が利用している教会の礼拝堂で、9月4日から毎週月曜の午後2時から5時まで、フリースペースを始めた。
 倉橋さんは1999年、当時牧師だった岡山県倉敷市の教会でフリースペースを開設。6年間、不登校となった子どもたちの成長を見つめてきた。昨年4月に宇治市の教会に赴任したのを機に、地元で新たな居場所をつくることにした。
 フリースペースでは決まった活動はない。パソコン、卓球台、ピアノなどがあり、本を読んでも、昼寝をしてもいい。さまざまな理由で学校に行けなくなった子ども、進路を見失って引きこもる若者が家を一歩出て、会話を交わし、将来へのきっかけを探す。
 活動に「成果」を求めないのは、倉橋さん自身が、長男が中学1年で不登校になり、今もわが子と向き合っているためだ。「解決の特効薬はないのに、親は焦る。私もそう」と、孤立しがちな保護者にとってもほっとできる場を目指す。
 始めて1カ月余り。教会の周辺にビラを配っただけだが、すでに2人の青年が訪れている。16日もスペースを開く。「活動はこれから。焦らずゆっくりやっていきたい」。問い合わせは倉橋さんTEL0774(26)3661。
(京都新聞)-10月13日11時29分更新

●トゥレット症候群、5人に1人不登校=周囲の無理解に悩む−支援団体初調査
 発声や動作を自分でコントロールできない「トゥレット症候群」の子供の5人に1人が不登校を経験していることが、支援団体による初のアンケートで分かった。症状のつらさや嘲笑(ちょうしょう)が主な理由で、周囲の無理解に悩む当事者の姿が浮き彫りになった。
 トゥレット症候群は、まばたき、顔しかめなどの「運動チック」と、せき払い、叫び声などの「音声チック」が1年以上続く神経の病気。1000人に1人程度の割合で発症するとされる。 
(時事通信)-10月14日6時3分更新

●職員採用試験 「筆記できない」理由に 別府市 障害者受験断る
 別府市がことし7月に実施した身体障害者枠の市職員採用試験(上級職)で、「筆記ができない」ことを理由に手足に障害のある市内の大学4年生男性の受験を断っていたことが14日、分かった。市職員課は「筆記ができないと業務や職場の配置に影響が出る。そのための特別枠をつくる予定もない」と話している。
 同課によると、採用試験は1次でマークシート形式の「教養」と、小論文形式の「作文」、2次と3次でマークシート形式の事務適性検査や面接などを実施。市は受験案内に「自力による通勤ができ、かつ介助なしに職務の遂行が可能な者」との条件を示していたが、筆記能力の有無については明記していなかった。
 男性は6月中旬、受験の申し込みに同課を訪れ、パソコンを使った受験を要望したが、同課は「特例は認めていない」として拒否したという。
2006/10/15付 西日本新聞朝刊

●生活保護最多1万7105世帯昨年度21年ぶり被保護者8年連続増
不正受給も倍増7400万円
 2005年度の県内の生活保護世帯数(月平均)は、前年度比4・9%増の1万7105世帯で、1951年度の統計開始以来の最多記録を21年ぶりに更新したことが県のまとめでわかった。被保護者数も8年連続で増え、同4・4%増の2万3241人だった。県内経済の低迷や人口の高齢化などが背景にあるようだ。
 県健康福祉政策課によると、保護世帯数のこれまでの最多記録は84年度の1万6365世帯。80年代後半〜90年代前半は減少傾向で、95年度に1万1237世帯まで減ったが、最近10年は一貫して増えていた。
 人口1000人あたりの被保護者数(保護率)を見ると、05年度の青森県は16・2人(前年度比0・8人増)。全国平均の11・6人を大きく上回っている。
 県内の市町村ごとの保護率では、大間町の38・1人が最も多く、佐井村の28・1人、風間浦村の25・5人が続いた。市部で最も多かったのは、青森市の21・9人だった。
 05年度の県内の保護世帯の類型別内訳は、「高齢者世帯」が7930世帯でトップ。次いで、「障害者・傷病者世帯」が6869世帯、「母子世帯」が1077世帯など。全体に占める高齢者世帯の割合は46・4%で、全国平均より3ポイント高い。県内の高齢化率がもともと高いことが関連しているようだ。
 保護世帯数の増加とともに、収入を偽って申請するなどの不正受給の件数も増えている。県内では05年度、前年度の1・8倍にあたる99件が確認された。不正受給総額も04年度の約3784万円から、05年度は約7461万円と倍増。有効求人倍率が全国最低にとどまるなど、県内の雇用環境の厳しさが、保護世帯の増加、不正受給の増加のいずれにも影響しているとみられる。
 生活保護を巡る県内の状況について、青森大の末永洋一教授(地域経済論)は、「経済が低迷しており、働く場所もない。特に、中高年層の雇用環境は厳しい。また、十分な年金を受けていない高齢者も多いことなどが要因ではないか」と話している。
(2006年10月15日読売新聞)


[2006.10.7]

【この頃思うこと】ひきこもり当事者とインターネット
 ひきこもりの状態にある青年たちはみんなインターネットに浸かっている、という印象があるようです。しかし、実態は、パソコンに向かいインターネットを長時間しているひきこもり状態の青年たちは意外と少ないようです。パソコンという器機への興味の有無も大きく影響します。ネットはネット社会という「外界」とのコンタクトを意味します。そういう段階にある人がネットからの情報を得たり、また自らチャットや掲示板に書き込んで自らの状態を発信しつつ自身への問いかけをしているものと思われます。
 では、パソコンをしないひきこもり状態にある人はどうか。部屋の中、家の中でできる様々なことをされています。金魚や熱帯魚を飼育する人、ペットと語り合う人、受験勉強を続ける人、テレビを見続ける人、料理などの家事を手伝う人、等々。実に多様に、今を行き自己存在への問いかけを続けておられます。
 ひきこもりには、それに至る経過(原因を含む)、ひきこもってからの経過、様々な刺激による自己洞察や試験的動きだしや部屋・家からの外出トライヤルなどの段階がありますが、「様々な刺激」の質が問われます。他者の人生の多様性を知り、自身の命や人生の大切さに気づき、自尊感情を高める、そんな刺激を受けられるのは第三者との関わりから、という場合が多いようです。お一人で抱える、本人の自己責任にする、家族内の問題として抱え込まれる、そうした閉鎖的で自己責任化した環境の中では、状態変化への刺激が生じることは希で、多くの場合、むしろご自身や家族内でお互いを責め合う、という非難・否定的刺激が積み重なってしまいます。神経症や抑うつなどの二次的障害も、、起こるべくして起こってしまいます。
 信頼でき、継続的に本人とご家族と関わることのできる第三者とつながることの重要性を強調したいと思います。
 次回は「青年・成人期のアスペルガー障害への支援を考える」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

58自治体が設置か予定ー自殺対策ネット

自殺対策のため官民でつくる地域のネットワーク組織などを既に設置しているのは、全国六十二の都道府県・政令指定都市のうち香川県など二十で、設置予定(三十八)を含めると、計五十八の自治体が何らかの対策に取り組んでいることが特定非営利活動法人(NPO法人)の調査で三日、分かった。
 別の機関が実施した四月一日時点での調査では、設置済みと予定を合わせて計二十三にとどまっており、六月の自殺対策基本法制定を契機に対策が進んだといえる。
 調査はNPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)が、八月下旬から九月初めに自治体に聞き取りし、対策の取り組み状況によってAからEまでの五段階で評価した。
 自殺死亡率が全国的に高い秋田など東北三県は、既に「自殺対策連絡協議会」などの地域ネットワークが実践的な活動を進めていることを評価してAランク。兵庫など七自治体は、モデル事業など核となる取り組みが機能し始めているとしてBランクに位置付けた。
 組織があってもまだ具体的な取り組みをしていないCランクは香川など十、来年度までに設置予定のDランクは三十八自治体に上った。組織づくりの具体的な検討がないさいたま市、東京、滋賀、奈良の四自治体はEランクだった。
 C、Dランクの中には、民間との連携や人選の方法が分からないとの声もあり、ライフリンクは「一刻も早く国が組織の目的や連携のモデルを分かりやすく示し、支援を積極的に行うべきだ」と話している。
(四国新聞 2006/10/04 09:26)
【コメント】自死遺族会や自殺予防の運動をされている団体や個人は全国に多数存在します。「民間との連携や人選の方法が分からない」のは、窓口担当者やその部署に民間と連携をしようとする意志がないだけです。多様な癒しや予防の支援があります。柔軟に、そして早急にネットワークづくりをすすめてほしいと思います。

●敦賀に発達障害の支援センター「スクラム福井」開設
 自閉症や学習障害(LD)など発達障害がある人の支援センター「スクラム福井」が1日に開設された。事務所が置かれる敦賀市桜ケ丘町の授産施設「野坂の郷(さと)」で開所式があり、看板を設置して祝った。
 野坂の郷を運営する社会福祉法人「ウエルビーイングつるが」(福田晋介理事長)が、県の委託を受けて始める。敦賀市のほか福井、大野両市にも窓口を置き、障害者と家族への支援や、県民への啓発活動などを行う。
 福田理事長は長男(15)が自閉症だったことから、約10年間、自閉症患者の支援に携わってきた。「子どもが生まれた当時はどこに相談していいのか分からず戸惑った」と苦労を振り返り、「県全域の障害者とその家族、支援者とスクラムを組んで歩んでいこうと思う」と話した。
 各相談窓口の連絡先は敦賀(野坂の郷内)=電0770(21)2346、福井=電0776(22)0370、大野(希望園内)=0779(66)1133=へ。
(北陸中日新聞 10/1)

●滝川市の小6自殺、1か月半前に担任に友人関係相談
 北海道滝川市内の小学校で昨年9月、6年生の女児が首をつり、後に死亡した問題で、担任教諭がその1か月半前の7月、友人関係のことで女児から相談を受けていたことが1日、わかった。
 自殺を図った後に学校が同級生に行った聞き取り調査でも、「死にたいと漏らしていた」などの証言が多数得られており、学校は昨年10月、女児の家族に「本人のサインを学校、担任として受け止められなかった」との内容の文書を渡していた。
 文書は、学校側が事前に把握していた女児の様子について、「席替えのことや友人関係について担任に相談があった」「修学旅行の部屋割りで(女児一人がどのグループにも入れないという)問題が生じた」ことに触れていた。しかし、ともに「担任の指導で解決された」と説明し、いじめは否定していた。
(読売新聞)-10月2日3時10分更新

●滝川小6自殺 遅すぎた謝罪 批判浴び主張一変 市教委に高まる不信
 【滝川】滝川市内の小学六年生の女子が昨年九月、通っていた学校の教室で自殺を図り死亡した問題で、滝川市教委は五日、これまでの主張を一変させ、いじめがあったことを認めた。「認めるのが遅すぎた」「やはり隠そうとしたのでは」。一年もたった末の手のひらを返したような対応に、市民らの不信感は高まった。
 五日午後六時。田村弘・滝川市長と安西輝恭教育長は、滝川市内の遺族宅の玄関に立った。
 「申し訳ありませんでした」「すみませんでした」。出迎えた遺族の男性に何度も頭を下げた。訪問した時間は十分ほど。沈痛な面持ちで焼香を終えた。
 謝罪後の記者会見では、「いじめが自殺の原因か」という記者の質問に、「恐らくそうではないかと思う」と安西教育長。対して、校長は「自殺の原因がすべていじめであるとは思えない」。見解は食い違った。
 謝罪訪問に先駆けて開かれた市議会の総務文教常任委員会でも、安西教育長は「遺族をはじめ、多くの市民に迷惑をかけた。心からおわび申し上げます」と深く頭を下げていた。千葉潤指導室長は「謝っても取り返しがつかない」と時折言葉を詰まらせた。
 だが、謝罪はあまりにも遅すぎた。市教委は昨年十月十二日には遺書二通の内容を把握したが、十一月の会見では「いじめの事実は把握できなかった」と発表。遺書七通の全容を把握した今年六月二十一日以降も「調査内容を分析して結論を出したい」とし、対応を遅らせ続けた。
 今月五日の記者会見では、二日に開かれた会見でいじめの存在を事実上認めていなかったのに、突然、主張を変えたことに質問が集中。安西教育長は「いろいろな意見をいただいたこともあり、総合的に判断した」と話し、世論に押されたうえでの方向転換であることを明かした。
 文部科学省は一九九五年の通知で、いじめの判断基準を「あくまでもいじめられている子どもの認識の問題である」と示している。校長は会見で、この通知について「把握していた」と答えたものの、「女子から友人関係について相談を受けた時点でいじめだと認識していれば、自殺そのものが防げたのではないか」との質問には、沈黙を挟みながら「担任からは解決したと聞いていた。ただ、(いじめの判断の)共通認識が徹底されていなかったと言われればそうかもしれない」とうなだれた。
 市教委の対応に、市民の不信感は増した。女子と同じ地域に住む男性(41)は「認めるのが遅すぎた。いじめられている弱い立場に立つのが教育者。それができていなかったということだろう」と吐き捨てるように言った。
(北海道新聞 2006/10/06 08:13)

●女子児童の「遺書」、教育部長「見たくない」と拒否
 北海道滝川市の小学校で、いじめを苦に女子児童が自殺した問題で、市の教育委員会の幹部が、遺書を見ることを拒否していたことが分かりました。
 遺族によると、去年9月、女子児童が自殺を図った翌日に、入院先の病院で、遺族は滝川市の教育部長に遺書を見てもらおうとしました。しかし、教育部長は「見たくない」と拒んだということです。これまで、市の教育委員会は「遺書は原因究明に必要なため、遺族には当初から見せてもらうよう頼んだが、応じてもらえなかった」と説明をしていました。この問題では、市の教育委員会に抗議などが殺到しています。「明らかにいじめだ」、「原因究明が遅い」などと、電話と電子メールでおよそ1900件が寄せられています。
(YAHOOニュース 6日8時41分更新)
【コメント】この事件は、教委の対応が余りにもずさんで子どもじみた(というと子どもに失礼)ウソで塗り固めようとして次々と暴露されていったために大きなマスコミネタとなりましたが、事件性としては氷山の一角です。子どもの死の意味よりも優先される自己保身のための虚偽報告、いじめや学校事故によって子どもを亡くされ訴訟などを起こされている親御さんたちのほとんどが、この厚い壁と闘っておられます。これまでも何度か書いてきましたが、残された家族が得たいのは、起こった出来事の事実経過と心からの謝罪と再発防止への具体的施策化です。

●<司法支援センター>業務スタート さっそく電話相次ぐ
 身近な法的トラブルを解決するための情報提供窓口となる日本司法支援センター(愛称・法テラス)が2日朝、業務をスタートさせた。午前9時の業務開始とともに、コールセンターには利用者からの電話が相次ぎ、80人のオペレーターが対応に大忙しだった。
 コールセンターは、平日の午前9時〜午後9時と、土曜日午前9時〜午後5時(日曜・祝日は休み)、金銭トラブルや相続、離婚などの解決に役立つ制度を無料で紹介し、弁護士会や司法書士会などへの橋渡しも行う。年間約120万件の相談が見込まれ、初日は業務開始から1時間で計245件の相談に応じた。電話番号は0570・078374(オナヤミナシ)で、ほかに犯罪被害者向けの専用電話(0570・079714)もある。
 金平輝子理事長は「身近な司法への道しるべとなれるよう体制を充実させたい」と語った。
 法テラスではほかに、資力の乏しい人への裁判費用の援助や、弁護士過疎地域での法律サービスの提供なども行う。(毎日新聞)-10月2日11時33分更新

●見晴台学園:名古屋の障害児が学ぶ教育施設、8日と12日に説明会/愛知
 学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害児が通う無認可の学校「見晴台学園」(名古屋市中川区)が、来年度入学希望者のための学園説明会を8日と12日に開催する。
 見晴台学園は1990年、発達障害児などの保護者でつくるNPO「学習障害児・者の教育と自立の保障をすすめる会」(名古屋市)が、「子供らが自分のペースで学べる場がほしい」と設立。中等部と高等部のほか、高卒程度を対象にした専攻科があり、生徒が学習指導要領とは異なる独自のカリキュラムで授業を受けている。
 12日は午前中に授業見学も実施する予定。同学園は「説明会では学園の概要説明だけでなく、参加者が抱える課題についての相談の時間も設けたい」と話している。問い合わせは同学園(052・224・7378)まで。
10月6日朝刊
(毎日新聞)-10月6日11時1分更新

●県教委、発達障害を本格調査 小中校の実数把握
 県教育委員会は、県内小中学校の通常学級に在籍する学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など軽度発達障害の児童・生徒数を2006―07年度に初めて本格調査することを決めた。5日の県議会文教厚生委員会で赤嶺昇氏の質問に答えた。県教委は05年度の予備調査を基に「4500人(全児童・生徒の約3%)以下ではないか」と推定。「実数を把握し、支援体制づくりに活用したい」と説明している。
 調査は、軽度発達障害の実数を把握し、効果的な支援につなげることや、通常学級の担任に軽度発達障害についての認識を深めさせ、必要な支援に結び付ける狙い。
 県教委は「専門家を含む調査チームをつくり、できる限り正確な実数を把握したい」としている。
 県教委は本格調査に向けた予備調査を昨年度、県内小中学生約1万3千人を対象に実施。各校の報告の結果、「教育上、特別な配慮を要する児童・生徒」は小学校が全児童の3・14%、中学校は全生徒の3・29%だった。
 県LD児・者親の会「はばたき」の岡崎綾子代表は「県全体の調査は良いこと。正確な実数把握の結果をどう活用するかが課題。各教員の発達障害への認識が深まってほしい」と語った。
 文部科学省は、全国の小中学校で通常学級に在籍する軽度発達障害の児童・生徒は約6%と推定している。
(琉球新報)-10月6日10時18分更新

●県立療育福祉センター:発達障害者支援拠点、新施設スタート/高知
 ◇勉強の場や保護者の交流も
 県立療育福祉センター(高知市若草町)内で、「発達障害者支援センター」の新施設が完成し、本格的に業務をスタートさせた。自閉症や注意欠陥他動性障害などの発達障害者への支援拠点として期待され、5日には関係者約30人が集まり、見学会が開かれた。【服部陽】
 昨年4月の発達障害者支援法施行に伴い、県も支援センターを暫定的に整備。空き部屋を利用していたが、手狭だったことから改装していた。
 新施設は約570平方メートル。見学会では、すべり台やボールが置かれた「プレイルーム」、子どもが手先を使った作業をする机などが披露され、出席者はスタッフの説明を受けていた。
 一般的に発達障害者は人口の数%を占めるとされ、4月からの支援センターで受けた相談件数は計145件にのぼった。支援センターでは相談を受けた後に診断し、それぞれの障害に分けて専門的な支援に取り組む。また、就学前の自閉症の子ども向けには通園部門を設置。9月末時点で44人が契約し、月数回、利用している。
 出席した高知発達障害等親の会「KOSEI」代表の谷内つぼみさん(51)は「発達障害児は勉強する場が少ないので助かる。家に閉じこもりがちな保護者同士が交流できるのもうれしい」と話していた。同支援センター(088・844・1247)の電話相談は平日午前9時〜午後5時。
10月6日朝刊
(毎日新聞)-10月6日16時1分更新


[2006.10.1]

【この頃思うこと】入り口の切り花
 相談室カンナを開設して1年半が過ぎました。個人開業のカウンセリングルーム経営の困難さ・脆弱さを身体の芯から学ばせて頂きました。とはいえ、相談・カウンセリングを必用とされている方がいらっしゃる限り、日々研鑽を積みながら相談室を続けて行かなければなりません。
 私の相談室の狭い入り口には、来談者をお迎えする意味で、ちいさな花瓶に切り花を生けるようにしています。駐車場から事務所のあるマンションへの道の途中に小さな花屋さんがあり、そこで季節の花を買っています。1週間に数百円くらいの買い物ですが、いつも愛想良く応対してもらっていて、気持ちが楽になります。殺風景な事務所に、この花があるのとないのとでは雰囲気が大きく違います。相談やカウンセリングに来られ、ドアを開けて入る時、そして終えられて帰られる時に、ちょっとの気持ちの切り換えをしていただければ、と思っています。
 次回は「ひきこもり当事者とインターネット」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

障害者の負担軽減、自治体の4割導入ー広がる地域格差

障害者自立支援法で障害者に義務づけられた福祉サービス費用の原則1割負担をめぐり、全都道府県と政令指定市など主要市、特別区のうち、約4割が独自の軽減策を実施したり、導入を決めたりしていることが、朝日新聞社の全国調査でわかった。同法が一部施行された4月以降、従来に比べて急激な負担増となったのを緩和する措置。10月から始まる障害児施設の利用料負担でも、同様の軽減策に踏み切る自治体が相次いでおり、住む場所によって障害者の負担が異なる「地域格差」が広がっている実態が浮かび上がった。
 1割負担をめぐっては、同法で障害者の所得によって負担の上限額(1万5000〜3万7200円)が設けられ、生活保護世帯は対象外。だが、食費や光熱水費は一定の実費負担が課せられており、金銭的負担を理由に、施設を退所する障害者が全国で続出している。
 全国調査では、47都道府県のほか、15の指定市とほかの県庁所在都市、中核市、特別区の計90自治体を対象に、同法施行に伴う障害者への取り組みなどについて聞いた。
 都道府県と指定市の計62自治体のうち、軽減策を実施、または実施の方針を決めたのは15自治体で、10自治体が現在、検討している。京都府は「負担増で必要なサービスを受けられなくなる」として、3年間の期限付きで国より低い上限額を設け、超過分を市町村と折半で助成。横浜市は非課税世帯を対象に負担の増額分を全額助成している。三重、千葉両県は、障害者が共同で暮らすグループホームへの家賃を補助する形で、本人の負担を軽減する。
 一方、37自治体は「実施していない」と回答。「障害者施策は全国一律であるべきで、軽減策についても国の責任」(茨城県)「低所得層に配慮した軽減策が法律で用意されている」(静岡市)などの意見が多かった。
 指定市を除く県庁所在都市と中核市、特別区の計75自治体では、42自治体が軽減策を実施、または実施の方針を決めており、実施しない27自治体を大きく上回る。検討中は6自治体だった。都道府県と指定市を含めると、57自治体が実施または実施方針で、全体の約4割にのぼる。
 児童福祉法の改正に伴い、10月から施設利用料の1割負担がスタートする障害児については、都道府県と指定市のうち、長崎県や川崎市などが現在の個人負担額を超えた分を全額補助するなど、13自治体が軽減策を実施する予定。「利用が抑制されれば子どもの療育が阻害される」(長崎県)との理由が多い。32自治体は、財政難などを理由に実施する予定がないとしている。
 調査では、国の一連の施策に対する評価も聞いた。「問題がある」「どちらかというと問題」が39%を占め、「余りにも短い期間で急激な変化」(川崎市)などの意見が目立つ。「妥当」と回答したのはゼロ。「どちらかというと妥当」は16%、「どちらとも言えない」は34%だった。
 〈障害者自立支援法〉 障害者の地域での自立や、身体、知的、精神の障害別で提供されてきた福祉サービスの一元化が目的。利用者が福祉サービスを自由に選べる「支援費制度」が財政破綻(はたん)したため、導入された。所得を基本とした「応能負担」に加え、利用したサービス量で利用料が決まる「応益負担」の仕組みを採り入れた。4月からの本人1割負担に続き、10月からは障害の程度を6段階に区分する認定制度も始まる。
(asahi.com) 2006年09月25日08時15分
【コメント】この自立支援法も後に介護保険と一体化すると言われています。必用な社会保障は、地域格差なく全国一律であるべきとは思いますが、障害毎の特性や支援の必要性・難易度などによって、障害者個々の状態に応じた支援が行われるべきであることは言うまでもありません。「福祉サービスの一元化」は「安上がり福祉」に向けて敷かれた線路と言えるでしょう。

●補助金維持を要請 障害者9団体(沖縄)
 県小規模作業所連絡会や障害者支援団体九団体の代表らが21日、県庁に喜友名朝春福祉保健部長を訪ね、障害者自立支援法に伴う障害者施策の低下を懸念し、小規模作業所に対する補助金の現行維持などを求め要請した。作業所への支援について、喜友名部長は「障害者の就労支援など法定事業を進める。利用者に不安がないよう市町村と連携を図っていきたい」と述べた。
 要請したのは、県特別支援学校PTA協議会、県LD児者親の会「はばたき」、沖縄自閉症児者親の会「まいわーるど」、県高等学校障害児学校教職員組合など9団体。
 一行は、県がこれまで行ってきた「地域療育等支援事業」が次年度以降、市町村に移管されることに「各市町村の対応はバラバラ。今までのようなサービスが受けられるか懸念している」と訴えた。県と市町村で2分の1ずつ補助している小規模作業所への助成も減額されないよう求めた。
 要請したメンバーからは「市町村に丸投げして格差が出れば誰が責任を取るのか。県が指導力を発揮すべきだ」「作業所の存続に肝心なのは補助金」との意見があった。自立支援法についても「自殺支援法という人さえいる。欠陥法と認めて県として何ができるか考えて」との声もあった。
(琉球新報)-9月22日9時47分更新

●「自分に向かない」…校長・教頭の降格申し出が激増
 「自分に管理職は向かない」と、学校の校長や教頭が一般教員への降格を自ら申し出る「希望降任」が全国で増えている。
 多忙で精神的なプレッシャーの大きい職責に耐えきれず、思い悩んだり、体を壊したりする例が多いようだ。
 文部科学省によると、全国の公立小中高校などで2005年度に自ら降格を申し出た管理職は71人。01年度の26人から3倍近くに増加した。このうち、教員にとって「初めての管理職」である教頭の降任が62人を占め、最も多い。自治体別では東京都(18人)、北九州市(7人)、神奈川県、大阪府、広島県(各4人)などが多かった。
 希望降任はもともと、制度がなくても、地方公務員法上は可能だったが、「多くの管理職が降格できるとは知らず、悩みを抱え込むことが多かった」(文科省幹部)ため、01年度前後から各教委が相次いで制度を導入した。05年度末現在、都道府県や政令指定市の計50教委が制度を導入済みだ。
(読売新聞)-9月24日16時39分更新
【コメント】「なりたい仕事よりも、なれる仕事…」というCMが流れていたかと思います。学校管理者の任用方法は、結構闇に包まれています。ある教育委員会の教頭の任用試験では「君が代」を大声で歌うことが求められた、という話しを聞きました。今、学校現場に求められる管理は多様・複雑、かつ緊急のものが増えています。相当な管理能力と臨機応変さ、そして人格が求められています。従来の任用のあり方が問われているわけですが、それに教育委員会が臨機応変に対応できるか、ここにも大きな課題がありそうです。

●「再チャレンジ」年長フリーター対策で官民に温度差
 今週発足する安倍政権が重要施策に掲げる「再チャレンジ支援策」のひとつである25〜34歳で定職に就かない「年長フリーター」の正社員化をめぐり、官民の温度差が際立っている。政府側の意気込みをよそに、日本経団連の調査では、年長フリーター採用に前向きな企業はわずか1.6%で、24.3%は採用する意思がなかった。新政権がどこまで企業の理解と協力を得られるのか。実行力をはかる試金石になりそうだ。
 年長フリーターの正社員化支援をめぐっては、安倍晋三・自民党新総裁が官房長官として議長を務めた再チャレンジ推進会議が、新卒だけでなくフリーターや第2新卒にも門戸を広げる「複線型採用」の導入や、採用年齢の引き上げなどを訴えている。また、政府も日本経団連や日本商工会議所に中途採用の拡大を要請。厚生労働省でも来年度予算で26億円を新規要求し、対策を練っている。
 しかし、日本経団連のある会員企業の人事担当者は「ずっとフリーターだった若者を一から教育する考えはない」と突き放しており、新政権の真価が問われそうだ。
(産経新聞)09/25 07:59
【コメント】フリーター、ニートという社会問題を作ったのは、若者たちではなく、企業の側の都合での雇用戦略であることが明らかになってきていると思います。「再チャレンジ」すべきは若者たちではなく、企業(多くは大企業)であり、その戦略を許してきた政府側であると思います。

●西海評論:再チャレンジの心/長崎
 次期首相就任が確実な自民党の安倍晋三新総裁が盛んに唱えているのが「再チャレンジ可能な社会へ」。リストラや受験失敗、さらに若い時につまずいた人が再度、やりたい仕事や勉強に挑戦出来る社会を意味するようだ。
 格差が開く中で、今は再チャレンジが難しいという前提での主張なのだろう。では、再チャレンジをしやすくするには、どんな具体策が必要なのか。
 「安倍さんが、そういう理念を示してくれたことは前進だ」。長崎市銅座町のフレッシュワーク長崎で統括マネジャーの二階堂孝志さん(45)は強調する。再出発を目指す若者らの就職を支援する施設だ。
 「面接では、前の会社を辞めた理由を尋ねられるのを覚悟しておかねばならない。それ以上に、さまざまなアルバイトをした経験を評価してもらえるよう前向きなアピールの仕方が大切だ」と言う。
 一方では、企業側が一度会社を辞めた若者にも能力を公平に評価する姿勢も求めている。「安倍さんの考え方が企業にも浸透すれば、再チャレンジの可能性も高まるはずだ」
 青春期に挫折、引きこもりを経験した若者の再チャレンジの機会も確保されるのか。「半分期待し、半分あきらめている」。福岡市のNPO法人「青少年サポートセンターひまわりの会」の会長、村上友利さん(61)は話す。
 九州各地の引きこもりの若者を福岡に集めたり、高速道路を走り回って訪問したりで20人を支援している。「今日は長崎県北部へ行って来た。往復で6時間掛かった」。佐世保から福岡のセンターに出てきている若者もいる。
 「他県までサポートに行くには、きつい年齢になった。財政を考えると日帰りになる。後継者を育てるにも金が掛かる。若者の再出発のために財政面で支援してくれる施策をお願いしたい。ただし、役所が間に入ると計画が遅々として進まない。末端に来るまでに安倍さんの理念も消えてしまうかもしれない」
 長崎市の「登校拒否を考える親の会」の井形和子会長も「まだ言葉だけで、具体策が示されないと評価しようがない」と話す。ただし「登校拒否の子供が集まり、自信を回復出来る居場所を各地に造ってもらいたい」との不登校を経験した女性の願いには共鳴する。
 「再チャレンジ可能な社会」を実現するには、一番支援を必要としている現場の思いに十分耳を傾けることから始めねばならない。
9月25日朝刊(毎日新聞)-9月25日18時1分更新

●市民団体:「チャイルドライン」電話相談の受け手養成 来月開講 /福岡
 ◇受講生を募集
 市民団体「チャイルドライン@ふくおか」は10月1日から、子ども向け電話相談の受け手ボランティア(キャッチャー)の養成講座を始める。今回が7期目。来年3月まで計15回の講座のうち12回以上の出席者が、来年度のキャッチャーになれる。
 チャイルドラインは全国34都道府県で61団体が実施しており、昨年度は12万件を超す電話があった。相談はいじめや不登校、犯罪被害、親の離婚などさまざまで、受け手には子どもの現状についての知識や話を聴く技術が求められる。児童福祉の専門家だけで対応している団体もあるが、「@ふくおか」は一般の希望者を養成し、毎年20〜30人程度をキャッチャーに認定している。
 今年度の養成講座の講師は▽フリースクール主宰の梅津和子さん▽エイズ・ワーカーズ福岡の北村紀代子さん▽精神科医の佐藤眞弓さん▽少年事件に詳しい八尋八郎弁護士――ら15人。いずれも日曜の午前からで、高校生無料▽学生6000円▽社会人1万2000円。キャッチャー希望者のほかに1回1000円で一般聴講もできる。
 問い合わせは事務局の山口祐二さん090・1199・8792。9月27日朝刊(毎日新聞)-9月27日16時2分更新

●不登校:長崎市民エフエムでラジオ相談−−来月2日スタート /長崎
 ◇毎週月曜日午後11時半
 長崎市城山町のフリースクール「クレイン・ハーバー」を運営する中村尊さん(39)が、10月から長崎市民エフエム放送で不登校の子供や親の相談に乗る。毎週月曜午後11時半から30分。
 相談はファクス(095・832・2513)、メール(a@nagasakifm.net)で受け付ける。無料。中村さんは「対面では相談しづらい方に、ラジオを通してアドバイスしたい」と話している。
 クレイン・ハーバーは04年にNPO法人として開設。現在、10代の不登校の生徒7人が集まり、週5回農作業や学習などをしている。連絡は095・861・2453。
9月30日朝刊(毎日新聞)-9月30日17時1分更新

●給食費払わぬ親たち お金あっても「頼んだ覚えない」
 家計にゆとりがあるのに給食費を払わない保護者が増えている。あまりの悪質ぶりに、法的措置を取る自治体が相次ぐ。未納分を学校側が立て替えたり、給食の質や量を下げて対応している事実は、教育界では“公然の秘密”。生活保護に上積みされた給食費を別の出費に流用する保護者もいるほどで、きちんと払っている保護者や教職員たちから非難の声が上がっている。
 「高級外車を乗り回し、携帯電話に何万円も払っているのに、給食費は払わない保護者がいる」。文部科学省にはこんな報告が相次いで寄せられている。外車に乗るような世帯だけではない。国や自治体は所得により生活保護に給食費分を上乗せして支給しているが、それでも給食費を滞納する保護者も多いという。
 小学校(低学年)で月3900円、中学校で月4500円の給食費(文科省発表の全国平均)。宇都宮市は9月12日、給食費を滞納している保護者38人に、支払い督促を宇都宮簡裁に申し立てた。4月には仙台市が、翌5月には北海道根室市が同様の措置を取っている。支払いに応じなければ、裁判所による差し押さえの処分が下ることになる。
 宇都宮市の調べでは、5月1日時点で、702人分の給食費が3カ月以上未納で滞納総額は3290万円。中学校21校中20校、小学校59校のうち40校で未納者がいた。未納者がいない学校の方が少なかった。
 北海道芦別市では昨年3月、支払い能力がありながら支払う意思がない「特定滞納者」に行政サービスの一部停止や住所、氏名の公表などを認める条例を可決した。
 佐賀県多久市では一昨年、給食費の納付を約束する保証人付きの「確約書」を全保護者に求めた(昨年度で廃止)。山梨県笛吹市でも「連絡なしに滞納した場合は給食停止」という同意書を保護者に提出させた。
 広島県や東京都でも悪質な未納事案が横行。学校側の再三の説得にも支払いに応じず、教員がポケットマネーで負担した例は日常茶飯事。教師や校長、PTAの役員が給食費を立て替えたものの、子供たちが卒業した後に踏み倒されてしまった例が絶えない。
 各自治体は、徴収員の配置やプリペイド方式の採用など“あの手この手”で踏み倒し防止に躍起だが、滞納する保護者の多くが「義務教育だから払いたくない」の一点張り。なかには「給食を出せと頼んだ覚えはない!」「給食を止められるものなら止めてみろ!」などとすごむ保護者もいるという。
 東京都内のある中学では、1人当たりの給食の予算は1日280円だったが、260円分に抑えざるを得なくなった。給食費の未納は、給食の質や量を低下させるという事態を招いている。
 学校給食法は、子供たちに給食を提供するよう自治体に「努めなければならない」と努力義務を規定。そのための設備や調理員の人件費は自治体が負担するが、食材費は保護者が負担するよう定めている。文科省学校健康教育課では「結局は保護者のモラルの問題。学校を通じて給食は自己負担であることへの理解を求めるしかない」と話している。
(SankeiWeb)10/01 02:12

●札幌2児虐待死 「少年時代父にから暴力」 逮捕の男が供述
 札幌市中央区の女児二人の虐待死事件で、無職今野望美容疑者(24)=死体遺棄容疑で逮捕済み=の長女(4つ)への殺人容疑で再逮捕された同市中央区南一一西一、無職稲見淳容疑者(29)が、道警捜査一課や札幌南署の調べに対し、「少年時代に父親から虐待を受けた」と供述していることが三十日、分かった。同容疑者は事件前から女性などに対する暴力を繰り返しており、同署などは事件の全容解明に向け、同容疑者の成育歴にも注目している。
 同署などの調べや関係者によると、稲見容疑者は函館市に住んでいた中学時代に両親が離婚し、高校時代の途中まで千葉県の父親のもとで暮らしていた。同容疑者は十代だった一九九六年ごろ、付き合っていた女性に「小さいころから父親に木刀で殴られた」などと話していたという。ところが、稲見容疑者はこの女性に対しては、ささいなことで怒り、殴るけるなどの暴行を加えていた。その後も、同容疑者は妻子や女性に暴力を振るい、今回の虐待死事件以外にも、少なくとも四件のトラブルを起こしている。
 今年六月に内閣府が発表した青少年白書では、虐待を受けた子供が親になって自分の子供を虐待する「虐待の世代間連鎖」の可能性にも言及している。
(北海道新聞)2006/10/01 08:19


[2006.9.24]

【この頃思うこと】明け方の夢の不思議
 印象深いものでないかぎり、見た夢を記憶している時間は短いと言われています。明け方に見た夢は、目覚めた時に短期記憶に不完全ながら残っているため、深夜に見た夢に比べて比較的よく(短時間ではあれ)覚えているものです。しかし、これも、すぐに他の朝の取り組みを始めて意識がそちらに映ると、夢の記憶は速やかに薄れ消えてしまいます。明け方に見た夢を覚えていたい、と思ったならば、寝床で見た夢を再想起して記憶を深める作業をする必用があります。良い夢、楽しい夢なら、長時間覚えていたいものですよね(私は時々チャレンジしています)。逆に嫌な夢なら、さっさと朝の作業に取りかかって忘れてしまいたいものです。
 明け方に見る夢の中で、私の場合少なくないのがトイレやお風呂の場面です。尿意を催す時間帯でもあるので、その刺激が夢の意識に影響し映像化されるものと思われますが、不思議な光景となって現れるのが不思議です。恐ろしく汚れた、トイレとは思えない場所に立っていたり、とても大きな大浴場が自宅にあったりと、日頃思ってもみない情景を作り上げてくれます。トイレやお風呂に限らず、これまで見たことも、想像したこともない情景が出現する夢、本当に不思議です。できることならば、やさしく、穏やかな物語であってほしいと思います。
 次回は「入り口の切り花」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

障害者ピアカウンセリングの連続講座

障害者自身が障害者の相談に乗る「ピアカウンセリング」を学ぶ連続講座が18日、京都府城陽市寺田のプラムイン城陽で始まった。初日は、奈良市内の自立生活支援センター「フリーダム21」のピアカウンセラー上野久美さんが講演し、カウンセリングや自立生活の意義を、受講生ら45人に話した。
 上野さんは、脊髄(せきずい)性筋委縮症で首から下の大半が動かない障害がある。ピアカウンセリングの役割について「目的は自立生活のための情報提供と精神的サポート」と述べ、「朝起きて何を食べ、何を着るのか。決める権利が自立生活にはある。そこに生きている意味がある」と、障害者が施設を出て暮らす意義を、体験を交えて述べた。
 さらに、障害者の友人から「しんどい時はしんどいと言っていいねんで」と言われた思い出に触れ、「肩ひじ張って(障害者に関する)運動をしてきた自分が、人と優しく接することができるようになりました」と、ピアカウンセリングを通じて障害者同士がつながることの大切さを訴えた。
 講座は、南山城圏域障害者総合相談支援センターうぃる主催。カウンセリングの手法などを4日間学ぶ。
(京都新聞)-9月18日22時49分更新
【コメント】私は、長男を不登校から自殺で失ったという、不登校当事者の親であり、同時に自死遺族であるという立場で、京都の不登校の親の会や京都の自死遺族の会「こころのカフェ・きょうと」にボランティアとして参加しています。本業としているカウンセリングにおいては、不登校や家族の自死などの相談をお受けしていますが、その際には、時には自己開示をすることもありますが、基本的にセラピストの立場に立ちきろうとしています。自らの体験は、相談者の気持ちへの共感に役立ってくれますが、個人の体験を一般化することはできないと思うからです。ピアカウンセリングの場合に聴く側が気を付けなければならないことだと思います。ピアカウンセリング自体は、様々なケースに応じて幅広く、数多く広がることが望まれます。

●自閉症児の外出支援へガイド養成
 自閉症児の親らでつくる八戸市自閉症児者親の会(馬渕豊美会長)が本年度から、自閉症児者の外出に付き添うガイドヘルプボランティアの養成に取り組んでいる。自閉症児者に特化したガイドヘルプの研修は県内初という。自閉症児者の社会参加を促すため、身近で支援してくれる人を育てようという試みだ。
 ガイドヘルプは、一人での外出が困難な障害者を支援するサービス。交通機関による移動や買い物を手伝ったり、外出の計画を立てたりする。障害者の行動範囲を広げ、社会参加の手助けをするほか、家族の負担も軽減する。
 視覚障害者や脳性まひ患者などへのガイドヘルパー派遣事業はあるが、自閉症児者向けの公的なガイドヘルパー制度はない。同会会員で研修会総括責任者の菅原友記さんは「自閉症が障害として認められた歴史が浅く、世間的な認識が十分に広がっていないのが原因」と話す。
 同会では、三月上旬から研修会を開始した。受講者は名簿登録し、同会に自閉症児者の家族などから要請があれば外出支援活動を行う。第一回の受講者は、既に施設などで活動を始めている。
 このほど、八戸市の市障害者地域生活支援センター「ハピア」で開いた第三回研修会には、学生や養護学校の教師、施設関係者など約二十人が参加した。同市立市民病院非常勤医師の橋本美貴さんら八人の講師が、サービスの内容や自閉症の医学的理解などを講義。その後、実際に図書館やボウリング場、デパートなどへ出掛ける自閉症児者に同伴する実習を行った。
 実習では、一人の自閉症児者に四、五人の受講生が同伴、自閉症児者一人一人の注意点などを記したメモを手に、バスの乗降や切符の購入、買い物などを手伝った。
(東奧日報)2006年9月19日(火)
【コメント】発達障害への認知はまだまだこれから、といった所ですが、援助・支援者の要請は急務の課題です。国や行政が制度として、民間などとの連携をしながらできるだけ数多く多様に構築していくべきものだと思います。

●テンプスタッフ、障害者の人材紹介に本格参入
 テンプスタッフは障害者専門の人材紹介事業に本格参入する。10月に専門の会社を新設。障害者に適した職を紹介するほか、採用企業向けに採用業務の代行などを手掛ける。4月の改正障害者雇用促進法の施行による需要増に対応する。
 10月1日付で新会社のテンプスタッフフロンティア(東京・中央、中村淳社長)を設立する。資本金は3000万円。求職者が適職を見つけやすいよう勉強会や面接などを実施し、パソコン教室なども手掛ける。企業に対しては提供可能な職種や労働条件に関する相談にも乗り、求職者とのミスマッチを防ぐ。(07:00)
(NIKKEINET)9月22日

●若者の自立支援 心理・就労両面で 京都市、10月に拠点開設
 京都市は10月2日、仕事に就けない若者の相談に応じる「京都若者サポートステーション」を、市中京青少年活動センター(中京区東洞院通六角下ル)内に開設する。市は併せて、ひきこもり青年の支援団体や商工団体とネットワークをつくり、心理・就労の両面から若者の自立を後押しする。
 ニート対策として、厚生労働省が民間団体などに委託して全国25カ所に整備する事業。京都市が、実施主体として市ユースサービス協会(同)を選定した。
 同協会は、10月2日から相談事業を始める。月曜から土曜は正午から午後8時まで、日曜・祝日は午前10時から午後6時まで、協会職員が相談に応じる。
 さらに専門的な相談が必要な場合は、臨床心理士が月曜と水曜、就労支援専門の相談員が火曜と金曜のそれぞれ午後1時から5時まで応対する。専門相談は要予約。水曜のみ京都テルサ(京都市南区)が会場になる。
 また、京都市は10月以降、ひきこもり支援団体や社会福祉協議会、心療内科などの医療機関、商工・労働団体などと連携する。相談事業を通じて、職業体験やさらに専門的な相談が必要な時に協力を求める。
 市勤労福祉青少年課は「幅広い関係者が協力して、若者が気軽に相談して働く意欲を持てる環境を整えたい」と話している。問い合わせは市ユースサービス協会TEL075(213)3681へ。
(京都新聞)-9月19日10時29分更新
【コメント】ひきこもりへの支援は、継続が基本だと思います。相談に来てくれる人の相談に応じる、では支援にならないのがひきこもりの大きな課題です。家から出られない青年への支援は、家族への心理相談・教育から始まり、本人と第三者との関係づくりが必用だと思っています。

●株式会社立高校:県内初、不登校・中退者が対象 予備校クラゼミが地域密着型 /静岡
 不登校や中退者を対象にした県内初の株式会社立高校「クラ・ゼミ輝(キラリ)高等学校」が来月1日、吉田町神戸に誕生する。総合予備校「クラゼミ」(浜松市田町、倉橋義郎校長)が同町の「教育特区」を利用したもので、地元のウナギやシラスなどの体験授業など町との二人三脚による「地域密着型」通信制高校を目指す。
 設立は昨年7月、予備校に来る不登校生の増加を問題視した同校が、「彼らのフォローをする機関を設置したい」と特区による学校設立を同町に働きかけたのがきっかけ。教育による地域振興を模索していた町が応じ、同年11月、国の認可が下りて設立が現実化した。
 新設校はインターネットによる授業などで単位を取得し高校卒業資格が得られる通信制高校。年2回の学校での面接授業の際に、吉田名産のシラスやウナギなどの現状を地元の人から教わる「地域交流授業」を体験できるのが特徴だ。今月8日から生徒募集を開始したところ、すでに県内外から数十人の希望者があった。同校担当者は「卒業資格だけでなく、地域の魅力も体験できる学校。さまざまな理由で学校に行けない生徒の学びの場にしたい」と話す。問い合わせは同校(0548・33・4976)。
9月19日朝刊
(毎日新聞)-9月19日12時1分更新

●悩み電話相談5740件 チャイルドラインの実施から1年
 【三重県】県内で18歳以下の子どもたちの悩みを受け止める専用電話「チャイルドライン24」が昨年8月に始まって1年が過ぎた。かかってきた電話は計5740件。学校や家庭での悩み相談のほか、無言電話も多い。「安心して頼れるかどうか試しているのでは」と声なき声にも耳を傾ける。県からの委託金が本年度で終了する見通しで、活動資金の不足は必至だ。
 県内の特定非営利活動法人(NPO法人)16団体でつくる実施組織が運営。15歳から25歳の約50人を含むボランティア約150人とスタッフ約30人が、毎週金曜日午後2時から24時間、津や松阪など県内7市で電話応対している。
 開始は昨年8月26日。実施組織がこの1年間をまとめた報告では、内容は「学校生活」の悩みが全体の約7%の403件で友人との関係に悩む声が多い。次いで「自分自身」が約6%の357件。「不登校」「いじめ」「虐待」とはっきり分かるものも約4%の211件あった。
 しかし約3200件と約56%を占めたのが「無言・一言」だった。「雑談」も多く、食事や風呂などたわいもない生活ぶりを伝えてくることも。田部真樹子代表理事(68)は「何回か無言で、やっと話してくれる例もある。雑談は人とつながっていたいという気持ちの表れ」とみる。
 来年1月8日からは、毎週月曜日の午後4−9時にも拡大。利用時間を増やしながら、各団体の特徴を発揮することを目標にしている。
 問題は資金面だ。運営にかかる経費は年間約2400万円。準備期間も含めた2年間、県から年間約480万円の委託金を受け取っていたが、本年度で打ち切られる。このため、寄付金を募っていくという。
 チャイルドライン24はフリーダイヤル(0120)969147。(中日新聞)-9月23日12時46分更新
【コメント】国や地方自治体は、こうした分野での財源的打ち切りを強めています。いのちの電話が資金難であることなど、由々しき事態と言えます。国民から集めたお金は、必用なところに配分してほしい、と強く思います。


[2006.9.18]

【この頃思うこと】空を飛んでいる夢をみたら
 最近は少なくなりましたが、空を飛ぶ夢をよく見ます。空を飛ぶ夢にはいろいろあるようで、ふわりと身体が中に浮いた状態になるものから、鳥の様にまさに飛ぶものまで…。わたしの飛ぶ夢は、最初前者で、浮いた状態を認識して、「もしかしたら思うままに飛べるのでは」と身体を前に倒してみると推進力が生まれ、割と自由に飛んでしまいます。スピードが出るときもあれば、出ないときも、高く飛べるときもあれば、なかなか高度が上がらないときもあります。景色も様々です。最近で生々しく記憶に残っているのは、高度経済成長期の町並みで、中層のビルなどの建物が密集した町並みに電線が縦横無尽に張り巡らされている中を、電線に触れないようにすり抜けて飛んでいく、というものです。
 精神分析の祖、フロイト.Sは、この「空を飛ぶ夢」を「性的欲求不満」の現れ、と分析したとか…。その夢を見たとき、性的欲求不満でなかったとは言えません。正直に言えば、かなり長期にわたって性的欲求不満の状態は続いています。しかし、私が頻繁に空を飛ぶ夢を見ていたのは、3年半前頃、それまで20年間勤めた印刷会社でのデザインという仕事に終止符を打ち、2年間の大学での再学習を決意していた頃です。人生の大きな過渡期に入る直前、不安とかすかな希望、がんばらなければ後がないという究極追いつめられた状態でしたので、性的欲求不満というよりも、生理的欲求不充足な状況で起こった乖離状態の現れではないかと思っています。その頃によく見た他の夢は、高層ビルの上階のオフィスで大地震に遭遇し、ビルが丸ごとよじれながらゆっくりと倒れていくのを淡々とその場にいながら(一緒に倒れながら)見ている、というものでした。どなたか、分析してみて下さい。
 次回は「明け方の夢の不思議」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

「青年のひきこもりと支援を考える」/家族会ノンラベルがシンポジウム

京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル設立5周年記念シンポジウム
「青年のひきこもりと支援を考える」
−ひきこもり、社会的ひきこもり、ニート、フリーター問題にふれて
と き:9月23日(祝)午後1時開場、1時30分開会
ところ:キャンパスプラザ京都第1講義室
○開会挨拶 午後1時30分〜
 ノンラベル代表:田井みゆき
○基調講演 午後1時40分〜
 講師:春日井敏之先生(立命館大学文学部教授)
○シンポジウム 午後3時10分〜
[シンポジスト]
・上山和樹氏(『「ひきこもり」だった僕から』著者)
・井出草平氏(大阪大学大学院博士課程、ウェブサイト「論点ひきこもり−社会参加情報センター」事務局)
・田井みゆき(京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル代表)
[コーディネーター]
・春日井敏之先生
○参加費1,000円
(事前申込は不要ですが、満席となった時点で締め切らせて頂きます)
○問い合わせ
事務局:京都市右京区西院三蔵町30−11 MAINOR43 101号室
TEL/FAX 075−312−3338
http://www13.ocn.ne.jp/~nonlabel/

●ノンラベル:アスペルガー援助者養成講座(第5弾)(全4回)
チーム・ケアの充実で適切な理解と援助を
『アスペルガー思春期・青年・成人期への援助』
と き:2006年11月4・11・18日・25日
(各土曜日午後6時30分開場)
〔会場〕京都アスニー(京都市中京区丸太町通七本松西入ル)
○11月4日(土)
〔講師〕田井みゆき(ノンラベル代表)
 「生活支援の現場から〜アスペルガー特性と具体的援助法」
○11月11日(土)
〔講師〕十一元三先生(京都大学医学部保健学科教授)
 「アスペルガー障害:支援に通じる診断と認知特性の理解」
○11月18日(土)
〔講師〕小谷裕実先生(京都教育大学発達障害科助教授)
 「SST(ソーシャルスキルトレーニング)の実践から」
○11月25日(土)
〔講師〕定本ゆきこ先生(精神科医)
 「青年期、成人期における生きにくさへの援助〜問題行動にもふれて(仮題)」
○申込み 住所、氏名、電話・FAX番号、参加人数を記し、ハガキ、FAX、Eメールのいずれかでお申込下さい。
○参加費 10,000円(4回分です)
○募集定員 先着200名とさせて頂きます。(満席となり次第、締め切りとし、当日の飛び込み参加は受け付けない旨ご了承下さい)
○問い合わせ
事務局:京都市右京区西院三蔵町30−11 MAINOR43 101号室
TEL/FAX 075−312−3338
http://www13.ocn.ne.jp/~nonlabel/

●障害者自立支援法施行5カ月、財政難で自治体の支援無く/秋田
 ◇障害重い人ほど負担増え…退所者も
 障害者にサービス利用料の原則1割負担を求める障害者自立支援法が施行されて5カ月。県内でも利用料の負担増に耐えかね、施設利用をやめたり、減らす障害者が増えている。全国には独自の支援策を決定している市町村もあるが、県内で同様の政策を取る自治体はない。障害者団体や施設からは、県や市町村に早急な対応を求める声が上がっている。
 秋田市内のある通所授産施設では、施行から9月中旬までに通所者30人中3人が施設をやめた。別の50代の男性通所者も施設利用中止を考えている。施行前は月2000〜3000円だった利用料が施行後は月1万8000〜2万円にはね上がったためだ。脳卒中のため右半身まひが残り、障害者基礎年金や工賃など月計約13万円で生活している男性にとって、この負担増は大きい。「もうやめたい」と繰り返す男性側を説得し、つなぎ留めている施設側は、工賃の値上げなども検討しているという。施設長は「切り捨てどころではない。これでは障害者が生きていけない」と同法への怒りをあらわにする。
 国が緊縮財政を進めるなかで支援費の財源確保が困難になったのが、同法施行の背景だ。同法の前には03年に始まった、障害者が自らサービス内容を選ぶ「支援費制度」があった。だが使い勝手のよさから利用者が増加、ホームヘルプなどの在宅サービスに充てる国の当初予算は02年度493億円から03年度516億円、04年度には602億円と膨らんだ。それだけ予算を増額したにもかかわらず、04年度の場合、当初予算と比べてさらに約300億円が不足した。このため、国はサービスを受けた回数ではなく所得に応じて利用料を支払う「応能負担」から、利用回数に応じて払う「応益負担」へ政策を転換した。
 応能負担の場合、障害者の多くが低所得者のため利用料は無料も多かった。だが応益負担では、サービスが必要な障害の重い人ほど利用料が増加する傾向にある。同法は利用料負担について、所得に応じて最大3万7200円の上限や生活保護世帯は無料といった緩和措置を取っているが、障害者の共同作業所の全国組織「きょうされん」の調査により、今年4月から2カ月間で加盟する県内の知的・身体障害者の認可施設7カ所で約230人中5人が退所していことが分かった。
 同法は障害者の自立を促すことを目的の一つに掲げているが、県内では不景気などで障害者の雇用も少ない。従業員56人以上の一般企業には障害者雇用促進法により、障害者の雇用が全従業員の中で1・8%以上を占めるよう義務付けられているが、県内の障害者雇用率は05年1・47%で全国平均1・49%を下回っている。また法定雇用率を達成していない企業は全体の半分以上の293企業にも及ぶ。日本知的障害者福祉協会の三浦憲一・東北地区代表は「高額になった施設利用料を払えない障害者は行き場を失い、引きこもりや市内をうろつく人を生むのではないか」と危惧(きぐ)する。
 地方自治体のなかには独自の支援策を講じる市町村も少なくない。岐阜県可児市は通所授産、通所更生の両施設のサービス利用料の1割負担を全額補助する制度を設けることを決めた。1割負担が作業工賃を上回ってしまうケースが市内の施設で出たため、自立への意欲を阻害しかねないと考え、導入に踏み切った。市福祉課は「雇用の地盤が整っていない地方では就労支援も難しい。自立支援法の趣旨にも合うと考えた」と話している。秋田県内の市町村では「支援策を準備している自治体は確認していない」(県障害福祉課)という。障害者数が最も多い秋田市の障害福祉課は「財源確保が難しく、今後施設に対する調査やアンケートを見極めて(支援策を)検討していきたい」としている。
9月17日朝刊
(毎日新聞)-9月17日11時1分更新
【コメント】各地の自治体で、利用料の補助を行おうという取り組みが聞かれます。利用者にとってはありがたいことです。しかし、すべての自治体で、というわけにはいきません。財政難から補助がまったくないところの方が多いのが実態です。

●ニートと呼ばないで:沿岸地方で初、自立研修講座−宮古など5地区で/岩手
 ひきこもりや不登校、ニートについて理解を深め、自立に向けての手立てについての研修講座を23日の宮古市を皮切りに、沿岸地区を中心に5地区で開催する。沿岸地区での開催は初めて。参加者を募集している。
 盛岡市松尾町のNPO法人青少年自立支援センター「ポランの広場」が主催。これまで講座は盛岡市を中心に開催されてきたが、講座に沿岸地方からの参加者が多いため開催した。
 対象者は学校関係者や家族、本人など。ひきこもりなどの支援をしている相談員が県内の現状について説明しながら社会復帰への道筋について参加者との討論も予定している。
 各地区の日程は次の通り。
 宮古地区(23、24日、市小山田の市民総合体育館)▽久慈地区(30、10月1日、市旭町の福祉の村)▽遠野地区(10月14、15日、市松崎町白岩の遠野健康福祉の里)▽釜石地区(同28、29日、市港町の釜石市港湾会館)▽大船渡地区(11月18、19日、市猪川町の猪川地区公民館)。問い合わせは藤田健事務局長(電話0193・62・5899)。
9月14日朝刊
(毎日新聞)-9月14日11時1分更新

●いのち見守る:福井・東尋坊にて/「胸の内聞いてあげる」/福井
 ◇行政の限界に奮い立つ
 「一度は思いとどまったんだがな。その後に自殺してしまって……」
 03年9月、NPO心に響く文集・編集局理事長の茂幸雄さん(62)が県警三国署の副署長だった時に東尋坊で出会ったカップル。現行法で、警察は自殺企図者(自殺しようとしている人)を基本的に24時間しか保護できない。「東京へ帰りたい」という2人に、交通費を渡して見送ったことを、茂さんは今でも悔やんでいる。
 その時の苦い思い出が、NPOを立ち上げるきっかけとなった。「自殺を思いとどまらせるには、行政では出来ない細やかな配慮が必要なんだよ。まずは胸の内の思いをよく聞いてあげることだね」。茂さんが活動の基本にしていることだ。
  ◇  ◇  ◇
 「海を見ているだけ」。茂さんのパトロールに付き合った昨年11月29日夕、東尋坊の断崖(だんがい)の上に立っていた男性は、そう言ったまま動こうとしない。「何してんの。あんた自殺しに来たんやろ。そんなこと考えたらあかんよ」。ためらいなく自然に近づいた茂さんが、後ろからそっと両脇を抱えてNPOの相談所に連れて帰った。
 持っていたバックに入っていたカード類から、金沢市在住の無職の41歳の男性とわかった。「つらかったでしょう。今日からはもう大丈夫ですよ」。茂さんが声をかけると、男性は医者から自閉症と診断されて就職ができず、1年前に両親が相次いで病死したこと、将来を悲観し自殺しようと東尋坊へ来たことを、泣きながら打ち明けた。
 茂さんは翌日、金沢市役所に出向いて男性の生活保護を申請した。自宅療養する男性は、再起を図ることを考えるまでになったという。
 茂さんは日中、活動費の足しにと観光客に名物の「おろしもち」を販売して過ごす。夕方になるとボランティアの仲間とパトロールに出る。空が闇に向かう前、薄暮の時分に自殺を思い詰める人が一番多く訪れるという。岩場に一人で来ている人はいないか、泣き崩れている人はいないか。ジッと目をこらす。
  ×  ×  ×  いじめ、リストラ、借金苦、介護疲れ――。国内での自殺者は毎年3万人を上回る。「病んで自分を失った人を一人でも救いたい」。福井県坂井市の東尋坊で自殺の予防活動に奮闘する茂さんらの活動を追った。
9月15日朝刊
(毎日新聞)-9月15日20時1分更新


[2006.9.9]

【この頃思うこと】抑うつ気分は内面の堂々巡りから
 抑うつ状態とうつ病が違うことはご存じですね。うつ病は「気分障害」として精神病として分類されるものです。一方の抑うつは、日常生活の中で頻度高く生じる鬱々とした気分の状態を広く言います。財布を落としてしまった、約束していたデートがキャンセルになった、料理を焦がして食べられなくしてしまった、子どもが学校に行き渋るようになってきた、不登校が続いている、イジメを受けているようだが自分からは何も語ってくれない、夫が毎晩残業で遅く話す時間がない、こんなにがんばっているのにだれも自分のことを認めてくれない…。人として生きる上での基本的な生理的な欲求が満たされ、一定の社会生活がなりたっていても、このような気持ちの満足が得られない状態はひんぱんに生じます。
 割り切ってリセットできるものであれば頭の切り替えができて、不満な気持ちを引きずることはないかもしれませんが、割り切ることができず、いくら考えても解決の方向性が見えずに、また内容的に家族や友人にも相談し辛かったり、相談できたとしても一緒に悶々としてしまったりする内容であれば、内面で堂々巡りをしながら時間ばかりが過ぎていく、ということになります。
 こんな時は内容にもよりますが、1.問題をひとまず後回しにして時間を置き別のことに集中してみる、2.今悩んでいる問題が自身の人生においてどれくらい重要なものかを考えてみる、3.問題を一緒に考え整理しながら解決方向に寄り添ってくれる信頼できる第三者の相談相手(カウンセラーなど)の力を借りる、といった方策が考えられます。問題が時間の経過とともに自然と解決してくれる場合は良いのですが、放っておけばずっとそのままとなる問題には、違う角度からのアプローチが必用です。
 いずれにしても、内面の堂々巡りから生じた抑うつ気分は、ストレスを与え続けるものです。一人で抱え込まないで、信頼できる第三者に聴いてもらうことから解決の方向に向かうことは少なくありません。相談室カンナは、そんな場所でありたいと思っています。
 次回は「空を飛んでいる夢をみたら」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

少子化要因は育児世代の長時間労働…厚生労働白書

 厚生労働省は8日、2006年版厚生労働白書を公表した。白書は、少子化の要因の一つに、30代を中心とした育児世代の長時間労働を挙げ、労働者の仕事と生活の調和を実現する働き方の見直しは企業の社会的責任であると強調した。
 国民に対しても、長時間労働を生む原因となる「24時間サービス」「即日配達」など、利便性を際限なく求める姿勢を見直すよう訴えている。
 白書によると、25〜39歳で「週60時間以上」の長時間労働をしている人は、2004年には20%を超え、10年前より4ポイント前後が増えた。仕事以外の時間が足りない状況は、「少子化の一つの要因で、長期的にみて社会の活力を低下させる」と分析。労働者が仕事に偏った生活から解放され、仕事と家庭の調和がとれた状況「ワークライフバランス」の実現を求めている。
(読売新聞)-9月8日10時48分更新
【コメント】
育児世代の長時間労働は、少子化の要因となるとともに、幼児期・学童期・思春期の子どもたちとの親子関係が適度にもたない状態を強います。仕事場における労働者としての役割は重要ですが、家庭に帰れば父親役割、母親役割を果たしながら家庭が子どもの育ちにとってよりよい環境となるようにする義務があることを、企業社会が認識することが求められていると思います。

●「起立性障害は怠け病じゃない」心身医学会が診療指針
 中学生の約1割に見られ、不登校の原因にもなっている「起立性調節障害」の診療指針を日本小児心身医学会が作成した。
 同障害は思春期特有の自律神経失調症で、朝は立ちくらみや頭痛で起きられないが、午後には回復することから「怠け病」ととられることも多い。
 学会では「身体疾患であることを教師や親に正しく理解してもらうきっかけになれば」としている。
 指針の作成にあたった田中英高・大阪医大助教授によると、起立性調節障害の子供は優等生タイプが多く、親らの要求に応えすぎてストレスをためやすい。ストレスが自律神経の働きを鈍らせ、特に立ち上がった時に脳や身体への血流が低下して「朝起きられない」「脈拍が速くなる」などの症状が現れ、約4割に不登校が見られるという。
(読売新聞)-9月7日14時49分更新
【コメント】
「障害」とはいえ、ストレス因によるところの大きなものであり、ストレスが減少すれば(例えば午後になれば)症状が消える、という可塑性の高い疾患です。診療指針の確立は必用ですが、原因であるストレス因を除去する方策を、学校教育の現場とともに考える連携した取り組みが求められます。

●発達障害児ら一貫支援/幼稚園から高校/田村3市町モデル指定/11月から県教委
 県教委は学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症などの発達障害がある子どもたちらの学習環境を整える特別支援教育体制推進事業を11月から始める。田村市、三春町、小野町の田村地方をモデル地域とし、幼稚園から高校まで一貫して支援する。3市町の教育関係者や医師らで特別支援教育推進連絡会を設置し、児童生徒一人一人の障害に応じた具体的な指導法を教員にアドバイスするなど児童生徒の学習の充実を図る。県教委は取り組みを全県に広げたい考えだ。
 連絡会は幼稚園や小中学・高校、養護学校の教員のほか、地元の医師、保健師、各市町教委の担当者、県の児童福祉司らで構成する。小中学校の特殊学級だけでなく通常学級で学ぶ障害の程度の軽い児童生徒も対象とし、児童生徒の現状を把握する。さらに乳幼児健診など幼少期の情報も加味する。
 田村地方の小学校37、中学校15、高校3の全校と管内の全幼稚園を対象に、医師や養護学校教員ら専門家が学校、園を定期的に訪問。障害を持つ児童生徒の授業を見学、教員から状況を聞き、学習進度の調整や注意の仕方など個人個人に合わせた適切な指導法を教員にアドバイスする。
 支援は高校卒業まで継続して実施する。11月の初会合後に具体的な支援策の詳細を詰める。10月には保護者や地域住民を対象とした啓発セミナーを開催する。
 県教委はこれまで、LDなどの児童生徒への支援策として各校の教員1人を特別支援教育コーディネーターに指名していた。コーディネーターの養成研修は実施しているものの、習得した知識をほかの教員に伝える校内研修がなかなか進まず、各教室での児童生徒の支援は十分にできていないのが現状だ。
 さらに、児童生徒一人一人の障害の状況が異なる上、障害かどうか判断しにくい場合もあり、教員は接し方に悩むケースが多かった。また、小学校から中学校へなどの進学時に情報交換しているものの、連携が不十分といった指摘もあり、一貫して支援する体制が求められていた。
 推進事業は国の委嘱を受けた今年度限りの事業だが、3市町は連絡会を継続し、児童生徒の学習環境を維持していく方針。
 県教委は田村地方の成果を県内の各地域に伝え「それぞれの地方の実情に合った特別支援教育の体制づくりを進めたい」(特別支援教育グループ)としている。
 県教委が昨年、県内全公立小中学校を対象に実施した調査によると、LDやADHDなどの可能性がある児童生徒数は全体の4%だった。
(福島民報)2006年09月03日

●講演会:不登校問題を考えよう−10日に松戸で/千葉
 不登校問題をテーマにした広木克行・神戸大発達科学部教授の講演会、「子どものシグナル見えますか〜不登校、ひきこもり…から学ぶこと〜」が10日、松戸市の稔台市民センターで開かれる。
 不登校問題を考える東葛の会「ひだまり」の主催。94年、不登校児を抱える親の会として誕生した。県北西部を中心に活動し、親の会員は約150人、学生などスタッフ27人。
 広木教授は臨床教育学が専門。発達科学部付属養護学校長も務め、少年事件や不登校問題に詳しい。
 「ひだまり」の鹿又克之代表は「不登校に悩む人は社会に潜在している」という。小学校教諭で世話人の岩根宏さんは「不登校は後ろめたい、解消すべきだという考え方が子どもを追いつめる。不登校にどう向かい合うか、講演会に来てもらい一緒に考えたい」と話す。
 講演会は午後1時から。会費1000円。問い合わせは「ひだまり」(電話047・361・8757)。
(毎日新聞)-9月6日12時1分更新
【コメント】
平成17年度の学校基本調査の結果が出され、不登校は実数こそ減ったものの、少子化の中で子どもの数自体が減っているために比率としてはむしろ微増。特に中学生では2.75%(36人に1人の割合)と高い数値に伸びています。自治体によっては「不登校数の半減」などの数値目標までかかげて取り組んだところもあるようですが、効果はほぼ見られません。不登校「対策」への視軸を早く見直してほしいものです。


[2006.9.3]

【この頃思うこと】自分に問題があるのか、環境に問題があるのか
 自身が望んだ人生を送れている、と言える人は、何%くらいいらっしゃるのでしょうか。多数の人が、「自分の夢は○○だった」、「あの時、もう少しがんばっていれば…」、「あの時の選択はやはり違っていたのでは…」などと、かつての希望や理想と現実とのギャップについてやや否定的に考えられるのではないでしょうか。
 思い描いていた未来とは違う現実に立っておられる場合、1.その原因を自分の努力不足や判断間違いとするのか、2.自分の理想を邪魔した環境に原因があるとするのか、あるいは、3.それらの相互関係の中で織りなしてきた結果であると受け入れるのか、で、これからの生き方が大きく変わると言っても過言ではないと思います。
 自己責任化は現代日本における風潮ともなっているようですが、高度に成長した社会環境において、自分一人の力で人生を左右していけることはまずあり得ません。また、2.のように、責任を外界に転嫁して済ませるような簡単な問題でもありませんね。己があり、己の意志があり、環境要因があり、社会的な枠組みとの関係性があり、偶然の巡り合わせがあり、それらが複雑に絡み合いながら一つの方向性としての今を生きているのです。自らの意志のありのままを受け入れ、環境を知り調整を図りながら、次の生きる方向性を探していく、人生はその繰り返しではないでしょうか。
 今まで生きてきた自身の人生の軌跡は、誰のものでもなく自身の生きた証であり、未来の軌跡は自身の前に刻まれて行く、そんな考え方をしたいと思います。
 次回は「抑うつ気分は内面の堂々巡りから」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

公立小中校長の9割「学力格差、将来広がる」

 公立小中学校長の約9割が、「20年前に比べて家庭の教育力が低下している」と受け止め、「将来、学力格差は広がる」と見ていることが29日、東京大学基礎学力研究開発センターの全国調査で明らかになった。「教育改革がはやすぎて現場がついていけない」と感じる校長も9割近くにのぼっており、改革に戸惑う現場の実態も浮き彫りになっている。
 調査は先月から今月にかけ、全国の小中学校の約3分の1の1万800校を対象に行われ、約4割の校長から回答が届いた。
 それによると、「子どもの学力が20年前に比べ下がった」とみるのは小学校で42%、中学校では57%。小学校の76%、中学校の65%が「子どもを教えにくくなっている」と答えた。
(読売新聞)-8月30日3時11分更新
【コメント】「家庭の教育力」が、今に比べて20年前にそれほど高かったというデータはないと思います。高度経済成長の最中、父親は仕事に追われて家庭に居る時間は少なく、母親も共稼ぎで、家庭において子どもを教育する時間など物理的になかったと思いますし、この頃は受験競争を勝ち抜くための塾通いなど、産業的教育サービス依存が進んでいたと思います。「学力」の評価も、その基準は文部省、文科省によってどんどんと変わっていきました。「現場がついていけない」というのは本音であると思います。「子どもを教えにくくなっている」のは、子どもに原因があるのか、家庭に原因があるのか、教師に原因があるのか、学校に原因があるのか、教育制度に原因があるのか、社会環境に原因があるのか、この議論はえてして徒労に終わりそうです。「学力格差」の広がり予想、この問題の本質論議をしっかりとして欲しいと思います。

●学校に“通信簿”…文科省が現場取り組みを5段階評価
 文部科学省は、小中学校の授業内容や学校運営などを客観的に評価する統一基準を定め、各学校を「評定5」から「評定1」の5段階で評価していく方針を決めた。
 国が、学校現場の取り組みを数値で評価するのは初めてで、今年度は全国124の公立小中学校で試行する。これまでも教職員や保護者ら学校関係者による学校評価は行われていたが、今回の5段階評価は、学校と直接かかわりのない第三者が各学校の真の実力を見極め、教育の質の向上につなげるのが目的だ。
 9月から始まる評価の対象となるのは、47都道府県と15政令市にある公立の小中学校各1校。文科省は来年度以降も対象を拡大し、将来的には私立や国立も含め、幼稚園や高校などへの評価も検討する。
(読売新聞)-8月28日3時9分更新
【コメント】各学校に「特色ある学校づくり」を求めていたかと思えば、今度は評価の統一基準を定めるそうです。アンビバレントな施策に、また現場も親も子どもたちも振り回されてしまいそうですね。

●思春期やせ症-発見の遅れ命取りに
 思春期のやせ願望から、無理なダイエットをしたり、食べても吐いたりするなどの異常な食行動を続ける「思春期やせ症」の子どもが増えている。厚生労働省研究班が予防、早期発見などの診療指針を作成し、早期の発見と対処を呼びかけている。
 成長期なのに体重が大きく減る状態を経験したことがある女子は、中学3年で5・5%、高校3年では13・2%にも上る。
 学校、家庭、友人関係など、思い通りにならないストレスを抱える中で、「芸能人のようにスリムになりたい」「細身の服を着たい」といったささいな自己実現への欲求が、無理なダイエットに走るきっかけになるとされる。
 一般には拒食症と言われるが、特に思春期の子どもは、将来の健康に及ぼす影響が大きいことから、思春期やせ症(神経性食欲不振症)と呼ぶ。男女比は1対10で女性が圧倒的に多い。
 極端にやせると、栄養失調から、血液中の糖分が不足し、元気が出ず、不眠や疲労感が現れる。脳の働きが低下し、精神的に不安定になったり、ホルモンバランスが乱れ、成長障害や不妊の原因になったりする。
 少ない栄養で生きのびようとするため、心拍が遅くなり、心不全の危険も招く。このため、死亡率は国内外の研究で6〜10%にも上る。
 深刻な病気で、ゆがんだ食習慣や自分の体のイメージを修正していく地道な努力が必要だ。
 厚労省研究班は、早期発見し医療機関を受診する基準として、〈1〉身長などから算出する肥満度がマイナス15%以下〈2〉身長体重の変化をグラフにした成長曲線で、体重が前年より1段階以上(おおむね5キロ・グラム)減少〈3〉安静時の脈拍が1分間に60回を下回る――を目安としている。
 本人が進んで医療機関を受診することはほとんどない。やせることが心地良く、他人から見たイメージも良いと思いこむからだ。健康なら空腹感や体の不調は苦痛だが、脳内麻薬物質の分泌により心地良いと錯覚している。このため、体重が20キロ・グラム台になるまで平気な場合も少なくない。
 「早期発見しないと生命に危険が及ぶばかりでなく、完治させるのが非常にやっかい。学校、地域の小児科医らの連携が欠かせない」と、厚労省研究班班長で慶応大小児科講師の渡辺久子さんは言う。
 治療では、ゆっくり時間をかけながら、十分な栄養を取れるようにする。親子関係のすれ違いなどから、子どもの心の奥の孤独や自信のなさを親が理解していないことも多いことから、親など家族の心理支援も必要になる。重症の場合は1年以上の入院が必要な場合も珍しくない。
ケース1
 中学3年のA子さんは、身長161センチ、体重52キロ・グラムと健康だったが、1年後には体重が46キロ・グラムと6キロ・グラムも減っていた。養護教諭が事情を聞くと、友人関係の悩みから食欲がなくなり、月経も3か月止まっていた。 精密検査を受けたところ、性、甲状腺などのホルモン値が低くなっていた。小児科医は栄養の必要性を説明し、3度の食事内容を細かく記入するなどの指導をした。幸い健康に大きな問題はなく、半年ほどで回復した。
ケース2
 9歳で重度の思春期やせ症と診断されたB子さんは、家では母親に常に指図してわがまま放題。だが、心の底から甘えることや、両親の愛情を感じることができない欠落感を抱え、それが食事の拒否につながっていた。 カウンセリングなどの治療は7年目。高校生になってようやく、自分の感情を親に伝えることができるようになり、食事の習慣も正常に戻りつつある。
(2006年8月25日読売新聞)

●全公立小で“放課後教室”…共働きには時間延長も
 文部科学省と厚生労働省は、来年度から全国すべての公立小学校で、放課後も児童を預かることを決めた。
 スタッフは教員OBや地域住民で、勉強やスポーツのプログラムを用意して、児童が放課後を学校で過ごす環境を整えるほか、共働き家庭の子ども向けには、さらに時間を延長する。
 子どもが安心して遊べる居場所づくりや、子育ての負担軽減による少子化対策につなげるのが目的で、2007年以降、大量退職する教員に活動の場を提供する狙いもある。両省では、来年度の総事業費として約1000億円を見込んでいる。
 今回の事業は、全児童対象の時間帯と、それ以降の、親が留守の家庭の子どもを対象とする時間帯の2本立て。小学校内での活動が基本で、空き教室や体育館、校庭などを利用することを予定している。
(読売新聞)-8月29日14時41分更新
【コメント】放課後の子どもの居場所が必用であるとして「学童保育所」を作る運動が全国的に展開され法制化されるに至りましたが、これに抵抗し続けてきたのが政府と多くの自治体でした。

●保護者から理不尽な要求、悩む教師を大阪市が支援
 小中学校の教師に、保護者らから厳しいクレームや要望が集中し、過度な負担を強いられている実態が1日、大阪市の市政改革本部が行った調査で分かった。同様の調査は、学識経験者が実施した例はあるが、自治体としては全国初。教師への理不尽な要求が広がっている状況が改めて浮き彫りになり、市は「現場支援プロジェクト」を発足。本格的な対策に乗り出した。
 市内の小中学校から無作為に6校を選定。教師を中心に、校長や教頭、保護者ら計約40人から現場が抱えている悩みや問題点について、対面式で聞き取りを行った。
 この結果、「勉強ができないのは学校のせい」「共働きなので、インフルエンザで学級閉鎖になっても、保健室で寝かせてほしい」など、理不尽な要求が数多く学校に寄せられていたことがわかった。
 クレームが解決するまでに時間がかかるケースも目立っており、市はその処理に追われ、教師としての本来の技能を磨く時間が奪われている可能性があると懸念。教師らのこうした悩みを解消して、教育環境をよくするため、本格的な対策に乗り出した。
 市政改革本部と市教委は連携して課題を整理し、解決策を検討。改善に向けたプログラムを作成するとともに、モデル校を設定する方針という。
 市によると、教師らを取り巻く問題の対策は、これまで現場任せにしてきた実態があったといい、自治体としてバックアップ体制を整えることが不可欠と判断した。
 市教委は「教師が疲弊していては良い教育は行えない。子供のためにも教師が元気になる取り組みを行い、教育環境を整えたい」としている。
(産経新聞)2006/09/0210:45
【コメント】確かに保護者のニーズは「多様化」しています。中には「理不尽」なものもあるでしょう。その「理不尽」さを保護者に理解してもらうことも、学校に求められている、そんな時代になったのですね。クラス懇談会などを開いて、保護者と学校とが対話を広げることが、教育環境を整えるための近道ではないでしょうか。教育行政の中での抱え込みで、問題解決が進んだ例を知りません。

●障害者自立支援法:障害者5団体、初の合同集会 施行前に1000人が参加(東京
 知的・発達障害者の保護者や施設関係者でつくる都内5団体による「障害者自立支援法対策東京集会」が2日、新宿区市谷田町で開かれた。来月1日の同法完全施行を前に、当事者と事業者が立場を超えて福祉サービスの改善を目指すのが目的。5団体合同の集会は初めてで、約1000人が参加した。
 集会では、厚生労働省が8月24日の全国主管課長会議で、利用者負担の軽減対象を拡大した点などについて一定の評価をした。しかし、障害程度区分の判定結果や、利用者負担に対する自治体独自の軽減措置の有無により地域間格差があるなど、問題点も指摘された。
 最後に「障害者の特性が反映される障害程度区分への見直し」「所得保障・諸手当の拡充」など8項目の緊急アピールを採択した。
(毎日新聞)-9月3日11時3分更新
【コメント】10月1日から、全国の障害者支援サービスを行っている施設などにおいて、大変な事態がはじまります。この「自立支援」は障害者のためのものではなく、政府の「自立支援」策である、という指摘もうなずけます。


[2006.8.27]

【この頃思うこと】しんどさを感じる時のコーピングあれこれ
 その日の仕事や取り組みを終えられた時に感じるしんどさは、ほとんどの方にあると思います。ここで取り上げたいのは、肉体的な疲れを伴わない場面で、気持ちがしんどさを感じる時の対処法についてです。恐らく睡眠を十分にとることが具体的で効果的な対処法だとは思いますが、状態によっては寝付けない、中途で目覚めてしまって寝られないなど、睡眠自体が不足してしまっているケースも少なくないでしょう。
 しんどさは気分の状態ですから、気分を変えることができれば解消できるわけですが、それがなかなか難しいですね。自己に対して否定的な感情を抱いてしまいしんどくなられる、解決困難な問題に直面し自己の責任で問題解決が迫られているのに解決策がまったく浮かんでこない、どうしようもない自体を受け入れざるを得ない状況にある、など、不安、緊張、嫌悪感、怒り、否定感、恐怖感はその人の精神世界を支配してしまいます。
 そんな時に、少しでも楽になれる方策を考えてみましょう。1.自身の感情・気分を理解する。なぜ自分はその問題をそう考えているのかを考えてみることです。2.自己評価を一定に保つ。問題に直面していても、そのことによって自身の人格価値が下げてしまう必用はない、と考えることです。3.ダメージのレベルを数値化してみる。今抱えているしんどさは、平静を0点、破滅を100点としたときに何点くらいに位置するか考えることです。
 これらは、自然と考えてしまう自動思考から、より合理的な考え方に変換する作業になります。考え方が変われば、気分は変わります。目の前の問題を現実的に分析し、違う角度から見つめてみることで認識が大きく変わることが少なくありません。気分転換として趣味の時間を持ったり、家族や友人とおしゃべりをして思考の内容をすっかり入れ替えてみることでストレス解消をされている方は多いと思いますが、しんどさが重く、継続する場合には上記のような考え方、見方の座標軸の入れ替えをされてみてはいかがでしょうか。
 次回は「自分に問題があるのか、環境に問題があるのか」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

<自殺中2遺族>長崎市を提訴…「安全配慮怠った」と

 長崎市立小島中学で04年3月、生活指導中に飛び降り自殺をした安達雄大君(当時14歳)の両親が22日、「不適切な指導で自殺に追い詰められ、学校側に安全配慮義務違反があった」として同市に約9000万円の損害賠償を求める訴えを長崎地裁に起こした。長崎県内では昨年夏から今年にかけて中高生の自殺が相次いだ。両親は「理由がしっかり検証されないまま、次の悲劇が起きている。雄大の自殺の真相を究明することで再発防止に役立てたい」と話している。
 訴状によると、雄大君は同中2年生だった04年3月10日、校内でライターを持っているところを見つかり、担任教諭や学年主任から喫煙を巡って掃除用具庫や多目的室で生活指導を受けた。指導の途中で「トイレに行きたい」と1人で教室を出て、そのまま校舎4階から飛び降りて死亡した。
 両親は▽狭い掃除用具庫や薄暗い多目的室での指導で、精神的に追い詰めた▽友人関係を最重要視する思春期に、他に喫煙している生徒を密告するよう強制され、屈辱的な心境になった▽連帯責任を問われて部活動が停止になるかもしれず、友人に迷惑を掛けると自責の念に苦しんだ――ことが、自殺の背景にあると主張している。
 両親は、これまで再三にわたって市教委に原因究明と詳細な調査を求めてきたが、納得できる回答が得られなかった。さらに、市教委がこの件を県教委に「転落死亡事故」として報告し、自殺として認めていないことが分かり、市教委の姿勢に不信感を強めた。
 提訴後に会見した雄大君の母和美さん(44)▽父敏昭さん(44)は「昨年度は長崎県内で子どもの自殺が9件と、短期間に多発している。一つ一つの事案に対して丁寧に検証する必要があるのに、雄大のケースも真相が分からぬままだ。このまま黙っていることはできず、私たちに残された手段は提訴しかなかった」と語った。さらに「お金が欲しくて裁判を起こしたわけではない。裁判を通して真相を究明し、雄大のような悲劇を二度と起こしてほしくない」と述べた。
 提訴について長崎市教委は「訴状を見ていないので、今は何も申し上げられない」と話している。
(毎日新聞)-8月23日11時16分更新
【コメント】死を決意した時の雄大君の気持ちに寄り添った調査、検討、そして判決を望みます。雄大君の自死を「転落死亡事故」として処理するという市教委の姿勢、教育の現場にいる大人として極めてさもしいものと思います。

●全県立の全病院を民営化へ 福岡、財政悪化が影響(福岡県)
 福岡県は平成19年4月から県立病院すべてを民営化する。恒常的な赤字による財政悪化が理由で、同県によると全病院民営化は全国で初めて。ただ、自治体病院の在り方として疑問を指摘する関係者もいる。
 県立病院は柳川、嘉穂、朝倉、遠賀、太宰府の5病院あった。朝倉、遠賀、太宰府の3病院は17年4月にすでに地元医師会など民間に移譲しており、残る2病院の民営化に向け、移譲先の選定を進めている。
 同県は5年から県立病院の経営改革に取り組んでおり、非診療部門の民間委託や職員定数の削減などを実施したが、赤字体質から脱却できなかった。
 県担当者は、大学病院が拡充されるなど医療提供体制が充実し、県立病院の役割が希薄化しつつあることも民営化の要因だとしている。
 全国自治体病院協議会によると、10年から18年までに民間移譲された自治体病院は全国で16病院あり、検討中も4病院に上るという。
 同協議会長の小山田恵岩手県立病院名誉院長は「自治体病院は地域のニーズでできた病院。民営化すると経営が主となり、医療の質が保てるか確証はない」と懸念する。
 さらに「すべてを民間移譲する福岡県の例は残念だ。住民が求める医療を提供できていなかったのだろう。自治体病院は住民とコミュニケーションをとりながら運営する姿勢が必要だ」と指摘した。
(産経新聞)-8月21日8時2分更新
【コメント】民間依存でスタートした日本の医療がまたしても民間依存に。社会保障、保健福祉の理念に基づいた議論が求められていると思います。

●学校の要望で医師ら派遣 発達障害児支援へ本腰
 厚生労働省は23日、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害がある児童、生徒らへの支援を拡充するため、2007年度予算の概算要求で本年度の4・4倍に相当する12億円の対策費を要求する方針を固めた。小中学校などから要望があれば医師ら専門家を派遣したり、卒業後の就労対策などを拡充する方針で、見過ごされがちだったこれらの障害のある子らへの支援に本腰を入れる。
 専門家の派遣は、これまではモデル的に一部の学校などだけで実施してきた。07年度からは体系的な事業として、要望があった場合に発達障害への対処について専門的トレーニングを受けた医師や保健師などを派遣したい考え。小中学校のほか、卒業生らが通う障害者施設も対象となる。事業主体は地方自治体で一定額を国庫で負担する方針。
(共同通信)2006年8月23日(水)

●<いじめ自殺>中1男子が遺書残し 市教委事実認める(愛媛県)
 愛媛県今治市の島しょ部にある市立中学1年の男子生徒が今月17日、学校でいじめにあっていることをほのめかす遺書を残し、自宅近くの路上で首をつって自殺していたことが分かった。市教委は言葉などによるいじめの事実を認めており、中学の校長は「小学校から言葉の暴力を受けて傷つく傾向があると聞いていたが、自殺するほど悩んでいることに気付かなかった。真摯(し)に反省している」としている。
 市教委などによると、17日午後4時ごろ、生徒が自宅から数キロ離れた電柱で首をつっているのを通行人が発見。自宅の勉強机の中に「『貧乏』や『泥棒』などという言葉に傷つき、生きていることが嫌になった」という内容の遺書があった。
 中学校は18日に全校集会で事情を説明し、全校アンケートなどで「同様の悩みがないか」を聞いた。市教委は生徒の相談などに応じるため、19日に臨床心理士3人を中学校に派遣した。
 同校は全校生徒100人以下の小規模校で、ほぼ全員が同じ小学校の卒業生。市教委は「生徒は小学4年ごろから言葉によるいじめを受け、学校としては注意して見守っていた」としている。今治市の倉永忠・教育長は「いじめに対する取り組みを全小中学校で見直し、再発防止を図りたい」と話している。
(毎日新聞)-8月24日12時10分更新

●中1男子が自殺、「いじめあった」と学校が両親に謝罪
 愛媛県今治市立中学1年の男子生徒(12)が17日、同級生らからいじめられていたことをほのめかす遺書を残して自殺していたことがわかった。学校側はいじめがあったことを認め、両親に謝罪した。
 市教委などによると、男子生徒は17日午後5時ごろ、自宅近くの山林で、首をつって自殺しているのが見つかった。自宅の部屋に「貧乏、臭いなどと、自分にとって苦しめられることを言われた」という内容の手書きのメモが残されていた。
 市教委は「男子生徒が小学校の時から言葉によるいじめを受けていたとの報告を受けていながら、中学校側の対応が不十分だった。二度といじめが起きないよう、対策をとりたい」としている。
(読売新聞)-8月24日12時17分更新

●ニートに「発達障害」の疑い、支援に心理専門職も
 仕事も通学もせず、職業訓練も受けていない15〜34歳の若者を指す「ニート」について、厚生労働省は就労支援の内容を見直す方針を決めた。
 ニートの一部に、「発達障害」の疑いのある人が含まれていることが、同省の調査で判明したため。実態をさらに把握したうえで、支援機関に心理などの専門職を配置するなど、きめ細かい支援のあり方を検討する。
 調査は今年6月、首都圏などにあるニートの就職・自立支援施設4か所を選び、施設を利用したことのあるニートの若者155人について、行動の特徴や成育歴、指導記録などを心理の専門職らが調べた。
 この結果、医師から発達障害との診断を受けている2人を含む計36人、23・2%に、発達障害またはその疑いがあることがわかった。
 発達障害は、生まれつきの脳の機能障害で、自閉症や注意欠陥多動性障害などが知られている。コミュニケーションが苦手なことが多く、就職の面接試験で失敗を重ねたりするが、就職して存分に能力を発揮することも少なくない。
 調査では、「人との距離感が分からず、顔を必要以上に近づける」(26歳男性)、「その場の空気が読めず、じっとしている」(20歳女性)などのコミュニケーション問題や、「口頭の作業指示では理解できず、実演が必要」(16歳男性)など、発達障害特有の行動が確認された。
 厚労省によると、発達障害のある人は、集団で行動するニート支援施設を利用しない傾向がある。このため、「支援施設に来ない人を含めると、割合がさらに高くなる可能性もある」(障害者雇用対策課)という。
 ニートの就労支援では、一般的に、規則正しい生活を送る訓練や、企業での就労体験、資格取得の勉強などが行われている。
 一方、発達障害がある場合は、作業訓練のほか、援助者の確保や同僚の理解促進など、働く場の環境整備が中心となる。具体的には、福祉機関などと連携して個別の支援計画を作ったり、企業を啓発したりすることが求められている。
 発達障害者の就労支援に取り組む大妻女子大の小川浩教授は、「ニートの支援には、職業体験など、発達障害者にも役立つものもある。だが、社会性やコミュニケーション能力を高めるため、『頑張ればできる』という発想で訓練するのは、発達障害者には強度のストレスとなり、うつなどの二次障害を生じさせる」と指摘している。
 調査結果について、NPO法人・青少年自立援助センター(東京都福生市)の石井正宏・若者自立塾副塾長は、「実態がある程度明らかになったことで、早めの支援につながるのではないか」と話している。
(2006年8月24日3時14分読売新聞)
【コメント】「ニート」と呼ばれることになった人たちは青年・成人です。発達障害に社会的な関心が高まり、医療や支援の必要性が説かれはじめてまだ数年、青年・成人の発達障害を診断できる医師や支援にあたれる「専門職」は全国にどれだけいるのでしょうか? さらに、「ニート」という名詞が一人歩きし就労支援など具体的な支援策が一定進展する中で、ひきこもり対策はほとんど放置されたままであるのはなぜでしょうか? 国や自治体がやり残してきたことが社会問題化し、重い腰を少し上げ始めたところですが、まだ、ひきこもりに対しては無策なままと言っていいでしょう。

●発達障害など対応へ教員確保=3年間で1450人−文部科学省
 文部科学省は23日、発達障害を抱える子どもへの教育や食育指導の充実に向け、2007年度から3年間で教員計1450人の確保を目指す方針を固めた。全体の約6%に上るとされる発達障害を持つ小中学生の支援や、05年度に導入された栄養教諭制度の定着を目指す。
 具体的には、学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などを持つ児童・生徒が、通常学級に在籍しながら支援を受ける「通級指導」の指導要員と、食育指導の中核を担うことが期待されていながら、十分に定着していない栄養教諭の増員が柱となる。公務員の総人件費改革で、公立学校の教職員も定数削減が求められているが、同省はこうした対策のための教員確保は必要と判断した。
 07年度分は、通級指導311人、栄養教諭20人を加配する計画。ただ、先の国会で成立した行政改革推進法は、教職員に関し「児童・生徒の減少に見合う数を上回る数の純減をさせるため必要な措置を講じる」と規定しており、特定分野の加配には他の分野の削減が必要となる。
 同省は、学校運営の合理化により、給食や事務関係の職員の削減も可能とみて、こうした職員の削減数も教員の加配分に充てたい考え。しかし、国庫負担対象外の職員の削減を教員の削減分として数えることには、財務省や自治体などに反発もあり、調整は難航も予想される。 
(時事通信)-8月24日7時0分更新
【コメント】特別支援教育は、人も金も出さない、というところからスタートしました。しかし、実際に支援を必要とする児童・生徒への関わりをすすめていく上で、体制的に人も金も必用なことがやっとわかったということでしょうか。

●厚労省が発達障害に標準支援策、拠点整備し指針発信へ
 厚生労働省は来年度から、自閉症や学習障害などを持つ発達障害者の標準的な支援策作りに乗り出すことを決めた。
 この支援策を、全国の医療機関などに発信する「発達障害対策情報センター(仮称)」も創設する。
 発達障害については、医療機関や施設、学校によって治療も対応もばらばらなのが現状。科学的な分析に基づいた支援策を普及させ、全国どこでも適切な支援を受けられる体制づくりを目指す。
 発達障害の子供は、その接し方や幼児期の治療などによって、その後の生活状態や社会への適応状況も変わるとされるが、標準的な対応方法が定まっておらず、施設や医師などによって、支援レベルも異なるという。
(読売新聞)-8月25日14時33分更新
【コメント】発達障害をお持ちの子どもたちに関わったことのある方ならおわかりかと思いますが、一人ひとりに個性があり、障がいのレベル、本人の生育環境や状態像の違いがあります。標準的な対応方法をあてはめることが可能とは思えませんし、そのことで要らぬ生きにくさが加わることが懸念されます。


[2006.8.20]

【この頃思うこと】相手の人格を尊重すること
 「相手」といってもいろいろありますが、今回は「子ども」について考えてみたいと思います。
 基本的人権が子どもにも保障されるべきことを国際的に定めた「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、1989年11月20日に国連総会において採択され、2003年7月現在で192の国と地域が締結しています。その中では、「児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきである」「児童が、社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきであり、かつ、国際連合憲章において宣明された理想の精神並びに特に平和、尊厳、寛容、自由、平等及び連帯の精神に従って育てられるべきである」ことを考慮すべきとされ、人格の発達の保障がうたわれています。どの子どもにも生まれながらに「人格」があり、肉体的・精神的成長が、人格も「完全かつ調和のとれた」発達の中ですすめられるべきものとされています。
 身辺自立の途上にある乳幼児であっても、この人格は尊重されるべきです。もちろん、発達の初期段階にあり、大人による世話やしつけが不可欠ですが、人として尊重されなければなりません。そして、自立への課題に向かう思春期においては、一人の大人としての関わりが、その子の健全な精神的発達を促進するとされています。「あれもできない、これもできない」「まだまだ未熟だ」と、ついつい子ども扱いをしてしまう思春期ですが、子どもの気持ちはどんどん大人に向かっていますので、できないことへの非難・否定ではなく、向かうべき方向に導いてあげるべきです。
 一人の人間として認められながら育った子どもには、自分がありのままでいいという自己を肯定する気持ちと、自己効力感が養われ、自信に満ち、積極的に社会と関わり生きていく志向性が育ちます。
 人間は10数年という時間をかけて子ども期を卒業していきます。この最も大切な成長過程の大半は学齢期と重なり、学校社会に身を置きます。家庭と学校、地域が子どもの育ちを保障することの大切さを、改めて見つめ直す必用があると思います。
 次回は「しんどさを感じる時のコーピングあれこれ」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

発達障害児者、支援体制を整備へ-県が委員会設置(沖縄)

 自閉症や学習障害など発達障害児・者の総合的支援体制の整備を目指し県障害福祉保健課は15日、「県発達障害者支援体制整備委員会」を立ち上げ、県庁で第1回会合を開いた。県が発達障害に特化した取り組みを行うのは初めて。
 委員らは、相談業務や就労支援を総合的に行うため10月にも設置される「発達障害者支援センター」の業務委託先の選定方法などについて意見を述べた。県は21日以降に委託団体の公募を始める。
 発達障害児は出生児の約5%と算定され、県内でも近年、相談件数が急増している。適切な支援によって状態が改善することから、支援体制の強化が求められている。
 同センターでは相談業務や発達支援、就労支援、普及啓発活動を行うほか夜間や緊急時の対応や一時保護なども行う。同委員会が、応募のあった社会福祉法人やNPO法人などから運営団体を選定し、県が業務委託する。初年度の予算は約1090万円で、国と県が2分の1ずつ負担する。21日以降に公募を始め、10月中旬に決定する。
 委員からは、同センターに対する県の役割を明確にすることを求める意見が複数出たほか、「相談業務は一カ所では無理。連携こそが大事だ」「年齢によって抱える問題も違う。ネットワークを生かした連携がないと良い支援はできない」などの意見があった。
琉球新報(8/1616:01)
【コメント】全国の都道府県で発達障害者支援センターがまだできていないところは残り1ケタになっています。「作ればいい」というものではもちろんありません。ここで言われている連携の必要性、年齢によって違う課題などは重要な問題です。とりわけ、青年期以降に発達障害であることがわかった方々への支援が、手薄であることは、全国に共通しているようで、今後の大きな課題となると思われます。

●「給食費は義務教育の範囲内でしょ!」ブチ切れ保護者から教師を救え!?
 「うちの子と○○ちゃんは仲が悪いみたいなの。今すぐクラスを別々にしてもらえます?」
 これはある保護者が学校の教師に突きつけた要求。受け入れられるわけがないだろう、と耳を疑いたくなるようなこの発言。関係者によると、こんなのはまだまだ序の口らしい。中にはとんでもない無理難題を要求する親たちが急増しているというのだ。大阪大学の小野田正利教授を中心に発足した「学校保護者関係研究会」は、教師が頭を悩ます“理不尽な親たち”について、その原因究明と対策に乗り出しているという。
 「本来学校側に対して保護者が要求をするというのは、まったく問題のない行為です。ただ、最近の保護者の要求は度が過ぎています」(東京都福生市教委参事嶋崎政男さん)
 このほか、「義務教育だから給食費は払わない!!」「うちの子は箱入り娘で育てたい。誰ともケンカさせないという念書を提出しろ」「保護者会に参加するために会社を休んだから休業補償を支払え」などの要求のほか、しまいには「うちの子がけがをして学校を休む間、けがをさせた子も休ませろ」と言ってくる親まで・・・。
 これでは教師があまりにかわいそう。しかし親御さんたちの要求をむげに扱うわけにもいかない・・・。
 「そうなんです。このような無理な要求に対応しようと頑張って、心も病んでしまう教師はたくさんいます。また真剣に向き合うあまりに、教師と保護者が敵対関係になってしまうことも」(同)
 こうしたケースに教師たちはお手上げ状態のようだ。文科省調査によれば、全国の公立小中学校で精神性疾患による教職員の休職者は10年前のほぼ3倍に。小野田教授の調査によると、小中学校・園の8割が「無理難題な要求が増えた」と回答しているんだそう。その背景には教師の能力に問題がある場合も多分にあるが、保護者のコミュニケーション能力の低下が主な原因としてあげられる。
 教師と保護者が手を結んでいかないと“いい教育”は子供たちにできないのではないか。子供かわいさゆえのこの行動も、ここまでくると考えものである・・・。
Livedoor'NEWS2006年08月11日21時14分
【コメント】今の学齢期の子どもたちをもつ親たちの育った時代背景や、現代の日本の競争主義がはびこる経済社会的環境や経済格差社会、その中で作られた価値観を見つめ直してみる必用があると思います。それらの矛盾が、こうした教育現場などの局面で露呈しているものと思われます。

●障害者条約に基本合意も 月内に国連特別委員会
 【ニューヨーク15日共同】国連は15日までに、障害者に対する差別をなくし、健常者と同様の権利の保障を各国に求める「障害者権利条約」策定のための特別委員会第8回会合を開いた。マッケイ委員長(ニュージーランド国連大使)は同日の記者会見で、月内にも条約内容について特別委で基本合意できる可能性があると述べた。
 障害者を対象にした国連の主要な人権条約は初めて。合意できれば9月からの国連総会での採択を目指す。世界には人口の1割に当たる約6億5000万人の障害者がいるとされ、条約採択は「障害者に対する認識を変える大切な一歩」(国連)と期待されている。
 特別委員会は、2001年12月に設置が決まり、これまでに7回の会合を重ねてきた。今回の会合は14−25日。マッケイ委員長は「今回の会合が終わるまでに(条約内容の基本合意を)完了する十分な可能性がある」と述べた。
山陽新聞(8月16日10時17分)
【コメント】障害者の人権をめぐって、国際的に重大なエポックとなる作業がすすめられていました。注目していきたいと思います。

●「つらいのは本人」 ひきこもり者支援フォーラム
 ひきこもり者支援フォーラム(県立総合精神保健福祉センター主催)が12日、那覇市の県総合福祉センターゆいほーるで約150人が参加して開かれた。中本昌子さん(58)=与那原町=が家族からのメッセージとして、今は就職した息子(27)との体験談を紹介。「息子のためだと思っていたしつけが、いい親でありたいと思う私のためだった。本当につらいのは息子だった」と述べ、苦しむ人の立場に立つよう訴えた。
 講演した緒方明熊本大学教育学部・同臨床心理士大学院教授は、厚生労働省が1年間で精神保健福祉センターや保健所を2回以上訪れた人や家族を対象に行ったひきこもり調査結果を説明。
 調査によると、小、中、高、大学のいずれかで不登校経験のある人が61・4%。不登校経験者で就労経験のない人が63・1%だった。緒方教授は「ニートの中にひきこもりがあり、不登校からひきこもりへ移行しているのではないか」とした。
 また「精神保健センターでは、家族教室や電話相談などを行っているが、就労にはつながらない割合が多い」とした。企業に対しては「メンタルヘルスを理解してもらいたい。講習会などで知識を得ると広がっていくと思う」と支援を求めた。
(琉球新報)8月14日10時6分更新

●君が代・日の丸問題で自殺、高校長に「公務災害」認定
 卒業式での君が代斉唱と日の丸掲揚の完全実施を巡る問題に悩み、式前日の1999年2月に自殺した広島県立世羅高の元校長(当時58歳)について、地方公務員災害補償基金広島県支部(支部長=藤田雄山知事)は17日、自殺は職務に起因するとして、公務災害と認定した。
 県教委によると、文部省(現文部科学省)から是正指導を受けた県教委が99年1月、君が代斉唱などを完全実施するよう県立学校長に職務命令を出したのを受け、元校長は連日、深夜まで教職員と会議を重ねたが、交渉は難航。同年2月28日、自宅で自殺した。
 この自殺がきっかけとなり、同8月に国旗は日の丸、国歌は君が代と定めた「国旗・国歌法」が制定された。
(読売新聞)8月17日21時53分更新

●職業能力開発拡充へ 多様なIT訓練 京都府、障害者の就労支援
 京都府は、障害のある人の職業能力開発の拡充に乗り出す。現在の高等技術専門校を再編し、障害者向けの多様なIT訓練を充実。また、訓練から就職、職場定着までワンストップで対応するため、関係団体で構成する「自立就労支援協議会」(仮称)を設置する方向で検討している。
 府は2004年度から3年間、国のモデル事業として府立高等技術専門校京都校(京都市伏見区)、同福知山校(福知山市)で障害者の訓練を実施。従来の短期訓練で約40%だった就職率が60%に上昇し、生活に身近な地域で多彩な訓練が受けられると好評だった。
 このため、こうした成果やノウハウを活用し、07年度から総合的な就労支援対策に取り組むことになった。
 対策の柱は、職業訓練の再編強化と就労支援ネットワーク事業。具体的には、京都校のOAビジネス科に訓練期間6カ月と同1年のコースや、高度なIT技術を専門的に学ぶシステム設計科を新設する。福知山校には販売実務科を置き、城陽障害者高等技術専門校も学科の在り方を検討していく。
 また、自立就労支援協議会には府内の労働団体や福祉団体、経営者団体など関係団体が参加する見通し。1人1人の能力に応じたプログラムの作成はじめ▽専門家による就職・職場定着支援▽就職後の再チャレンジ▽求人や受注販路開拓−など、きめ細かな施策を展開し、就職率や法定雇用率の向上を目指す。
 府は「障害者の自立から就労までの支援を『京都モデル』として推進していきたい。生活や雇用・就労実態に合わせた多様な選択ができるよう訓練職種の拡大に努めたい」(府民労働部)としている。
(京都新聞)8月19日9時29分更新


[2006.8.12]

【この頃思うこと】発達課題としての喜怒哀楽の感情体験
 10代半ばから20代にかけての青年たちの中で、「自信が持てない」「したいものが見つからない」「なんで生まれてきたんだろう」「今の自分が情けない」「自分は存在しない方が良いんじゃないか」などと、自己を否定する気持ちを持たれて、日々やり切れない気持ちに囚われてしまっている人が少なくないようです。何人かの話しを聴いていると、小・中・高と特に何も考えず、敷かれたレールの上を歩んできた。でもその過程では、自分のペースではなく回りに一生懸命合わせていたり、自身の気持ちを押し殺していたり、イジメなどの傷つき体験を抱え込んでいたりしていて、でもそれらを親や回りの誰にも表現できずに過敏で繊細な子ども期、時に荒れ狂う葛藤の渦中である思春期を、多くの不安や悩みを抑圧したまま自分一人で乗り切って来られた方が、青年期にいろんな形で不調を現すようです。
 子ども期や思春期には、それぞれ育ちの課題があります。それらは、友だちや家族といった、安心できる人間関係の中で、自己を見つめ、他者の存在を認め、相互関係の中で喜怒哀楽の様々な体験を通して達成していけるものだと思います。人として生きる力、応用力や時に力を集中する力、他者と親密な関係性を結ぶ力….etc。今を生きる子どもたちは、そんな様々な体験、成功体験や失敗体験を豊かに持てているでしょうか?
 学校社会、学歴偏重社会、競争主義や成果主義などの価値観に満ちあふれる社会の中で、子どもたちにもこれらの価値観に沿った「大人の期待」が押しつけられてしまい、子どもとしての「育ち」の保障が崩れてしまっているのではないかと思えて仕方ありません。
 生きづらさを感じて立ち止まっている青年には、達成できていない発達課題を遡って体験してもらうことが大切だと思います。喜怒哀楽の感情をはじめとして、安心を基本に豊かな精神的・肉体的体験を通して、自分らしさを見つけ、自我の同一性をゆっくりと時間をかけて獲得してもらいたいものです。「相談室カンナ」は、そんな場所でありたいと思います。
 次回は「相手の人格を尊重すること」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

「心の病」抱える社員が増加、30歳台が6割

 6割を超える企業で「心の病」を抱える社員が増加傾向にあることが、社会経済生産性本部の実施したアンケート調査でわかった。
 同本部では「風通しがよく、何でも相談しあえるような職場環境作りが急務になっている」と話している。
 調査は、全国の上場企業を対象にメンタルヘルスの取り組みについて聞いたもので、今年4月に実施。218社から回答を得た。
 調査結果によると、「この3年間で(社員の)心の病が増加した」と答えた割合は61・5%となり、2年前の調査に比べて3・3ポイント増えた。「心の病による1か月以上の休業者」を抱える企業の割合も74・8%に上った。
(読売新聞)-8月6日21時8分更新
【コメント】過密、長時間で自己責任を強く問われる労働環境が広がっています。一方で、職場のメンタルヘルスはなおざりにされている企業が圧倒的に多いように思います。自社内で体制が取れないなら、外部の資源を利用してメンタルヘルスの取り組みを抜本的に強める必用があると思います。「しんどさ」を感じたら無理をせず、自身を大切に考え、信頼できる相談機関や医療機関を利用して欲しいと思います。

●<髄液漏れ>子供の症例次々明らかに 「苦しさ分かって」
 激しい頭痛などを伴う「脳脊髄(せきずい)液減少症」のため、勉強やスポーツができない小中高校生の存在が次々と明らかになっている。症状のひどさや将来への不安、教師らに理解されない絶望感……。「自殺を考えた」と話す子どももおり、事態は深刻だ。ある母親は先月、厚生労働省と文部科学省の担当者に面談し、髄液漏れの子どもたちへの支援を訴えたが、国の対策はまだ本格化していない。
 静岡県の中学2年の女子生徒(14)は昨年夏、車の後部座席にいて追突事故に遭った。吐き気などだけでなく、やがて記憶力に著しい障害が出た。家族や友人のことが分からなくなり、特に漢字は全く読めなくなった。
 3カ月後に高次脳機能障害、さらに2カ月後に髄液漏れと診断された。漏出を止める手術を2回受け表情に生気が戻ってきたものの、事故前にはほど遠い。母親(38)は「直後に診察した医師は『検査しても異常はない。若いからすぐ治る』と言った。もっと早く髄液漏れの治療を受けていたら……」と悔やむ。
 大分県の通信制高校2年の女子生徒(16)は、中学2年の時、授業中に同級生がけったバレーボールを側頭部に受けた。激しい頭痛や耳鳴り、不眠などが続き、欠席日数は中2で31日、中3で66日に上った。登校しても保健室にいることが多く、「心の病」とされて1カ月以上入院した。「悪霊のせいだ」と周囲に言われたこともあったという。髄液漏れと診断されたのは卒業式のころだ。
 生徒は「苦しさを周囲に分かってもらえず、何度も自殺を考えた」と言う。地元自治体は「ボール事故と発症の因果関係はない」と主張、生徒側と法廷で対立している。
 事故が原因でなく、突然発症することもある。兵庫県の高校3年の男子生徒(18)は中1の4月、首に激痛が走った。以来、ふらついてまともに歩けず、会話する気力もなくなり、3年間苦しんだ。「やる気がないなら出ていけ」と怒る教師もいた。母親(44)といくつもの医療機関を回り、「自分は親に迷惑をかけるだけの存在だ」と考えていたという。
 髄液漏れの治療を受け、今はジョギングするほど回復した。中学の同級生と会うと、普通に歩く姿に驚かれるという。
 ◇転倒や出産など日常生活の中で頻繁に起こる可能性
 学校現場にも広がる髄液漏れ。この症状に詳しい国際医療福祉大付属熱海病院の篠永正道医師と山王病院の美馬達夫医師によると、両医師だけでも18歳以下の子ども約30人の治療にあたった経験を持つという。
 従来、髄液の漏出は珍しい病気と考えられていた。しかし、数年前から「スポーツ時の患者は非常に多い」と指摘されるようになった。篠永医師らは「親や教師が髄液漏れを知らないため、長期間、別の病気と誤解されていた子どもが少なくない」と話す。子どもの患者の実態は明らかになっていない。
 こうした実態について、文部科学省スポーツ・青少年局の担当官は「髄液漏れが学校生活に支障をきたすものだと聞いており、重大な関心を持っている」と話している。
 だが、現状は、関係する学会が研究の必要性を認め始めた段階にすぎない。国は今後、治療経験が豊富な医師や関係学会と連携し、診断基準の確立や症例情報の共有化などを急ぐ必要がある。
(毎日新聞)-8月8日8時45分更新

●通所施設利用率 1割減 滋賀県調査 国に改善要望へ
 4月に施行された障害者自立支援法で、滋賀県内の通所施設の平均利用率が、施行前と比べて1割近く減ったことが8日、県の調査で分かった。特に、身体障害者の通所施設は16・4%減と大幅ダウンした。県は「障害福祉サービスの利用料として1割負担が課せられたことが主な要因」としている。
 調査は、6月中旬から7月下旬にかけて、321の障害者施設を対象に、聞き取りやアンケート形式で実施し、うち241の施設から回答を得た。
 調査結果によると、通所施設の平均利用率は同法施行直前の今年3月の91・1%で、身体障害者の通所施設では80%を切る施設もあった。
 また、無認可の共同作業所の利用者860人のうち、回答した548人の平均賃金収入は1万1700円(月額)で、60%が1万円未満、27%が5000円未満だった。同法では、低所得者の自己負担額の上限を1万5000円と定めており、県は「利用料が賃金収入を上回る利用者も多く、それが利用控えにつながっているのでは」とみている。
 県はこの結果を基に、8月下旬に国に対して改善を求める要望書を提出する一方で、独自の支援策について各市町と協議を進める。
(京都新聞)-8月9日10時29分更新
【コメント】自立支援法の施行前から予測された通りの実態が明らかになってきています。各自治体での支援策づくりが必用です。

●発達障害児の母ら 集いの場設置 亀岡、支援の輪 拡大へ
 京都府亀岡市内に住む自閉症やアスペルガー症候群といった発達障害のある子どもの母親たちがこのほど、保護者同士の交流や情報交換を目指した定期的な集いの場を設けた。対人関係に困難がある障害の特徴から、子どもたちが集団生活になじめないのとともに、周囲や保護者の認識不足などで障害と気づかずに悩みを深める親子が数多くいる中、母親たちは「孤立し、行き場を失っている人たちを1人でも多く支えていきたい」と話している。
 発達障害児の母親、小池環さん(39)=南つつじケ丘=ら4人が「自分たちが子どもを育ててきた経験や、障害についての情報を共有しながら、親と子の悩みをほぐしたい」と、「陽(ひ)だまり広場」を立ち上げた。発達障害と診断された子どもの保護者だけに限らず、発達状態が気になり、悩みを抱える親たちにも広く参加を呼びかけている。
 初めての広場は、余部町のふれあいプラザで開かれ、小学生や幼稚園などに通う子どもの保護者約15人が参加した。「発達障害児がかかわる保健所や幼稚園、小学校など各機関のつながりが薄く、支援態勢が途切れ途切れ。一貫したカルテを作って子どもの成長を各機関が連携して見守ってほしい」との意見や、「障害とは知らず、育てにくさの原因を自分のせいだと思いこんできた」「障害名を子どもに伝えることに迷いがある」といった声があったという。
 今後、9月以降の毎月第4火曜に同センターで開いていく予定で、1回目の様子を記した会報を市内の一部の小学校や、障害児サロンなどに配布している。小池さんたちは「親たちの中には、『子どもは普通でないけれど、障害とは認めたくない』と悩みを抱え込む人が多くいる。同じ境遇にいるからこそ、子どもの事を話題に笑い合えることもあるはず」と話している。問い合わせは、小池さん携帯電話090(8984)3678へ。
(京都新聞)-8月9日10時49分更新
【コメント】こうした家族の集まりがもっと広がって欲しいと思います。できれば、保健所や児童相談所、民間団体など、発達障害についての知識と対応法を学んでいる援助者が加わってのものとなると、障害のある子どもたちがより生きやすい環境をつくっていけると思います。

●<不登校>全国の小中学校で12万2255人 4年連続減少
 全国の小中学校で05年度に30日以上欠席した「不登校」の児童生徒は12万2255人で、4年連続減少したことが10日、文部科学省の学校基本調査速報で分かった。中学生は、不登校の割合が「36人に1人」程度の2.75%と4年ぶりに上昇に転じたが、小中学生全体では、「89人に1人」程度の1.13%と4年連続で低下した。同省は「スクールカウンセラーによる指導や家庭への働きかけなど、学校や教育委員会の取り組みの成果の表れと考えられるが、中学生の割合はむしろ増えており、減少傾向とまでは言えない」と分析している。
 今年5月1日現在で全国の国公私立小中学校を対象に調査。不登校の児童生徒は前年度から1103人(0.9%)減り、不登校の割合も0.01ポイント低下した。そのうち小学生は2万2709人で前年度から609人(2.6%)減少したが、割合は前年度と同じ0.32%。中学生は9万9546人で前年度から494人(0.5%)減り、97年度以来8年ぶりに10万人を割った。しかし、割合は前年度から0.02ポイント上がった。
 不登校のきっかけは、病気による欠席など「本人の問題に起因」が36.9%、友人関係など「学校生活に起因」が35.7%、親子関係など「家庭生活に起因」が18.3%など。不登校が続く理由は、登校の意思はあるのに身体の不調を訴えて登校できないなどの「情緒的混乱」が31.2%でトップ、次いで「無気力」の22.4%だった。
(毎日新聞)-8月10日19時48分更新
【コメント】4年連続減少とはいうものの、子どもの数が減っているわけですから、数だけではなく、割合と理由、対応に注目する必用があると思います。中学校では、スクールカウンセラーの配置も進んでいるにも関わらず数の上でも増加している実態は、「スクールカウンセラーによる指導や家庭への働きかけなど、学校や教育委員会の取り組みの成果の表れと考えられる」というコメントを否定するものとなっています。「「情緒的混乱」が31.2%」という結果は、特に注目しなければなりません。


[2006.8.6]

【この頃思うこと】自転車がなぜ車道の右側を走るのか?
 車を運転していて驚くことは多々あります。「それはないやろ…」と突っ込みたくなる光景を日に何度も体験します。中でも目に付くのが自転車のマナー違反運転です。
 マナー違反ですんでいる間はまだ良い(良くないか)のですが、一つ間違えれば「あんた、命落とすよ!」と言いたい行動の多いことと言ったら…。
 特に恐いのが、車道の右側を走る自転車です。狭く歩道が無かったり路側帯が整備されていない旧街道や町中なら、運転する側も用心してスピードを緩めて運転する方が多いと思いますが、自転車が通れるように道路の両側に歩道が整備されているのに、わざわざ車道の右側を突っ走る自転車と対面すると、驚きを越えて怒りの感情も沸いてきます。それが夜、無灯火ならなおさらです。センターラインを走る自転車を見たこともあります。自転車は「車両」であり、道路の左側を走ることは、義務教育の中の安全教室などで学ぶ機会があるはずです。
 では、なぜ車道右側を自転車で走るのでしょうか? 「車両は左」を知らない、右側に目的地がある、信号を待てずにとりあえず右側を走り出した、…。理由はさまざまなのでしょうが、対面で通過する車とのすれ違いに危険を感じない、としたら、問題です。「車がよけてくれる」という思いこみを持っているのでしょうが、いつもその通りになるとは限りません。危険を察知する能力は失いたくないものです。
 交通マナーについて「思うこと」を書いていくと切りがないので、次回は「発達課題としての喜怒哀楽の感情体験」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

自殺予防教育を本格化、月内にも研究会(文科省)

 年間の自殺者が98年から8年連続で3万人を超えるなか、文部科学省は、児童・生徒の自殺を防ぐため、専門家による研究会を今月中にも設置することを決めた。今年度末をめどに課題と対策などをまとめ、学校での取り組みに生かす考えだ。これまで公立校に限って実施してきた自殺実態調査も、07年度からは私立、国立も対象に含める方針だ。
 自殺対策を国や自治体の責務と規定した「自殺対策基本法」が6月に成立したこともあり、本格的に取り組む必要があると文科省が判断した。
 研究会は、自殺問題を研究している精神科や臨床心理などの専門家や、中学、高校の教諭、学校カウンセラーら15人前後でつくる。小中高校生の自殺の特徴や傾向、自殺の予兆と思われるような行動などを分析し、教職員が見逃さずに対処するにはどうしたらいいかという調査・研究に取り組む見通し。
 さらに、生徒・児童に対する自殺防止教育や、家庭との連携も検討課題にする予定だ。
 文科省によると、04年度の公立の小中高校生の自殺者は計125人。一方、年度ではなく、暦年でまとめている警察庁の調査では、小中高校生の自殺者は04年、計284人にのぼる。文科省は約30年前から、児童・生徒の問題行動や生徒指導上の問題を把握する調査の一環として、自殺者数とその原因を調べてきたが、基本法の成立を受けて、より詳細な実態把握に乗り出すことにした。
 文科省は「これまで自殺に焦点を絞った教育はしてこなかった。研究会での成果を学校現場に伝え、児童・生徒の自殺防止に役立てたい」と話している。
 「青少年の自殺予防対策」について調べたことがある大分県立看護科学大の影山隆之教授(精神保健学)によると、一部の県を除き、学校で「自殺予防」の教育に取り組んでいる例は極めて少ないという。
asahi.com2006年08月03日06時06分
【コメント】文科省発表の小中高校生の自殺者は計125人に対し、警察庁の調査では284人。ここに、学校や教育委員会による「隠蔽体質」と自浄能力の欠如の一端を見ることができます。人の死から何を受け止め、学ぶのかは、残された者に課せられた課題です。

●<家庭教育>日本の父が子供と一緒の時間は6カ国中5番目
 日本の父親が平日に子どもと過ごす平均時間は3.1時間で、タイや米国など6カ国のうち韓国に次いで低いことが、国立女性教育会館の実施した「家庭教育に関する国際比較調査」で分かった。母親は7.6時間と6カ国中最長で、子どもとの接触時間の父母の差は4.5時間で最大。食事の世話をする父親の割合も10.1%で各国中最も低く、家事や育児が母親に偏りがちな傾向が鮮明に浮かんだ。
 調査は12歳以下の子どもと同居する日本、韓国、タイ、米国、フランス、スウェーデン各国の親約1000人ずつを対象に昨年3〜6月に面接して行った。
 日本女性学習財団がほぼ同じ内容について94年に実施した調査(フランスの代わりに英国が対象)では、日本の父親が平日に子どもと過ごす時間は3.3時間で6カ国中最低で、今回さらに0.2時間減った。韓国が今回2.8時間だったため最下位は免れたが、5.9時間と最も長いタイのほぼ半分程度だ。
 94年に比べ、「子どもと接する時間が短い」と悩む父親は27.6%から41.3%に増えており、同会館は「子どもにもっと接したいのにできないという意識の表れ」と受け止めている。
 また、子どもを狙った犯罪の続発や生活苦を反映してか、子育ての悩みや問題点として「子どもの身の安全」を挙げる親が33.8%から46.9%に増加。経済的援助を求める親も31.0%から48.5%に増えた。
 しつけの面では5歳で「行儀よく食事ができる」割合が日本69.3%、韓国70.8%で、9割前後の他の4カ国に及ばなかった。「日常のあいさつができる」割合も日本は83.0%で最も低かった。15歳で「マナーを守ることができる」も9割台の各国に比べ日本は85.8%と最も低く、同会館は「全体的にしつけの達成度や子どもの自立が低い傾向が見られる」と分析している。
(毎日新聞)8月1日21時33分更新
【コメント】「しつけの達成度や子どもの自立の低さ」は、思春期の発達課題を越える上でマイナス要因となるようです。また、子ども期の「しつけ」は、その人の一生をも左右することにもなります。親が親として子どもに「しつけ」ができるのは思春期以前だと思いますので、家庭での豊かな関係性の中で「人として」のあり方を教えてあげられる時間的ゆとり、その工夫が求められます。

●<児童虐待>被害数128人と「最悪」 上半期・買春も増加
 今年上半期(1〜6月)の児童虐待、児童買春事件の検挙件数が、いずれも統計を取り始めた00年以降で最も多くなったことが、警察庁のまとめで分かった。虐待による被害児童数も128人(前年同期比18.5%増)と「最悪」。今年2月には群馬県で25歳の父と28歳の母が長男(3)に対し、しつけと称して水風呂に約2時間つからせるなどの虐待を続け、死亡させる痛ましい事件も起きた。こうして死亡した児童は28人(同27.3%増)に上り、01年の31人に次いで多かった。また虐待死以外でも、殺人事件などで子どもたちが犠牲になる事件が目立っている。
 同庁によると、児童虐待事件の検挙件数は120件(同14.3%増)だった。被害児童128人の態様別では、▽暴行など身体的虐待92人▽わいせつ行為など性的虐待24人▽ネグレクト(育児放棄)12人だった。虐待で死亡した被害児童28人の内訳は、▽殺人の犠牲17人▽傷害致死8人▽保護責任者遺棄致死3人だった。
 また、児童買春事件の検挙件数は861件(同16.5%増)で、検挙人数は609人(同21.8%増)だった。児童ポルノ事件の検挙件数は226件(同37.8%増)、検挙人数は144人(同41.2%増)になり、いずれも00年以降で最悪になった。
 児童買春の被害にあった児童は750人(同8.4%増)で、児童ポルノの被害者は83人(同8.8%減)だった。
 一方、13歳未満の少年が被害者になる刑法犯の認知件数は1万4467件(同4.4%減)だったが、3月に神奈川県で起きた男児(9)投げ落とし事件や5月の秋田県の男児(7)殺害事件などの凶悪事件が多発、被害件数はほぼ横ばいの99件に上った。
 逆に、刑法犯として検挙された少年は5万96人(同14.7%減)と減少。しかし、検挙された少年の再犯率は31.0%(同2.1ポイント増)で、89年以降で最も高くなった。
(毎日新聞)-8月3日11時11分更新
【コメント】「しつけ」に名を借りた虐待は、親の勝手な子どもへの強制と暴力以外なにものでもありません。「子どもの権利条約」に基づく国連子どもの権利委員会から日本国政府への「勧告」を、私たちは素直に正面から受け止めなければなりません。

●障害児施設で自立支援法施行に伴う増額分助成(横浜市)
 障害者自立支援法施行に伴い、10月から障害児施設利用料の1割が自己負担となるのを受け、横浜市は2日、制度改正に伴う増額分を助成する独自の負担軽減策を講じると発表した。市によると、現行の負担額を維持する軽減策は政令市で初めて。
 障害児施設を利用する子どもが市内に約900人いるといい、負担増で施設利用をあきらめるなどして、障害児のいる家庭の子育て環境が悪化するの防ぐのが狙い。本年度の経過措置として実施し、助成額は計約8700万円。
 中田宏市長は軽減策について「国の乱暴な制度改正に対し、できることをやっていく」とする一方、「地方が国の尻ぬぐいをしている感が否めない」として、国の責任で速やかに負担軽減策を講じるよう求める考え。
山陽新聞(8月2日20時26分)
【コメント】こうした行政による独自の「救済」制度が全国的に取り組まれることを望みます。

●『自立支援法』に異議あり、精神障害者らが冊子出版(さいたま市)
 障害者サービスの費用の一割を原則利用者負担とすることなどを定めた障害者自立支援法について、県内の精神障害者や支援施設の職員らが「これでいいのか障害者自立支援法」と題した冊子三冊にまとめ、緊急出版した。負担の増大などで障害者が必要なサービスを受けられなくなる可能性など、現場からの危機感を訴えている。
 冊子を出版したのは、さいたま市内で精神障害者の作業所やグループホームを運営する社団法人「やどかりの里」の利用者や職員でつくる編集委員会。冊子の第一部では精神障害者自らが法律の仕組みや暮らしへの影響をQ&A方式でまとめ、二部と三部では施設職員らが法律の課題を指摘している。
 同法は身体障害、知的障害、精神障害と種別ごとに異なる法律で定められてきた福祉サービスや公的医療を一元化して提供することを目的に四月に施行した。障害者は自治体による障害程度区分の認定調査を経て、受けられるサービスが決まる。同冊子ではサービス利用時に一割負担を求める「応益負担」の考え方は重度の障害者ほど負担が増すとし「国の財政難に端を発した障害者支援抑制の法律」と非難する。
 編集メンバーの一人で統合失調症を患う堀澄清さん(69)は「精神障害は一日の間に症状が変化する。認定調査で非該当とされれば、障害者が必要なサービスを受けられないケースも出てくる」と心配する。作業所などの労働支援施設の利用も負担の対象となることについても、「一般の人が働いて利用料を取られることはない。障害者を人間として扱わない法律だ」と憤る。
 冊子は一冊九百円(二部のみ千円)。さいたま市に独自の負担軽減策を講じるよう求める請願活動も行っている。問い合わせはやどかり出版=電048(680)1891=へ。
(東京新聞)2006/7/31

●<教師体罰>中学生徒、ショックで授業出られず(長崎市)
 長崎市立片淵中学で、バレーボール部員の3年男子生徒が、顧問の男性教諭(43)の体罰で精神的ショックを受け、部活動ができず、教諭が担当する体育の授業にも出席できなくなった。峯脇成彬校長は「体罰ではなく、行き過ぎた指導だった。生徒と親には謝罪した」と説明するが、生徒は「殺されるかと思った」と話している。教諭は今年1月に別の生徒にけがをさせたとして傷害容疑で書類送検され、市教委は文書訓告にする方針だった。
 学校の説明によると、生徒は6月16日、給食室で下級生や女性教諭を「イケメン」などと冷やかしたという。女性教諭がたしなめ、バレー部の顧問教諭に伝えた。教諭は昼休みの練習中、生徒に「そんなことをしてはつまらんやろ」と言って首をつかんで押した。
 生徒は、6月下旬から学校を休んだり遅刻するようになってバレーの練習にも参加しなくなった。7月に入ってからは体育の授業にも出ずに保健室などにいた。
 教諭は謝罪したが、生徒や親は「首は断続的に3、4回数秒ずつ押されて持ち上げられ、息が出来なくなった。本当に殺されると思った」と話している。生徒側によると、昨年から何度も殴られ、口を切って食事ができないこともあった。
 教諭は今年1月、当時3年の男子生徒をたたいて目にけがをさせたとして傷害容疑で長崎区検に書類送検された。区検は6月30日付で起訴猶予処分としていた。
 市教委は教諭の処分について「検察の処分を見て対応することにしていた。教諭の指導は学校に任せていた」と話している。
(毎日新聞)-8月5日3時7分更新
【コメント】長崎県では、なぜかくも子どもたちに関する悲しい出来事が続くのでしょうか。

●アルコール依存症家族にミーティング(京都市)
 京都市は、アルコール依存症に悩んでいる家族を対象にしたミーティングをこころの健康増進センター(中京区壬生東高田町)で開いている。共通の悩みを語り合い、解決策を探ろうという取り組みで、毎月2回開催している。
 専門医の講義やビデオで学習した後、参加者が体験談を語り合う。依存症になった家族との日常生活や日ごろ感じていることなどを話すことによって、「参加者の同じ思いに安心感を持ち、元気になって帰る人も多い」(同センター)という。昨年度は計229人が参加した。
 開催は毎月第1、第3月曜日(祝日は除く)の午後1時半−3時半。無料。予約不要。同センターはアルコール相談専門の医師による「アルコール外来」も設けており、本人や家族の相談も行っている。
 問い合わせ・相談はいずれも同センターTEL075(314)0874。
(京都新聞)-8月5日11時9分更新


[2006.7.30]

【この頃思うこと】横断歩道、どちらが優先? 人・車
 この週1回更新の「つぶやき」を少しだけパターンを変化させたいと思います。まず、私が日頃思っていること(ほとんどがうっぷんになるかも…)を書いてストレス解消。そして、その前1週間にメディア記事として流されたものの中から、私が恣意的に選んだ、子どもや教育、発達障害、自殺などの問題に関するものを紹介し、少しコメントを付けたいと思います。
 さて、【この頃思うこと】の1回目は歩行者優先原則が無惨にも無視されている現状について思うことです。横断歩道を渡ろうとしている人や自転車がいるときに通りかかった車、果たして何割の車が停車して人や自転車の横断を優先させられているでしょうか? かくいう私はどうかと聞かれれば、「その場の状況による」としか答えられないので説得力に欠きますが、実態は酷いものでしょう。
 私の場合、後続車がなく安全に停止できる状況であれば停止し、歩行者・自転車の横断を待ちます。これができない状況というのは、後続車があり、その運転手が「俺は急いでるんだ」オーラを感じる時、横断待ちをしている人が「あきらめ」てこちらを見ていない時などです。
 では、酷い実態を演じている人々(運転手)の心理はどんなものでしょうか。1.「車」という器に載っていることである種の「優越感」が生まれることによる歩行者や自転車の軽視、2.歩行者や自転車は止まっているが自分の車は相当なスピードで走り抜けようとしているので停車するのは困難という手前勝手な状況判断、3.よほどのことがない限り罰せられることはないという妙な「安心感」、などでしょうか。
 運転者も、車を降りて逆の立場=「歩行者の立場」になったときに、横断歩道で停車せずに突っ切る車に対する憤りを感じる人は少なくないと思います。立場変われば人変わるー。親が幼いわが子に対して抱く感情、教師が生徒に対して抱く感情、与党政治家や権力者が政治的マイノリティに対して抱く感情、これらに相通じる所があるように思えます。逆の立場で、相手から発せられた言葉や行為を感じることができれば、その「思い上がり」や「勝手な価値基準」に気づくことは難しいことではないでしょう。
 日常生活の様々な場面で、瞬時に相手の立場に立って考えるようになるためには、少し努力が必要ですが、そのことが理解と安心の人間関係を築くことにつながりますから、人として豊かになるための努力であると思います。
 次回は「自転車がなぜ車道の右側を走るのか」について考えてみたいと思います。
 では、この1週間の気になる記事です。

自殺対策ー原因・動機など詳細を公表へ(警察庁)

 これまで非公開だった自殺の原因・動機を細かく分類した警察庁の内部資料について、同庁は今後、自殺対策のため、関係官庁や研究機関などの要望に応じて速やかに公表する方針を決めた。一方でさらに自殺対策に有効になるようにするため、従来の分類方法について外部の専門家の意見を聞いて見直しも図る。先月、成立した自殺対策基本法は自殺関連の情報の収集、分析、提供などを国と自治体に義務付けた。自殺対策の第一歩として、正確な現状把握に寄与しそうだ。
 警察庁は毎年、「自殺の概要資料」を発表。原因・動機別は「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」など大きく8項目に分けて明らかにしている。05年は、自殺者総数3万2552人で、「健康問題」が1万5014人と最も多かった。
 しかし、警察庁によると、原因・動機はさらに細かく分類されている。例えば、「家庭問題」は▽親との不和▽子との不和▽家族の死亡▽両親間の不和――など11項目。「経済・生活問題」では▽倒産▽事業不振▽失業▽就職失敗――など7項目。「健康問題」は▽病苦▽老衰苦▽アルコール症▽覚せい剤による精神障害――など9項目に細分化されている。
 これまで警察庁は「犯罪による死亡ではないことの確認が第一で、自殺原因を十分に解明できているわけではない」として、詳細なデータは内部資料にとどめていた。しかし、自殺対策基本法の成立を受け、参考資料として関係機関に提供する方針に改めた。
 一方、現行では、原因・動機の「学校問題」の詳細項目に「学友との不和」はあるが、「いじめ」はない。「経済・生活問題」でも「負債」や「生活苦」はあるが、「借金苦」はないため、警察庁は専門家らとの検討で、自殺の実態をより把握できるよう項目内容を見直す方針だ。
 自殺者の実態調査では、フィンランドが87年度の自殺者全員を対象に自殺要因を調べ、その後の対策に生かし、自殺死亡率を引き下げる成果を上げている。NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」の清水康之代表は「自殺の実態を明らかにすることで、効果的な対策が取れ、社会的に追い詰められた末の自殺者を減らすことにつながるはずだ」と期待する。
【コメント】やっと自殺対策基本法を実態あるものにする方向で動きが始まりました。学校問題の項目に「いじめ」がないという実態にそぐわない現状も明らかになっていますが、警察では「自殺」とカウントしていても、文科省ではその多くが「事故」として処理されている実態を明らかにしていく必要があると思います。教師の指導の直後に校舎4階の窓から飛び降りても「事故」として処理されている事例が身近にあります。

●養育放棄で入院400人超、半数の病院が受け入れ経験
 児童虐待の1つで、食事などの世話をしない「養育放棄(ネグレクト)」によって、体調が悪化した子供の入院受け入れを、小児科がある病院の46%が過去に経験、入院した子供は400人を超えることが24日、厚生労働省研究班の全国調査で分かった。うち12人が死亡、21人に重い後遺症があった。
 2005年だけでも100人以上が入院しており、早期発見が難しいとされるネグレクトの深刻な被害実態が浮かび上がった。児童相談所など関係機関による一層の取り組みが求められそうだ。
 調査は1月、小児科がある全国の570病院を対象に実施、230病院から回答を得た。うち、疑い例も含めネグレクトによる子供の入院を経験したことがあるとしたのは106病院(46%)に上った。
【コメント】「子ども夫婦」の子育て、と言われる実態がまだまだ問題化されていないと思います。子どもができて「親」になるわけですが、親となるために子育てをしながら学ぶことができない夫婦を多く生み出している今の日本。親個人の問題ではなく、健全に子どもを育てられる社会環境の形成レベルが問われていると見るべきだと思います。

●障害者、もっと大学へ=8月、東大が初の支援イベント−現役学生、教員らが体験談
 東京大学は、障害を持つ中高生に大学進学の道をアドバイスする初のイベント「君たちは大学に進学するために何をすべきか」を8月27日、同大武田ホール(東京都文京区弥生)で開催する。障害を持つ現役学生や研究者が体験談を語り、キャンパスライフや進路、障害者が受験勉強するコツなどについて分かりやすく説明する。東大を目指す学生だけでなく、障害を持つ生徒すべてが対象。

●シンポジウム:「『ひきこもり』だった僕から」の著者・上山さんら事例報告(京都)
 ニートをめぐる議論を手がかりに、日本の社会が“強要”する学校観や労働観を問い直すシンポジウム「『ニート』議論で語られないこと」が22日、北区の立命館大であった。「『ひきこもり』だった僕から」の著者、上山和樹さん(37)らが事例報告し、「生きにくさ」を抱えるマイノリティーの立場を代弁した。
 上山さんはひきこもりの心理を、社会に順応したい気持ちが強過ぎて「スイッチが24時間オンの状態」に陥り、かえって社会規範から逸脱していく、と説明。不登校が子どもの選択肢として受け入れられた一方で、大人の不適応は否定され、相次ぐ心中事件などを助長している、と指摘した。
 更に、「甘えている」と、社会全体が向ける誤解が苦しみを生むことを強調。無理に“社会復帰”させようとするのは逆効果、などと主張した。
 一方で、上山さんはサラリーマンのネクタイを引き合いに「ひきこもった人から見ると、元気に社会参加する人は異様。“社会生活”という名の信仰を持っているように見える」と吐露。これには、会場から「実際の自分が別にいるのに儀礼で別の現実を作り、観念的な安定を得るのが人間。ネクタイは社会人としての儀礼に過ぎない」と理解を示す声も出た。
 この他、大阪府高槻市で在日コリアンらの生活を支援する「高槻むくげの会」の紀井早苗さん(34)は、同市の公立学校などの在日外国人向け教育支援事業の廃止(04年度)を痛烈に批判。「在日外国人の子どもは社会の入り口部分である学校から疎外されている。日本人は学校の中に共生の場をつくるべき」などと訴えた。
【コメント】上山さんの「不登校が子どもの選択肢として受け入れられた一方で、大人の不適応は否定され、相次ぐ心中事件などを助長している」というコメントに共感します。私が副代表をしている「家族会ノンラベル」の5周年記念講演会(9月23日開催予定)にシンポジストとして上山さんに登場してもらうことになっています。今、あらためて「ひきこもり論」を熱く語ってもらいたいとおもっています。

●不登校:「中1のつまずき」防げ、4年連続減 府教委「小・中連携が成果」(大阪)
 府教委は27日、府内公立小・中学生の不登校児・生徒が4年連続で減少し、昨年度は9798人だったと発表した。中学校への進学時に学習でつまずき、中学1年で不登校が急増するのが特徴だったが、府教委は「不登校を未然に防ぐことに狙いをおいた小・中連携の成果が出ている」と分析している。
 府教委によると、心理的理由などで30日以上欠席した児童・生徒は昨年度、小学生1824人(在籍者の0・37%)、中学生7974人(同3・70%)。ピークは01年度の1万1523人だった。
 現場の取り組みとして、▽中学1年生への夏休みの補充授業▽小学校時代の元担任と中学校の現担任との共同家庭訪問▽小中学校の教員による相互授業見学――などの成果が出てきたという。
【コメント】「中1のつまずき」は学習面でのつまずきが多いのはもちろんですが、小学校のときから集団生活に適応できないものをもちながら中学校という教科学習中心で管理教育が強い場に入れられ、不快さ、嫌悪感、拒否感を強く抱くという学校システム上の問題や、思春期の自分探しの課題と学校という器との不適応など、子どもの視点での深い検討が必要です。強いストレスにさらされ続ける子どもたちに、「補充授業」や「共同家庭訪問」という新たなストレスが加えられることで、一時的に不登校を減少できたとしても、ストレスは蓄積されていくだけではないでしょうか。その子らしく思春期を乗り越えられる環境を、学校という半強制的な器が用意してあげられるかどうかが問われていると思います。

●来所人数36%増、前年比「不登校」が6割近くー05年度教育相談概況(長岡京市)
 京都府長岡京市教育支援センターはこのほど、2005年度教育相談概況をまとめた。来所した延べ人数は、過去最多だった04年度よりも40%近く増加した。
 04年度までは市立図書館(同市天神4丁目)内の市立教育センターで、子どもの心身や学習面、家庭教育などについて相談を受けつけていた。昨年4月からバンビオ1番館に市教育支援センターを設置し、相談事業などを引き継いだ。
 05年度の相談延べ人数は1761人で、前年度より36%増えた。同センターは「実際に悩みを抱える子どもが増えているほか、相談事業が周知されてきたこと、駅前に移って利便性が増したことなどが考えられる」としている。
 主な相談内容は「不登校」が1034件ともっとも多く、60%近くを占めている。「神経症的傾向」が84人で前年度比2・3倍、「情緒不安定」が121人で同4・3倍と大幅に増えた。
 相談は臨床心理士など4人がカウンセラーとして対応しているが「手いっぱいの状況になりつつある」(同センター)という。

●全教員対象の研修始まるー不登校問題で京都市教委と校長会(京都市)
 京都市立学校の全教員を対象にした不登校問題研修が26日、京都市左京区の京都会館で始まった。初日は、管理職や一般教員、常勤講師ら約1400人が参加し、藤原勝紀・京都大教育学研究科教授の話を聞いた。
 不登校傾向の児童・生徒への支援充実を目指し、市立の幼稚園と小中学校、総合養護学校の全教員約6500人に義務づける初の研修で、市教委と各校長会が企画した。8月10日までに藤原教授や河合隼雄・文化庁長官らが講師になる11の講座を開き、1人1講座の受講を求める。
 この日の研修で、藤原教授は、「ごく普通の子」が起こすと言われる近年の少年犯罪などに触れ「悪いことと頭で分かっていても、それができない。知識と生身の人間が相関しない状況がある」と指摘。「生身の人間が、生身の人間に影響力を与えるのが教育ではないか」と投げかけた。
 不登校問題も「生身に引きつけて考える必要がある」とし「登校している子も『不登校になる心』を抱えて学校に来ている。どのようにしてその心を乗り越えているのか、登校している子から学んでほしい。子どもの知恵が教えてくれる」と話した。
【コメント】「『不登校になる心』をどう乗り越えているのか、登校している子から学ぶ」ー、今学校現場で行われている「不登校対策」に対する適宜なアンチテーゼではないかと思いました。学童期から思春期にかけて、子どもたちが求めているのは、ともだちとの関係性であり、信頼できる大人との関係性ではないでしょうか。親や学校現場の大人たちは、子どもたちが信頼を寄せる対象となり得ているか、日々自己観察したいものです。


[2006.7.23]

労働経済白書「格差」に警鐘、雇用改善で少子化対策を

 15日、厚生労働省の06年版「労働経済の分析」(労働経済白書)の原案が明らかになりました。少子化の主因を、20歳代を中心に非正規雇用が増え、収入格差が広がったことで若者の結婚が大幅に減った点にあると分析し、若年層の雇用対策の重要性を強調しています。
 また、親との同居が多い若年層が、今後、独立していくことで、社会全体の所得格差や格差の固定化につながる懸念があると警鐘を鳴らしています。
 白書によると、02年の15〜34歳の男性に配偶者がいる割合は、「正規従業員」が約40%だったのに対し、「非正規従業員」や「パート・アルバイト」は10%前後にとどまっています。
 また、アルバイトなど非正規雇用の割合を1997年と02年で比較すると、20〜59歳まですべての年齢層で増加傾向がみられますが、特に20〜24歳の年代で増加率が高く、02年は97年からほぼ倍増し、30%を超えています。

●「貧困層」比率先進国2位 OECDの対日審査報告
 20日、経済協力開発機構(OECD)は日本経済の現状を分析した「対日経済審査報告書」を発表しました。相対的貧困層の割合は先進国で2番目とし、「不平等の度合いが増している」と指摘しています。格差拡大は、所得が低い世帯の子どもたちの教育水準低下などを招く恐れがあると懸念を表明しました。
 ゼロ金利解除後の金融政策にも言及し、デフレに逆戻りするのを避けるためにも、追加利上げは慎重に判断するよう求めています。主要国の日本経済に対する考え方を示す同報告書は、構造改革への抵抗を強めかねない格差拡大を防ぐよう警告していて、経済政策をめぐる国内の議論にも影響を与えそうです。
 国内外の調査報告で、「貧困層」拡大や「格差」拡大が明確となり、少子化や教育条件への対策の必要性が迫られています。「格差」の広がりを事実として受け止め、改善に向けた対策を国はスタートさせるべきです。

●理不尽な親急増、「今すぐクラス移して」…教師に無理難題
 「あの子の親と仲が悪いから、今すぐうちの子を別のクラスに移して」「うちの子がけがをして学校を休む間、けがをさせた子も休ませろ」…。保護者が教師に無理難題を言うケースが各地で急増しているようです。教師が頭を悩ますこうした「理不尽な親たち」について、大阪大の小野田正利教授(人間科学、教育制度学)は、文部科学省の科学研究補助金を受けて教育関係者や弁護士、精神科医らによる「学校保護者関係研究会」を発足させ、原因究明と対策に乗り出しました。
 持ち込み禁止の携帯電話を生徒から取り上げた中学教師は、保護者に「基本料金を日割りで払え」と言われ、言葉が見つからなかったと言います。
 ある幼稚園では、おもちゃを取り合う園児を見た親が「取り合うようなおもちゃを置かないでほしい」という申し入れも。小学校の1学年全クラスの担任配置表を独自に作成し、「この通りでなければ子どもを学校に行かせない」と要求した保護者もいるそうです。
 小野田教授のもとには、信じがたい親たちの実態が全国の教育現場から続々と集まっています。
 文科省調査では、全国の公立小中学校で精神性疾患による教職員の休職者は一昨年度、病気休職者の56%を占める3,559人に達しています。10年前のほぼ3倍、先生たちはお手上げ状態です。研究会メンバーの嶋崎政男・東京都福生市教委参事は「現場感覚でいうと、精神性疾患による休職の多くに保護者対応による疲弊が関係している」と見ています。
 小野田教授の調査に、小中学校・園の8割が「無理難題要求が増えた」と回答。背景として嶋崎参事は「教師の能力に問題があるケースもあるが」と前置きした上で、「行政による『開かれた学校』がうたわれた結果、些細なことにもクレームが寄せられるようになった」と指摘しています。
 保護者の理不尽な要求への関心は高まっており、小野田教授の講演依頼は学校やPTA、民生委員から殺到しているそうです。
 嶋崎参事は、無理難題を言う保護者の養育態度を、「過保護型」「放任型」「過干渉型」の3種類に大別しています。いずれも家庭内の人間関係に原因がある場合が多く、過干渉型の場合、親にとって「良い子」を演じる子どもが教師の言動を大げさに報告し、事態を悪くすることもあるといいます。
 また、要求態度については、◇子どもの言い分をうのみにする溺愛型◇教師の困った様子を見て満足する欲求不満解消型◇利得追求型−などに分類しています。
 このような保護者への対応として、嶋崎参事は(1)複数の教師で対応に当たる(2)専門家のアドバイスを受ける(3)マニュアルを作る(4)事前研修の実施−などを提案しています。
 その一方で「学校に無理な要求をする保護者は皆何らかの問題を抱えている。その解決のために学校と話したいという意思表示と考えるべきだ」とし、要求を機に保護者を“味方”に変える努力を呼びかけます。
 小野田教授は「たてつかない弱者をいじめる“言った者勝ち”の傾向が社会に蔓延している」と指摘。社会問題としてとらえ、第三者機関の設置や学校の“守備範囲”の限定を訴えています。


[2006.7.16]

小中学校で通知票廃止/年4、5回評価へ 熊谷市教委

 埼玉県熊谷市教委が、公立小中学校で学期ごとに評価していた通知表を来年度から廃止することが分かりました。年4、5回程度、単元など学習のまとまりごとに、より細かく評価する新しい仕組みを導入。2学期制への移行に伴う措置で「年2回の評価では、正確な状況がわからない」という保護者側の要望が背景にあるようです。今後、各教科の教師からなる専門の部会でモデル案を作成し、来年度から各校が採用するそうです。
 新しい制度は国語なら小説などの題材、理科や社会だと単元、算数なら章で……といったように1教科につき7〜10時間程度の学習のまとまりごとで評価し、保護者に知らせるというもので、年間4、5回程度を想定しています。現在は3段階評価だが、評価や評定の出し方は今後決めるとしています。学習の達成状況の他、意欲や態度も評価。全教科をまとめて冊子にするか、各教科ごとにファイルケースにまとめるなど、やり方は各学校に一任。評価と通知をこまめに行うことで、学校と保護者が、子どもの学習の達成状況について相互理解を深めることなどが狙いだそうです。
 市内には市立小学校が28校、同中学校が16校ある。市は02年度から2学期制への移行を推進。今年度で全校が移行しました。今後は小中学校の各科目ごとに数人の教師が集まり、10月までにモデル案を作成する予定。2学期制は週5日制による学力低下への不安を背景に、授業時間増の切り札として全国に広まってきています。文部科学省の04年度の調査では、2学期制を採っている公立校は小学校が9.44%、中学校が10.4%、高校で26.1%に達しています。
 一方で導入した学校の中には、評価が年2回しかないことへの不安・不満の声が寄せられるケースが少なくありません。「学期ごとの通知表をとりやめるのは全国的に珍しい」と話す教育評論家の尾木直樹さんは「保護者の不安解消につながる上に、教師も子どもの弱点を把握して学力向上を図れるという点では実践的だ」と評価しています。

●<医療扶助>生活保護者に「1割」自己負担を厚労省が検討
 10日、厚生労働省は全額税金で負担している生活保護受給者の医療費「医療扶助」について、08年度から一部自己負担を求める方向で検討に入りました。医療機関の窓口で、最低でもかかった医療費の1割を支払ってもらう考えです。ただ、受給者に自己負担を課すことは、憲法上の「最低限度の生活保障」を目的とする生活保護の理念を覆す、との指摘もあり、同省は慎重に検討を進める意向のようです。99年度の月平均受給者は80万3,855人でしたが、04年度は115万4,521人と急増しています。
 06年度の生活保護費(予算ベース)は2兆6,888億円。うち、51.8%に当たる1兆3,940億円が医療扶助に充てられています。現在は、生活保護受給者が医療機関にかかっても窓口負担は一切不要で、財務省はこの点が生活保護費全体を押し上げているとみて改善を迫っています。
 社会保障費を2011年度までに国費ベースで1.1兆円削減することを目標とした政府方針を受け、財務省は今後5年間、厚労省に毎年社会保障費の伸びを2,200億円圧縮するよう求める方針です。厚労省は、07年度予算については、生活保護費の母子家庭を対象とした加算の縮小と地域加算の見直し、雇用保険の国庫負担削減などでクリアできるとみていますが、08年度のメドはたっていないとしています。このため08年度は、生活保護費本体部分の「生活扶助」の水準カットとともに、医療扶助への自己負担導入を検討することにしたものです。
 同省はこの社会保障費の削減効果を1,000億円台とみている。
 生活保護制度の改革をめぐっては、医療扶助を廃止し、生活保護受給者には市町村の国民健康保険へ移行してもらって自己負担を求める案が再三浮上しています。ただ、市町村は「財政負担増を招く」と反発し、議論は進んでいません。このため厚労省は、医療扶助制度を残したまま自己負担を求める方針案を与党幹部らにも説明をしたそうです。

●「教育上必要」と遅刻学生から罰金100円、琉大教授
 10日、琉球大工学部の教授(62)が講義に遅刻した学生から罰金100円を徴収していることが分かりました。学部が徴収をやめるよう勧告しましたが、教授は「遅刻を減らすには教育上必要な措置」として応じていないそうです。大学は調査委員会を設け、教授の処分を検討するとしています。
 工学部によると、“罰金制度”は昨年度後期から、機械システム工学科2年の必修科目の講義で開始。学生約45人が受講しており、冒頭に出欠を取る際に不在の場合、途中で教授に自己申告して100円を払う。払わなければ欠席扱いに。
 昨年11月、学生からの苦情で発覚。問題視した学部側は、教授会や文書で勧告しましたが、教授が従わないため先月下旬、「払わないように」と学生に促すビラを配布。今月、講義室ドアに「100円払わない。『遅刻しました』だけ告げる」とする学科長名の張り紙をしたそうです。
 学生の間では「教授には逆らえない」「100円で遅刻が出席になるなら安いもの」などと、払うケースがあると言います。
 「欠席扱い」が100円で「出席扱い」になる。大学の講義って、その程度のものという認識をこの教授が持っている、という理解でいいのでしょうか?

●「特定疾患に認めて」 脳脊髄液減少症の全国組織
 交通事故などに遭った後、頭痛やしびれを引き起こす脳脊髄(せきずい)液減少症の患者栂紀久代(とが・きくよ)さん(54)=大阪市=の呼び掛けで、全国の患者を支援する会「サン・クラブ」がこのほど発足しました。全国から趣旨に賛同する人が集まり、会員数は既に患者200人を含む1,000人に。
 栂さんは1980年に鳥取県で交通事故に遭いました。頭痛や体のしびれや耳鳴りに悩まされてこられましたが、病院では「仮病」と言われたり、「うつ病」と診断されたりしたそうです。自ら医師を探し出し、脳脊髄液減少症と診断されるまで23年かかりました。
 腰椎(ようつい)に注射した血液の凝固作用で漏れを止める「ブラッドパッチ」という治療法があるそうですが、厚生労働省は「学会からの要望がない」などとして健康保険の適用を認めていません。近年、重い後遺症として交通事故との因果関係を認める判決が相次いでいます。
 問い合わせは「サン・クラブ」電話06(6474)2114。

●小さな相談室から(5) 若すぎる死
 京都では祇園祭の宵々山を迎え暑さしきりの昨日、知人の息子さんの告別式に参列してきました。彼は、子ども期から青年期にかけて、やんちゃで、元気を振りまいていました。どんな背景があったのかは推測の域を出ませんが、躁鬱病で入退院を繰り返し、退院してまもなく、家の近くの精神単独型の小規模作業所に通いはじめることになっていました。その日、ご両親が仕事に出かけられた直後、自宅に灯油を撒いて火を付け、焼死してしまいました。
 焼香の列に並び、お父さんに「ゆっくりと弔ってあげて下さい」と声をかけようと心に決めていましたが、お父さんに直面した時に、感情がこみ上げ、ついに口から言葉を出すことができず、お辞儀をするのが精一杯でした。お父さんは、気丈にも「がんばる」と一言かけてくれました。
 30歳の自死。身近な逆縁。若すぎる死でした。


[2006.7.9]

「学校だけが息抜きの場」、医師宅火災で逮捕の長男

 6日、3人が死亡した奈良県田原本町の医師宅火災で、放火と殺人の疑いで逮捕された高校1年の長男(16)が「学校が唯一の息抜きの場だった」と話していることを接見した弁護士が明らかにしました。
 長男は幼稚園のころから父親(47)の監視下で勉強させられていたといい、「漫画を買っても家で読めないから、学校で読んで友達にあげていた」と話しているといいます。
 一方、自宅に放火した後「思い出のため、父と2人で写っている写真を持って家を出た」ことも判明。
 調べに対し「父の暴力が許せなかった」と供述しており、田原本署捜査本部は父親への不満から自宅へ火を付けるに至った動機を慎重に調べています。
 父親が抱いていた職場での学歴による差別化と劣等感が産んだ惨劇といえると思います。自身が実現させたかった夢をわが子に託す、「愛情」に名を借りた共依存。学歴・出身校偏重、人格や経験などではなくレッテルによる差別化、親世代が有しているこうしたデバイドの犠牲者はいつも子どもたちです。そろそろ気づき合いませんか、子どもが人として豊かに育つことの大切さとそのために親・学校・地域ができることを…。

●2歳女児死亡に児童相談所、虐待に一切気付かず「対応、手ぬるかった」
 滋賀県高島市の夫婦が2歳の女児を虐待して死亡させたとされる事件で、滋賀県中央子ども家庭相談センター(草津市)の竹嶋道江所長らが6日、大津市の滋賀県庁で会見し、傷害致死容疑で逮捕された父親の長阪健太容疑者(24)と母親の千鶴容疑者(25)がネグレクト(育児放棄)をしていた可能性があると判断していたことを明らかにし、「結果から見れば、対応が手ぬるかった」と陳謝しました。
 同センターによると、千鶴容疑者が育児不安を訴えたため、死亡した優奈ちゃんは04年1月から県内の乳児院に預けられ、千鶴容疑者の様子などからネグレクトの可能性がある、と判断したといいます。
 優奈ちゃんが自宅に戻った今年5月中旬から、高島市とともに、13回以上の電話と5回の家庭訪問を行ったそうですが、事前に連絡したり、抜き打ちで自宅を訪れても不在が多く、長阪容疑者と1度会えただけで、優奈ちゃんとは1度も会えなかったといいます。
 竹嶋所長は「身体的な虐待の可能性は考えていなかった。家庭訪問を積み重ねれば、いつか優奈ちゃんと会えると思っていたが、対応が手ぬるかった」と話しました。
 長阪容疑者の自宅近くの女性によると、近所の人が「4、5日前に(同容疑者宅の)風呂場付近で『あちゅい、あちゅい』という泣き声が聞こえた」と話していたといい、この女性も「家の中で人をたたく音を聞いたことがある。1年ほど前、優奈ちゃんが1人で泣いていたので相手をしていると、父親から『ほっといてくれ、迷惑だ』と言われた」といいます。
 虐待やネグレクトを確認したり疑いを感じたときには通報すること、とされていますが、通報先の児童相談所がこうした対応しかされないのであれば、通報をためらってしまいます。大人が軽い暴力(?)を起こしただけでも警察のお世話になるのに、子どもは命が危険にさらされた状態であっても、子どもということで放置される。なぜ、子どもを一人の人格として認知してあげられないのでしょうか?

●求む!保健所長、医師不足で欠員相次ぐ(東北)
 東北の保健所が医師不足にあえいでいます。岩手、宮城、秋田の3県で、原則として医師免許が必要な保健所長を確保できず、1人で複数の所長を兼務する事態が続いているそうです。国は保健所長の資格要件を緩和し、なり手の拡大を目指していますが、効果は表れていません。「都市に偏在する傾向は、臨床医師と同じ」(厚生労働省)で、新型インフルエンザ対策など危機管理の対応に懸念が広がっています。
 宮城県では06年度、7カ所の保健所のうち栗原、登米、気仙沼の3保健所で所長が欠員状態。7月下旬に、本年度採用した医師2人が登米、気仙沼に赴任しますが、現在は栗原、登米を大崎保健所長が、気仙沼を石巻保健所長がそれぞれ兼務しています。
 鹿野和男大崎保健所長は、週3日は大崎、週2日は栗原と登米に半日ずつ通っています。「緊急のやりとりを電話で済ますことも多い。時々、頭の中で管轄が混乱しそうになる。今まで大きな問題はないが、兼任は望ましくない」と漏らしています。
 岩手県は本年度、10保健所のうち2カ所の所長を確保できず、北上と水沢、久慈と二戸の組み合わせで兼務。秋田県は8保健所中、3カ所が欠員。横手と湯沢、秋田中央と大仙、北秋田と大館が兼務となっています。青森(6保健所)、山形(4)、福島(6)は充足しています。
 厚労省は04年4月、所長不足を解消するため、医師免許を資格要件としていた地域保健法施行令を改正。どうしても医師が確保できない場合は、薬剤師や獣医師なども就任できるようにしました。しかし、これまでに医師以外の所長就任は全国でゼロ。岩手、宮城、秋田では検討さえ進んでいません。
 医師以外の所長を置く場合でも、医師免許を持つ職員の配置は必要になります。秋田県は「知識や判断力は医師にかなわない。所長は強い処分権限があり、医師でないと県民に納得してもらえないのでは」と、検討が進まない理由を語ります。
 厚労省のホームページには、所長ら保健所で勤務する医師を募集する自治体が登録されているが、大半は地方。医師側は「都心勤務を希望する人が多い」(鹿野所長)といいます。
 東北大大学院医学研究科の辻一郎教授(公衆衛生学)は「患者に接する臨床医に比べ、公衆衛生分野の志望者はもともと少ない。感染症の予防や健康増進など保健所の使命を、行政が粘り強くPRするしかない」と話しています。

●障害者支援法人に無担保融資、大阪のNPOなど全国初
 1日、NPO法人「ゆめ風基金」(大阪市東淀川区)と近畿労働金庫(同市中央区)は近畿のNPO法人と社会福祉法人の障害者支援活動を対象とする無担保の低利融資制度を創設しました。
 上限500万円で金利は年1.95%(変動)。使途は<1>事務所の敷金など事業の立ち上げ資金<2>行政の助成金交付までのつなぎ資金――などです。障害者活動に特化した民間金融機関の融資制度は全国初といいます。
 障害者団体の多くは運営基盤が弱く、融資を受けるのが難しい。今回の制度は、同基金がこれまでの募金活動で集まった資金を活用し、同金庫に保証資金として1,000万円を預金する方法で実現しました。
 同基金の牧口一二・代表理事は「活動実績がなくても融資を受けられるのが大きい。ただ本当に困っているのは、法人格のない任意団体。対象にできないか今後、考えたい」と話しています。

●特別支援教育:理解深めよう 8地域でフォーラム開催へ/山口県教委
 授業や集団活動で困難を抱える子供たちを支援する「特別支援教育」の理解を深めようと、山口県教委は10、11、29の3日間、県内8地域でフォーラムを開きます。参加費は無料。
 発達障害児とかかわる療育機関や臨床心理士らと、保護者や学校関係者によるパネルディスカッション形式。子どもが自分のペースで学校生活を送り、地域社会で働いていくためのビジョンなどについて意見を出し合います。
 【10日午前10時〜正午】下関市の海峡メッセ下関▽防府市のデザインプラザHOHU▽柳井市のアクティブやない【11日午前10時〜正午】周南市の周南総合庁舎▽岩国市の市民会館▽宇部市の湖水ホール▽萩市の市民体育館【29日午後1〜4時】山口市の県セミナーパーク。問い合わせは県教委特別支援教育推進室(083-933-4615)。


[2006.7.2]

児童虐待相談3万件超、被害の半数近くが6歳未満

 27日午前、内閣府は「青少年の現状と施策」(2006年版青少年白書)を発表しました。
 04年度の児童虐待に関する相談が3万3,408件(前年度比6,839件増)と初めて3万件を超え、過去最高となりました。「児童虐待は、子どもの生涯、さらには世代を越えて大きな影を落とす。発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至るまで、切れ目なく支援することが必要だ」としています。
 全国の児童相談所や警察に寄せられた児童虐待の相談は、調査を始めた90年度から14年連続で増え、04年度には約30倍となりました。
 内容別では、身体的虐待が1万4,881件(44.5%)で最も多く、ネグレクト(育児などの怠慢や拒否)が1万2,263件(36.7%)、心理的虐待が5,216件(15.6%)、性的虐待が1,048件(3.1%)と続いています。

●56%が生活「苦しい」/国民生活基礎調査(厚労省)
 28日、厚生労働省は05年の国民生活基礎調査結果を公表しました。生活を「苦しい」と答えた世帯は56.2%に達し、過去最高を更新しました。1世帯当たりの平均所得額(04年)は580万4,000円。95年の659万6,000円から12%減少し、低所得層ほど減少率が目立つなど格差の拡大傾向をうかがわせています。
 同調査は昨年6〜7月、全国4万5,001世帯(所得調査は7,038世帯)から回答を得たもの。
 今の生活を「大変苦しい」と答えた世帯は23%。「やや苦しい」の33.2%を加えた「苦しい」は56.2%で、前年より0.3ポイント増えています。調査開始時の86年より15.3ポイント増え、00年の50.7%より5.5ポイントの増。「児童のいる世帯」では「苦しい」が60.1%に上っています。
 平均所得額の10年間での減少を所得階層別(5区分)でみると、最も所得の低い層(平均123万9,000円)の下げ幅は24%減だったのに対し、最も高い層(同1,295万1,000円)は9%減にとどまっており、経済格差の低所得層への広がりが示された結果となっています。
 また、調査結果から推計した総世帯数は4,704万3,000世帯で、うち「児童のいる世帯」は1,236万世帯(26.3%)。86年の1,736万4,000世帯(46.2%)から大幅に低下しました。平均児童数も1.72人で、86年の1.83人より0.11人減りました。一方、65歳以上の人がいる世帯は39.4%の1,853万2,000世帯で86年に比べ倍増。うち独居は406万9,000世帯でした。
 「児童のいる世帯」で60.1%が「苦しい」と答える状況では、「少子化対策」としていくら箱物を作っても、抜本的な歯止めにはならないことは明らかです。

●精神障害の相談気軽に/来月から夜間勉強会:家族会『新宿フレンズ』
 心の病気について、もっと気軽に相談できる場を提供しようと、新宿区の精神障害者家族会「新宿フレンズ」(代表・岡嵜(おかざき)清二さん)が、7月から夜間勉強会をスタートさせます。これまでの家族限定の会ではなく、心の病気を心配する人や、病気に関心を持つ人すべてに対象を広げ、知識の普及に役立てていくとしています。
 「新宿フレンズ」は1969年から活動を始め、現在の会員は約500人。症例の多くは統合失調症で、適切な治療を受ければ回復するが、受診が遅れたがために、症状が悪化する例も少なくないといいます。
 同会はこれまで、保健・医療の専門家を招いて勉強会を月に1度、土曜日の昼間に開いてきましたが、もっと多くの人が立ち寄れるようにと夜間の開催を企画したものです。同会では「心の病気は家族ぐるみの支えが必要。多忙な父親にもぜひ出てほしい」と話しています。
 夜間勉強会は7月12日にスタート。毎月第2水曜日の午後7時−9時、新宿区西新宿8の13の18、クレイン西新宿101「ムツミ第一作業所」で開催。問い合わせは、新宿フレンズ=電(3987)9788=へ。

●「軽度発達障害」早期対応へコーディネーターの養成研修
 軽度発達障害の児童生徒に、適切な指導を行う「特別支援教育」が来年度から全国の小中学校に適用されるのを前に、校内や学校と家庭、専門家との連絡調整役となる特別支援教育コーディネーターの養成研修が各地で開かれています。
 来年度中に、全国すべての小中学校へのコーディネーター配置を目指していますが、依然として課題も少なくありません。
 特別支援教育は「学校教育法」が改正されるのに伴い、来年度から本格的に実施されることになっています。LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)、高機能自閉症などの軽度発達障害児も対象となります。
 こうした児童生徒の指導を充実させるため、今月6日に行われた東京都教委のコーディネーター養成研修の2回目の講座では、「保護者への啓発を進めながら連携をしていくことが大切だ」「コーディネーターにお任せ状態になってはいけない」などの声が上がりました。
 区市町村教委から推薦を受けた約50人の教員が、「校内支援体制の構築」をテーマに9つの班に分かれて協議を行いました。教員たちは、10月まで計10回の研修を受けた後、それぞれの市町村で行われる伝達研修で講師役を務めることになっています。
 特別支援教育では、従来の「特殊教育」では対象外だった通常学級に在籍する軽度発達障害の子供も含めて、それぞれ状況に応じた個別指導計画を作成し、教育をしていくことになります。
 しかし、「担任が軽度発達障害の子に気づいても、そのことを保護者に納得させることができずに、一人で悩みを抱え込んでしまう教員が多い」と、都教育庁義務教育心身障害教育指導課の田島忍・指導主事は、教育現場での不安を代弁します。
 田島さんは養護学校の教員だった05年度にコーディネーターとなり、通常学校の校内研修に講師役として参加。軽度発達障害の子に対する教育は、早期発見・対応が重要だが、わが子が特別な扱いを受けることに抵抗を持つ保護者が壁となり、専門家の意見を聞けずにいると言う声を耳にしてきました。
 こうした子どもを、学校全体でサポートするため、特別支援教育では校内委員会を設置し、個別指導計画を作成して教育することを掲げています。文科省特別支援教育課の調査によると、05年の特別支援教育コーディネーターの配置率は公立小中学校で77.9%、校内委員会の設置率は87.8%に上っています。しかし、個別指導計画の作成率は28.9%にとどまっており、現場での教育体制がまだ整っていないことが浮き彫りとなっています。
 小貫悟・明星大学助教授(臨床心理学)は、「特別支援教育には、保護者の理解・協力が不可欠。個別指導計画を通して、保護者と話し合いをしていくことが重要」と指摘しています。
 「特別支援」は、個のニーズに応じた適切な支援提供が基本です。現状の学校の枠組みや力量、保護者との連携の度合いを前提とするのではなく、本人が何に困り、何を必要としているかを理解し、その状態の改善に向けて学校と家庭、地域で具体的に何が必要かを検討し、個別支援計画を作っていくことが求められていると思います。支援の「パターン化」が進まないことを祈ります。

●中高校生の4人に1人が不眠、成人を上回る:10万人調査
 中学・高校生の4人に1人が不眠を訴えていることが、日本大医学部の兼板佳孝助手(公衆衛生学)らの研究でわかりました。10万人規模の調査で、思春期の子どもの不眠の実態が明らかになるのは初めてで、不眠の割合は大人を上回っています。大津市で開催された日本睡眠学会学術集会で30日発表されました。
 研究は、厚生労働省の研究班(主任研究者、林謙治・国立保健医療科学院次長)の調査の一環で、04年12月〜05年1月に、全国の中学131校、高校109校を無作為に抽出、在校生に最近1カ月の睡眠状況や生活習慣、精神的健康度を質問したもの。回収数は約10万人(回収率64.8%)。
 不眠としたのは(1)なかなか寝付けない「入眠障害」(2)夜中に目が覚める「夜間覚醒(かくせい)」(3)朝早く目覚めて再び眠るのが難しい「早朝覚醒」――の3項目のうち1つ以上が当てはまった場合。その結果、不眠の割合は23.5%で、成人3,030人を対象にした調査(97年)の21.4%を上回りました。
 入眠障害は14.8%で、成人の8.3%より6.5ポイントも高い結果。逆に、夜間覚醒は11.3%(成人15%)、早朝覚醒は5.5%(同8%)で、成人より低かった。
 不眠が多いのは▽男子▽精神的健康度が低い▽朝食を食べない▽飲酒習慣あり▽喫煙習慣あり▽部活動に不参加▽大学進学希望なし――などと答えた生徒でした。
〈教育評論家の尾木直樹・法政大教授の話〉悩んで寝付けないのは思春期にはあることだが、あまりに不眠の割合が高く、大変な事態だ。日本の中高生は、携帯電話のメールの普及で、友人づきあいがバーチャル化している。それが、大人が思っている以上のストレスになっているのではないか。


[2006.6.25]

『どう関わる?思春期・青年期のアスペルガー障害』、毎日新聞で紹介

 私も執筆に参加した『どう関わる?思春期・青年期のアスペルガー障害』が、毎日新聞・読書之森で紹介で紹介されました。以下、毎日新聞の記事です。
(毎日新聞6月18日朝刊より)
 ◇京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル編(かもがわ出版、1,365円)
 生まれつきの中枢神経の機能障害によって現れる発達障害の一つ、アスペルガー障害。発達に「偏り」があり、物事の感じ方や理解の仕方などが「普通の人」と異なるのだが、障害に気づかない周囲との間に誤解や摩擦が生じ、ストレスをためた本人が抑うつ状態に陥り、暴力に走る。こうした悪循環を断つため、本人とその家族を支える活動に01年から取り組むのがノンラベル。「『生きにくさ』の理解と援助のために」の副題の通り、障害の早期診断・発見・治療の必要性と、生涯にわたる一貫した理解と支援を繰り返し説き、活動を通じて見えた具体的な支援策を紹介している。アスペルガー障害の子を持つ母親5人の体験談も収録。障害の診断を聞いた時の反応を聞かれ、「半信半疑だった」「がっくりしたがほっとした」などと答えているのが生々しい。田井みゆき代表がつづる「『人それぞれ』という概念が徹底していけば彼らの特性も個性として認められる社会になる」という言葉も重い。アスペルガー障害の実際を知る入門書としてだけでなく、社会のあり方そのものも考えさせられる好著だ。A5、117ページ。

●長崎の自殺中学生両親、賠償求め市を提訴へ
 04年3月、長崎市の市立中2年、安達雄大君=当時(14)=が、教師の指導を受けた直後に校舎から飛び降り自殺した事件で、雄大君の両親は19日までに、「担任は不適切な指導をした上、指導で傷ついた生徒に必要な配慮を怠った」などとして、市に数千万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を起こすことを決めました。早ければ来月にも長崎地裁に提訴します。
 両親などによると、雄大君は04年3月10日の放課後、持っていたたばこが見つかり、担任から校舎3階の掃除用具入れの中や多目的室で生活指導を受けた。学年主任が代わって話を聞こうとすると「トイレに行きたい」と一人で教室を出て、そのまま校舎4階から飛び降り自殺したものです。
 両親は担任の指導について「狭い掃除用具入れの中で指導したり、ほかに喫煙した友人がいないか聞き出そうとするなど精神的に追い詰めた」と指摘。「指導で傷ついた生徒を一人にするなど、安全配慮義務違反があった」としています。
 市教委の調査では担任が月に2、3回、生徒を拳で殴るなどの体罰も明らかになっています。
 雄大君の自殺をめぐっては、両親が「転落死亡事故」とした市教委の報告書を「自殺」とするよう訂正を求めましたが、市教委は「報告書は事実関係のみ記した」と拒んでいます。
 雄大君の母親(44)は「雄大はあの日いつものように元気に家を出た。明るく友人も多かった雄大が死に至るまでの短い時間に何があったか知りたい。市教委に第三者機関を設置し事実を解明するよう求めたが応えてもらえず、事実を知る手段として訴訟を選んだ」と話しています。市教委健康教育課は「コメントできない」としています。
 個別の生徒指導の途中での飛び降り。これを「転落死亡事故」として処理したい市教委。事実を解明し、再発防止への対策を考えるという姿勢を持てない教育行政の態度は、悲しいことに全国共通のようです。
 全国学校事故・事件を語る会で何度か安達さん(お母様)にお会いしていますが、ご両親の提訴の目的は賠償ではありません。起こった出来事の事実を明らかにし、再発防止へ対策を作ることです。

●自閉症への理解さらに、近畿の支援センターがフォーラム(奈良県)
 18日、日本自閉症協会近畿ブロック奈良支部が中心となって「NHKハート・フォーラム 自閉症児者のライフステージに対応する支援」が奈良市三条宮前町のなら100年会館で開かれ、近畿各地から教職員、施設関係者を含む約400人が参加しました。
 奈良県では、平成17年4月の発達障害者支援法施行を受け、今年1月に奈良発達障害センター「でぃあ〜」が設置されました。これをきっかけに、今回初めて近畿に7カ所ある発達障害者支援センターのセンター長らが参加して同フォーラムが開催されたもの。
 近畿圏で支援センターがまだできていないのは京都府だけだと思います。このままだと、全国最後となってしまうかも知れませんね。


[2006.6.18]

自殺対策基本法が成立

 自殺の防止と自殺者の親族のケアを目的として、自殺対策を国や自治体の責務とし、超党派による議員立法で国会提出された自殺対策基本法が15日午後、衆院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立しました。自殺について「多様かつ複合的な原因及び背景を有するもの」と定め、官房長官をトップとする自殺総合対策会議を内閣府に設置し、対応状況を国会に報告するように義務づけています。
http://seiji.yahoo.co.jp/gian/0164016402018/index.html
 年間の自殺者が98年から8年連続で3万人を超える中、自殺を単に個人の問題として片づけるのではなく、社会的に取り組むべき課題として基本理念で位置づけまし。国や自治体、医療機関、事業主、学校、NPOが密接に連携して対策にあたるべきだとし、未遂者や遺族への支援充実も掲げています。事業主に対しては従業員が心の健康を保てるよう必要な措置をとるよう求めたのも特徴です。
 自殺防止をめぐっては政府が昨年末に総合対策を策定しました。しかし、省庁の対応が縦割りで、実効性を確保するために基本法の整備が必要との意見が与野党の国会議員からあがり、議員有志が法案をまとめたもの。自殺防止に取り組むNPOや民間団体、個人も各地で署名運動を展開(わずか1カ月半で目標の3倍以上の10万1055人分が集まりました)、基本法の制定を求めていました。
 本法は理念法として成立したものですが、自殺を個人の問題とせず社会的背景や関係性の要因があり、国や自治体、事業主、学校などが自殺防止の取り組みをする民間団体や個人と連携しながら自殺対策を行うことを求めています。総論的に「…ねばならない」の羅列とも読めますが、「自殺大国」と呼ばれるようになったわが国において、やっと自殺対策を国として取り組むことが宣言されたことは大きな一歩と言えます。今後、対策の具体化や態勢づくりに向けて、自殺防止や未遂者・遺族ケアに取り組む団体や個人と行政などが連携できる枠組みを速やかに作っていく必要があります。

●「カンニング疑われ自殺」高校生遺族が損害賠償を提訴(埼玉県)
 カンニングを疑われて自殺した高校生の母親が、埼玉県に対し、8,000万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
 04年、埼玉県立所沢高校の3年生だった井田将紀さん(当時17)は、中間試験でカンニングを疑われ、教師5人に2時間に渡って事情聴取を受けた後、飛び降り自殺しました。井田さんの母親は「大学の入試に関係のない物理のテスト中に日本史の勉強をしていただけで、カンニングでないことは明白だった」として、埼玉県に対し、8,000万円の損害賠償を求める訴えをさいたま地裁に起こしました。
 学校教育の場において「聴取」という言葉に不自然さを感じる人が多いことを信じたいと思います。それも、大人である教師が5人の集団で2時間も問いつめたわけです。教師たちには、集団心理が働きます。カンニングを疑わせる行為があったことを認めさせ、「謝罪」させ、「処分」を受けさせるという筋書き通りに「指導」という名の圧倒的弱者である個人への圧倒的強者からの攻撃、それへの服従を「善」と考え集団に参加していくという心理です。将紀さんは、この2時間に渡る拘束と圧力によって、抵抗する気力も萎え、無力感に嘖まれ、あげく自己否定感情を募らせたのでしょう。これが学校という場において行われるべき「指導」と言えるでしょうか。
 お母さんは学校側に要望して、この2時間の出来事を再現してもらったそうです。再現した教師個人に感想を聞くと、「なぜそこまでやる必要があったのかわからない」というようなことを言われたそうです。ナチスの強制収容所で行われていた収容者への信じがたい非人間的な対応がなぜ生じたのか、その状況での「強者」の集団心理が、この事件とだぶって感じられました。

●人間関係「希薄に」80%…読売世論調査
 読売新聞社が実施した全国世論調査(面接方式)で、社会の人付き合いや人間関係が希薄になっていると思う人は、00年7月の前回調査よりも7ポイント増え、80%に達したそうです。
 希薄になっていると思う人は、大都市よりも、中小都市や町村で急激に増えており、人とのつながりの喪失感が大都市部だけでなく、全国的に広がっていることが浮き彫りとなりました。
 調査は5月13、14日の両日実施。人間関係が希薄になりつつあると思うかとの質問に、80%の人が「そう思う」と答え、「そうは思わない」という人は19%でした。
 「そう思う」人を都市規模別にみると、中都市(東京23区と政令市を除く人口10万人以上の市)が81%で最も高く、次いで、小都市(人口10万人未満の市)80%、大都市(東京23区と政令市)78%、町村75%の順。前回調査と比較すると、大都市は3ポイント増だったのに対し、中都市と町村が6ポイント、小都市は10ポイントと、大幅に増加しています。

●田辺市の発達障害支援事業が軌道に/年齢問わずに対応(和歌山県)
 人とのコミュニケーションが取りづらい、落ち着きがないという、発達障害の悩みに相談に応じる田辺市の事業が軌道に乗っています。5月の1カ月間だけで本人や家族、教員ら延べ42人から相談がありました。昨年10月の事業開始から徐々に相談人数は増加していて、市やすらぎ対策課の梶垣吉良参事は「子どもから大人まで一貫した支援体制を築きたい」と話しています。
 同課によると、市町村が発達障害者の支援体制整備事業に取り組んでいるのは、県内では田辺市だけ。
 昨年4月に発達障害者支援法が施行され、広域でこの問題に対処する道が開けたことから、田辺市では、同市とみなべ、白浜、上富田、すさみの各町で事業を展開しています。これまでは「就学前は保育所で」「入学したら学校で」など支援体制がバラバラでしたが、乳幼児から成人まで一貫した発達障害児者の支援体制をつくったものです。
 社会福祉士や臨床心理士ら専門家による発達障害支援コーディネーターが相談に応じています。相談の内容は「学校で授業に集中できない」「友達関係がうまくいかない」「学習面のバランスの悪さを、どう指導したら良いのか」「パニックを起こした子どもとのかかわり方は」などさまざま。本人や保護者だけでなく、指導している教員からの悩みも多いといいます。
 昨年12月から、定期的に予約制で直接面談する「はなまる相談」と名付けた発達障害児者相談の日を設けた。毎月2回、同市湊の市民総合センター2階作業室で臨床心理士が1人約1時間、1日5人まで相談に応じています。
 相談受け付け状況(延べ人数)は、相談日の前後の相談も含めて4月が児童6人、保護者5人、教員などその他16人の計27人。5月は児童2人、保護者7人、その他33人でした。開設当初は教員からの相談が多かったそうですが、本人や家族からも増えてきているといいます。完全予約制で、6月はすでに定員がいっぱいの状態です。
 整備事業では、相談だけでなくコーディネーターを中心に学校や保育所、福祉事務所、保健所などの関係者が、発達障害の状態に応じた個別の支援計画を作成。教育や福祉などの関係機関へ助言するほか、地域住民に発達障害への理解を深めてもらうための啓発活動に取り組みます。和歌山市にある発達障害者支援センターとも連携します。
 はなまる相談は7月は11日、25日の午前10時〜午後4時。問い合わせ、申し込みはやすらぎ対策課(0739-26-4902)へ。

●発達障害者:県検討委、支援で調査/来月から3、5歳児らの2万人対象に(徳島)
 16日、発達障害を持つ子どもに対する支援のあり方を考える県発達障害者支援体制整備検討委(会長、橋本俊顕・鳴門教育大教授)の今年度初会合が徳島県庁であり、障害児の状況を把握するため、7〜11月に約2万人を対象にした実態調査の実施を決めました。県教委が04年度に全小中学生を対象に調査しているが、今回の調査には3、5歳児や高校生も含めることになりました。
 検討委によると、8市と那賀、美波、牟岐、海陽各町の3、5歳児と小中高校生が対象。該当者は約8万6,200人です。3歳児健診時の他、保育所や幼稚園、小中高校の協力を得たうえで、1万9,500人に調査。内訳は3、5歳児は各3,000人、高校生は各学年1,500人(計4,500人)。
 具体的な質問項目は「『パパ カイシャ イッタ』等の3語文で会話ができますか」(3歳児)、「身の回りのことなど、言葉の指示だけでは行動に移せない」(5歳児)、「相手が聞いて分かるように整理して話すことができない」(中学生)など。該当の有無などを問う内容で、中間報告を12月にまとめるとしています。分析も加えた最終報告を踏まえ、来年度に具体的な支援体制を話し合うそうです。
 LD(学習障害)や自閉症などの可能性があり、特別な支援が必要とされる児童生徒数は、文部科学省の小中学校全国調査(02年)で、全体の6.3%との結果が出ていますが、04年の県教委調査では4.1%でした。

●余呉町の廃校利用、不登校児ら支援へ「教室」(滋賀県)
 廃校になった小学校を利用し、不登校の児童、生徒を支援する教室づくりが余呉町で進んでいます。ボランティアの力を借りて校舎を改装し、7月ごろから受け入れを始める方針です。
 準備を進めているのは、3月末まで同県長浜市青少年センターで不登校や非行の子どもと親のカウンセリングをしていた唐子恵子さん(49)。「不登校の支援は即応性が大切。行政は決裁に時間がかかるなど支援が遅れてしまう。それなら自分で教室をつくろうと決意した」と話しています。
 活用するのは、昨年3月末に廃校となった余呉町上丹生の旧丹生小学校。センター勤務時代に同校を訪れた際、木造2階建て校舎に温かみを感じ「ここなら」と思い立ったそうです。
 余呉町に貸与を申し入れ、町側も快諾。教室の名前と同じ特定非営利活動法人(NPO法人)「子ども自立の郷ウオームアップスクールここから」を発足させ、長浜市から教室近くに移り住みました。
 受け入れは小学生から高校生まで。不登校の相談は唐子さんがあたるほか、授業は教員免許を持ったボランティアが担当。学校に復帰する場合は、事前に町内の小中学校で授業を受けさせるなど町教育委員会もバックアップ。幅広く受け入れようと、通学に加え寄宿も可能に。
 今月から壁の塗り替えなど改装に取り掛かったほか、近くの住民がソファなどの備品を提供するなど支援の輪も広がっています。唐子さんは「将来は校舎内に喫茶室をつくり、住民との交流も目指したい」と話しています。
 入学金は3万円、授業料は月額7万円(寄宿の場合は14万円)の予定。問い合わせは同NPO法人=電0749(86)3578=へ。


[2006.6.11]

「全国学校事故・事件を語る会」学校の密室化防ぎ真実を明らかに(神戸)

 学校が関係する事故や事件で子どもを失った親らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」の集会が3日、神戸市内で開催されました。同会の代表世話人で、担任教諭の暴行がきっかけで長男が自殺した公立中学校教諭、内海千春さん(47)は「隠ぺい体質を持った教育行政当局や学校側が、『密室』の学校内で起きた真実を明らかにすることが再発防止への手掛かりになる」と訴えました。
 同会は03年、社会から孤立する遺族に生きる力を取り戻してもらい、同様の事件・事故の再発防止を目指して設立。この日、学校側の過失で子供が自殺した親らが集まり、体験や今後の対策などを涙ながらに語り合ったことからスタート。会を重ねる毎に参加者が増える、という望ましくない状態に戸惑っていながら、会の必要性を痛感しています。
 たつの市内の市立小学校6年生だった内海さんの長男平君(当時11歳)は94年9月、担任の男性教諭の暴行の直後、自宅裏山で自殺しました。内海さんと妻礼子さん(47)が心を痛める中、信じられない出来事が相次ぎました。教諭の暴行の実態や経緯を明らかにしようとしない学校側、担任教諭を擁護する動きを見せたPTAら地域住民……。内海さん夫婦はこうした「2次被害」に孤立感を覚え、心を何度も踏みにじられました。
 夫婦はその後、市を相手取った民事裁判で、担任教諭の暴行と自殺との因果関係を認める判決を勝ち取ります。しかし、2次被害に苦しむ遺族は多く、内海さんは「学校側に真実をすべて明らかにさせるシステムを作らなければ、同じような事案が繰り返される。亡くなった子どもたちのためにも一緒に頑張りましょう」と呼びかけました。
 私は、今回は仕事で2日目のシンポジウムのみの参加となりましたが、弁護士、大学教授をはじめとする研究者、マスコミの参加の増加が目立ちました。学校の隠蔽体質を体験した一人として、この会の存続と、子どもの自殺防止、自死遺族への支援の取り組みの必要性を改めて強く感じました。

●自閉症の組織的対応に遅れ、養護学校在籍率急増
 10日、国立特殊教育総合研究所の調査で、全国の知的障害養護学校で、04年に自閉症と診断された子どもの割合が前回調査の86年に比べ、小学部2.3倍、中学部1.9倍になったことが分かりました。
 「自閉症の疑いあり」を含めると、在籍率は小学部48%、中学部41%に達したが、自閉症の特性に応じた指導を学校や学部全体で進めているのは24−26%にとどまっており、対応の遅れが浮き彫りになりました。
 同研究所は「自閉症の子どもの教育は知的障害とは別に考えるべきだ。個々の教員に頼るのは限界があり、指導のノウハウを共有するなど組織的対応が緊急の課題だ」と指摘しています。
 調査は04年夏に全国の盲・ろう・養護学校を対象に実施。91%から回答を得たもの。
 養護学校が、体制的枠がないので自閉症児童・生徒を受け入れられない、と拒むケースを耳にします。「障害」はこれまで知的・身体・精神の「3障害」に括られてきたため、自閉症を含む「発達障害」に対する医療・療育・教育的支援サービスは独立した物としては取り組まれてきていません。文部科学省は「特別な支援が必要」な「軽度発達障害」を有する児童・生徒が6.3%いるとして「特別支援教育」を始めましたが、その具体化、地方による温度差が明らかとなっています。「発達障害」を新たな障がいの枠としてきちんと位置づけることが求められています。理念法である「発達障害者支援法」においても、さらに具体的な支援サービスのあり方を規定する法整備が必要です。

●高機能自閉症者への理解「私の歩んだ道」/森口奈緒美さんの講演(大阪)
 25日(日)14時半〜16時半、高槻市野見町の高槻市現代劇場3階レセプションルーム。自閉症を持つ成人女性として初めて自叙伝を書いた森口奈緒美さんの講演。コーディネーターに自閉症やアスペルガー障害の人たちの教育・支援活動を行っている服巻智子さん。14時から受け付け、小学生以下の子どもは入場できない。資料代2,000円。主催・問い合わせは、自閉症の人のバリアフリーを考える親の会「はぐくみ」(090・9982・5024=16〜20時、hagukumi2003@yahoo.co.jp)。
 それいゆ自閉症支援専門家養成センター・センター長の服巻智子先生には、昨年、滋賀県の自閉症・発達障害者支援センター主催の講演会でお会いしました。日本における自閉症スペクトラムの方々への支援の先駆者でもあり、学ばせていただくことがとても多い方です。森口奈緒美さんさんは自叙伝『変光星』を読み、当事者の言語化される自閉症の世界を知る上でとても参考にさせてもらっています。ぜひ参加したいと思います。


[2006.6.3]

自殺者8年連続で3万人越える/20〜30代で増加

 昨年の全国の自殺者は、3万2,552人と8年連続で3万人を超えたことが1日、警察庁のまとめで分かりました。例年と同じく中高年の自殺が多いが、20〜30代の若者の自殺者数が前年比で5%以上増えているのが特徴。原因・動機は健康問題と並んで「経済・生活問題」が目立っています。社会の将来を支える若年層の苦悩ぶりをうかがわせる結果となっています。
 同庁によると、昨年の自殺者数は、過去最悪だった03年の3万4,427人より減少しましたが、記録を取り始めた78年以降4番目に多く、男性が2万3,540人で全体の72.3%を占めました。
 年代別では、60歳以上が1万894人(前年比0.9%減)と最も多く、続いて▽50代7,586人(同2.4%減)▽40代5,208人(同2.1%増)▽30代4,606人(同6.3%増)▽20代3,409人(同5.0%増)▽10代以下608人(同3.2%増)。また、小学生が7人、中学生が66人、高校生が215人。大学生は433人と、前年の370人より63人増えた。
 動機のトップは「健康問題」1万5,014人(46.1%)。次いで「経済・生活問題」7,756人(23.8%)▽「家庭問題」3,019人(9.3%)▽「勤務問題」1,807人(5.6%)――だった。「経済・生活問題」はバブル景気に沸いた90年には1,272人でしたが、景気の悪化とともに増加し、98年には6,000人を超え、近年は主な動機として注目されるようになっています。
 20〜30代の自殺は、厚生労働省の調査で同年代の死亡理由の中で最も多く、今回の警察庁のまとめで、遺書を残しており動機が明確な30代1,409人のうち「経済・生活問題」は412人(29.2%)で「健康問題」452人(32.1%)に次いでいます。20代では976人のうち「健康問題」313人(32.1%)▽「経済・生活問題」177人(18.1%)でした。
 自殺防止対策の法制化を国に求めていますが、自殺する個人に焦点をあてた「うつ対策」で終わらないようにしなければなりません。自殺動機で多いのが「健康問題」、「経済・生活問題」、「家庭問題」、「勤務問題」。日本社会で生活していくことの困難さにこそ、焦点があてられる必要があります。

●市町村教委/生徒指導“場当たり的”、担当主事「不在」45%(文科省調査)
 文部科学省の調査で、生徒指導を担当する指導主事を配置していない市町村教委が全国の45%にのぼることが分かりました。文科省は「荒れる学校」対策として、問題のある生徒に教員が一丸となって臨む米国流の生徒指導方針「ゼロトレランス(毅然(きぜん)とした対応)」の導入を打ち出していますが、調査結果では、学校を管理する市町村教委に危機感が乏しく、教育現場の状況を掌握しきれていないなどの課題が浮かんできました。
 調査は昨年12月の時点で全国の教育委員会と高校を対象に実施。学校の生徒指導について専門的な立場から指導助言する指導主事が何人いるかを市町村教委に尋ねたところ、「0人」が45.2%で「1人」が33.2%。生徒指導をめぐる国や都道府県の方針や通達、指導が現場に周知徹底されにくい実態が分かりました。
 指導主事が実情把握のため学校訪問する回数も「状況次第で定期的にはない」が37.6%、「生徒指導に絞った学校訪問はしていない」は24.8%、「年一回」が13.6%。学校任せにしがちで実態掌握には消極的な姿勢が明らかとなっています。
 生徒指導を充実させるための研修を実施していない教委は45.7%。実施した場合の研修テーマは「不登校」(74.8%)「生徒理解」(66.1%)などが多く、学校の秩序維持に効果的とされる(?)「出席停止」は、わずか5.2%でした。
 「毅然とした対応」の生徒指導方針は、学校を舞台にした凶悪事件や薬物事件などが全国で相次ぐことを受け、文科省が全国に通知。学校の秩序維持のため、度重なる指導を聞き入れない生徒には出席停止などの厳しい態度で臨む方針のようですが、その前提には、あらかじめ生徒の行動規範や罰則、運用方針などを生徒や保護者に十分に周知していることが不可欠となります。
 しかし、今回の調査結果では、出席停止の前段階となる問題生徒への特別指導を教委の規則に「特に盛り込んでいない」と回答した市町村教委は62.9%もありました。
 市町村教委の80.5%は、出席停止の措置などを普段から保護者や住民に周知させておらず、都道府県教委の55.3%も退学や停学などの懲戒処分を出す方針を示していませんでした。具体的な行動規範や違反した場合の罰則などを全生徒や保護者に周知させている高校は15.8%にとどまり、懲罰や制裁には腰が引けた姿勢が浮かびあがりました。
 文科省児童生徒課の話:「指導主事不在の教委が多いのは深刻な問題。国の考えが学校にきちんと浸透していないことになる。市町村教委の生徒指導への対応は場当たり的で、事前にルールを周知させたり、日常的な共通理解を作ろうという意識に乏しい。これではいざ処分や制裁を出した場合、生徒や保護者とトラブルを招きやすい」
 教育委員会に体制や姿勢・意欲がない状態で、学校で発生する反社会的な問題行動にどう対応するかは、学校任せになり、校長任せになり、生徒指導部長任せになり、現実的には担任任せになってしまいます。秩序維持の徹底や懲罰などを含む厳格な対応が良いとは思いませんが、現場で対応にあたる担任や生徒指導部が相談相手をもてないという現実は、解消していく必要があると思います。問題行動の事実と経過、背景について、少なくとも学年団として共通理解を持ち、対応について集団論議の上で共通認識をもって臨むという体制づくりは必要でしょう。

●出生率5年連続で過去最低の1.25に/予想上回る少子化ペース
 1日、厚生労働省の人口動態統計(概数)で、1人の女性が生涯に産む子供の平均数の推計値である合計特殊出生率が、5年連続で過去最低を更新し、平成17年は1.25となったことが分かりました。前年比0.04ポイントの大幅下落で、人口減少に歯止めがかからない実態が改めて裏付けられ、年金などの社会保障制度や労働力への影響が懸念されます。政府・与党は6月中に新たな少子化対策をまとめる方針ですが、より実効性のある施策が求められます。
 昨年1年間に生まれた子どもの数は106万2,604人で過去最低だった前年より約4万8,000人減。一方、出生数から死亡数を引いた「自然増加数」はマイナス2万1,408人で、統計を取り始めた明治32年以来、データのない昭和19〜21年を除き初の減少となり、平成17年に人口減少社会に突入したことを改めて裏付けました。
 厚労省は出生率の低下について、晩婚化や晩産化傾向が背景にあると分析。また、15〜49歳の出産期人口や、出生率が高い25〜34歳の割合が減少したことを出生数減を招いた大きな要因とみています。
 年金制度は、国立社会保障・人口問題研究所が平成14年に公表した将来人口推計に基づいて財政計算され、給付水準はモデル世帯で現役世代の平均手取り賃金の50.2%とされていますが、推計では合計特殊出生率は19年に1.31で底を打ち、62年に1.39まで回復するとしていました。
 しかし、今回の数値(1.25)は推計値を0.06ポイント下回り、このまま出生率の下落に歯止めがかからなければ、年金制度の前提が大きく崩れます。年金収入を見込んで設計されている高齢者医療制度や介護保険制度など他の社会保障制度にも影響を与えかねません。
 また、若年世代の減少は将来的な労働力不足を意味し、経済成長や企業活動に影響が出ることが必至です。
 政府・与党は、団塊ジュニアが出産適齢期を迎えたこの5年間を少子化に歯止めをかけるラストチャンスととらえ、新たな少子化対策を打ち出す予定ですが、政府の予想を上回るペースでの少子化進行は、議論に大きな影響を与えることになります。
 歳出・歳入一体改革議論が同時に進んでいることもあり、政府・与党内では少子化対策への思い切った財源投入には否定的な意見が強くありました。しかし、小泉純一郎首相がこの日、「数字を厳しく受け止めなければいけない。今後、少子化対策は最重要課題になる」との認識を示したことから、今後、より実効性のある施策の展開を求める声が強まりそうです。

●アスペルガーの専門研究所、兵庫・芦屋大が設置
 芦屋大(兵庫県芦屋市)は6月1日、発達障害の一種で、他人との関係を築きにくい特徴を持つアスペルガー症候群を専門にする「アスペルガー研究所」を開設します。専門研究所は日本では数少ないのが実態です。
 芦屋大は教育学部の単科大学。アスペルガー症候群の実態を把握し研究、分析するとともに、教育現場で実際に同症候群の子どもと接する教職員たちの支援も目指すそうです。
 研究所は学内外の9人で構成。所長には不登校問題を長年扱い、同症候群研究で知られる臨床心理学者井上敏明さん(六甲カウンセリング研究所長)を迎えるとしています。

●発達障害:早期発見、5歳児も健診実施−栃木市が来月から/栃木
 栃木市は6月から5歳児の発達相談を市内の幼稚園や保育園、保健福祉センターで順次実施します。対象は06年度中に5歳になる子供約700人で、幼稚園や保育園に通っていない未就園児も含みます。発達障害の早期発見、支援をすることで、子供の不適応反応や2次的障害の予防を目的にしています。
 これまで健康診査は4カ月、9カ月、1歳6カ月、2歳、3歳の5回行ってきましたが、従来の健診では発見されにくい高機能自閉症などの発達障害に対応する必要が出てきた。またきつ音などの構音障害、小児肥満についても早期に対応することが出来るといいます。
 就園児は市内の幼稚園10カ所と保育園10カ所、未就園児は保健福祉センターで健診を受ける。保護者が記入した相談票を元に、幼稚園教諭や保育士、保健師、福祉トータルサポートセンターの心理職を中心に行動観察し、対応が必要と思われる子供には個別相談を実施。
 発達障害は自閉症、アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、通常低年齢で表れる脳機能の障害。04年度に1,056人の5歳児を対象とした県の調査では、発達障害の疑いで2次健診や医療機関に紹介したケースが56人と5.3%あったそうです。
 栃木市は05年4月、医療、保健、福祉、教育の窓口を一本化する「福祉トータルサポートセンター」を開設し、出生から就労まで一貫した支援を受けられるよう体制を整えました。同市健康増進課は「発達相談は障害の発見が最終目的ではない。小学校入学前の子供に合わせ、どんな支援が出来るか把握することが大切だ」と話しています。


[2006.5.28]

どうした京都府? 発達障害者支援に意欲見られず

 先週の某曜日の夕方、私が副代表をしている家族会ノンラベルの代表と私とで、京都府障害福祉室室長と懇談してきました。家族会ノンラベルでは昨年の12月京都府議会に「高機能広汎性発達障害(児)者への民間の療育・支援活動への援助に関する請願書」を提出、採択されました。請願の内容は、1.「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」などの、とりわけ思春期・青年期・成人期への取り組みを行う民間団体との連携を強める取り組みをすすめて下さい、2.同民間団体の取り組みへの財政的援助を行って下さい、というものでした。
 請願採択から半年が過ぎ、当該の理事部局である障害福祉室において、少しは取り組みが進んでいるかと、わずかに期待もしながら懇談に望みましたが、終了後には脱力感と無力感に襲われました。
 広汎性発達障害への公的な支援の要となるのが、発達障害者支援法で定められて、全国の都道府県・政令市のほとんどで設置が行われている「発達障害者支援センター」です。このセンター設置を前提に、民間支援団体との「連携」が取り組まれることを求める訳ですが、府の回答は「設置されていないところは本当にわずかになっています」と事実として認めながら、「現在、部内でも論議をしているところ」と、半年前と同じ内容。何ら取り組みが進んでいないことを明らかにしました。請願が採択されたことを受けて、当該部局としては「実績を作らなければならない」と理解はされていますが、「今年度予算では何もできない」「何年か時間がかかるものでしょう」と「予算」のないことを理由にしつつ、具体的に何の検討もされてないことも明らかになりました。
 家族会ノンラベルは文字通り家族による任意の民間団体です。必要に応じて事務局を持ち、スタッフを置き、会費とイベント収入などでギリギリカツカツの財政状態でやりくりしながら、必要とされる支援ニーズに応えて行こうと日々努力している団体です。本来、支援センターや保健所などの公的な支援サービスが充実していれば、家族会の役割も変わってくることになりますが、現在はあるべき公的支援を民間として行っているのが実態です。そのため、請願提出をしたわけです。民間団体の財政的脆弱さは、安定的な支援を進める上では危険要素です。しかし、ニーズがある以上、活動を取りやめることはできません。
 府は、こうした民間の財政的窮状を一定理解しつつも、「ご自分たちで始められた事業ですから、会員を増やすとか、副業で稼ぐとかして頑張っていってもらうしかない。どこか企業がスポンサーになってくれませんかねぇ」とまるで他人事のような態度。請願により委託された責任をすっかり回避しているばかりか、発達障害者への支援ニーズを基本的に理解してないんだなぁ、と痛感しました。その意欲がまったく感じられませんでした。
 6月1日から府は新体制となるようですが、担当が誰になろうと、どんな体制になろうと、発達障害への支援は、従来の身体・知的・精神の3障害の枠では括れない新たな支援ニーズの分野として、新しい支援サービスの枠組みが必要であること、当事者や民間支援団体の声を十分に聞きながら発達障害者支援センターを一日も早く府下に複数設置すべきことを訴え続けて行きたいと思いました。

●自殺防止総合対策を求める3万人署名、5月末締め切り
 国に自殺防止への総合対策を求める3万人署名が全国で取り組まれています。私も現在までで270筆を、いろんな方の協力で集めさせてもらいました。国会でも超党派で法整備を進める動きがあります。署名は5月31日締め切り、1筆でも多く集めたいと思います。皆さんのご協力を重ねてお願いします。

●栄養失調児に校長が見かねて、こっそり牛乳飲ます
 東京都内のある公立小学校での話しです。校長によると、04年春の新入生の中に体がやせ細り、元気のない男児がいて、授業中きちんとした姿勢を保てず、ぼんやりしていることも少なくなかったといいます。
 昨年4月、男子児童に話を聞くと、コンビニを営む両親から販売用のおにぎりや菓子パンを毎日のように与えられているということが明らかに。校長は栄養を補うために、給食の牛乳を冷蔵庫に保管、他の児童に知られないよう校長室で毎日飲ませてきました。
 その後も児童の食生活に改善は見られず、賞味期限切れの食品を与えられていることも分かりました。児童にも好き嫌いがあり、校長がスープを与えても飲まなかったそうです。栄養失調も疑われたため、見かねた校長は今年3月、保護者を学校に呼び出し、「今は成長期で、脳がつくられる大事な時期。きちんとした食生活をさせないと困る」と諭しました。
 母親は「(食事を)作っても食べない」と戸惑い、「食べるように(食材を)小さく切るなど工夫していますか」とたたみ掛けると、両親は互いに責任をなすり合い、けんかを始めたといいます。
 同校には数年前、「一日の食事はおにぎり1個」という児童がいましたが、栄養状態が切迫したため施設に保護してもらったということもありました。校長は「家庭の機能低下は現場で実感している。状況は悪化の一途だ」と憂えています。今も男児と別の児童計2人に牛乳を飲ませているそうです。
 校長は「家庭のしつけまで学校が引き受けるのはどうかと思うが、(劣悪な食事の)限度を超えている」と嘆きます。食育基本法が昨年夏施行され、国は朝食を取らない小学生をなくそうと呼びかけていますが、法の理念とかけ離れた現実に学校現場から悲鳴が上がっているのが実態です。
 政府は食育基本法に基づき今年3月、食育推進基本計画をスタートさせています。そこでは「朝食を欠く国民の割合の減少」を目標に掲げ、10年度までに朝食を取らない小学生をゼロにするとの数値目標が盛り込まれています。
 都教委の昨年の調査で「朝食を必ず取る」と答えた小学生は79.7%、中学生は70.2%。逆に「食べない」「食べないことが多い」という小学生は5.1%、中学生は11%でした。

●<問題行動>児童、出席停止も?…厳格化へ報告書(文科省など)
 22日、児童生徒の指導のあり方を調査・研究していた国立教育政策研究所生徒指導研究センターと文部科学省は、問題行動を起こした小中学生を出席停止とするなど厳格な対応を求める報告書をまとめ、公表しました。高校生には退学や停学などの懲戒処分を実施して学校秩序の維持を図る内容です。全国の公立小中高校生の暴力行為が98年度以降3万件前後で推移するなど問題行動が相次いでいるのを受け、センターなどが生徒指導の厳格化を軸に見直しを進めていたもの。
 各地で相次ぐ少年事件を受け、昨年11月から生徒指導体制の強化策を提言するため、センターなどが大学教員や弁護士、PTA理事や保護司など15人の協力を得て審議してきました。
 報告書は、生徒指導の基準や校則を明確化し、入学後の早い段階で児童生徒や保護者に周知徹底する。そのうえで、学校側は毅然(きぜん)とした指導を粘り強く行うよう提言。具体的な指導方法として、小さな問題行動から注意するなど、段階的に罰則を厳しくする「段階的指導」を挙げています。
 現在の公立小中学校では、学校の秩序が維持できないほどの問題行動を起こす児童生徒がいたとしても、停学や退学などの処分は認められていません。報告書は「居残り」「清掃」「訓告」などの懲戒や出席停止制度の活用、高校などでは停学・退学処分の適切な運用を求めています。
 小中学校の出席停止制度は、他の子どもの学習権を保障するため、市町村教委が適用。学校教育法の改正(02年1月施行)で出席停止の要件が明確化されるなど適用しやすくなっているそうですが、中学校では02年度37件、03、04年度ともに25件の適用にとどまり、小学校では02年度以降1件もないそうです。
 指導基準、校則、毅然とした指導、学校の秩序の維持、懲戒、出席停止、処分…。これらは学校教育における子どもたちの育ちに必要なものでしょうか? 問題行動を起こした後の対応ばかりが議論され指導方針として現場に降ろされていくことになるのでしょう。必要なのは、なぜその子がそんな「問題」となる行動を起こしたのか、起こさざるを得なかったのか、事実経過と背景を把握し、本人の気持ちに共感しながら受け止め、起こした行動の問題点を理解させ、認知に歪みがある場合には矯正への援助を行っていく、といった子ども個々への具体的対応ではないでしょうか。どの子にも育ち、学ぶ権利があります。


[2006.5.21]

ひきこもり支援団体を紹介/京都府がガイド作成

 京都府は、ひきこもりで悩む人やその家族の支援活動をしている民間団体を紹介する「ひきこもり支援情報ガイド」を作製、府内27団体の活動地域や内容が掲載されています。
 行政と民間団体が共同で支援活動を展開するため、初めて作製したもの。連絡先のほか、活動歴、対象年齢、利用者数、料金など、各団体の概要が一目で分かるようになっています。また、支援団体の活動理念も紹介されています。
 掲載されているのは、台風23号被害での災害ボランティアなど体験学習で子どもたちの社会参加を目指す団体や、外国の若者や高齢者との交流、スポーツ体験などさまざまな活動を通して「ひきこもり」を解決しようと取り組む団体、「ひきこもり」となった子どもの保護者らの支援団体もあります。
 A4判、58ページで2,000部発行。ひきこもり相談支援センター(伏見区)や各府保健所で配布中。郵送でも受け付けています。問い合わせは、府青少年課TEL.075(414)4301へ。
 私が関わっている家族会ノンラベルも掲載されています。

●全教員対象に不登校問題研修(京都市教委)
 京都市教委は、不登校傾向の児童や生徒への支援充実を目指し、市立学校の全教員と常勤講師を対象とした不登校問題研修を始めます。これまで生徒指導担当など一部の教員だけだった研修対象を全員に広げ、不登校対策の学校間や教員間の格差解消を図るとしています。
 市教委によると、年間30日以上学校を欠席した不登校の児童・生徒の数は、04年度で小学生269人、中学生945人で、01年以降は減少傾向にあるとしています。
 「不登校状態にある子への支援や相談体制は整った」(生徒指導課)としていますが、未然に不登校を防ぐ取り組みや、学校に戻った子が再び不登校にならない対策については、学校間に温度差があるのが現状といいます。
 学校ごとに設けている「不登校対策委員会」など教員組織の形骸(けいがい)化を防ぎ、全教員で不登校問題に取り組む意識を再認識してもらおうと全員研修を計画したものです。
 研修では、京都大教育学研究科の藤原勝紀教授ら教育心理の専門家を招き、夏休み中に6日間に分けて講座を開講。常勤講師も含めた全教員約6,500人に必ず一講座の受講を義務づけ、子どもたちの心のサインを見抜いたり、悩みを抱えた子への声のかけ方などを学んでもらうとしています。
 市教委生徒指導課は「学校に来させるのがすべてではないが、不登校の背景には子どもたちのさまざまな悩みや課題がある。研修を各校の実情にあった指導に生かしてほしい」としています。
 不登校は、小学校では担任任せ、中学校では担任と生徒指導部任せ、といった学校が少なくありません。個別のケースに対して、担任や生徒指導部だけが関わるのではなく、不登校に至った背景や今の状態、今後学校とのどんな関わりがその子にとって好ましいか等について、家庭と学校(校長をはじめとする管理職、学年主任、担任等)が本人の思いを最大限尊重しながら情報を共有し、検討を重ね、柔軟な対応を積み重ねるという姿勢が求められていると思います。教員の「研修」への参加の強制は、学びとしては必要かも知れませんが、大切なのは不登校状態にある子ども一人ひとりに対する大人の多方面からの関わり方です。これは研修では学べません。個々の実践を豊かなものにしていってほしいと思います。

●ひきこもり相談窓口開設5年/相談件数は増加傾向(田辺市)
 田辺市が、全国に先駆けて「ひきこもり相談窓口」を開設して今年で5年。相談件数は年々増加しており、3月末までに293家族から計309件の相談がありました。同市健康増進課相談窓口担当の目良宣子さんは「困っていても相談できずにいる青年もおり、相談に来やすい空気を当人の周りにつくるなど啓発活動が必要」と話しています。
 同市は、01年3月、10代から30代までを中心とした社会的ひきこもり対策で、市民総合センター内の健康増進課に相談窓口を開設しました。窓口の担当者は2人で、面談や専用電話、ファクス、メールで本人、家族などの相談に乗っています。
 延べ相談数は、01年度138回、02年度337回、03年度481回、04年度1,097回、05年度1,090回と急増しています。
 同じ人の複数回にわたる相談を1件にまとめると、5年間で309件が寄せられました。うち3割近くの86件が、05年度中の相談。初回の相談者は母親が最も多く、次に医師や教員など関係者からとなっています。86件中、20代が35件と半数近くを占めています。
 5年間で3カ月以上継続した相談の実件数は65件。個別の相談は本人で2週間に1回、家族で1カ月に1回を基本としている。
 相談を受けた結果、就労(アルバイト含む)や進学、就労訓練、社会体験活動、自動車免許取得など、自宅中心の生活から外の社会に出たケースもあります。
 また、健康増進課では05年度、合併した旧町村への啓発活動として、本宮や龍神、中辺路、大塔の各地域で「ひきこもり講演会」も開いています。
 目良さんは「相談に乗ることで、相手から学んだり、教えてもらったりすることもある。相談を受けた人の考え方や行動が前向きになってきてくれたときはうれしく、励みになっている」と話します。
 専用電話での相談時間は、月曜から金曜まで(祝日を除く)の午後2時〜4時。窓口での直接相談は予約が必要。電話・FAX.0739-26-4933、メールアドレスshc@city.tanabe.lg.jp

●ひきこもり青少年支援「ハートツリーハウス」NPO法人化目指す(田辺市)
 ひきこもりの若者らが気軽に立ち寄れる居場所として02年、田辺市内に開所した「ハートツリーハウス」(酒井滋子運営委員長)は運営の安定に向け、今秋を目標にNPO法人への移行を目指します。19日、田辺市湊の市民総合センターであった法人設立総会で、酒井さんは「まだまだ、ひきこもりに対する否定的な見方が根強くあるのではないか。法人格を取得し、独自の活動を進める必要を痛感している」と話しました。
 ハートツリーハウスは02年、田辺市末広町の民家を借りて開所。04年度からは、県からひきこもり者社会参加支援センター運営事業費の補助を受けています。県と市からの補助金や利用料、寄付、バザーの売り上げなどで運営しており、補助金収入が大きな割合を占めている。現在は無認可だが、NPO法人化されれば、各種企業が設けている補助金制度を活用しやすくなるとともに、認知度も高まり、行政への働き掛けや社会への提言もよりスムーズになるといいます。
 酒井さんら民間のボランティアは97年、西牟婁教育相談センターで不登校の相談活動を始めた。98年、活動の場を市民総合センターに移し、ハートツリーハウスの前身とも言える青年サークル「ハッピー」を結成しました。
 ハートツリーハウスでは、酒井さんとスタッフ2人が、15歳から30代までのひきこもりの青少年の相談に乗ったり、話し相手になったりするなど支援に当たっています。自宅から出てくることができない人への家庭訪問や、作業所などと連携して就労支援にも取り組んでいます。
 現在、6人が定期的に通所しており、家庭訪問が中心の登録者が3人。好きな時間に来て、スタッフと話をしたり、バザーに出品するクッキーなどの自主製品を作ったり、散歩したりしています。予定が入っていない日は読書やテレビ、ゲームなどをして過ごすそうです。
 月曜から金曜までの午後1時〜5時に開いており、1カ月の利用料は1万円。相談や見学、体験利用も受け付けています。
 問い合わせは、ハートツリーハウス(0739-25-8308)へ。
 こうした青年たちの居場所の運営のネックになるのは、どうしても財源です。田辺市では01年より「ひきこもり相談窓口」を開設。幅広い支援活動を展開する中の一つの取り組みとして、この団体への補助を行っています。民間団体では、行政ではできない「個」に応じた援助やオリジナルな援助展開を行っているところが少なくありません。行政は、こうした民間団体と連携を強化し、このような事業委託をすすめていく必要性があると思います。


[2006.5.14]

「青少年の社会的ひきこもり支援ネットワーク連絡会議」を設立(京都府)

 京都府は11日、府内26の民間団体で構成する「青少年の社会的ひきこもり支援ネットワーク連絡会議」を設立、京都市上京区の平安会館で初会合を開きました。民間と行政が連携し、支援スタッフの研修やボランティア養成などの施策、事業に取り組むほか、この夏には、ひきこもりの実態調査を初めて実施することを決めました。
 ひきこもりで悩む青少年の社会参加を促し、家族支援を充実させるのが目的。構成団体は、ひきこもりと不登校の家族会や居場所づくりに取り組むグループなどで、府青少年課や精神・社会参加室なども参加しました。
 初会合では、府の加瀬康夫府民労働部長が「国の調査で府内のひきこもりは8,000人と推計されるが、500人しか把握できていない」と説明し、支援活動に向けた情報交換や官民の連携を呼び掛けました。
 この後、ひきこもりの実態調査のほか、ITを活用した支援策、ひきこもり当事者の就労体験や社会体験促進事業などを盛り込んだ本年度の事業計画を決めました。
 連絡会議事務局の府青少年課は「民間団体には情報やマンパワーがある。社会参加を促す事業をボランティアや民間と連携し、きめ細かな自立支援対策を打っていきたい」としています。
 私が副代表をしている「京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル」からも、この会合に代表が参加しました。京都でも、やっと公的レベルで動きが始まった、というのが実感です。「就労」や「社会参加」が課題である段階の人も多数いますが、家族とも話しをしない、部屋から出られない、発達障害や精神病理の症状がみられる、など、より深刻な段階の人は少なくありません。幅広い実態把握、行政や民間、専門分野の方々のチームサポートによる一人ひとりの状態に応じた支援策の検討と具体化が求められます。

●<逮捕監禁致死>死亡男性を施設側が突然拘束
 8日、問題を抱える若者の支援施設「アイメンタルスクール」(名古屋市北区)の入居男性(当時26歳)が死亡した逮捕監禁致死事件で、男性は施設に入居することを事前に知らされていなかったことが愛知県警北署捜査本部の調べで分かりました。入居日の4月14日、杉浦容疑者ら施設関係者6人が男性宅を訪れたのは午前5時ごろで、男性は自室で寝ていたところを突然、6人に囲まれて押さえ込まれ、拉致されるように強引に車に連れ込まれ、激しく抵抗したとみられますが、移動する車内で無理やり押さえつけられたことが直接の死因となった可能性が強いといいます。
 「拉致」された際、男性は激しく抵抗しましたが、捜査本部は男性が突然の出来事に言いようのない恐怖感を覚えたため暴れたのではないかとみています。しかし、施設側は男性の心理状態に配慮することなく、東京―名古屋間を車で移動する間中、床にうつぶせの状態にさせ、背中を押さえつけたり、手首や足首を手錠で拘束するなどしたそうです。捜査本部は、男性が施設に運ばれるまでの長時間にわたって不自然な姿勢で押さえつけられたことや、激しく抵抗した際の打撲や傷などがきっかけとなって、内臓障害を併発し、外傷性ショック死につながったのではないかとみています。
 調べでは、男性の入居のきっかけは、両親が見た施設を紹介するテレビ番組。今年3月下旬、両親は施設を運営する杉浦昌子容疑者(49)に連絡。その後、杉浦容疑者らスタッフと数回にわたって面談を重ね、施設の見学もしたそうです。一方で、両親は男性をこの施設に入居させることを本人には告げなかったといいます。また、本人の同意なく強引に施設に連れ込まれた入居者はほかにもいるといい、施設の運営実態の解明を進める方向です。

●「市発達障害者支援センター」を開設(名古屋市)
 名古屋市は、自閉症などの発達障害児(者)の相談窓口となるを市児童福祉センター(同市昭和区川名山町)内に開設しました。
 センターは、昨年4月施行の発達障害者支援法に基づき開設したもの。自閉症やアスペルガー症候群、学習障害などの発達障害児(者)に対し、社会福祉士や保育士などの資格を持ったスタッフ6人が面談方式で相談に応じ、情報提供や関係機関の紹介などを行います。
 また、今後はインターネット上にホームページの開設を予定しており、障害に対する情報発信や普及啓発を行っていくそうです。
 相談の受け付けは土・日・祝日を除き、午前8時45分〜午後5時15分。相談の予約は同センター(電話052・832・6172)へ。

●小児成育医療:心のケア重視、県立医大病院で本格化へ(和歌山)
 子どもの心のケアを重視した小児成育医療が、県立医大病院(和歌山市紀三井寺)で、近く本格的に始まります。和歌山市の委託を受けて、小児科に、週2回相談を受ける医療支援室と診療に当たる外来を設けました。市保健所によると、地元自治体と大学病院が連携し、子どもの心の診療に取り組むのは珍しいとのことです。専門医の育成も併せて進めるとしていて、厚生労働省は「子どもの心の診療医の確保は全国共通の課題。医師の育成も視野に入れた取り組みは重要」と注目しています。
 医師3人、臨床心理士1人、ソーシャルワーカー2人の計6人体制を予定。虐待などでは、家族を含めたケアも視野に入れています。市保健所は、子どもの心のケアがより求められている現状を踏まえ、「これまで相談の段階でとどまることが多かったが、実際の専門的な診療に結びつけられる」と期待しています。
 支援室副室長の柳川敏彦・同医大保健看護学部教授は「用意した看板に集まってもらうのでなく、県民、市民のニーズを把握しながら、方向性を考えたい」と説明。また、医師の育成については「小児心身症の専門家を育てるのと、すべての小児科や精神科の医師に、専門分野への関心をもってもらうことを目指したい」と話しました。
 さらに、心のケアに取り組む他の関係機関などとも「互いに協力できれば」としています。
 虐待やネグレクト(養育放棄)への対応と併せて、発達障害の相談・診断・療育にも取り組める社会資源になってほしいと思います。

●「自殺対策法案」今国会にも提出へ、「国と自治体の責務」明記
 自殺者が8年連続で3万人超になりそうな社会情勢の中、超党派の国会議員が自殺対策の基本法案策定に向け具体的作業に着手し、議員立法として今国会にも提出する見通しであることが分かりました。政府は05年12月、自殺予防の総合対策を発表しましたが、法的根拠がないため、実体のない掛け声だけで終わりかねないとの声があがっていました。基本法案では自殺対策を「国と自治体の責務」と明記するほか、政府に対し、対策の実施状況に関する年次報告の義務付けなどを盛り込み、総合的な対策の推進を目指します。
 関係者によると、検討中の法案は基本理念として、自殺は「個人的な問題としてのみとらえるのではなく、その背景に社会的な要因がある」と指摘し、社会問題と位置づけています。そのうえで、国と自治体に「自殺防止対策を策定し、実施する責務がある」ことを条文化。さらに政府に対しては、毎年、国会に政府が行った自殺防止対策の実施状況に関する報告書の提出を義務付けることとしています。
 また、自殺未遂者へのケアとして、国と自治体は「再び自殺を図ることのないように、必要な措置を講ずるものとする」とし、自殺者の遺族に対しても、「深刻な心理的影響が緩和される」ことを目指して、適切な対策をとるように求めます。自殺防止に取り組む民間団体へは、活動を支援するために必要な施策を行うとしています。
 このほか、国と自治体は、自殺防止に関して調査研究を推進し、情報の収集や分析、提供を行うとし、一般国民に対して、教育や広報などを通じて、必要な施策を実施することも明文化するとしています。
 超党派で構成される国会議員には、閣僚経験者も含まれています。法制化を目指すある与党議員は「3万人以上の人が7年も連続で自殺する状況は、大きな社会問題。与野党を超えて賛同を集め、今国会で法案を成立させたい」と語り、ある野党議員も「法的根拠があれば、施策の推進にとても力になるのは間違いない。自殺対策は待ったなしの状況だ」と話しています。
 法制化を巡っては、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京都)が05年5月、シンポジウムを開催。尾辻秀久・厚生労働相(当時)や衆参両院議員ら約200人以上が参加し、自殺防止について話し合いました。
○「自殺対策法の制定を」遺族らが全国で街頭署名
 13日、国を挙げて対策を進めるため「自殺対策基本法(仮称)」を制定するよう求める自殺者の遺族や遺児らが東京や京都、福岡など7カ所でチラシ配布や街頭署名の活動を展開しました。
 JR新宿駅前には遺族や遺児、支援メンバーら約20人が集まり、ライフリンクの清水康之代表は「生きる手段が見つからずに自殺に追い込まれてしまう人がいる。追い詰められた人たちを周りが支える足場づくりのためにも法整備が必要」などと訴えました。
 京都市では、下京区の四条河原町交差点で、メンバーや遺族、市民団体が買い物客らに署名を呼びかけました。自身も遺族の石倉紘子さん(62)=西京区=は「身近な人間関係が自殺を未然に防ぐことも伝えたい」と話します。
↓署名用紙はライフリンクのサイトからダウンロードして下さい。
http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html
 私は、家族会ノンラベルの「アスペルガー援助者養成講座」で司会進行をしていたため、この署名行動には参加できませんでしたが、講座会場で署名を集めさせていただきました。国会で本法案が可決させるよう、皆さんの署名へのご協力をよろしくお願いします。


[2006.5.7]

自殺対策で協議会設置はわずか13道県/3分の2は設置未定

 6日、共同通信の調査で、自治体での総合的な自殺対策を進めるため、行政機関や民間団体でつくる自殺対策連絡協議会(仮称)を既に設置しているのは62の都道府県・政令指定都市のうち13道県で、設置予定を含めても23道府県・市にとどまっていることが分かりました。
 7年連続で自殺者数が3万人を超える中、昨年12月に、政府が総合対策を策定した後、自治体の対策状況が明らかになったのは初めてです。ほとんどの自治体が何らかの自殺対策を実施していましたが、地域によって取り組みに大きな差があったほか、独自の実態調査や遺族支援にまで踏み込んでいる所はほとんどなく、今後の課題も浮かび上がりました。
 私も京都の自死遺族の会に関わっていますが、実態調査がないのはもちろんのこと、遺族会を開くための会場提供への京都市への協力要請にも「市としては上からの取り組みなさいという要望も何も来ていないと」、「従来やってきた保健所の精神保健とこころの健康増進センターの仕事をいままでどおりにやっていきます。ある特定の団体を優遇すると平等の原則に反する」の一点張りだったそうです。上からの法的な枠組みによる指示・指導、予算がなければ、独自施策としては取り組む意志はない、ということです。
 「自殺対策は国と自治体の責務」と明記し、一人でも多くの命を救うことを目指す自殺対策基本法(仮称)の制定に向けた署名活動に皆さんのご協力をお願いします。
 ↓署名用紙はライフリンクのサイトからダウンロードして下さい。
http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html

●教員OB活用し無料補習 07年度から、文科省方針
 文部科学省は1日までに、07年度から団塊の世代の教員OBらを活用し、放課後や土日に無料の補習を実施する方針を固めました。経済的理由から塾に通えない子と通える子の間に格差が広がるのを防ぐことが狙いだそうです。全国約1万カ所で進めている「子どもの居場所づくり」の中で行い、07年度予算の概算要求に盛り込むとしています。
 教育関係者には「学校での教育充実に予算を使うべきで、塾代わりの補習は本末転倒」という意見がありますが、文科省は「学校の教育とは役割分担できる」としています。
 文科省は04年度から子どもの居場所づくりのため、地域の大人が読み聞かせやスポーツの指導などをする「地域子ども教室」を開いており、07年度からは、この地域子ども教室を衣替えし、小学生ら希望者を対象に補習も行うようにするものです。
 小学校での授業だけでは塾に通う子との間に格差が生まれる…。小学生の「学力」格差は、中学受験でのランクに直結(?)。だから、親は経済的に無理をしてでも「学習塾」や家庭教師を子どもにあてがう。不公平感をなくそおうと、そうでない子どもたちにも放課後や土日に補習を行う。受験「学力」向上のためだけが目的の施策にしか思えません。これによって、子どもたちが得るものは、また失うものは? いわゆる「お受験」に失敗し、おおいなる挫折感から自己否定を深化させ、10年、20年経った現在も自身を責め続けている青年たちを、誰が救えるのでしょうか。その家族を、誰が責められるのでしょうか。

●都内の脚本家が自閉症青年を主人公にした小説の映画化計画
 自閉症だった長男を今年3月末に15歳で事故で亡くした東京都町田市の脚本家の男性が、自ら書いた自閉症の青年が主人公の小説を自主制作で映画化する計画を進めています。小説は10年以上前、男性が「自閉症への理解を広めたい」とテレビドラマの脚本として応募したもので、映画製作への協力を呼びかけています。
 計画しているのは、山下久仁明(くにあき)さん(45)で、長男は大輝(ひろき)さん。山下さんはアニメの製作会社を経て12年前、フリーで独立。大輝さんが4歳の時に、テレビドラマの脚本募集に「心の扉」の題で応募しました。
 脚本は、大輝さんを育てた経験をもとに描いた、看護学校の女子学生が自閉症の青年に出会いドライブに出るストーリー。自閉症について知識がなかった女子学生は話しかけても答えない青年に戸惑いながらも理解を深めていく内容。
 ドラマの脚本には採用されませんでしたが、山下さんはその後、出版社に持ち込み、相談のうえ、題名を「ぼくはうみがみたくなりました」に替え、小説として02年に「ぶどう社」から出版しました。
 大輝さんは、成長しても話す言葉は単語程度で、「周りの人の気持ちをあまり理解できなかった」(山下さん)といいます。電柱や自宅の屋根に上っては両親をはらはらさせていました。しかし、今年3月28日、自宅近くを散歩中、踏み切りに入って、電車にはねられ命を落としました。
 映像への望みを捨てきれない山下さんが、映画の製作への協力を呼びかけるホームページ(http://homepage2.nifty.com/bokuumi/)を開設したのは先月5日。これまでに約200万円がカンパとして集まったといいます。
 それでも製作には約3,000万円が必要といい、山下さんは「自閉症を理解してもらうには映像が最も訴えやすい。長男が背中を押してくれると信じて、企画を進めていきたい」と話しています。

●GWで施設から一時帰宅中の障害の娘を殺害、母逮捕
 宮城県警角田署は6日、自宅で長女(33)を殺害したとして、殺人容疑で同県角田市枝野、無職佐藤隆子容疑者(55)を逮捕しました。佐藤容疑者は5日夜、自宅1階の寝室で長女の首を絞めて殺害した疑い。
 長女は知的障害者で、角田市内の知的障害者介護施設に入所、佐藤容疑者も介護していたそうです。調べに対し「介護に疲れた。娘をふびんに思った」などと供述。
 長女が入所する施設によると、施設は3日から約1週間の休暇になり、入所者は一時的に帰宅していました。
 「子殺し」や「親子無理心中」などのニュースが連日のように報道されます。こうしたケースの中で、子どもに障害や病理によるハンディがあるケースがかなりの割合を占めると言われています。障害者自立支援法実施によって、施設やサービスの利用を断念せざるを得なくなった人たちも多数おられます。経済面からの数値だけで「景気回復」と言い、「格差はない」という今の政府は、社会保障を切実に求める人たちから「応益負担」を「公平」として具体的に保障を切り下げて行っています。こうした悲しい出来事が、国の社会福祉のレベルや志向を現していることをしっかりと見つめなければなりません。


[2006.5.1]

小さな相談室から(4) 本音を聴く「訪問」

 この間、相談室カンナで1件、家族会ノンラベルで1件、自宅にひきこもっておられる青年への訪問が増えました。いわゆる「第三者の介入」ということになりますが、親が望んで本人の了解なく「土足で部屋に踏み込む」ような訪問は、基本的に意味がないと思っています。最近、名古屋市の引きこもり者更生支援施設「アイ・メンタルスクール」での利用者死亡事件をお伝えしましたが、ここも本人の了解なく無理矢理押しかけ、施設に連れ帰るということが行われていたようです。こうしたケースは人権問題でもあり論外ですが、ひきこもったり不登校や問題行為を起こしている子どもたちが、家庭や学校に求めているもの、自分自身に問いかけているものを聴いてあげる存在として、「第三者」が関わることで確かな変化が生まれることを実感しています。
 1件はご本人からの要請で、もう1件はご本人了解の上でご本人も訪問を「意味あるものにしたい」として始まっています。現象面としては、長期にわたるひきこもりや家庭内での家族とのいさかいですが、ご本人の中では「聴いてほしい」「わかってほしい」という気持ちが渦巻き、積もり積もっています。
 私の「訪問」援助には、3つのテーマをおいています。1つは、ご本人の思いをじっくりと聴くこと。積年の抱え込まれた思いを時間をかけて吐き出してもらいたいと思います。2つめは、ご本人の思いとご家族の思いとの関係調整です。ご本人の思いをご家族がしっかりと受け止め、理解できる家族関係の再構築をめざしたいと思います。3つめは、聴いてもらえ、理解してもらえる体験をご本人が積まれることで、自己肯定感情を取り戻され、自ら新たな課題を見つけてもらうことです。その意識の変容過程とゆるやかな行動化へ寄り添いたいと思います。
 ケースによって訪問の目的や課題は違いますが、「ご本人を尊重する」ことは共通した基本的立場です。これからも「本人尊重」の立場で、相談室での相談・カウンセリング、訪問、学校などへの同行、家族会ノンラベル副代表としての居場所援助をはじめとする活動を展開していきたいと思います。

●優秀な教員に重点配分/08年度めどに給与の一律優遇見直し(文部科学省)
 30日、文部科学省は公立小中学校教員の給与を優遇する人材確保法(人確法)について、一定額を一律に上乗せしている現行制度を見直し、優秀な教員に重点的に配分する制度を導入する方向で検討に入りました。教員の評価制度と併せ制度設計を急ぎ、08年度をめどに実現を目指すそうです。
 教員の「優秀」さって、何を基準に図るのでしょうか? 教育現場の管理主義が強まることを危惧します。

●思春期の悩みケア/府立洛南病院1日から専門外来など開設(京都府)
 京都府の山田啓二知事は28日の定例会見で、5月1日から府立洛南病院(宇治市)に、児童や若者を対象とした心の健康相談窓口と専門外来診を開設すると発表しました。思春期に差し掛かったり、ひきこもりや行動障害で悩む若者や家族を対象に、相談から診察、ケアまで、心の専門家が対応するとしています。
 府は昨年6月、ひきこもり支援センター(京都市伏見区)を設置。半年間で500件を超える相談が寄せられ、中には治療を必要とする人も。また、発達障害などへの治療ニーズが高まっていることなどもあり、専門の精神科医を採用して専門外来の開設を決めたものです。
 相談は予約制で受け付け、臨床心理士が無料で応対します。面談で治療が必要と判断された場合、医師の診察を受けることになります(有料)。治療後も心理検査や継続面接を実施し、家族らの不安解消に努めるとしています。
 京都府は南北に広がる府で、今回の洛南病院での思春期外来は府中・南部を対象としたものです。府北部でのニーズにどう応えていくのか、発達障害支援センター設置の方向性も見えない中で、府の対応の遅れが目立ちます。

●御代田町の高1自殺:「いじめ」損賠訴訟/県側が棄却求める(長野県)
 28日、県立丸子実業高1年生だった高山裕太君(当時16歳)の自殺をめぐり、いじめが原因であり、生徒に対する安全配慮義務を怠ったなどとして、母親の高山かおるさん(42)が県などを相手取り、約8,300万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が長野地裁(宮永忠明裁判官)で行われました。県側は答弁書で請求棄却を求めました。
 訴状によると、裕太君は昨年5月ごろから、所属するバレーボール部の上級生に、声まねをされたり、殴られるなどいじめに遭いました。精神的に追い込まれて不登校になり、うつ病を発症。同11月には「進級が困難になる」との同校の文書を見て症状が悪化し、同12月に御代田町の自宅で自殺したものです。前途への不安と絶望に駆り立てられての自殺とみられます。
 口頭弁論後の会見で、かおるさんは「簡単なことで子供は亡くならない。その気持ちを分かってほしい」と述べました。県教育委員会こども支援チームは「不適切な行為はあったが継続的ではない。うつ病や自殺との因果関係はない」としました。
 「こども支援チーム」が、いじめとうつ病・自殺との因果関係はないと、教育委員会を「支援」する口頭弁論。こうした教育委員会の事実を認めない、明らかにしようとしない態度は、全国共通です。「再発防止」の意識が全くないことを表明しているようなものだと思います。


[2006.4.23]

国会議員とNPOが連携し自殺対策基本法(仮称)で遺族支援を

 日本では、98年から7年連続で年間3万人が自殺しています。昨年7月、参院厚生労働委員会が自殺対策を求める決議を行い、政府は同12月、関係省庁が連携し、15年度までに自殺者を2万5,000人前後に減らすことを目標にした総合対策を発表。厚労省は3月31日、自殺防止を推進するため、相談体制の充実などの取り組みをするよう都道府県と政令市に対し通知を行いました。
 今回の通知は、「自殺は社会の問題」とする政府の総合的な対策を受けた初めての措置です。今後、東京のNPO法人が超党派の国会議員に連携を呼び掛け、自殺対策基本法(仮称)の制定に向けた活動が始まります。新法には「自殺対策は国と自治体の責務」と明記し、一人でも多くの命を救うことを目指します。
 新法が想定する内容は、○効果的な予防策のために自殺の実態調査、○個人だけではなく、社会全体を対象にした総合対策、○自殺未遂者や遺族への支援――などで、社会問題が原因の「不本意な自殺」は、適切な社会対策さえ講じられれば「避けられる死」と位置づけるとみられています。
 こうした動きの発端は、昨年5月、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(清水康之代表)が東京・永田町の参院議員会館で「自殺を防ぐために何ができるか」をテーマに開いたシンポジウム。尾辻秀久厚生労働相(当時)や衆参両院議員ら200人以上が参加、遺族の体験や市民団体の取り組みを聞いた尾辻厚労相は「できることはすぐやる」と発言していました。
 ライフリンクの今後の具体的な活動としては、法制化を実現させるため、全国で3万人署名を展開。交流のある約30の市民団体に協力を呼びかけ、5月中にも政府へ署名簿を提出し、早期の法制化を訴えていきます。
 一連の動きの中心ともいえるライフリンクの清水代表は「自殺対策を確実に推進するには、法的な根拠が必要だ。関心が高まっている今こそ、法制化を実現させたい」と話しています。
 私も京都の自死遺族の語り合いの会「こころのカフェ きょうと」のスタッフとして、署名を集めています。ぜひご協力下さい。
 ↓署名用紙はライフリンクのサイトからダウンロードして下さい。
http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html

●全国学校事故・事件を語る会−長崎集会:遺族ら再発防止願う(長崎)
 「全国学校事故・事件を語る会」の集会が16日、長崎市で開かれました。約130人が出席。遺族や専門家など9人の発言に耳を傾け、再発防止に向け考えを深めました。
 県内では昨年7月以降、中高生9人が自ら命を絶っている。語る会は03年に発足し、約70家族が参加。関西で定例懇談会を開いてきたが、長崎で悲劇が相次いだことから九州初の開催をしたものです。
 いずれも子どもが学校での指導後に自らの命を絶ったという5人の遺族は、「学校で何があったのか知りたい」と学校や教育委員会と交渉を続けましたが、事実はほとんど明らかにされず、「指導に問題はない」「家庭や子どもに問題があった」と報告されただけ。事実を知りたくて活動すると、沈静化を望む地域やPTAから孤立させられたケースもあります。「指導で亡くなった子や、同じ経験をしている人がこんなにいることに驚いた」「命を守るはずの学校なのに。危機感があれば、他の命を救えたはず」などの意見が続き、遺族らは第三者機関による事実解明や指導見直しが必要だと訴えました。
 04年に同市の中学で生活指導を受けている時に、校舎から飛び降りて亡くなった安達雄大君(当時14歳)の両親が集会開催を提案。発言者として参加した母和美さん(44)は、「学校で何があったのか知りたいが、学校側の都合がいいように事実がゆがめられてしまう」と「指導」の中身についていまだに学校側から納得いく回答が得られていない現状を報告し「1人でも多くの人に体験を伝え、学校で何が起きたのかを検証することで再発防止につなげたい」と呼びかけました。
 語る会代表世話人の内海千春さん(47、兵庫県)は「子どもは命を奪われ、人格を奪われ、家族の名誉を奪われる。怒りや悲しみが生活の全エネルギーだった」、「事件に対応するシステムが学校にないのが問題だ。家庭にも問題はあるだろうが、学校は学校として、何があったかを明らかにしなければいけない」と強く主張し真相究明の制度づくりの必要性を訴えました。
 県外からの参加者も「教師5人が生徒1人を取り囲んで事情を聴くなど、警察の取り調べのような“指導”で追い詰められた」「人が亡くなっているのに、なぜ『指導に問題はなかった』と言えるのか」と訴えました
 学校関連の裁判に詳しい渡部吉泰弁護士は「遺族、当事者が発信して社会に還元していくことが重要」と述べ、神戸大の広木克行教授(臨床教育学)は「長崎の場合、急激な教育改革が背景にある。見えない圧力がかかり、教師の指導の質も変わっている」「学校での生徒指導が取り調べ化し、子どもへの心理的虐待になっている」と指摘し、「子どもの権利を守るための第三者機関設置の動きを長崎から作ってはどうか」と提案がありました。
 支援を続けてきた望月彰・大阪府立大助教授(児童養護論)は、「自殺も少年事件も根は同じ。長崎で事件が続発するのは、教育制度を巡る大きな変化が教師や親、子どもに大きなストレスを与えているからではないか。状況を変えるために輪を広めてほしい」と呼びかけました

●引きこもり支援施設変死事件、現場検証(名古屋)
 18日、名古屋市北区芳野の引きこもり者更生支援施設「アイ・メンタルスクール」(杉浦昌子代表理事)で入寮中の東京都世田谷区の無職男性(26)が死亡した事件で、愛知県警北署は20日午前、逮捕監禁致死などの疑いで施設内を現場検証をしました。
 同日午前9時50分ごろに、捜査員ら約20人が次々と施設内に入り、男性が他の入寮者9人と一緒に住んでいた1階大部屋などを調べ、職員らからも当時の状況を聞いた模様。
 施設は、引きこもりや不登校の若者らの社会復帰支援を目的に、98年に設立。現在、10〜40歳代の約60人が入寮し、共同生活を送りながら、学校や社会への復帰を図っているといいます。
 施設内には2〜10人部屋が19室あり、杉浦代表理事自らがカウンセリングに当たり、約10人の職員が入寮者の世話などにあたっていたそうです。
 また、この寮施設は杉浦代表理事が代表を務める同名の有限会社が運営し、入寮者にカウンセリングや寮費などとして、月13万円程度を支払わせていました。このため、県は今年1月、NPOと寮施設を区別し、NPOへの相談者らに誤解を与えるような宣伝などしないように指導していたようです。
 この日、杉浦代表理事は報道陣の前に姿を現さず、スクール側は取材に応じていません。入寮者らはこの日も普段通り、アルバイト先に出かけるなどしていましたが、報道陣の問いかけに「何もわかりません」などと言葉少なに話すだけで、施設もひっそりとしていたそうです。
 県警のこれまでの調べによると、男性は家庭内暴力と引きこもりを理由に、今月14日から入寮。1階大部屋で生活していましたが、17日夜から暴れだしたため、職員が押さえ込んだ末、添い寝をするなどしていたといいます。18日午前8時ごろに、男性が布団の上でぐったりしているのに職員が気付き、病院に運ばれたが、死亡が確認されたもの。男性はこれまでも、奇声を上げたり、暴れたりすることがあり、施設では手足を拘束することがあったといいます。
 ひきこもりの青年たち向けのこうした「更生支援施設」は全国に多数あるようです。施設内での利用者の死亡は今回が初めてだと思います。「手足を拘束することがあった」というのには驚きです。人の身体的自由を拘束する行為は、こうした「施設」ではあってはならないものです。この施設のサイト(現在は閉鎖されているようです)を見ましたが、代表がカウンセリングを行う以外は、若い約10名のスタッフが「生活支援」をしていただけのようで、今回亡くなられた男性のケースのようにメンタル面での課題を抱えている利用者への援助体制が整っていたとは思えません。「緊急時は専属の小児科医、精神科医が待機している」と宣伝しいていたようですが、20歳代の男性の入寮者は「そんな医師がいるとは知らなかった」と打ち明けています。
 引きこもりは病気ではないものの、うつ病や心身症などを併発することは医学的にも明らかになりつつあります。このため、状態が長期化している場合は、医師による診察を受けることが社会復帰への近道であると指摘する専門家も多くなっています。教育評論家の尾木直樹さんは「暴れるなら医療機関に橋渡しをすべきだった」と疑問を投げかけています。

●ひきこもりの人に県が「居場所」提供/社会参加推進事業(青森)
 青森県では今年度から、227万円の事業費を計上して、社会的ひきこもりの人に「居場所」を提供するなど社会参加を進める事業に取り組んでいます。県内にいるひきこもりの人は2,000人と推計され、相談件数は03年度で延べ207件、04年度で延べ244件と増加しているそうです。
 ひきこもり当事者の居場所づくりのモデル事業として、県立精神保健福祉センター(青森市三内沢部)などで月2回、当事者の教室を開催。またひきこもり問題を抱える家族を支援するため、同センターで年9回、家族教室を開催。家族会を育成、指導する交流会のほか、市町村や医療、教育機関などが参加する地域連絡会議も開催する予定です。
 県は04〜05年度、当事者が社会復帰するための調査研究を行い、市町村や保健所の窓口で相談しやすい体制づくりを図り、相談件数が増えて問題が顕在化。家族会や民間支援団体が作られるようになり、今は相互の連携欠如が課題になっているといいます。
 行政が対応窓口を持ち、実態を把握しつつ必要な施策を民間と連携しながら取り組むことが求められています。


[2006.4.16]

小学生の給食費いりません/全国初、三笠市の子育て支援(北海道)

 小学生のいる家庭を支援しようと、北海道三笠市が4月から給食費を全額公費で負担する事業を始めました。文部科学省によると、全額を負担するのは全国でも初めてと言います。
 小学生1人当たりの年間給食費は約4万2,000円ですが、これまでも生活保護家庭などは負担を免除しており、市内6校に通う計約300人が新たな対象となる。
 人口約1万2,000人の三笠市は、05年の調査で人口減少率が全国3位。人口減に伴い児童数も年々減っていることから市民アンケートを実施したところ、経済的支援を求める声が多かったそうです。医療費の助成なども候補に挙がったが、最終的に全員が平等に恩恵を受けられる給食費に決まったそうです。
 対象児童が300人ですから1,260万円の予算組みで実現できます。この三笠市に限らず、行財政の無駄遣いをやめれば給食費や医療費の就学前無料化、少人数学級など、焦眉の課題は首長と議会の意志ですぐにでも実現できるものが多いはずです。子どもや障害者、高齢者にやさしい行政は、人間にやさしい行政だと思います。こうした実践がどんどん広がってほしいものです。

●[労働経済白書の骨子]20代の所得格差が拡大 
 厚生労働省が毎年作成する「労働経済の分析」(労働経済白書)の06年版骨子で「20代の所得格差が拡大し、固定化が懸念される」と指摘していることが13日、分かりました。
 30〜40代の正社員でも、成果主義賃金の導入で格差が広がっているとしています。また正社員ではない非正規労働者で配偶者のいる割合が低く、少子化が進む要因になっていると分析しています。
 「格差社会」が国会で論点となっており、小泉純一郎首相は「先進国と比べて日本では(格差は)決して広がっていない」などと答弁していますが、白書は正社員かどうかの雇用形態や年代によって賃金格差が拡大していることを示しています。
(平成17年版 労働経済の分析-人口減少社会における労働政策の課題)
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/05/index.html
 50万人以上とも言われている「ニート」(日本では失業者をニートに含んでいません)、400万人以上とも言われるフリーター。4年生大学卒業後に就職できる人は54%とか……。「20代の所得格差が拡大し、固定化が懸念される」という指摘は、小泉首相がどんな「解釈」を叫ぼうとも否定できない現実ではないでしょうか。「景気回復」の兆しが言われていますが、日常生活の中では感じられない、という方が多いのではないでしょうか。

●職員会議での挙手・採決を禁止/都教委が異例の通達
 東京都教育委員会は、「職員会議で挙手や採決によって教職員の意向を確認するような運営は行わない」とする通知を都立学校長あてに出しました。
 通知は教育長名で、学校運営に関する重要な案件は管理職による会議で決定するよう徹底するのが目的。職員会議での挙手や採決そのものを禁止した通知は全国にも例がないといい、現場の教員の反発を呼ぶことが予想されます。
 都教委は01年6月、学校運営の重要事項は、校長や副校長、主幹、主任らで構成する「企画調整会議」の場で議論するよう通知しています。しかし、今年1〜2月に都立高など計22校でヒアリングをしたところ、主任教諭の選任や学校行事の運営について、職員会議に諮ったうえ、多数決で決めていた学校が約7割に上ったそうです。
 都教委では、こうした現状は企画調整会議の役割を否定することになりかねず、校長の意思決定にも影響を与えるとして、今回の通知を出したとしています。同時に職員会議の司会者や記録者を校長が指名することや、司会者を「議長」と呼ばないよう求めています。
 職員会議が、管理職からの上意下達会議となっている学校が相当数になっていると思います。職員会議とは、そもそも誰のために開かれるものなのでしょうか? 「企画調整会議」での決定を「承認」するだけの会議だとしたら、時間と経費の無駄とも言えます。

●青森の児童相談所に精神科医配置
 青森県は4月から、児童精神科医の武田哲医師(37)を県職員として青森市の中央児童相談所に配置した。県内の児童相談所に精神科医が常勤するのは初めてで、東北地方でも3カ所目です。虐待を受けた子どもの心のケアや、発達・知的障害の子どもなどの診断体制の充実が期待されています。
 厚生労働省雇用均等・児童家庭局によると、03年5月1日現在の児童相談所の数は全国で187カ所。厚労省は常勤精神科医の配置を推奨していますが、実際は23カ所と少ない状況です。
 県内6つの児童相談所でも、精神科医は非常勤嘱託という形で週1回程度通って対応してきていました。中央児童相談所は県内で唯一、虐待を受けた子どもを預かる一時保護所を併設しており、県内各地から子どもが集まります。
 武田医師は神奈川県生まれ。弘前大学医学部を卒業後、同大学大学院を修了、医学博士。県内や秋田県の病院、弘大医学部付属病院などで、主に子どもの診療に携わり、3月まで弘大医学部の医学科神経精神医学講座助手を務めていました。
 児童相談所では、発達障害や不登校などの子どもの医学的診断や、他の相談所を含めた職員への助言・指導などを行っていくとしています。


[2006.4.9]

アスペルガー援助者養成講座にお申し込みを(家族会ノンラベル)

 京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベルでは、アスペルガー援助者養成講座【第4弾】(全4回)『アスペルガー思春期・青年・成人期への援助』―チーム・ケアの充実で適切な理解と援助を―を、06年5月13・20・27日・6月3日(各土曜日午後1時30分開場)で開催します。
 会場は京都アスニー(京都市中京区丸太町通七本松西入ル)。参加費は4回分で12,000円。
 講師は13日が門眞一郎先生(京都市児童福祉センター 児童精神科医)、20日が当事者の保護者・琵琶法師氏、27日が田井みゆき(ノンラベル代表)、6月3日が定本ゆきこ先生(精神科医)です。
 申込みは住所、氏名、電話・FAX番号、参加人数を記し、ハガキ、FAX、Eメールのいずれかでノンラベル事務局(.075-312-3338)まで。
http://www13.ocn.ne.jp/~nonlabel/top.html

●「学校に通うのがつらかった」-発達障害者へのアンケート
 発達障害者支援法の施行から1年が経過したのを機に、ADHDへの理解を深めてもらおうと、NPO法人「大人のADD(注意欠陥障害)&ADHDの会」が会員ら205人から、子供のころに学校で感じた思いなどについて調査した結果、大半の人が「学校に通うのがつらかった」と回答したことが5日、分かりました。同法人は「親だけでなく、教育現場でも症状についてもっと理解してほしい」と話しています。
 ADHDに限らず、LD(学習障害)やアスペルガー障害を含む高機能広汎性発達障害を有する方々の少なくない割合の方々が、集団になじめない、一斉授業がわからない、特性による独特な言動によってからかわれたりイジメを受けたり、教師に特性を認められず定型発達の児童・生徒と同様の対応を強要されたりといった嫌悪体験を学校で受けたことから「学校社会」への不適応となり、不登校になっています。
 「特別支援教育」実施に向けて各教育委員会や学校において取り組みがすすめられつつありますが、まずこれら「軽度発達障害」の障害特性と対応法についての学習を、支援にあたる教職員の皆さんには取り組んで欲しいと思います。

●障害者自立支援法スタート-見えてきた問題点
 4月1日から障害者自立支援法が実施され、大幅な負担増に障害者・家族の不安が広がっています。
 障害者自立支援法は、昨年10月成立。身体・知的・精神の3障害者に対する福祉サービスを一元化するなど、関係者の声を反映した面もあるものの、国の財政削減をすすめる小泉「構造改革」のもとで、応益負担の導入により障害者・家族の負担増となるなど重大な問題点を持っています。
 06年度予算で、公費から支出される施設への報酬が3―4割も引き下げられ、施設の運営が困難になり、結果として利用者サービスの後退を招きかねない深刻な事態も起きています。
 これまで応能負担だった福祉サービス利用料が定率一割負担になり、障害者は大幅な負担増となります。障害が重いほど負担も重く、施設やグループホームの利用者は、食費と居住費(水光熱費)も全額自己負担となります。また、自立支援医療(これまでの更生・育成・精神通院の公費負担医療制度)も、原則1割負担になります。
 収入は障害基礎年金(1級8万3千円、2級6万6千円)のみの人や、それ以外にはわずかな工賃だけという人も少なくため、この負担増は耐えがたいものとなります。
 通所施設は、これまで95%の人が無料でしたが、平均で月1,000円から1万9,000円へと19倍もの値上げが見込まれています。工賃より利用料が高くなれば、生活が圧迫され、働く意欲が失われます。北海道の旭川市ではすでに、身体と知的障害の通所施設の利用者259人中、30人が退所の意向を表明しているそうです。
 政府は、所得に応じて4段階の月額負担上限額(生活保護世帯はゼロ円、市町村民税非課税世帯で年収80万円以下(低所得1)は月額1万5,000円、市町村民税非課税世帯(低所得2)は月額2万4,600円、市町村民税課税世帯は月額3万7,200円)をもうけるなど、いくつかの軽減策を実施しまが、(低所得1)の世帯で、収入の2割にものぼる負担を強いられるケースもあります。
 自治体独自の負担軽減策も、障害者団体のねばり強い運動によって、多くの自治体に広がっています。東京・荒川区では、在宅の障害者の全サービスを1割から3%に軽減、重度の障害者について国が定めた月額上限額を半額に軽減することになりました。こうした動きを全国に広げていくことが急務です。
 自立支援法は申請主義。自治体に申請手続きをしなければ、軽減措置を受けられません。行政の説明が不十分なために、混乱した事態が各地で続いています。4月をこえても申請は可能で、自治体が引き続き相談会の開催などの周知徹底をはかることが求められています。
 地域生活支援事業(10月からの実施)は、市町村(一部都道府県)が実施主体で、半年間で200億円しか国から補助されないため、一自治体への財源配分は極めて少額となります。
 事業の対象になるのは、視覚障害者などを介助するガイドヘルパー、手話通訳派遣事業、地域活動支援センターなどですが、市町村の財政力によってサービスに格差が出ることが懸念されます。
 小規模作業所(全国6,000カ所をこえる)の安定した運営も切実な問題です。今年度は小規模作業所への補助金の継続が決定されたものの、すでに減額に踏み出し、数年後は打ち切りを表明している県も出てきています。国は小規模作業所に十分な財政措置を講じ、自治体も現行の補助水準を維持させることが求められています。

●ネット授業:不登校生に配信 中学生対象、リアルタイムで−(福井)
 中学校を長期間欠席する生徒や学力不振の生徒への学習支援を行おうと、NPO法人教育支援機構(奥下晃二・代表理事、福井県あわら市)は5日から、インターネットを通じての授業配信を始めます。県内では初となるリアルタイムの中学生向け授業配信に注目が集まっています。
 同NPOは01年の設立以来、長期欠席の児童・生徒に対し、郵送やファクスを使った通信教育を展開。学校に再び通学するようになったという例もある一方、郵送やファクスの手間などから、約半年間で受講をやめる生徒がほとんどだったそうです。そこで、インターネットでの配信を決定。不登校の生徒は無気力で昼夜逆転の生活を送っている場合も多く、リアルタイムの配信を「1日の生活に規則性を持ち、臨場感を通じて『学校』や『友人』を認識してほしい」と期待しています。
 授業はあわら市内の学習塾の一室を間借りし、塾講師や元教員のスタッフ5人が1講座60〜70分の授業を担当。生徒はパソコン上で専用ブラウザを使って受講します。教科は中学1年〜3年の英語、数学、理科、社会。英語は週2回、その他の教科は週1回配信。また「電子メールを利用して生徒の相談にも乗りたい」としています。
 受講料は1講座あたり1カ月2,000円。問い合わせは(0776・77・1668)ホームページ(http://www.support-st.com/)

●発達障害者への「特別支援教育」手引書に―湖南市教委が冊子作製
 滋賀県湖南市教委は、障害者を乳幼児期から就職まで一貫して支援する同市の発達支援システムと教育手法をまとめた「特別支援教育ハンドブック」を作製。全国に先駆けて構築した同システムへの関心が高いことから、市外の希望者にもハンドブックを有料で配布するそうです。
 同市では00年から文部科学省の委嘱を受け、研究に着手。02年4月に三雲小内に「発達支援センター」を開設し、教育だけでなく、福祉、医療、就労などの関係機関が一体になった発達支援を続けています。
 ハンドブックは発達支援システムの概要、ITネットワークを活用した情報共有システムを解説しているほか、特に、学校や幼稚園の対応方法、個別指導計画の立て方、学習環境チェックリストなど実践的な内容を盛り込んでいます。
 A4判、33ページ。800部を作り、市内の教諭、保育士に配るほか、市外の希望者には一部500円で配布する。問い合わせは同市教委学校教育課TEL.0748(77)7011まで。


[2006.4.2]

乳幼児医療費への自治体助成、全額助成は53%

 毎日新聞が全国の767市(3月13日現在)と東京23区を対象に調査したところ、乳幼児医療費の助成制度で、保険医療の自己負担分を全額助成している自治体は421市区で、53%に上ったことが明らかになりました。。このうち全体の44%にあたる351市区では所得制限を設けていませんでした。一方で、財政事情などを背景に、対象年齢などに大きな開きがあることも明らかになっています。
 調査は2月下旬〜3月上旬、全国の取材網を通じて実施されたもの。790市区について、都道府県による助成分も含め、・対象年齢・助成額・所得制限などを聞いています。今年4月1日施行の制度も一部含まれています。
 調査結果によると「所得制限も自己負担もある」のは135市。所得制限なしで全額助成している351市区のうち、両方が適用される対象年齢は「就学前」が186市区、「2歳まで」が44市、「0歳」が40市、「4歳まで」が19市などで、最高は「中学卒業まで」で4市区ありました。
 国の現行制度では、3歳未満の子供について医療費の8割を保険給付(2割が自己負担)していますが、大半の自治体が上乗せ助成を行っています。政府・与党が昨年12月に決定した医療制度改革大綱は、8割給付の対象を08年度から「就学前」に引き上げることを盛り込んでいます。
 乳幼児医療費への助成を実施していない自治体は、おおむね「予算がない」ことを理由にしています。しかし一方で「無駄使い」の予算は数知れず……。「中学卒業まで」実施している自治体との違いは何なのでしょうか?自治体の長の権限は大きく、その人の考え方一つで、「予算」組みは相当額が変わると言われています。流れは間違いなく、乳幼児・児童医療費無料化の方向へ向かっていると思います。

●少子化背景に府立高校統廃合や中高一貫が急ピッチ−“予備校化”懸念も(京都府)
 京都府は府立高校改革を急ピッチで進めています。小学区制を見直した85年に続く大がかりな取り組みで、少子化を背景としています。中3生は「団塊ジュニア世代」の87年度に4万3,160人とピークを記録し、今年度は2万3,741人とほぼ半減。一方で府立高数は48校でピーク時と変わっていません。
 00年の有識者らの懇話会で議論の具体化が始まりました。柱は学校規模の適正化と、教育システムの多様化。02年1月の「まとめ」は戦後初の高校数減少となる統廃合に言及し、職業教育が主眼だった専門学科の見直しや中高一貫教育の導入などを提言しました。
 これを受けて府教委は昨年、府南部の城南と西宇治を09年度、八幡と南八幡を07年度に統合し、養護学校を併設する計画を公表。府教委の森永重治・高校改革推進室長は「統合で講座が増やせ、部活動の活性化にもつながる」としています。教育の多様化では04年、洛北高に付属中を設けて中高一貫化。06年度には大学理系学部進学を目指す専門学科を桃山など一挙4校に設けます。「平等の名で選択権もない時代があった。『京大で宇宙物理を学びたい』『農業を学んで働きたい』といった多様な希望に応えるのが公立の使命」と森永室長は強調しています。
 これに対し、府立高教職員組合の佐古田博・教文部長は「根底には、財政改革を進める現府政の『経営』の視点がある。教育は経営では語れない」と批判。さらに“教育の多様化”が招く、高校の受験予備校化に懸念を示す。「一部の出来の良い子のための現行路線は学力の二極化を招くだけ。高校は減らさず少人数教育にし、普通科を充実させて全体の底上げを図るべきだ」と訴えます。
 現在、京都では9日投票で知事選挙が戦われています。毎日新聞がこの府立高校改革への考え方を2人の候補者に質問したものへの回答は以下の通りです。
◇山田啓二氏
 改革の目的は、子どもたちがそこで学んで良かったと思えること。多様な専門学科があり、自分に合った教育を受けられるなど将来を見据えた学校づくりが大切。
◇衣笠洋子氏
 ゆきすぎた競争教育、高校つぶし、いっそうの選別強化をもたらす改革には反対。地元で通える魅力ある学校づくり、30人学級の実現などの改革をすすめます。

 京都府民のみなさん、知事選びの参考にして下さい。実態として経済格差が広がる中、「弱者」への施策が重要な選択肢になると思います。

●いまさらですが…不祥事防止に向け、教師向けマニュアル(栃木)
 「生徒の体を触るのはわいせつ行為」「公金の着服は犯罪」――。栃木県教委は06年度、教職員の不祥事防止に向け、犯罪にあたる事例を記したマニュアルを県立学校や市町村教委に配布するそうです。教員の不祥事に頭を痛めた県教委が、教職員の「意識改革」の足しにと作成したものですが、内容はいずれも社会人としての常識を列挙したものばかり。児童・生徒や保護者らから、失笑も漏れ聞こえてきそうです。
 マニュアルは20ページ。わいせつ行為や「体罰」、飲酒運転など犯罪に問われる5つの事例のほか、教職員の懲戒処分の基準や関係法令なども盛り込まれています。
 事例の「わいせつ行為」の解説では、「体験学習を引率した教員が、就寝中の女子児童の体を触った」との想定で、性行為やわいせつ行為は「刑事責任を負う」と明記。「密室での生徒指導はしない」「宿泊行事では飲酒はしない」などの注意点を列挙しています。
 また「児童・生徒への暴力は暴行罪や傷害罪に問われる」「他人の印鑑などによる文書偽造は私文書偽造にあたる」「仕事で使う物品でも、公金で買った物を横領すると業務上横領」などと指摘したうえで「(懲戒処分が科されると)給与や期末・勤勉手当にも影響がある」と警告しています。
 県教委教職員課は「これまで関係法令などをまとめた資料はあったが、事例集の作成は初めて。『当たり前』のことだが、改めて学校内の研修会で活用して、教職員の自覚を促したい」と狙いを話しています。
 県教委によると、05年度に懲戒処分を受けた教職員は前年度と同じ16人でした。

●「君が代」起立しない都内の公立学校教諭33人を懲戒処分
 31日、東京都教育委員会は今春の卒業式で校長の職務命令に反し、君が代斉唱時に起立しなかったりした都内の公立学校の教諭33人を地方公務員法に基づく懲戒処分にしました。入学・卒業式などでの日の丸掲揚や君が代の起立斉唱徹底を求めた03年10月の通達以降、今回も含め延べ約340人が処分を受けたことになります。


[2006.3.26]

自死遺族の語り合いの会発足(京都市)

 25日、自死遺族の方々の語り合いの会「こころのカフェ きょうと」が発足しました。私もスタッフ、ファシリテーターとして参加しました。自死遺族の方々25名とスタッフ10数名の参加で、少々狭かった会場は熱気と涙に包まれました。
 私は子どもを自死で亡くされたグループを担当。死んでいった子どもたちはみんな真面目で優しい子、自死は突然予測なく実行される、死の受容ができない、周囲(家族や地域など)との関係が崩れる、自殺をわかってもらえない、などの共通した悲しみ、悩みについて語り合いました。「京都にこんな会ができるのを待っていた」「誰にも話せないことだけど、ここでなら話せる」と、会の発足・継続の必要性を痛感しました。
 第2回は5月6日(土)午後1時30分より「ひと・まち交流館 京都」で開催予定です。お問い合わせは相談室カンナ、またはTel.090-8536-1729(午後6時-9時)まで。

●子育て支援税制議論、政府・与党少子化協議会が初会合
 23日午前、政府・与党は首相官邸で、少子化対策に関する協議会の初会合を開きました。政府は6月をめどに総合的な少子化対策を取りまとめ、07年度からの実施を目指しています。
 初会合では、政府・与党双方から、子だくさんの大家族が優遇される税制の必要性が指摘され、今後、具体策を検討していくことになったそうです。
 所得を世帯の人数で頭割りして税額を計算することで、大家族ほど税額が抑えられる「N分N乗方式」や、本来納めるべき税額から子供の人数に応じて一定額を差し引く「税額控除方式」などが検討される見通しです。現行の、子供の人数に応じて課税対象となる所得を控除する「所得控除方式」に比べ、より効果的な子育て支援策になるのではないかと期待されています。
 このほか、仕事と子育てが両立できる職場環境の整備、出産費無料化などについても検討を進めるそうです。
 協議会には猪口少子化相や安倍官房長官、川崎厚生労働相ら9閣僚のほか、自民、公明両党の幹事長、政調会長らが出席。出席者からは、「従業員301人以上の企業に義務付けられている育児と仕事両立のための行動計画の公表を義務化すべきだ」(坂口力・元厚労相)、「地方からは出産費無料化を求める声が多い」(猪口少子化相)などの意見が出されました。
 会合後、猪口少子化相は記者団に対して、「即効薬、万能薬はないが、知恵を出し合えば対応できるのではないかとの意気込みが感じられた」と強調しました。

●教頭も民間人OKに―家庭・地域とのパイプ役を期待
 4月から全国の小中高校で、企業勤務経験者など民間人の教頭を採用することが可能になるそうです。経営感覚を持つなど、幅広い人材を起用し、学校と地域、家庭とのパイプ役を担わせることで教育現場を活性化させる狙いです。
 学校の管理職への民間人の登用は、00年度から校長に限って認められてきました。文部科学省は今月末に学校教育法施行規則を改正する予定です。
 現行の施行規則は、教頭の資格要件として、〈1〉一種教員免許状を持ち、教育に関係する職に5年以上従事〈2〉教員免許がなくても、学校事務職員のような教育に関係する職に10年以上従事――のいずれかを満たすことが必要と定めています。
 今回の規則改正では、都道府県教育委員会や私立学校の設置者が、二つの要件を満たさなくても、同等の資質を持つ人物と判断すれば、教頭に採用できるようになります。実際の採用は、07年春からになる見通しです。


[2006.3.19]

教諭から注意、小5男児が帰宅後自殺(北九州市)

 16日午後4時半ごろ、北九州市若松区の市立小5年の男児(11)が自宅で首をつって死亡しました。
 学校で教諭から注意を受け、帰宅後に死亡しており、福岡県警若松署は自殺とみて、学校関係者から事情を聞いています。
 同署などによると、男児が自分の部屋の天井にひもをかけ、首をつっているのを母親が見つけましたた。遺書はありませんでした。
 市教委によると、男児は同日午後、翌日の卒業式のため、同級生と教室の掃除などをしていた。女児2人が、男児からたたかれたと50歳代の担任の女性教諭に訴えました。男児が紙を丸めた棒を振り回していたことがわかり、教諭が理由を尋ねた男児の答えがあいまいだったため、胸元をつかんで数回揺すったところ、男児は室内にあったペットボトルを投げつけ、教室を飛び出したといいます。
 同校によると、男児は昨年秋ごろから担任教諭との関係が悪化、心配した家族が学校側に相談していたそうです。男児は夏休みを過ぎたころから授業中に教科書を開かないなどの行動が目立つようになり、担任教諭がよく注意していて、腹を立てた児童と言い合いになることもあったといいます。
 男児が「先生が嫌いや」「僕のことを分かってくれない」などと訴えたため、母親は担任教諭に連絡帳を通じて相談。教諭は電話などで母親と対策を話し合っていたそうです。男児は元気で明るい性格だった一方で、ふてくされたり物を投げるなどの行動もみられ、低学年のころから指導を受けることが多かったといいます。
 教諭は17日、「厳しくしかったのは事実。このような結果になり申し訳ない」と両親に謝罪しました。
 校長は「教諭の指導に行き過ぎた点はなかったと思うが、深刻に受け止めている。しかった後、フォローしなかった点は反省しなければならない」と話しています。
 11歳は前思春期、自分の存在や認知と他者の存在と認知を知り、大人へ変容しようとする激動の思春期を迎えようとする多感で不安定な発達段階だと思います。教室でどんな出来事があれ、本人が基本的に尊重され、その精神的発達が保障される環境を、大人たちは作ってあげる必要があります。

●身近な命失う悲痛共有、自死遺族会/来月から「集い」(長崎)
 長崎県大村市の医療施設に勤務する児童支援員山口和浩さん(25)が、家族や友人を自殺で失った遺族同士で思いを語り合う「自死遺族のつどい」を4月から同市で始めることになりました。同様の集いは、九州では福岡市に次ぎ2カ所目。中学生のときに父親が自らの命を絶ったという山口さんは「同じ体験を持つ遺族同士だからこそ、話せることもある。一人で苦しまないでほしい」と参加を呼び掛けています。
 山口さんは中学2年のときに父親を亡くした後、「父親を守れなかった」という自責の念と、周囲から偏見の目で見られる苦しみを抱えていました。それが、高校生のころに参加した「あしなが育英会」の集いで、同じ苦しみを持つ遺族らと出会い、初めて自分の父親の死について話をし、苦しみが和らいだといいます。
 山口さんは、自殺者の遺族らが一昨年9月から福岡市で始めた「リメンバー福岡」の集まりに参加したり、悩みごとなど人の話を聞く訓練をしたりしながら「無理なく遺族が集い、話し合える場ができないか」と考えてきました。
 山口さんが勤務先の情緒障害児短期治療施設「大村椿(つばき)の森学園」に相談したところ、施設側も場所の提供などについて協力を約束。第一回の集いを4月上旬に開き、その後も月1回程度開催する方向でまとまったそうです。
 長崎県では昨夏以降、中高生の自殺が約10件起きており、国内の年間自殺者は3万人を超えています。山口さんは「大切な人が自ら命を絶ったことを人に話せずに苦しむ遺族が3万人の何倍もいる。集いの運営はみんなで話し合いながら決め、遺族が訪れやすいものにしたい」と話しています。
 京都でも、自死遺族の方々の語り合いの会「こころのカフェ きょうと」が25日に第1回の会合が持たれます。(連絡先:TEL090−8536−1729 (9時〜17時))


[2006.3.12]

不登校の体験談を紹介/市民団体が情報誌(京都)

 給食費の支払いやテストを受けたかどうかなど、子どもが学校に行かない時のさまざまな疑問に体験談で答える情報誌「プロン・トン・トン」第2号がこのほど、発行されました。不登校の子どもやその親から集めたアンケート結果を中心に、子どもの居場所や教育委員会の取り組み、相談機関まで幅広く紹介しています。
 発行したのは、不登校の子どもを育てる親たちでつくる京都市山科区の市民団体「親子支援ネットワークあんだんて」。同団体は、3年前に発行した第1号に続いて、新たに取り直したアンケートをもとに昨年から編集を進めてきました。

http://www.ne.jp/asahi/oyako-net/andante/index.htm

 今回は親79人、現在不登校か不登校を経験した子ども62人から回答があり、「親の声」では現在困っていることやほしい情報を、「子の声」では先生や友達に望むことや不登校を経験して感じたことがまとめてあります。昨年秋に開かれたシンポジウムの抜粋記事では、「不登校の経験は、その子に生きている」という前提のもと、学校に行かなくても学力や社会性が身に付くかの議論が紹介されています。
 また、今回は最終章に発達障害を特集。同団体の福本早穂代表は「ちょっとしたことが分からなくて悩み、つまずいてしまう親が多いので、情報誌が参考になればうれしい。学校の先生にもぜひ読んでほしい」と話しています。情報誌は1,260円で、あんだんて=ファクス075(595)8255=で受け付けているほか、大型書店でも販売しています。
 私の相談室も紹介されています。

自閉症抱え普通高卒業/鉄道専門学校へ(沖縄)
 自閉症がありながら普天間高校を卒業した玉城亮さん(18歳・北中城村)は今春、幼少からの夢に向かって横浜にある鉄道関係の専門学校へ進学されます。3年前、全国的にも珍しいといわれた普通高校一般入試をクリアし、昨年の夏休みには自動車免許も取得、自立に向けた歩みを重ねてこられました。パニックを起こして突然教室を飛び出した小中校時代。「いまは自己コントロールできる」と語れるほどになられています。自閉症に詳しい専門家は「全国的にもまれな成功例」と評価しています。
 玉城さんは発達障害がありながら、両親の希望で北中城小中学校の普通学級へ。過敏な反応、“変わった”行動がいじめの対象になり、父譲さん(47)、母園子さん(46)にとって子育ては常に「がけっぷちだった」といいます。
 高校在学中に同級生とトラブルがあったらしく、譲さんが「父さんが学校と話してこようか」と気遣うと、「自分で対処する」と返せる気丈な息子に育っていたそうです。
 自閉症は人との付き合いが苦手で、知的な発達障害も心配される半面、特定のこだわりには人並み以上の能力を発揮します。亮さんは鉄道が好きで、全国の路線と駅名を暗記し、小学校で鉄道検定に合格。譲さんが出張先から亮さんに電話し、目的地へのダイヤを教わっていたといいます。
 高卒後の進路は、インターネットで横浜の法律社会科郵政鉄道コースがある専門学校に決め、将来は車掌を目指されるそうです。
 「つらいこともあったけど、悩む余裕がなかった」と譲さん。息子の成長に目を細める園子さんは「運転は制限速度内。融通が利かないかもしれないけど、そんな特性に合った職業があるはずだ」と、息子の巣立ちを喜んでいます。
 日本自閉症協会の石井哲夫会長は「会話が普通に近い状態になった背景には、涙ぐましい子育て記録が刻まれているはずだ。逃げずに体当たりで向かい合った親子のきずなは感動に値する」と絶賛しています。

県発達障害者支援、実態把握へワーキンググループ設置(徳島)
 自閉症や学習障害(LD)など発達障害者への支援の在り方を検討する徳島県発達障害者支援体制整備検討委員会(会長・橋本俊顕鳴門教育大教授)の第二回会合が8日、県庁で開催されました。県の支援計画策定に向け、発達障害者の実態把握の方法について、今後ワーキンググループを設置して検討していくことを決めました。
 発達障害者の実態把握については、保健所や学校、保育所など県内の関係機関が、これまでに取り組んできた調査の方法やデータをそれぞれ報告。委員からは「県教委が小中学校や幼稚園でチェックリストを作って実施している実態調査を基本に、高校まで対象を拡大した調査をしてはどうか」といった意見が出されました。
 今後、調査方法をワーキンググループで検討し、07年度中の計画策定を目指すそうです。
 また県が、南部圏域(小松島、阿南両市、那賀、海部両郡)を対象に、06年度から2年計画で「発達障害者圏域支援体制整備事業」をモデル的に実施する方針を示し、了承されました。
 同事業は乳幼児期から成人期まで、一貫した支援ができる体制の整備を目指す事業で、臨床心理士らを発達障害支援コーディネーターとして配置するなどし、個々の発達障害者に対する支援計画づくりなどをサポートするそうです。
 全国各地で発達障害を支援する体制づくりがすすんでいます。全国の動きに乗り遅れている京都府でも、研究者や既存の機関だけでなく、当事者やご家族、援助団体などの声を組み入れながら、早く動き出して欲しいものです。

小さな相談室から(4)
 精神保健福祉士の資格取得のために通信制で学んでいる専門学校からの病院実習に通っています。統合失調症の方が全体の8割を越える病院のデイケアを拠点に学ばせてもらっています。昨日で前半の6日間を無事終了。このデイケアは、朝8時半開所ですが、時間前から多くの利用者さんがスタッフの到着を待っています。9時半から利用者さん全員でのミーティング、その後は午前中のプログラムが取り組まれます。健康体操、ゲーム大会、音楽などに参加しました。11時45分からは昼食の準備、配食のお手伝い。利用者さんにとって食事は大切な楽しみで、早くから列を作って待っておられます。午後もプログラムがあり、ソフトボールやファミリーバドミントンなどに参加。午後3時に再び終わりのミーティングでデイの方は解散となります。デイ・ナイトケアの利用者さんは午後7時までの利用となります。実習は午後5時までなので、2時間余りは残った利用者さんとオセロや将棋、カラオケをしたり、談話を楽しんでいます。
 昨日は病棟で1日実習をしました。午前中は急性期、亜急性(以上、閉鎖病棟)、療養(解放病棟)を見せてもらい、午後はPSWと患者さんとの面接に立ち会わせてもらい、空き時間は急性期病棟のロビーで入院患者さんと談話をさせていただきました。
 病院における精神保健福祉士の役割と活動を学ぶことが実習の主目的と思いますが、実際の病理と患者さんとの関わりに接することができる、有意義な実習であると実感しています。また明日から6日間、がんばります。
 実習のために面談予定を変更頂いた方、先送りにさせて頂いた方、予約などの電話連絡ができない方々、御迷惑をお掛けいたしますが、どうか御理解下さい。


[2006.3.5]

イラク帰還米兵、3人に1人が精神ケア

 イラクから帰還した米兵の約3人に1人が、カウンセリングなど精神面のケアを受けていたことがウォルターリード米陸軍研究所の調査で2月28日までに分かりました。1日付の米医師会雑誌に発表されます。
 帰還兵の約1割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、戦闘への参加と密接に関連していた。帰還兵の精神面のケア充実を求める声が強まりそうです。
 調査は04年4月までに帰還した米陸軍、海軍の兵士らを対象に実施。計約22万人のイラク帰還兵の31%が、帰国後1年以内にカウンセリングをはじめとする精神面のケアを受けていました。
 PTSDと診断されたのは約2万2,000人。うち約80%は、死傷者が出た現場に立ち会ったり、戦闘に直接参加していました。

●県発達障害者支援センター:相談窓口を開設、7月にも(群馬)
 県は、自閉症などの発達障害のある子どもや家族の相談窓口となる「県発達障害者支援センター」を、前橋市新前橋町の県社会福祉総合センター内に開設する準備を進めています。発達障害者の医療、保健、福祉、教育、就労と広範にわたる支援の拠点としての役割を担うもので、開会中の2月定例県議会に提出された県の新年度当初予算案の議決を経て、7月にも開設される見込みです。
 支援センターは昨年4月に施行された発達障害者支援法に基づくもので、全国では36の自治体で既に開設されています。県は策定中の次期県障害者計画に同センター設置を盛り込み、障害者団体や識者でつくる協議会などで詳細を検討しています。
 県障害政策課によると、同センターは社会福祉士や心理判定員ら専任職員5人体制にする予定。家族らの相談のほか、児童相談所や医療機関から連絡を受け、障害の有無の確認や適切な関係機関や団体への紹介などを行い、また医師も定期的に診察に訪れるなど、ケースごとに柔軟な対応をとれる形を目指すとしています。
 発達障害は従来、知的な遅れを伴わない場合、法的には福祉サービスの対象外でした。県はこれまで関係機関と連携しながら対策をとってきましたが、発達障害に特化した施設はありませんでした。児相での相談ができなかった18歳以上も同センターでは対象となるため、家族らから就労面の支援にも期待が寄せられています。
 長男(24)が自閉症という日本自閉症協会県支部の中林文子支部長(54)は「障害があるかないか分からずに悩んでしまう人たちを、いずれかの機関や団体につなげてくれると期待している。また一般に対する発達障害への理解も進むと思う」と話しています。
 センター設立に向けた「協議会」に、障害者や援助者の意見が反映されることが大切です。昨年末、私が副代表をしている「京都ひきこもりと不登校の家族会」が提出した「高機能広汎性発達障害(児)者への民間の療育・支援活動への援助に関する請願」が京都府議会で採択されました(詳しくは「アスペ・ノンラベル」ホームページ http://www13.ocn.ne.jp/~nonlabel/ をご覧下さい)。年明けから担当の府障害福祉室と懇談を重ねています。京都府ではまだ「発達障害者支援センター」の設置に向けた計画すらなく、私たちは、まず「拠点」としてのセンター設置に向けて、医師や当事者、援助団体なども参加した準備会の立ち上げを要望しています。

●障害者福祉サービスの新報酬、障害別の分類廃止
 厚生労働省は1日、4月施行の障害者自立支援法に基づく福祉サービスの報酬体系を公表しました。
 在宅と施設に分かれている現行の仕組みを、「訪問」「居住」「日中活動」に再編。身体、知的、精神という障害の種類による分類も廃止し、サービスの具体的な内容に基づく共通の報酬となります。
 訪問サービスでは、身体介護が1.5時間で5,800円、家事援助は2,250円。これとは別に、重度障害者でヘルパーが長時間、自宅に滞在して介護する場合の報酬を定めます。
 例えば、1日8時間利用の場合、障害の程度により2万2,400〜1万4,260円に。30日間、毎日8時間ずつ利用すれば37万2,000〜42万7,800円となり、原則としてこの1割が利用者の自己負担となります。
 居住サービスでは、共同で生活する「グループホーム」が、職員態勢により1日1,160〜1,710円に。日中活動サービスでは、企業などへ就職するための訓練を行う「就労移行支援」が、定員などにより1日4,030〜7,360円。就職に成功した人が一定数以上いる場合、1日260円の加算を行うなど、成果主義が導入されます。
 新しい報酬は、9月までの経過期間を経て、10月から全面的に適用されます。
 福祉サービスの枠組みが変わり、サービス内容も広がりを持つことになる一方で、利用者負担の導入が現実のものとなります。特に重度障害の方の場合、利用料が莫大となり、これまで受けてきたサービスを「我慢」しなければならないケースが多くなりそうです。これでは、「福祉の後退」となってしまいます。「金の切れ目が…」が、今の日本の福祉レベルと言えます。


[2006.2.26]

小さな相談室から(3)

 私の相談室は「相談室」と看板をあげていますが、来られる方(クライエントさん)によって「面談」と「カウンセリング」を区別しています。形態は同じなのですが、内容がトラブルや人間関係のもつれなどからの「対応」の仕方が主である場合は「面談」、ご本人の心的不全感や自己治癒への寄り添いなどの場合は「カウンセリング」として対応させていただいています。特定の「療法」にこだわることなく、ケースに応じてより適切と思われるアプローチを心がけています。一般的にインテーク時など早期に行われる様々な「検査」も、必要に応じて、私とクライエントさんとの間での信頼関係が十分に築かれてから行うようにしています。また、成育歴や「事」が起こった経過、ご本人の認知特性などを丹念に聞き取り、読み取ることを重視しています。発達障害に起因して起こっている状態・症状では、こうした聞き取りによってその障害の存在に気づくことができることが多いことと、ご本人が経験されたことを第三者に話すという行為、そこで現れる心的な変化を尊重したいためです。ですから、いわゆる「インテーク」面接というものは、緩やかに時間をかけて(数回に渡って)行い、当初の「見立て」にとらわれることなく、信頼関係を前提としてその時々に話されることの一つひとつから読み取り解釈を膨らませていく、というスタイルをとっています。おそらく、一般的に行われている「カウンセリング」とは随分と形の違うものになっていると思います。面談やカウンセリングを継続される中で、クライエントさんやその回りの状態・環境は変容していき、問題の緩和・解消、自己治癒力の促進による状態の回復や向上がはかられます。もちろん困難なケースはありますが、「決してあきらめない」緩やかな関わりの継続が少しずつの変化を与えていきます。こんなスタンスで、まもなく開業後1年が近づいています。沢山のことを、クライエントさんとの関わりを通じて学ばせていただきました。今後の私の臨床活動の糧としていきたいと思います。

●新人医師、激務の小児科避け志望4割減(日本小児科学会調査)
 日本小児科学会の調査で、大学病院や大学の関連病院の小児科での勤務を希望する新人医師が、3年前に比べて約4割減少したことがわかりました。
 04年以降、医師国家試験の合格後に2年間の臨床研修が義務化されましたが、同学会では「臨床研修で小児科の過酷な勤務実態に接し、敬遠されたのではないか」と危機感を募らせています。
 今回の調査は、小児科医の育成に対し、この臨床研修制度がどんな影響を及ぼしているのかをテーマに、研修を実施した全国約1,000の医療機関を対象に行ったもの。研修制度が導入される前の03年4月には、大学卒業後に大学とその関連病院の小児科に勤務した医師は502人でしたが、今回の調査では、この3月に臨床研修を終える医師のうち、大学等の小児科勤務の希望者は276人にとどまっているといいます。
 また、研修中に小児科から他の診療科に志望を変更した医師は223人を数え、他の診療科から小児科に変更した70人を大きく上回り、若手医師の小児科離れを裏付けています。
 大学病院から地域の病院に派遣されて診療にあたる若手小児科医も多いだけに、日本小児科学会の衛藤義勝会長は「このままだと、地域の小児救急医療が危機的な状況に陥る恐れもある。小児科医の労働条件を改善するなど抜本的対策も必要だ」としています。

●親の負担軽減へ小中学校に看護師配置(大阪府)
 大阪府教育委員会は23日までに、障害のため、たんの吸引など医療行為が必要な児童・生徒が通う府内の公立小中学校45校(大阪市、堺市を除く)を対象に、06年度から看護師を配置することを決めました。保護者の負担軽減が狙いで、府教委によると、公立学校への看護師配置は都道府県レベルで初といいます。
 医師法上、管を体内に挿入してたんの吸引や尿の排出ができる医療行為が可能なのは、医師や看護師のほか患者本人と家族に限られていましたが、04年10月からは看護師が常駐する盲・聾・養護学校の教員にも条件付きで認められています。しかし、子どもを普通学級に通わせるためには、一日中付き添わなければならない保護者もいて、「共働きでなければ生活していけない」と入学をあきらめるケースもあったといいます。

●全国初、全国学力テスト不参加方針(愛知県犬山市)
 23日、愛知県犬山市が、07年度から文部科学省が全国で実施する予定の「全国学力テスト」に参加しない方針を固めたことが分かりました。同省の教育課程課は「参加は強制できない。これまで不参加を表明した自治体は把握していない」としており、同市が不参加を正式に表明すれば全国で初めてとなります。
 同テストは、全国の小学6年と中学3年の全員を対象に国語と数学(算数)のテストを実施、学習到達度などを把握するもの。同市教育委員会は24日に、同テストが「地方の特色のある教育づくりを阻害する」と指摘した施策案を承認する見通しです。市教委は「承認すれば事実上、全国学力テストを実施しないことになる」と話しています。
 同市は数年前から、40人学級を2つに分けて授業を行う少人数授業や、複数の教諭による授業を導入して「自ら学ぶ力」を重視、「子どもの実態を見ながら教育に取り組みたいので、一面的な評価はしない」としています。

●人権侵害:茶髪の女生徒に黒スプレー(京都)
 茶髪を理由に高校2年の女子生徒(17)に授業を受けさせず、髪に黒色のスプレーをかけたのは人権侵害だとして、京都弁護士会(田中彰寿会長)は24日までに、京都市立日吉ケ丘高校(同市東山区)に対し、改善を求める要望書を送付しました。
 要望書などによると、女子生徒は茶髪を理由に学生証用の写真撮影を学校に拒否され、2年生だった昨年4月、髪を黒く染めるスプレーを無理やり教員にかけられました。8月には、同じ理由で授業を受けずに下校するよう指示され、テストが受けられなかったといいます。
 女子生徒はやむなく髪を黒く染めたが、その後休みがちになり、10月、通信制私立高校に転校。精神的ショックで、現在も精神・神経科に通院しているといいます。
 長男が通っていた中学校でも、校門立ちをしている教師が黒スプレーを持っていたといいます。黒くしなければ学校に入れませんでした。学習権の侵害でもあります。

●園児の夜更かし、不登校の一因にー金沢大・木村教授が調査
 就学前の子どもの4割が夜型の生活リズムとなっていることが、金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻の木村留美子教授(小児保健学)と津田朗子助手らの調査で分かりました。夜型の子どもは日中に体温が上がらないため元気がなく、勉強や友人との関係につまずきやすい傾向にあるといいます。生活の乱れが不登校につながることもあるとみて、早寝、早起きの習慣づけを呼び掛けています。
 調査は金沢市内の4つの保育所に通う6カ月―6歳の乳幼児198人を対象とし、一日の体温の変化や、就寝と起床の時間などを調べたもの。
 体温変化が正しいリズムとなっていたのは、1歳児では3割強で、成長とともに上昇するものの、小学校入学前の5歳児でも64%にとどまっていました。2年間の追跡調査で、就寝時間が午後8時半―10時の早寝の子どもは7割が正しい体温のリズムを身に付けていましたが、10時以降に寝る子どもでは2割だけでした。
 木村教授によると、人間の体温は、朝の起床時から上昇し、夕方に最も高くなり、就寝前に低下するというリズムを刻んでいます。乳児は体温のリズムが発達していないため夜泣きもしますが、日中に日光を浴びたり、早寝、早起きの習慣を付けたりすることで、2歳ごろまでには正しいリズムを身に付けるそうです。
 しかし、寝るのが遅い夜型の生活では、朝、起きた後も体温が上がらないため、日中の活動が鈍くなり、夜になっても体温が下がらないため眠くならず、夜更かしする悪循環が始まるといいます。
 木村教授は「夜型の子どもは常に『時差ぼけ』の状態。勉強に身が入らず、友達と遊ぶのもおっくうになり、社会性の発達が遅れた場合は不登校の原因になる可能性もある」と指摘しています。


[2006.2.19]

ひきこもり相談295件に、長期化壮年傾向も(京都府)

 京都府は、昨年6月に開設した「ひきこもり相談支援センター」の相談状況をまとめ、12月末までに、来所や電話で計295件の相談が寄せられたことがわかりました。専門家による面接相談を受けたのは58人、本人が10人、家族は48人でした。
 相談の方法は、電話が141件、専門家による面接が154件。面接相談の結果によると、ひきこもりで悩む58人(男性52人、女性6人)の状況では、16-29歳が38人と青年層が多いが、30歳以上も19人いました。ひきこもり期間は3年未満が26%、5-7年が19%、10年以上が19%でした。ひきこもりの長期化に伴う壮年化傾向がうかがわれます。また約7割が不登校経験者でした。
 厚生労働省の推計では京都府内のひきこもりは約8,000人とされています。府保健福祉部は「解決には長い時間を要するが、相談拡充に努めるとともに、本人の社会参加を支援する取り組みを民間と連携しながら進めていきたい」としています。
 「焼け石に水」の取り組みですが、基本的に必要な体制だと思います。1回の相談で状態が改善することは望めません。継続的な関わりが必要です。また、第三者と家庭との、第三者と当事者との関わりが始まることで、家庭に「外部」の風が通り、変化が見られることがよくありますので、相談の窓口対応だけでなく、民間との連携でフットワーク軽く「動く」ことが良き援助となると思います。(何が何でも家に入れば良い、というわけでないことは言うまでもはありません)

●人間関係希薄で問題行動/PTA、高2の6,000人を調査
 全国高等学校PTA連合会が公立高55校の2年生約6,000人を対象に調査した結果がまとまり、集計と分析に当たった木原雅子京都大助教授(社会疫学)が12日発表しました。家族との会話がなかったり、学校をやめたいと思ったりした生徒は、性経験や万引、刃物で手首を傷つけるなどの自傷行為をする割合が、そうでない生徒の約2倍以上、という結果です。
 地域差は少なく、木原助教授は「問題視されるこれらの行為は子供たちの叫びであり、共通の原因は人間関係の希薄さ。今の社会は意識して人と人がかかわり合う必要があり、大人が本気で取り組まないと状況は変わらない」としています。
 家庭環境が大きく変化し、家族で食事、会話をする時間が短いというご家庭が増えています。不況の影響でぎすぎすし、家庭の人間関係が薄まっているのも現実です。また、学校現場が相変わらず40人を基本とした一斉授業、教師は実務に追われ、子どもたちに関わる時間は減るばかりです。「関わって欲しい」「理解して欲しい」、子どもたちの叫びが聞こえてきます。

●複数障害対応校を検討、特別支援教育で方針(沖縄)
 15日、県教育委員会は07年度から全国で実施される特別支援教育に向けて「沖縄県における特別支援教育体制整備の基本方針」を決定、複数の障害に対応できる養護学校の設置を検討することが盛り込まれました。さらに小中学校の通常学級に在籍する学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの児童・生徒らを支援する体制の充実や、障害のある子どもたちと障害がない子どもたちの交流や共同学習を積極的に推進していくことなどを決めました。
 同方針は、文部科学省が推進する特別支援教育を受けて(1)ノーマライゼーションの進展に対応した教育的対応の充実(2)通常の学級に在籍するLDなどの児童・生徒への対応と特殊学級などの充実(3)盲、ろう、養護学校における教育とセンター的機能の充実(4)障害のある児童・生徒についての相談支援と就学指導の充実(5)教職員の専門性の向上と適切な人事交流などの検討―の5つを柱としています。
 (1)では障害のある人もない人もともに生活するノーマライゼーションの理念を基礎に、障害のある児童・生徒を支援するため地域全体で連携していくことが示されています。(2)は、LD児らへ対応するための職員研修の充実や、専門家が各校に出向いて発達障害の子どもらへの対応を教員に助言する巡回相談アドバイザーによる支援の強化などの施策を実施することに。(3)では医療、福祉、労働など関係機関との調整役をする地域のセンター的機能の充実、(5)では特殊教育教諭免許状の保有率向上を図る方針が示されました。
 仲宗根用英県教育長は「特殊教育は、大きな転換期を迎えている。一人ひとりの教育的ニーズに対応していくため、今回の方針を基に県の特別支援教育を推進していきたい」と話しているます。県教委は今回の方針を冊子にまとめ、3月中には市町村教育委員会や各小中高校に配布するそうです。

●非開示一部取り消し=体罰教諭の情報公開請求(神戸地裁)
 16日、神戸大大学院教授が、体罰について兵庫県教育委員会に行った情報公開請求で、非開示部分の取り消しを求めた訴訟の判決が神戸地裁でありました。佐藤明裁判長は「条例で非公開と定めるプライバシーの侵害には当たらない」として、体罰発生報告書などで記された加害教諭や学校名などの非公開決定の一部取り消しを認める判決を言い渡しました。
 提訴していたのは学校教育を研究する馬場健一教授(43)。02年、学校で起きた体罰を対象に公文書の情報公開請求をしましたが、体罰を行った教職員や学校名は非公開とされていました。
 佐藤裁判長は判決理由で、個人を特定する懲戒処分の情報は非公開対象と指摘したが「生徒への体罰は公務員である教職員の職務執行で、プライバシーの情報は含まれないと考えるべき」と判断。「情報公開条例は公務員の不当な職務執行にも向けられている」とし「非公開は条例目的に反する」としています。
 同教授は「体罰を抑止する画期的判決。プライバシーを理由に不透明になりがちな不祥事で、公務員の監視を行うことができる」としています。
 体罰、いじめ、不登校、問題行動、自殺など、学校で何が起こっているのか、親が知ることができない、巨大な壁が学校にはあります。学校側による何らかの過失で起こった事故や事件、自殺などに対して、多くの場合学校側は教育委員会ぐるみで事実関係を明らかにせず、責任関係を曖昧にしようとします。教師の体罰の直後に自殺するというケースも多く、この判決は学校の隠蔽体質を変えていく上で大きな一歩となると思います。


[2006.2.12]

「全国学校事故・事件を語る会」第13回集会に参加(神戸)

 11日、神戸市内で開催された「全国学校事故・事件を語る会」第13回集会に参加してきました。学校に起因する事故や事件でお子さんを亡くされた方や、心的外傷により後遺症状に苦しまれているお子さんの家族、約20組が参加し、交流し合いました。全体会の後、学校事故での死亡、自殺、後遺症状の3つの分科会に別れて、交流、問題や課題の抽出、改善方向などについて議論をしました。私は自殺事案の分科会に参加したわけですが、子どもの自殺は残された家族の心的問題であること、裁判等で学校関係者から事実がほとんど語られず隠蔽されること、「恥」として家族で抱え込まれてしまうケースが多いことなど、この取り組みが広がって行かざるを得ない実態を痛感しました。
 次回集会は4月15日(新長田勤労市民センター)、1泊まりでの大集会は6月3・4日(パレス神戸)開催されます。ご遺族や当該ご家族のみなさん、ご関心のあられるみなさん、是非ご参加下さい。詳しくは私宛にメール下さるか、代表の内海さん(fax.0791-66-1108、eメール:HQC00120@nifty.com)までお問い合わせ下さい。

●府教委が来年度、学習障害児ら支援に非常勤講師に退職教員ら100人(京都)
 京都府教委は06年度から、通常学級に在籍している学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの児童生徒への個別指導を充実させるため、退職教員や大学院生ら100人を非常勤講師として配置すると発表しました。府の06年度当初予算案に事業費として2億2,000万円が盛り込まれています。
 府内の小、中学校では03年度から、学校と家庭、専門機関をつなぐ「特別支援教育コーディネーター」(教員)を中心に、軽度発達障害の子どもの支援にあたってきていますが、他の校務を持つ教員では専門性を高めるのが難しいといった課題がありました。
 このため、一人ひとりの子どもの状態に応じた専門性の高い指導につなげようと、増加が見込まれる「団塊の世代」の退職教員や、特別支援教育を専門的に学ぶ大学院生ら100人(うち京都市内50人)を週20時間程度、学校に派遣するとしたもの。別室での個別指導や複数教員によるチームティーチング方式を通じ、細かく目配りする。府教委は市町村教委を通じて各校の実態を把握した上で講師の配置を決めるとしています。
 府教委は「早い段階で適切な指導を行うことで、子どもたちの自立につなげたい」(特別支援教育課)としています。

●発達障がい者支援センター」10月にも開所(福岡市)
 福岡市は設置を検討してきた「市発達障がい者支援センター」を中央区の心身障がい福祉センター内で10月にも開所する方針を決めました。支援センターは学習障害や発達障害がある人の相談・支援窓口となります。
 市こども未来局などによると、運営は社会福祉法人に委託しますが、市も入った運営検討委員会が支援センターの運営や関係機関との連絡調整について話し合うそうです。スタッフは心理、生活相談、就労相談など専門性を持ち、他の施設との連絡調整を図れる人材を確保する予定。発達障害について市に寄せられる相談は新規分だけで年間250人前後としています。

●大垣養護学校:新年度からモデル的に自閉症学級、設置へ(岐阜)
 大垣市西大外羽の県立大垣養護学校(冲中紀男校長)に新年度から、県内で初めて自閉症学級が設置されます。年々増加する自閉症の児童・生徒を特性に応じて指導していくもので、新年度はモデル的に小学部2年に自閉症学級1クラスを開設、斬新な教育方法や内容を検討していくそうです。
 同校によると、自閉症の児童・生徒は20年ほど前から全国的に増え、現在では同校でも小学部・中学部の半数が自閉症の児童・生徒。特に今年度の小学部1年生は18人のうち13人が自閉症と診断されているそうです。このため、同校では2年前から、障害の特性に応じた支援のあり方を研究してきました。他県に研修に出かけたり、全職員を集めて講座を開く一方、地域の小・中学校や幼稚園の教員らを招いた公開授業や、岐阜大学教育学部障害児教育講座の坂本裕助教授らを招いて研究授業も行ってきたそうです。
 新年度の自閉症学級は、父母に説明して納得してもらった家庭の児童を対象に開設。同校では「自閉症の児童の学習指導には、教室や教材など、環境づくりが必要。全校児童・生徒が351人とマンモス校で、さらに新年度は20人ほど増えるなど、克服しなければならない課題もあるが、児童の特性に配慮した指導をしていきたい」と話しています。

●就労へ、まず社会性学ぶ
(2006年2月2日読売新聞)より
 発達障害の生徒が就職するにはどうしたら良いか。
 午前9時30分、教室内には約50人の声が響き渡った。「心を結ぶあいさつ」「やる気に満ちた返事」……。民間教育機関「ステップアップアカデミー」(東京都中野区)の大学部は、目指すべき7か条を在学生が唱和して、一日が始まる。
 同校は、発達障害や人間関係を築くのが困難な生徒たちの進学・就職支援のため、1999年に開校。小中学部から大学部まであり、このうち高等部は通信制高校などに籍を置きながら日常的に通う「サポート校」と呼ばれる塾だ。在校生の大半を占める大学部と高等部には計65人が在籍する。
 開校当初はパソコン技術やホームヘルパー資格取得など就労に向けた訓練が授業の中心だったが、企業が求めていたものは違った。
 「どんなに技術や知識があっても、あいさつや協調性などがなければ企業は困る」と、田中雄一校長(58)。このため、02年に教育目標を転換、社会の中で生きる力を身につけることを目指すようになった。
 例えば、友情をテーマにした絵本を読み聞かせて相手の立場を考えさせる授業や、授業以外でも例えばボウリング場に行き、靴の借り方から学ぶ。20歳以上の学生には、居酒屋で酒の飲み方を教えることもある。

 入学当初は半数の生徒が座って授業を受けられない。大学部の授業はこのため1時限30分だが、授業時間は就労時間と同じ午前9時30分〜午後5時にした。
 田中校長はこうも語る。
 「周囲は勝手に注意欠陥・多動性障害(ADHD)などと決めつけるが、生徒の特性を客観的に理解し、指導することが必要です」
 このため、生徒は毎年、臨床心理士や眼科医の検査を受ける。さらに、物を見る際の距離感や立体感覚を鍛え、行を飛ばさずに本を読むための「視知覚トレーニング」も毎日継続する。
 こうした授業が実を結び、雇用される生徒も増えてきたが、その数は満足いくものではない。「就労が一番の課題」という田中校長の悩みは深刻だ。

 こうした課題を解決するため、横浜市金沢区にあるサポート校「アンデルセン高等学院」は就労の場の提供にも力を入れる。以前から卒業生向けにクッキーの製造・販売の場を設けてきたが、1月には「あひるのチラシ屋」を開設。学習障害(LD)など20〜30代の卒業生13人が、チラシの印刷から折り込み、配布まで請け負うようになった。
 公立高校も動き出した。
 卒業生の約6割が就職する福島県立川俣高校は特別支援教育を本格化させた今年度、発達障害の把握に力を注いだ。来年度からは就職に向け、対人関係の基礎を磨くソーシャルスキルの訓練も始める予定だ。
 「高校は生徒が自分の発達障害を受け入れられる最後の時期」と、同校の特別支援コーディネーター、高井麗子教諭(49)。発達障害は早期発見と個人の特性に合わせた支援が不可欠だが、その輪はまだまだ小さい。
 障害児の進路 全国の盲、ろう、養護学校の高等部卒業生は約1万2000人(04年3月)で、就職率は20.4%に過ぎない。障害者雇用促進法は、民間企業(従業員56人以上)に全従業員の1.8%、国や地方公共団体(職員48人以上)に全職員の2.1%の身体・知的障害者の雇用を義務づけている。しかし、1,000人以上の企業でも、33.3%しか義務を達成していない(05年6月現在)。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20060202us41.htm


[2006.2.6]

 昨日更新の日でしたが、以下で紹介するイベントのため(司会をしていました)、更新ができませんでした。

退職後の生活水準、72%が「低下する」

 日本やアメリカ、それにヨーロッパなど11の国と地域で、およそ7000人を対象に、フランスの大手保険会社「アクサ」が行った電話によるアンケート調査でわかったものです。この中で、現在働いている人たちに、「退職後の収入の見通し」を聞いたところ、アメリカやドイツなど6つの国と地域では、「満足できる水準だと思う」と答えた人が半数を超えたのに対して、日本はわずか4%と、調査した中で最低でした。さらに「退職後の生活水準」について、他の国では「低下する」と答えた人の割合は30%から40%台だったのに対して、日本では72%に上っています。また「定年退職後も仕事をしたいか」聞いたところ、「はい」と答えた人の割合は、フランスやドイツなどが30%台だったのに対して日本は68%で、最も高い結果に。調査を行った保険会社では、「日本では、年金の支給額が減るなど十分な収入を得られないのではないかという不安があり、欧米に比べ退職後の生活に悲観的な見通しを持っている。このため再就職して働き続けることを考える傾向が強い」と話しています。
 調査結果で明らかになると、「やはり…」と納得します。日本の60歳以降の生活への不安は他先進国と比べると異常なほど強いものです。「少子高齢化」が叫ばれますが、自然とそうなったわけではなく、日本の経済構造が作り上げてきた、先細り構造を如実に現したものであることを見逃すわけにはいきません。国や各自治体のお金の使い方が問われていると思います。「社会福祉」の原点に立ち返って施策を建て直す時ではないでしょうか。

●個々に応じた生涯支援/県発達障害者支援センター:鹿児島で開設
 1日、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害がある子どもや大人、家族の相談に応じる「県発達障害者支援センター」が鹿児島市桜ケ丘6の県児童総合相談センター(児相)内にオープンしました。05年4月に施行された発達障害者支援法に基づくもので、九州・山口では沖縄を除いて最後となりました。
 就学前から就労まで個人に応じて一貫した支援を行うのが特徴で、県内各地で発達障害にかかわる医療・保健・福祉・教育・就労の各機関の拠点施設としての役割を担うとしています。
 県はセンター設置にあたり、相談所の指導課を支援課として、センター機能を担う発達支援係、と療育支援係に再編。職員(非常勤を含む)も計13人から16人に3人増やし、診断を行う医師は、従来の小児科医に加え2人体制となりました。
 児相では以前から診断や発達支援相談を実施していましたが、今回対象を児童以外(18歳以上)にも拡大。鹿児島市の鹿児島障害者職業センターなどと連携をとって就労支援に力を入れることになります。
 文部科学省の調査では、小中学生の約6%に発達障害の可能性があるとされています。県内では約1万人の計算になりますが、従来は知的な遅れを伴わない場合、法的には福祉サービスの対象外でした。県内では専門医が不足しているため、県外に診断を求めるケースも多数ありました。
 小4の長男が自閉症だという日本自閉症協会県支部の広瀬英子さん(43)は「(障害があっても)どこにどういう形で相談すればいいか分からない人は多い。センターが開設されることで、診断を受けたり、支援相談や将来設計ができるようになれば」と話します。電話相談は月〜金の午前9時〜午後5時(祝祭日は休み)。来所相談は火、水の2日間で予約が必要。同センター(099-264-3720)。

●アスペルガー障害への理解を/講演やシンポ(京都)
↓「京都新聞」の記事から転載します。
 青年期・思春期のアスペルガー障害について考える講演会とシンポジウムが5日、京都市下京区のひと・まち交流館京都で開かれた。障害に悩む人を支える家族や学校関係者ら約120人が参加し、障害の特性や支援の在り方などを学んだ。
 京都ひきこもりと不登校の家族会「ノンラベル」(右京区)が、障害への理解を求める本の出版と、アスペルガー障害の支援部門「アスペ・ノンラベル」の開設1年を記念して企画した。
 講演で精神科医の定本ゆきこさんは、こだわりが強く、思う通りにしないと気が済まないなど、アスペルガー障害の特性を紹介。「進学や就職など、幼児期から青年期の間の出来事に合わせ、行動や心配を予想しておけば問題は回避できる。親で抱え込むのではなく、行政や民間組織、地域など第三者も交えたチームサポートが大事」と話した。
 「アスペルガー障害の生きにくさをどう支えるか」と題したシンポジウムでは、「アスペルガーの子は、自発性に任せるだけではいけない。こうしなさいと指示することも有効」「問題行動に対し、校内で各教諭が統一した対応をとる必要がある」などの意見が出された。
↑何とか無事に終了し一安心です。鹿児島県で発達障害者支援センターが開設され、全国の都道府県で34カ所(?)、政令市を合わせて38カ所(?)で設置されていますが、京都府ではまだ計画すらないのが実情です。京都府の中心部である京都市には昨年秋に設置されていますが、京都市外の府民は利用できません。一日も早く、府北部・中部・南部の3カ所くらいのセンター開設が行われるよう、取り組みを強めて行く必要があります。みなさんの地域の状況はいかがでしょうか?


[2006.1.29]

2月5日、アスペ・ノンラベル設立1周年記念講演会開催(京都)

 私がスタッフとして関わっている「京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル」が、そのアスペルガー障害援助部門である「思春期・青年期・成人期 アスペ・ノンラベル」設立1周年と、前回ご紹介した『どう関わる?思春期・青年期のアスペルガー障害』出版記念を兼ねた「記念講演会」を、2月5日(日)午後2時より「ひと・まち交流館 京都」で開催します。第一部は記念講演で、「アスペルガー障害 思春期・青年期の理解と援助」と題して精神科医の定本ゆきこ先生にお話していただきます。第二部はシンポジウムで、「アスペルガー障害の生きにくさをどう支えるか?」と題して、定本先生、京都府障害福祉室の荒田均氏、府精神保健福祉総合センターの曽我和博氏、ECC高等学院京都校・難波校校長の金馬宗昭氏、ノンラベル代表の田井みゆきをシンポジストとして行います。定員は先着300名、参加費は3,000円です。詳細はアスペ・ノンラベルのサイトをご覧下さい。
http://www13.ocn.ne.jp/~nonlabel/asupe/index.html
尚、全体の司会進行は、私がする予定です>^_^<。

●アスペルガー障害を知って 特性や対応策実例交え本に
(京都新聞、1月27日に掲載されました) 「京都ひきこもりと不登校の家族会 ノンラベル」(事務局・京都市右京区)はこのほど、アスペルガー障害の特性や対応策についてまとめた「どう関(かか)わる?思春期・青年期のアスペルガー障害」(かもがわ出版)を刊行した。
 アスペルガー障害は中枢神経の機能不全による発達障害だが、原因は不明。一般の人とは異なる物事の感じ方や理解をする傾向があり、ほかの人とはどこかが違うという生きにくさを感じ、ひきこもりや不登校になるケースが多いという。
 同会は思春期・青年期のアスペルガー障害を援助する部門として、一昨年12月に「アスペ・ノンラベル」を設立。相談や対人関係のトレーニングを行っている。
 本の中では、「だんどりが分からない」「言葉を字義通りに解釈する」「応用・手抜きが分からない」など障害の特性を、実例を取り入れて解説。周囲が取るべき対応策としては「特性を個性として尊重することで人としてのすばらしさが見えてくる」としている。A5判、117ページ、1,365円。
 また「アスペ・ノンラベル」設立1周年の記念講演会を2月5日午後1時半から、京都市下京区、ひと・まち交流館京都で開き、本の執筆にも参加した精神科医定本ゆきこさんが講演する。問い合わせは同会TEL.075(312)3338。

●福島のNPOが引きこもりを支援/住宅開放、週3回に(福島)
 福島市のNPO「ビーンズふくしま」(中鉢博之理事長)は、引きこもりを続ける若者が社会との接点を持ち、立ち直るきっかけにしてもらおうと、今月から週3回、借りた住宅を開放し、スタッフが作成したプログラムに沿った支援活動を行っています。04年11月から月2回、支援活動を行ってきましたが、希望者が多く回数を増やしたもの。
 支援活動は、事務所とは別に一戸建て住宅を借りて、引きこもりの若者が自由に交流できるスペースを確保し行っています。今後は就労体験やボランティアに参加してこれからの生き方について考えてもらうそうです。すでに18〜33歳の男性4人がサービスを受けるための会員として登録し、立ち直るにはどのようなことをしていくかスタッフと話し合いました。中鉢理事長によると、引きこもりの若者は県北地方だけでも1,000〜2,000人。「一人で悩んでいても、何も解決しない。解決の糸口をつくってあげたい」と話しています。問い合わせは024(544)1987まで。

●40年ぶりに教員の勤務実態調査…高給批判で検証(文科省)
 28日文部科学省は、小中高校などの教員の労働時間や超過勤務の状況についての全国調査を行う方針を固めました。国がこの種の調査を行うのは1966年以来40年ぶりになります。
 高過ぎるという指摘のある教員の給与水準が適正かどうかを判断する資料にする目的で、今秋に調査結果のとりまとめを目指すそうです。
 調査は全国の公立小中高校や養護学校などに勤務する教員約90万人から抽出した10数万人規模で行う見通し。具体的な項目は年度内に詰めるとし、〈1〉通常の勤務時間〈2〉超過勤務時間〈3〉超過勤務の理由(放課後指導、教材研究、部活動指導、会議など)を中心に調査する方針です。テストの採点を自宅で行うといった「持ち帰り残業」の実態についても調べる方向。
 また、「先生たちも夏休みの間は休んでいる」との誤解も多いことから、夏休み中の勤務状況についても初めて調査するそうです。
 教員の勤務実態調査が40年間も行われなかった背景には、日教組が「管理強化につながる」などとして強く反対してきた経緯があります。しかし、組合員から「教育現場で過重な負担が教職員にかかっている実態を明らかにする必要がある」などの声が上がったことから、日教組自身が93年からほぼ2年に1度、実態調査を実施してきています。04年調査では時間外勤務の合計は1日平均2時間9分、1か月換算で約43時間と、厚生労働省調べによる同年の全産業平均(10.3時間)の約4倍となっています。
 教員給与は一般行政職より優遇されていることから批判され、公務員の総人件費改革の一環として来年度、見直しを検討することになっています。文科省や自民党の文教族は見直しに反対しており、調査の実施には「基本的に残業手当が付かない教員の給与が、勤務実態と比べて高いのか低いのかを示して国民の理解を得たい」(文科省幹部)との思惑もあるようです。


[2006.1.22]

『どう関わる?思春期・青年期のアスペルガー障害』発売!

  15日、私がスタッフとして関わっている「京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル」から、『どう関わる?思春期・青年期のアスペルガー障害』(かもがわ出版発行、120頁、定価1,300円+税)が出版されました。全国の主要書店に並んでいると思われます。私も部分的に執筆に参加しています。
 アスペルガー障害を含む高機能広汎性発達障害の診断を受けた方、またその疑いのある方、中でも障害特性が顕著に表れる思春期・青年期の当事者の特性の理解と関わり方のヒント等を、家族会として彼らと関わりながら学んできたことをまとめたものです。
 18歳を過ぎると児童相談所との関わりも切れるため、相談先、受診先を見失ってしまわれるご家族が多いのが実情です。「発達障害者支援法」の施行によって、全国の都道府県、政令市で「発達障害者支援センター」が設置されていっていますが、思春期・青年期の高機能広汎性発達障害(児)者への援助に関するノウハウの蓄積はまさに始まったばかりです。
 高機能広汎性発達障害への正しい理解と適切な関わりを、多くの方が獲得していただけることを切に期待します。ぜひご購入を!

●子どもの心の問題診る医師、専門性3段階に分けて養成(厚労省)
 18日、子どもの心の問題に対応できる小児科・精神科医の養成方法を話し合っていた厚生労働省の検討会は、医師の専門性を3つのレベルに分けて養成することを盛り込んだ報告書案を大筋で了承しました。次回会合で取りまとめる方向です。
 厚労省によると、虐待を体験した子どもの増加や発達障害への認識の高まりに伴い、心のケアの必要性が急速に高まっている一方で、全国の専門医は2,200人程度と推計され、時間と手間のかかる子どもの診療は予約を入れても2、3年先になるケースもあり、医師不足が問題となっています。
 報告書案は医師を(1)軽症例を診療できる一般医(2)1年以下の研修を受け中等症例を診療できる専門医(3)1年以上の長期研修を受け重症例、難治例を診療できる高度専門医−の3つの水準に分類。初診は(1)の医師で対応し、重度になるにつれて専門性の高い(2)や(3)の医師が診療するということです。
 初診を(1)の医師で対応するというのが気になります。やっとの思いで医療につながったご家族や当事者が、その入り口で不愉快な対応を受けたり、誤診され要らぬ投薬治療を長期に続けた後に別の診断名をもらうというケースが多いからです。段階的に対応できる医師を養成することの必要性は言うまでもありませんが、やはり、初診は「重症例、難治例」を見分ける力量のある医師であることが望ましいと思います。また、小児科や児童精神科の医師の養成とあわせて、ご家族や当事者のメンタル面でのケアにあたる援助者(カウンセラーやソーシャルワーカーなど相談できる第三者)の養成と連携強化も必要です。

●小中と養護学校の教職員、給与の国庫負担一本化へ
 文部科学省は、小中学校など、義務教育を担う各学校の中で養護学校だけが別制度となっている教職員給与の国の負担金(義務教育費国庫負担制度)を一本化する方針を決め、通常国会に関連する法律の改正案を提出する方向です。
 これによって、負担金交付までの国や都道府県の事務手続きが簡略化されるほか、地方にとっては教職員配置の自由度が高まります。4月から実施する予定だそうです。
 養護学校の場合、肢体不自由児以外に長期療養中の児童生徒や注意欠陥・多動性障害(AD/HD)など発達障害のある子どもたちも受け入れる場合があり、教職員配置に柔軟性が求められます。
 ところが、小中学校などの教職員給与費が義務教育費国庫負担法などを根拠にしているのに対し、養護学校だけは、校舎建設に対する国の補助などを定めた「公立養護学校整備特別措置法」が根拠法で、両者は共に教職員給与の半額を国が負担することを定めていて、実質は同じですが、法律上は別の制度となっています。
 この結果、例えば少人数学級実施のため小学校に配置された教員を養護学校の発達障害児支援に充てることはできないのが現状です。一本化すれば、こうしたことも都道府県の裁量で可能になるそうです。
 都道府県の「裁量」は知事の意志に、学校での「裁量」は校長の意志に寄るものです。子どもたちの育ちや学びに関わる組織の長は、一人ひとりの子どもたちにとって最善の利益が得られる環境づくりをどうすすめるべきか、関連機関や民間援助団体、研究者・医師などの個人、そして何よりも家庭との連携をすすめながら、現状ニーズに応じた施策を大胆に取り組んで行って欲しいと思います。


[2006.1.15]

<生活保護費>基準額下げを検討、基礎年金なみに(厚労省)

 11日、厚生労働省は生活保護費の基準額(最低生活費)の引き下げを検討する方針を固めました。地域によっては基準額が基礎年金額を上回り、与党や自治体から「基準額が高すぎる」という指摘が出ているのを受けた措置で、生活保護費全体の抑制につなげる狙いもあるようです。三位一体改革に絡んで進めてきた地方団体との協議を再開するとともに、専門家による検討会も設置し、基準額の見直し議論が進められていきます。
 生活保護費の受給世帯数は04年に初めて100万世帯を突破。03年度の保護費総額は2兆3,881億円で、90年に比べて約8割の増。全受給世帯のうち高齢者世帯が半数を占め、今後も増加が見込まれています。
 生活保護費のうち、食費や光熱費など生活扶助の基準額は、居住地によって細かく規定されています。たとえば、単身の65歳の場合、郡部では月額6万2,640円ですが、県庁所在地は7万3,540円、東京23区では8万820円。家賃などを負担していれば、1万3,000円を限度に住宅扶助が加算されます。
 これに対し、05年度の基礎年金額は、40年加入した満額受給者でも月額6万6,207円で都市部では生活扶助の基準額を下回ります。こうした状況を問題視する与党などからは「基礎年金より高い保護費をもらうのはおかしい」との意見が相次いでいて、全国知事会と全国市長会は昨年11月、国に対して基準額の見直しを求めていました。このため、厚労省は見直しに着手する方向となりましたが、公的年金が他の収入や資産の有無に関係なく保険料納付実績に基づいて支給されるのに対し、生活保護は最低の生活を保障することが目的で資産調査を伴います。省内には「生活保護と公的年金は性格の異なるもので、単純に比較すべきでない」との考えも根強く、今後の議論ではこうした点をどう整理するかが焦点になるとみられています。
 年金と生活保護費は制度の目的や確立経過が異なります。「受給額」の多少だけを問題にした論議は財政上の表面的な見方でしかなく、年金問題の本質的課題や生活保護受給に至る社会経済的背景の検討・議論がないがしろにされると思います。

●始業式の朝、佐世保の中2男子自殺=今年度、県内中高生で8人目(長崎)
 10日午前7時15分ごろ、長崎県佐世保市の市立中学2年の男子生徒が自宅の自分の部屋で死亡しているのを、母親が見つけ江迎署に通報しました。この日は3学期の始業式。同署は自殺とみて動機などを調べています。県内では今年度これまでに、中学生が2人、高校生が5人自殺しています。
 この自殺を受けて10日、生徒が通う学校の校長と鶴崎耕一・市教育長が会見、「命の大切さを繰り返し生徒たちに訴えてきた。亡くなった子も『自殺は周りの人を悲しませる』という趣旨の感想文を書き、思いが届いていると思っていた。でも、本当は届いていなかったのだろうか」と、14歳の生徒が自ら命を絶ったことに、校長は声を震わせたそうです。
 学校によると、生徒が感想文を書いたのは昨年10月5日。同校のPTA会長が交通事故から生還した身内の体験を語り、全校生徒が感想文を書いた。昨年7〜10月に県内で7件相次いで発生した自殺に対し、県教委が「命を大切にする教育」の大切さを訴える中、生徒も命の重みをつづりながら、なお死を選んだ結果となりました。
 市役所で会見した校長は「本人に悩みがあり、そのことを私たちが察知できなかったとしたら、申し訳ない」、鶴崎教育長は「『命が大切』であることは『あなた自身が大切』ということと表裏一体と伝えることが必要だ。思春期で心の揺れがあったとしても、バランスを大きく欠いて(自殺して)しまうのはどういうことなのか。もう一度我々も考えなければいけない」と語りました。
 学校はこの日、実力テストを延期し、緊急の全校集会を開いた。校長は生徒の死を伝えたうえで「悩みがあったら、友達、お父さん、お母さん、先生に教えて」と訴えたといいます。
 文部科学省によると、中学生の自殺者は04年度、全国で30人。動機は・家庭事情16.7%・学校問題13.3%・厭世13.3%で、理由不明など「その他」が56.7%としています。県教委によると、04年度は、中高生とも県内の自殺者はゼロだったそうです。
 警察庁が発表する自殺者の同年代の数値は、文科省発表の4倍位になっています。事故や病気として多くの自殺事案が処理されています。それにしても0件から8件に急増した長崎での中高生の自殺。その背景にあるものを、教育行政担当者はとことん追究し、問題解決をはかるべきです。

●運営継続へ支援を/舞鶴の不登校児童・生徒の民間施設
 京都府舞鶴市上安にある不登校児童・生徒の民間教育施設「聖母の小さな学校」の「支える会」が、運営資金の寄付を広く呼びかけています。新年度から、主な支援先からの資金提供が受けられなくなるためで、「学校が存続すれば、立ち直る子が1人、また1人と出る」と支援を訴えている。
 同校は元高校教師の梅澤秀明さん(51)と良子さん(57)夫妻が「困難を抱える子どもに徹底的にかかわる教育をしよう」と89年に設立しました。個々に応じて教科や手話などの体験学習を実施。この16年間で約200人の子どもが卒業し、昨年は、府教委の「不登校学習プログラム」の共同開発施設にも選ばれています。
 しかし運営面は、個人経営のため厳しい状態が続いています。平均10人弱の在籍生から1日1,000円の指導料を受け取るが、通学が月に数回の子もおり、年間運営費450万円の約3分の1にしかなりません。そのため赤字分は、梅澤さん夫妻が生活費から出すほか、主に、夫妻が以前勤めた高校の運営母体だった宗教法人「聖母訪問会」(神奈川県鎌倉市)が必要に応じて補てんしてきましたた。しかし同会もメンバーの高齢化などで経営が厳しく、学校敷地と建物の無償貸与は続けるが、資金援助を中止することになりました。
 卒業生の保護者らも「支える会」を新たに結成し、各方面に寄付を呼びかけていますが目標には大幅に足りない状況。川崎弘会長(60)は「先生は1人の子が立ち直るために、身を削って努力している。学校を1人でも多くの人に知ってほしい」と話しています。
 寄付は一口1,000円。郵便振替で「聖母の小さな学校を支える会」の口座=00980-1-162920=へ。問い合わせは同校TEL.0773(77)0579まで。
 私も個人的にご夫妻と面識があります。京都府北部における拠点的フリースクールであるだけに、何としても存続させて頂きたいと思います。

●軽度発達障害者/支援体制の構築急務(島根)
 島根県は発達障害者支援法の施行を受けて、06年度に「支援センター」設置を準備するなどようやく支援に乗り出しました。
 文部科学省の調べでは、通常学級で知的発達に遅れはないが学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生徒の割合は6.3%。中国地方5県で支援センターが設置されていないのは島根だけで、専門家不足や対応の遅さが指摘されています。障害に対する正しい知識の伝達と、患者が自立するための援助機関の創設・支援が、早急に求められています。
 「あの子たちの行き場が社会にはない。相談できる所すらないのが現状」。軽度発達障害の長男(23)を持つ出雲市の主婦、岡田誠子さん(51)は打ち明けます。長男は知的な遅れはないが、幼いころから落ち着きがなく、集団生活が出来なかった。学校でも次第に孤立するようになり、中学では不登校に。卒業後から現在まで就職もできず家で生活しています。
 外見は普通の成人男性。しかし軍手を手にはめないと物が触れないなど強いこだわりをいくつか持ち、行動がぎこちないため、街を歩けば警察官にたびたび職務質問を受ける。「障害を警察に説明しても、普通に見えるため理解されない。本人も歩いているだけで職質され、理由が分からないのでかっとなり何度もトラブルが起きました」。警察には「こういう子は外に出すな!」と怒鳴られたこともあった。障害が理解されない現状。「それでも最終的に、彼に自立してほしいという思いは捨てきれません…」
 岡田さんは軽度発達障害の子どもを持つ親の会「紫陽花倶楽部」代表を務めます。会員は保護者ら約70人。月に数回集まり、学集会や情報交換をしています。「地域に発達障害の知識がない」「就労する場所がない」。昨年12月に出雲市内で開かれた会では、母親たちがやり場のない悩みを吐露しました。ある母親は「理解のなさが子ども同士のいじめを誘発している状況もある。悔しいです」と目に涙を浮かべたそうです。
 20年間、自閉症児の療育に携わり、現在は出雲市平田町で軽度発達障害や自閉症の子どもたちの療育支援をしている佐藤比登美医師(62)は「ここ2年間、子どもから大人まで軽度発達障害を訴えて来る患者が急増したが、まだまだ県内での認知度は低い」と理解不足に危機感を募らせます。佐藤医師が昨年行った講演会には、教師や保護者160人が参加し、関心の高さをうかがわせました。「軽度発達障害児には、幼児期からのコミュニケーション技術の訓練など適切な対応こそ効果を生む。大切なのは日常生活。子どもの将来を考え、学校、家庭、専門家が連携して日常生活の中で個別に社会的スキル(技術)など必要な援助をしていくことが大切」と話しています。
 就学中の児童生徒の相談・指導には、県教育センター(松江市)の特別支援教育セクションが取り組んでいます。発達障害の相談件数は01年以降急増傾向で、05年度10月末現在でもすでに延べ1,083件の相談がありました。
 相談の大半は小学生が教師の勧めで相談に来るケースですが、最近では不登校や非行と絡んだ高校からの相談も多いようです。同センター職員の長沢幸子さん(51)は「対人関係の不器用さや集中力がないのを『怠けている』と考えるなど間違った対応が、結果的に子どもの自信を失わせてしまい、学校に来ることすらできなくなるような2次障害を引き起こしている」と話します。ここでは相談者に訓練を含めたグループセラピーを行っているが、相談件数の増加から十分な対応ができていないのが現状といいます。
 長沢さんは「それでも義務教育期間中は誰かがみている。でも問題はその後の社会に、ケア体制が整っていないこと。早急な支援体制の構築が課題です」と指摘しています。


[2006.1.8]

新年明けましておめでとうございます。相談室を開設して初めての年明けです。今年も、「つぶやき」では、不登校やひきこもり、発達障害などについての全国のさまざまな情報を紹介しながら、私の考えも少しだけ添えさせていただきたいと思っています。今年もよろしくお願いします。

不登校の陰に起立性調節障害/神戸の女性HPで呼びかけ

 神戸市北区のパート塩島玲子さん(45)がホームページを開設し、息子の不登校の体験などをつづっています。朝起きると頭が痛み、めまいがする―「起立性調節障害(OD)」が不登校の原因にもなることの理解を広めようされています。
 ODは、自律神経失調症の一つで、寝起き直後などに血圧が正常に上がらず、気分が悪くなったりし、主に成長期の子どもにみられるといいます。
 塩島さんの長男正悟君(16)は中学2年の2学期、始業式の朝に登校したものの学校に行かずに帰宅。つらそうな顔で「しんどい」とこぼし、その日から卒業まで不登校が続きました。
 朝は頭痛や嘔吐(おうと)を繰り返すが、血圧が戻る午後には元気に。塩島さんは最初、「怠けているだけ」と疑い、「不登校児の親」と言われる不安などから学校に行くようにと叱りつけたそうです。正悟君はその後、病院でODと診断されました。
 ある時、悩みを打ち明けた友人に「どんなことしても、あんたの子やん」と言われ、次第に不登校を受け入れようと思うようになっっていきます。「認めることができないと、親も子も余計につらくなる」
 その思いを同じ立場の親や教師にも伝えようと、一昨年11月、HPを開設。体験を載せると、「私の子も不登校です」と打ち明ける書き込みが相次いだそうです。成績や進学、将来の不安…。同じように悩み、互いに励ましあう。ある親は「(子どもが)不登校になったことで本当にたくさんの大切なことに向き合うことができた」と書き込んでいます。
 現在、高校1年の正悟君は毎朝学校に通学。HPの表紙には塩島さんのこんなメッセージが添えられています。「ゆっくりあるこうよ」
http://plaza.rakuten.co.jp/eikichi55/

●出生率過去最低を更新、1.26前後に

 05年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)が1.26前後に落ち込み、過去最低となることが28日、明らかになりました。厚生労働省が先に発表した人口動態統計(年間推計)の分析で判明したもので、これまで最低だった03、04年の1.29を大きく下回ります。
 この統計では、05年に初めて死亡数が出生数を上回る「自然減」となったことがわかりましたが、その根本原因である少子化が、予想以上の速さで進展していることが明確になりました。
 人口動態統計によると、05年の出生数は106万7,000人で、前年より4万4,000人減少。合計特殊出生率が前年比で0.08ポイントの大幅減となった95年の5万1,000人減以来の下げ幅です。
 厚労省は正確な出生率を06年5〜6月に発表する予定ですが、「1.26前後まで低下が見込まれ、さらに落ち込む可能性もある」と見ています。
 国立社会保障・人口問題研究所は02年に公表した中位推計で、「00年の1.36から07年に1.306まで低下するが、下げ止まり、35年ごろから1.387で安定的に推移する」としていました。
 内閣府によると、先進国の03年の合計特殊出生率は、アメリカ2.04、フランス1.89、ドイツ1.34、イタリア1.29など。日本は各国の中で、特に低下のペースが速くなっています。

●中学「別室指導は見せしめ」…保護者ら人権救済訴え
 兵庫県川西市立東谷中学校(同市見野、岡田良仁校長)が、教諭に従わない生徒らを「別室指導」としてクラスから一定期間“隔離”し、個別指導していたことがわかりました。市設置の第三者機関「川西市子どもの権利オンブズパーソン」が「生徒の権利が十分保障されていない」と是正を勧告したが、同中学は「授業を円滑に進めるためのやむを得ない対応」と、続けていました。この指導を受けた男子生徒の保護者らから「見せしめ、懲罰的だ」との声が上がり、兵庫県弁護士会に人権救済を申し立てる事態になっています。
 市教委や岡田校長などによると、同中学が別室指導を始めたのは今春。授業態度を注意した教諭に反抗したり、暴言を吐いたりした生徒に対し「他の生徒の妨げになるため、本人を落ち着かせる」との目的で、5日間、別の教室に移し、教諭と1対1でプリント学習をさせました。1日目は1時間だけでしたが、以降は毎日1時間ずつ延長。遅刻などがあれば5日以上続けて行うこともあったといいます。
 生徒の一人から人権救済の申し立てを受けたオンブズパーソンは8月、「『秩序を守るため』という目的は、教育を受ける権利を制限する正当な理由とはいえず、生徒に積極的な授業妨害もみられない」などとして中学側に是正勧告をしました。
 市教委も「別室指導は必要な場合もあるが、あらかじめ期限を決めるのは不適切」とし、口頭で指導していましたが、同中学は9月末、別の生徒に5日間の別室指導を行っていました。
 この生徒ら6人の保護者は11月、「平手打ちされた」などの体罰も訴えて市教委に改善を求める一方、同弁護士会に人権救済を申し立てました。代理人の櫛田寛一弁護士は「学校側が問題生徒を頭から抑えにかかる異常な状況だ」と指摘しています。
 岡田校長は「板書中の教諭に物を投げつけた生徒もおり、社会常識を身につけさせるためにも個別で指導している。見せしめという思いは一切ない。理解が得られるよう生徒や保護者と粘り強く話し合っていくしかない」と話しています。
〈孤立化させる恐れ〉
 影山昇・東京海洋大名誉教授(学校教育学)の話:「別室指導は、その生徒を孤立化させてしまう恐れがあり、人権問題と言われても仕方がない。同じ教室の中で問題解決を図るべきだ」
〈やむなしの場合も〉
 元中学校教諭で「学校崩壊」の著書がある河上亮一さんの話「少数生徒の行動で教室全体が混乱しているなら別室指導もやむを得ない場合があるかも知れない。学校は教室の状況と、他の生徒への影響を保護者らにしっかり説明し、ともに対応を考えるべきだ」

 理由もなく授業中に教師に暴言をはいたり物を投げるなどの授業妨害をする生徒はいません。そうした行為に及んだ生徒の気持ちに寄り添った指導こそが求められるのであり、「授業を円滑に進めるため」として、その生徒を隔離することで問題解決を図ろうとする思考は、学校管理という「権威」を利用して事態の表面的な沈静化をはかったものと言わざるを得ません。荒れる子どもの声を、誰か大人は聴いたのでしょうか?

●宮城県教委がフリースクールと連携-不登校問題解決へ
 宮城県教委は新年度、児童生徒の不登校対策の一環として、民間フリースクールとの共同事業の検討をスタートさせます。県教委や学校関係者、フリースクール代表らを委員とする連絡会議を設置。不登校の子どもの学校復帰を支援するモデル事業について協議し、07年度以降に展開したい考えです。
 不登校の生徒らが通う民間フリースクールは現在、県内に約20カ所ありますが、市町村教委や学校と連携している施設はほとんどないそうです。子どもの学校復帰を目的としている施設もあり、県教委はそうした施設の代表らに連絡会議への参加を呼び掛ける方針だそうです。
 協議では、公立学校の教師とフリースクールの指導者との情報共有、学校以外での学習指導、カウンセリングの方法などについて検討。モデル事業計画を策定するとしています。
 県教委は93年度から、不登校の児童生徒支援施設「けやき教室」を県内8カ所に設置。年間約60人の小中学生が通い学習指導などを受けているが、学校復帰できる子どもは少なく、04年度は15人にとどまっています。「民間の力も借りながら、一人でも多くの学校復帰を目指したい」(義務教育課)として、フリースクールとの連絡会議設置を決めたものです。
 04年度の県内の不登校児童生徒数は、小学校が397人、中学校が2,015人。ピーク時の00年度ごろよりやや減ったが「ほぼ横ばいで推移しており、本格的な減少傾向になったとは言えない」(同課)。県教委は、これまで展開してきた相談受付事業やカウンセラー派遣事業なども継続し、不登校問題の改善を図るとしています。
 「連携」とうたいつつも、前提が「学校復帰」では、「連携」の幅が狭まります。「けやき教室」を子どもたちが「選択」しなくなっていった事実から学んでほしいと思います。

●県医療費助成、7歳未満まで対象拡大/都道府県でトップ水準に(徳島県飯泉知事)
 飯泉嘉門知事は4日の記者会見で、6歳未満の通院と3歳未満の入院を対象としている県の乳幼児医療費助成制度を、入院・通院ともに7歳未満まで対象拡大する方針を明らかにしました。制度拡充が実現すれば、都道府県としては全国トップ水準となります。
 同制度は、事業主体の市町村と県が事業費の半分ずつ負担する内容で、県内の全35市町村が同制度を活用し、乳幼児医療無料化の制度を設けています。県が検討しているのは、対象年齢を7歳の誕生日前日とする内容。対象拡大に際して、「就学前」も検討されましたが、就学時には学用品の準備など、保護者の負担が膨らむうえ、子どもが生まれた時期によって不公平感もあることから、「7歳の誕生日前日」とすることにしたそうです。必要な事業費は新年度の当初予算案に盛り込む方向で準備を進めています。
 一方、財政がひっ迫しているうえ、現行制度でも保護者の所得制限を設けている市町村が多いことなどから、所得制限のほか保護者の一部自己負担なども検討されています。
◇発達障害総合支援ゾーンの整備も−徳島赤十字病院跡地
 また、飯泉知事は会見で、新築移転後の徳島赤十字病院跡地(小松島市中田町)を中心とした地域に、発達障害者やその家族に対する相談や発達支援などにあたる「発達障害者支援センター」などからなる「発達障害総合支援ゾーン」を整備する方針も表明しました。
 病院北側にある県立ひのみね養護学校には、高校段階の生徒に社会的・職業的自立に向けた教育を行う「高等養護部門」を新設する方針で、07年度中の用地取得を目指すそうです。
 知事権限はとても大きなものがあります。いずこも財政ひっ迫を理由に、福祉や医療、教育などから予算を削ることに躍起ですが、こうした自治体が存在することに勇気を与えられます。